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ぷろろーぐ5
「何を書いているの?」
「秘密だ」
俺は、誘拐された人間じゃない。
だから、忘れないようにと、彼女たちの記録をとっている。
ピエールランドのルールとして、関係者以外は記憶を消されるという不思議な力があった。
調査という名目で来た俺は、幸運だったようだ。たとえ忘れたとしても、俺自身が書いたこの紙はなくなったりしないからだ。メモに書いた記憶は、頭の中に留まっている。
ただ、外に報告することは致し難い。たとえ俺の物であっても、外に持ち出せば喪失してしまうようだ。一度誰かの資料で試して、解った。
だから俺は、ここ数ヶ月をこのピエールランドで過ごしていた。
「秘密なんて、誰にでもあんるだよね」
「そうね」
少女と彼女は、それ以上は詮索してこなかった。おそらくそこまで興味がないのだろう。
「今日は、どうしようか?」
「なら、探索でもしましょう」
何がやれるかわからないが、やれることをやるしかなかった。
俺も立ち上がり、希望を探す。
絶対に、助けるんだ。
そう、誓いながら。
それから少しして、ピエロの食事が始まった。