そうだ、俺がコガネだ
・・・あの後、石英は即座に貴族たちを威圧で黙らせて退室した。何時までも居続ければ、それだけで貴族たちがうるさそうだったからだ。こっそり石英は溜息を吐いた。
・・・・・・・・・
そして、石英とルビの二人はアルカディアの海沿いの街、カルに来ていた。この街に、内乱の首謀者であるコガネとその仲間たちが拠点を築いているという。要するに、偵察だ・・・
そう・・・僕達は今、偵察に来ていた筈なのだ。
・・・その筈なのだが。
しかし、どうやらその偵察は早々に失敗したらしい。どういう訳か、首謀者のコガネ本人にバレたらしくその当人と現在対峙している。流石に、これには石英も閉口した・・・
身に纏う、王者の覇気。それは、内乱の首謀者というよりもむしろ迎え撃つ王のそれである。
「・・・お前が、コガネだな?」
「そうだ、俺がコガネだ」
コガネはどうやら、隠す気が一切無いらしい。早々に本人だと自白した。
しかし、それでもどうやら彼も馬鹿では無いらしい。自ら自白したのも、かなりの自負と自身故の行動からだろうと見られる。どうやら、かなりの胆力があるようだ・・・
「で、この俺に用があるのだろう?石英殿」
「ああ、だが此方としても直接接触するつもりも無かったがな。其方こそ、僕に一体何の用だ?」
その言葉に、コガネはにやりと不敵に笑った。それは、その言葉を待っていたとでも言うようだ。
不敵に笑みを浮かべ、その手を石英に差し出す。
「・・・石英殿、此方の陣営に加わる気はないか?」
・・・・・・
「それは、つまり僕に早々裏切れと・・・?」
「いやいや、そもそもお前はアルカディアに対して何の義理も無い筈だ。しかも、逆に一度は戦争状態にまで発展したとも聞いているぞ?むしろ、此方に付くのが筋ではないかな?」
確かに・・・
僕にはアルカディアに付く筋など一切無いだろう。どころか、むしろ反逆者に付いても文句は言えない筈の立場にあるとすら言える・・・
しかし、だ。
「・・・・・・石英」
ルビが不安そうに石英を見る。どうやら、石英が内乱に加担するのではと危惧しているらしい。しかしそれも不要な心配だ。石英はルビに苦笑を向けた。
石英は、どの道内乱の首謀者と組む気は無い。何故なら・・・
「・・・その提案は断らせて貰おう。僕は、少なくとも今の国王であるタイガと其処まで険悪でもないし敵対する気も更々無いからな」
「・・・・・・そうか、それは残念だ」
そう言って、コガネはふっと笑みを浮かべた。そして、覇気を纏った表情で宣言した。
「ならば、俺が許す間にこの街から去るが良い!次は一切容赦しない!!!」
「・・・ならば、僕も次は一切容赦しないと宣言しよう」
そう言って、互いに宣戦布告した。




