ある神様と地球の男が、適当に話す話
なんとなく書いた。
「……ここは?」
そう言って男は周囲を見渡して絶句する。
例えばベットの横に見知らぬ女が裸で寝ていたとか、
泥酔して帰って寝た為、眠りながらゲロ吐いてベットがゲロまみれだったとか、
もしくは病院のベットでアルコール中毒の治療をしていたとかならまだよかったと思う。
そこは真っ白で何もない空間だった。
足元も何もない。よくわからない空間に浮いているような感覚。
「気づいたか」
その声が聞こえると同時に真っ白な目の前に一人の男が現れる。
「ようこそ、といっても君には来た覚えもないだろうけど」
黒いスーツを着こなし、ぴっちりと整えられた七三分け、妙にセンスのいい銀色メガネに、整った容貌。違和感があるとすればその手に持つのが鞄ではなく、ザ・魔法使いの杖と名前を付けたいほど見事な渦巻く木の先端の杖を持っていることぐらい。
「ここは?どこなんだ?昨日は会社の忘年会で……」
泥酔して店の前でタクシーに乗ったところで記憶が途絶えている。
「簡単に言うとここは世界と世界のはざま。で、ぼくは神様かな」
そういって男は、唐突に頭を下げる。
「まずはすまなかった。いや、正直謝ることしてないんだけどね」
まあ、同類のやった事だからと続けて疲れた笑みを浮かべる。
「君は異世界に堕ちてきたんだけど、多分わからないだろうねぇ」
「神様?世界のはざまって………なんかのトリックとかテレビのドッキリっつっても、俺なんかにやる意味ないか、で、その神様が何の用だよ?俺死んだの?」
俺は混乱しつつ答える。
「それはしらない。だっていきなり落ちてきたのは君だし」
男はそう言うと呆然としてる俺に
「たぶん勘違いしてるけど、君の世界の神様じゃなくて、はざまの先の世界の神様。まあ、ロクスフィア神っていうんだけど知らないでしょ?僕の世界では二番目ぐらいに信じられてる神様だよ」
そう言って男。名前はロクスフィアというらしい奴が続ける。
「君の世界の神様が、多分誤って君を落としたんだと思うんだけど、なんか覚えてない?」
そんなこと聞かれても、こちらはわからないというしかない。
「…………相変わらずだなぁ。君のところの神様は」
苦笑というか苦々しいというか、微妙な表情で男は溜息を吐く。
「よくぞまあ、ここまで放任して世界の秩序を守ってられるよ本当に、おかげで下にあるこっちが大迷惑だけど。よくまとまってるよ。なんていうか、人間って弱そうに見えて意外と雑草並にしぶといのな」
「放任なのかうちの神様」
道理でたくさんの宗教があるわけだ。
「うん。多分十回も介入して無いんじゃないかな?しかも介入しても説明しないから、いろんな人が自由に解釈するから真意なんかまったくわからないし、適当にはたいて汚れ落とすみたいな介入するから汚れが全部うちに来るのよ」
「……なんか、すまないな」
「謝る理由は無いよ。まあ、よくもまあそんな世界で生き残ってるよ。そりゃ、別の世界の人が召還するわな、生存力が段違いだもん」
そういって神様は俺に笑いかける。
「そうなのか?基本一般人は弱いぞ?」
「意外と召還したら順応してるよ。チート能力だ知力だなんだかんだで、死ぬ方が少ないんじゃないかなぁたぶん」
「チート能力って必ずもらえるのか」
「いや、そう言うんじゃなくてさ、元々持ってるのよ君たちって、ただ神様がそれを使う土台を作らないからまったく無駄になってるだけで」
「はあ?」
「魔力の法則を設定しないから魔力は意味ないし、寿命の設定も適当に一律で範囲決めてるから不老とかも意味ないし、強靭な肉体も人間の死ぬ威力の設定を一律で決めちゃうからまったく意味なく死ぬのよ。最低限の世界の法則しか設定して無いから」
「え?あんの?俺にも」
「うん。普通に魔力なら、こっちの世界でも十位以内には入るんじゃない?肉体も魔族並みに強靭だし、多分生き残るね、うちに来ても」
そう言って男はじっと自分を見つめる。
「うん、精神的にも問題なさそうね。ていうか、何で君たちは奇跡すらほとんど起こさない神なのに、不安がらないで安定してるんだが不思議だよ」
なんといっていいかわからないが、馬鹿にはしていないようなので頷くしかない。心の底から感心してるというのが、こちらに何故か伝わっているのだ。
「で、さ、うちに来る?送るの無理だからここにいるか、こっちの世界来るか、それとも下の別の世界いくかなんだけどさ、下の世界の奴は馬鹿だから送ったらろくなことにならないのよ」
放任主義者と馬鹿に挟まれているらしい神様が俯く。
「ていうか、馬鹿すぎて設定めちゃくちゃだから、普通の人間死滅してる世界なんかいってもつらいだけだと思うよ。うちならファンタジー世界だからまだ順応できるよ?おすすめ」
そういって、安心させるように笑いかけてくる。
「迷惑にならないのか?俺がいっても」
なんか、悪い神様じゃないみたい。なんか人間味が溢れてるし。
「正直迷惑だけど、罪もない人間にあたるほど馬鹿じゃないし、まあ、本当に迷惑かけそうな悪い人間だったら、最初に普通に落とすから……………それに、真面目な人間は嫌いじゃないから世話ぐらいは焼かせてくれ、世界は違うとはいえ、私は神様なのだから」
なんか、本当にいい人じゃないかこの神?
「なんか、優しいな」
「君の世界の神様がおかしいんだよ。普通は……いや、下の馬鹿とか見てるとおかしいの私か?……………いや、他の交流ある連中は普通だし。うん」
そう言って男。いやロクスフィアさんは杖を振るう。
「とりあえず言語とある程度の常識、それから、ある程度の道具をあげるから、何とかしなさい。本当に困ったら教会に行けばそこの人たちが助けてくれるよう連絡しておくから。ちなみに教会の神様はロクスフィアね、それだけ覚えていれば何とかなると思う。もし本当にこの世界で嫌になったら、下とは別の他の神様に頼んでそっちに送ってあげよう」
光が自分を照らす。
「ようこそ。異世界へ、世界を造りし私が認める。好きに生き、好きに死に、好きに動けることを祈っている。できればその人生の最後に、納得がいけることを」
そうして神様の笑顔を最後に自分の意識は途切れた。
続ける気はないけど。ひょっとしたら書くかも