普通な?公爵令嬢と威厳系王子と愛玩系王子
めっちゃ久しぶりの投稿過ぎて初投稿気分です。
我が国の第一王子は国の宝である。
白銀の髪に炎のような虹彩のある金色の瞳という、直系の王族にしか持ちえないレア色をお持ちになり・・・。
背は高く、だがひょろっとはしておらず鍛えられた体躯の持ち主で、勿論武に秀で・・・。
文のほうはといえば、こっちも多分野の学者達が舌を巻くほど博識である。
言い忘れていたが、顔は信じられないくらいイケメン面をお持ちである。何系かというと、「威厳系」とでもいえば宜しいのか・・・?
クールというには威厳がありすぎ、キレイ系というにも威厳がありすぎ、耽美系というにも威厳がありすぎる。
例えるなら出会ってしまえば腰の曲がったご老人でさえ背筋がピッと伸びてしまうんじゃないか?というくらい威厳があるのだ。若干26歳だというのに。
もちろん公爵令嬢であり、国で王妃に次ぐ一番高貴な女性である私、フリュール・ブランルージュも第一王子に出会ったら最後、背筋がピッとなる1人である。
血は高貴だが、本人はいたってフツーの女の子。それが私フリュールである。高貴故に「政略の駒」になりうる可能性があるので、フツーの女性には必要のない知識とか立ち振る舞いとかを詰め込まれているが、「フツーの女性が教育されたらこうなる」くらいのスペック。それが私。
話は戻るが、『第一王子』というくらいなので、『第二王子』が存在する。歳の差は実に12歳。
第二王子は白銀の髪に金色の瞳で・・・お兄様にクリソツである。
だがしかし、第一王子が「威厳系」であるのに対し、第二王子は「愛玩系」であった。
愛玩系の第二王子はきゅるんとした表情を以て御年4歳の折、フリュール・ブランルージュを『ねえや』としてご指名された。第一王子16歳、私10歳のころである。
当時、その舌足らずな言葉使いすらも『愛玩系』の魅力の糧でしかなく、国民すべてが第二王子にメロメロであり、勿論私もメロメロキュン!であった。
「ねえふりゅーりゅ、ぼくのねえやになって?」
「はい喜んで!」
『ふりゅーりゅ』て!『ふりゅーりゅ』て! 私は鼻を押さえつつ(鼻血でそうだった)、即答で答えた。
そして第二王子のねえやとして恥ずかしい振る舞いは出来ないと粉飾決算ではなく粉骨砕身――血筋だけはいいふつーの女の子である私が『第二王子のねえや様』と自他ともに認められるようにとにかく頑張って現在二十歳。今ならどんな王家の皇太子にだって嫁げる。政略カモン!
あ、今までの文章を見て、「こんな言葉使いで何言ってんだ」と思われるかもしれませんが、これは皆さまにお分かりやすいようにと砕けて言っているだけで、本来の私はこんなんじゃありません、あしからず。
じゃ、このあたりで本来の私をお見せしましょうか。
***
「ねえ、ねえや。兄上は今日はどちらに行っているんだろう?」
第二王子シャルル・ブランノワールは、生まれたころからずっと一緒に居る、一番信頼しているねえやに尋ねた。
ミルクティ色のなめらかな髪と、若草色の瞳を持つ、『ブランノワールの春』の異名を持つフリュール・ブランルージュはほっそりとした首をかしげた。
彼女の侍女が斜め後ろから近寄り、彼女の耳にヒソヒソと囁く。
「リュシアン様は本日は陸軍の視察とのことですわ」
「戦争があるの?」
「そのようなことは噂にすらなっておりませんわ。第一王子が定期的に視察を行っておられる理由は、シャル様もお分かりでしょう?」
「ふふっ」
理由は以前フリュールが教えてくれた。
兄上は偉大なお方だ。兄上が行けば、皆、身が引き締まるという。確かに僕も兄上と一緒に食事をすると何を話しかけられるんだろうか・・・と緊張してしまう。そういった緊張感がたまには必要なので、兄上は視察を欠かさないらしい。
「僕も早く兄上を手伝えるようになりたいな」
「そのための勉強期間でございますわ。シャル様もあと一年たたずに成人となられます。及ばずながらわたくしもお助けいたしますのでがんばりましょうね?」
「もちろんだよ」
そう。早く成人して、兄上やフリュールに頼られる大人の男になるんだ!
***
視察から帰り執務室の窓から中庭を見ると、シャルルとフリュールの姿が見えた。
茶を飲んだあと、そのテーブルでそのまま勉強をしているようで、2人で一冊の本を覗き合っている。
「シャルルには今何を学ばせている?」
背後に控える侍従に聴くとすぐさま返事があった。
「はっ! シャルル様はブランノワールの治水について学んでおられます」
治水は統治において重要だ。第二王子として欠かせない知識ではある。
「フリュール…ブランルージュ公爵令嬢もか?」
「は・・・ブランルージュ公爵令嬢はシャルル様を掌中の珠のごとく慈しんでおられ、シャルル様の学ぶことであれば全て追従し学んでおられます」
「相変わらず仲の良いことだ」
歳の離れた弟にどのように接して良いか戸惑っているうちに、シャルルはフリュールに懐いてしまった。なんとなくフリュールに理不尽な嫉妬を感じたように思う。
フリュールは私の叔父である公爵の娘だ。叔父に王族の色は出ず、フリュールにも現れなかったのだが、王族の色でなくとも彼女の色は変わっている。
金髪碧眼が多い我が国で、ミルクティ色の豊かな髪に若葉色の瞳を持っている。
たれ目がちであることとその色素故、彼女はおとなしやかな女性だと思われがちだが、違う。
シャルルの付き合いではあるが、ブランノワールの王族が学ぶべき帝王学を全て身に着け。
父公爵の意向により他国の言語を複数取得し、社交界では外遊に同行した貴婦人の接待役を見事こなしている。
一騎当千、または、一国の君主たる素質を持っている女性だ。
以前、フリュールを褒めたところ「いえ、リュシアン様に比べればわたくしなど、どうということもございませんわ」と謙遜していたが、過ぎる謙遜は美徳ではないと今度言っておかねば。
中庭を見やれば、フリュールがシャルルの頭を撫でている。本当に――――妬心を感じるほどに仲睦まじい。
溺愛書きたかったんですけど、溺愛未満で終わってしまいました。