腐っているな・・・
「いや、お前等何をしているんだよ?」
タイガの呆れた声が、部屋に響く。実際、呆れているのだろう・・・
その瞳は、じっとりとしており呆れ果てた視線を向けていた。
現在、石英とルビは王城の謁見の間に居た。と、いうよりも城下の街から王城まで連行されたという方が文面的に正しいだろう。背後には剣や槍を持った衛兵が背後に立ち、睨み付けている。
大臣達は忌々しげに石英とルビを睨み付けている。今にも処刑したそうな、そんな雰囲気だ。しかし例え彼等大臣とはいえ、国王であるタイガに口出しする権限は無い。実に忌々しそうだ。
「何って・・・僕達は只、自分達の身を守っただけだけど?」
「いや、だからってなぁ・・・・・・」
「僕達は石を投げられた。それとも、そのまま石をぶつけられた方が良かったのか?」
「・・・・・・・・・・・・」
タイガは黙り込む。やられたからやりかえした、その何が悪い?そう、石英は言っている訳だ。確かに対外的に見れば、殺気を振り撒き大勢の民を昏倒させたという事実はある。
事実、衛兵が城下の街に駆け付けた頃には町は大惨事になっていた。しかし、だ・・・
石を投げてきたのは民の方だし、石英は只それにやり返しただけだ。石英自身はそれを間違っているとは全く思えなかった。それに、やり返しはしたが民は全員傷一つ無い。全員昏倒はしたが・・・
「僕達は僕達の身を守っただけだ。石を投げてきたのは街の奴等だろう?」
「確かに・・・その通りだが・・・・・・」
そう、国王が納得しかけた直後。一人の大臣が机を叩いて立ち上がった。
小太りの、かなり着飾った男だ。確か、王国の金庫を預かる大臣だったか?
「王よ!その者の言い分に耳を貸す必要はありませんっ‼即刻処刑をっ‼」
「っ!!?」
タイガが驚いた目で見ると、他の大臣達もその言葉に次々と賛成の言葉を吐いていた。
「そうだっ、所詮は死神‼化物如きが人権を訴えるなど、片腹痛いわっ‼」
「そもそも、その化物が居なければ先代国王も死なずに済んだのではないかっ!!!」
言いたい放題だ。どうやら、そもそもこの大臣達は石英とルビの事を同じ人間とすら見ていなかったらしいと、石英は気付いた。最初から化物としか見ていない。いや、恐らくはそれだけではない。
(腐っているな・・・)
石英は、そっと心の中で溜息を吐いた。その瞳は黄金に輝き、全てを見透かしていた。
そう、腐っている。この大臣達は皆、自身の保身しか考えていないのだ。誰も、民衆の事など心にありはしない。心にあるのは即ち、石英とルビを化物と見做して己に害が及ばないようさっさと処刑したいというそんな浅はかで薄っぺらい願望だけ。誰も、心の底から民衆の事など考えてはいない。
「・・・・・・本当に、腐っている」
そう、ぼそりと誰にも聞こえない声量で石英は呟いた。




