魔法具職人と金髪女騎士
「僕に会いに・・・ですか?」
猫を離して立ち上がると店の奥に少女を案内していく。まあ、店の奥って言っても入ってすぐの机にだが。
「ああ、きみの話は前に聞いていたんだがなかなか一人になることができなくてな」
「はあ・・・噂ですか?あ、フードこちらにどうぞ」
「ああ、ありがとう。きみことを知っている人から魔法具店をやっていると聞いてな。アル・ステイム君」
金髪美少女はフードとマントを外してアルに渡し椅子に腰掛けた。そのフードの中身は意外なものだった。
「魔法甲冑・・・騎士様なんですか?」
美少女の体には全身を鉄板で覆うように作られた甲冑をつけていた。腰につけていたロングソードに近い長さの剣を外し机の上に置く。その剣は、柄に装飾で彩られている。しかし、護身用に作られたようなものではないのは明らかだった。そして、アルの質問に足を組み、アルの方をみて嬉しそうにしている。
「ほう、これがよく魔法甲冑とわかったな。魔力を込めていないから魔力紋が出ていないはずだが?」
「あ、いや、一応魔法具なんでこれくらいは!でも普通の魔法具職人なら誰でも出来ますよ!それにただの甲冑にしては軽量化されていますし」
「・・・はは、それもそうだな!すまんすまん!ああ、そうだよ。ここ付近を担当している騎士団に所属しているんだ」
「へ、へえーそうなんですか」
(危ない・・・ついくせで・・・久々のお客だから油断した・・・)
何かを見透かすかのように見つめられて少し慌ててしまうアル。と同時にさっぱりとした性格圧倒されてしまう。そこでもうひとつ気になるというか聞かなければならないことを思い出した。
「あの、そういえばまだお名前をきいていないんですけど・・・」
「ん、ああ。私の名前はアリアだ」
「アリア様ですか・・・?」
(あれ・・・どこかで聞いたことあるような?)
少しの違和感を感じたアルが質問をしようと声をかけようとすると、
「でな、アル君」
「あ、はい」
「今日の要件はさっき君と会いたかったといったが実は他にもうひとつあるんだ」
「魔法具の手入れですか」
そう思ったのはもう鞘はヒビが入り今にも壊れてしまいそうだったからだ。アルは久々のお客かと改めて考えると嬉しくなっていた。
「お、やっぱり戦闘用の魔法具も整備できるのだな」
(やっぱり・・・?)
普通の魔法具職人は剣や鎧などの戦闘用専門と馬車や物を運ぶなどの日常生活で必要な生活用にわかれている。しかし、アルの店には生活用しかない。
「・・・結果的にそうなるかな」
「結果的にですか?」
「ああ」
アリアは笑みを浮かべ次のように言った。
「私の専属魔法具職人にならないか?」