久し振りに来たな、アルカディア・・・
そして、石英達は王国アルカディアに来た・・・王国アルカディア、首都アルカス。
「久し振りに来たな、アルカディア・・・」
そっと、石英が呟く。ニライカナイからアルカディアまで、空間転移で一瞬だった。
・・・アルカディアに来たのは、ルビと石英の二人だけだ。黒曜とスイショウは留守番だ。
二人共、一緒に行きたがったが石英はそれを止めておいた。石英には一つだけ懸念事項がある。それを前に二人を同行させる訳にはいかないから。最悪、二人が機嫌を損ねるどころの騒ぎでなくなる。
・・・少しだけ二人が拗ねていたけど。何とか納得させる事が出来た。
閑話休題・・・
王都アルカス。其処は、活気に溢れた町だった。とても賑わっており、一見して特に変わった様子も見られないように見える。しかし、それもほんの一瞬だけだった。
誰かがルビの姿を見付けたのか、町がざわつきだす。それは、まるで石英達を中心にして波が広がるように一瞬で伝播していく。そして、ひそひそと人々が囁き合うのだ。
その声が、石英にもしっかりと聞こえた。
「ねえ、何で死神が此処に居るの?」
「それに、その近くに居るのは先代国王を殺した・・・」
「いやねえ、さっさと消えてくれれば良いのに・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
石英は、思わず眉をしかめる。未だ、根は深く断ち切れてはいない。
どうやら、未だにルビの事を死神と嫌う者は消えていないらしい。根は深い。まあ、それもそうかと石英は軽く溜息を吐いた。そう、ある意味これは仕方がない事だ。
一度根付いた風習は、簡単には消す事など出来はしないだろう。それが、根深ければ根深い程に。
黒曜とスイショウを一緒に連れて来なかったのは、これが原因だ。一緒に連れてきたら、間違いなく問題のやり玉に挙げられるだろう。最悪、死神の子供と石を投げられかねない。
病の化身であるスイショウなど、特にだ・・・
・・・しかし、その敵意を向けられるルビとしては堪ったものではないだろう。先程からカタカタと肩を震わせているのが解る。そんなルビの肩を、石英がそっと抱き締める。
「・・・・・・石英、私・・・」
「大丈夫だ。ルビはもう独りじゃない」
そう言って、石英は励ます。そんな優しい言葉に、ルビはそっと身体を石英に寄せる。
・・・と、次の瞬間。石英に向かって石が飛んできた。石英はそれを軽く手で払いのける。
しかし、石は次から次へと飛んできた。周囲に居る人達が、石を投げてきているのだ。
気付けば、周囲は石を持った人に囲まれていた。
「帰れっ‼死神は帰れっ‼」
「この疫病神っ‼化物っ!!!」
・・・石英は、投げられる石からルビを庇う。石英は石を投げられようとも傷一つ負わない。
次々と浴びせられる罵詈雑言。それを前に、石英はそっと溜息を吐いた。全く、本当にこの王国は何一つとして変わらない。そう、石英は思った。
・・・そして。石英は町を軽く覆う程度の殺気を解放した。




