小さな店の意外な来客
老人を見送ったアルは店の中に戻っていった。しかし、戻ったからといって客が居るわけではないのだが。
「今日はロングスさんひとりかあ・・・」
まだお昼すぎだというのにアルはそうつぶやいた。なぜなら店の外は賑わいを見せているが、誰もこの店には入ろうとはしていなかった。それもそのはず
「あんなのが目の前に立ってしまったらそうなるよなあ・・・」
アルはガラス越しに店の前を眺めていた。そこにはアルの店とは比べ物にならないような大きなお店があった。その看板には『大魔法具店!マグナランド!!どっかの店より使えます!』と皮肉めいたセリフ。マグナランドは、大手魔法具店の一つでチェーン展開されている。つい最近まるでこの店を潰そうかのように建てられたのだ。みんな新しい物目当てにマグナランドに入っていく。
「今じゃ常連の人しか来ないんだよなあ」
そうぼやきながらアルは魔法具の点検を次々とこなしていく。しかし、どれも売り物の魔法具ばかりであった。
「点検せずにそのまま買っちゃう人が増えたなあ。果物屋のおばちゃんレジ壊れたって話だったのに・・・今じゃマグナランド製だもんな」
頬杖をつきながらため息をつくしかなくなっていたアルだがそれでも手を休めずに作業を続けていた。
カランコロン!
「いらっしゃいませー・・・・ってきみらか」
一瞬期待して扉を見たアルだったが、そこには人の影はなかった。下を見てみるとそこにいたのは2匹のネコ。にゃーにゃーと鳴きながらアルの方に向かってくる。アルはエプロンのポケットから中からにぼし取り出す。
「よしよーし。毎日来てくれるのはきみらだけだよ。まあ、魔法具を買ってくれるわけじゃないけど」
この二匹は前からの常連客のようなものだった。またに何匹かほかの猫も連れてくる。そのくらい客が来ないのだ。自家製のレジの中には銀貨と銅貨が十数枚しかなかった。
「はあ・・・これじゃあ、来週まで持つかなあ・・・」
その硬貨を眺めながらアルはぼやくしかなかった。
カランコロンカランコロン!
再び扉が開く音がした。
「はいはい、君らも煮干目当てなのなあー」
他の猫がきたと思ったアルはそう言いながら扉に顔を向けた。しかし、そこにいたのは
「?にぼし??すまない、ここは『マグティア』じゃないのか?」
「え・・・」
そこにいたのはマントとフードをかぶったネコ・・・ではなく人間だった
「あのもう1度聞く。ここがあの魔法具店『マグティア』じゃないのか?」
顔が隠れてよく見えないがその人物は戸惑うアルに対してもう1度聞いてきた。アルはその一言で我に返り
「あ、はい!そうです!!」
「よかった・・・」
口元が少し見えているためその人物が安堵の表情を浮かべた。冷静になったアルは、
「あの魔法具をお買い求めですか?」
久々の新しいお客にテンションが上がり笑顔で聞く。しかし、
「いや違うよ」
「え・・・」
「今日はね」
少し残念そうにアルがするとフードの人物はフードを外す。その中には
「君に会いに来たんだ」
意外な訪問理由の金髪ポニーテールの美少女がいた。