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忍び寄る不安



「危ねえ!?お前本当に加減する気あるのか!」

 ボガードの絶叫がこだまする。それもそうだ。なんとなく軽く降った木の枝がソニックブームを撒き散らしたのだ。当然枝は木っ端微塵。

「いや、どうも攻撃って認識した瞬間になんか力がこもっちゃうんだよな?」

 正直俺も困っていた。これはチート能力というより障害レベルだ。

 シリウスの屋敷は広いからと、俺に部屋を貸してくれていたのだが、いざ訓練となるとボガードの守備隊基地に寝泊りしたほうが楽ということもあり、居住地をそちらに移すことになったわけだが、訓練施設が壊れる壊れる。ちなみにそんなに壊すつもりはなかったとだけ断言しておこう。

「なんて迷惑な体質なんだ」

「そう言うなよ、俺も困ってるんだからさあ」

 まあ、なんだかんだで楽しくは過ごせている。

「あ、そういえばこないだのミスリル硬貨だが、換金できたぞ。150アンバーになったからお前、自分の装備買いに行くか?」

 装備か。剣は・・・・・・持ったら危ないけど、鎧とかはみてみたいな。

「じゃあ、昼の巡回のときに連れてってもらえるか?」

「おう、じゃあもうちょい訓練な」

 

 午後の巡回の途中で武器防具屋に連れてきてもらった俺はがっかりしていた。

「鎧って聞いたから、てっきり銀ピカのかっちょいい奴を想像したんだけどなあ」

 ボガードは苦笑していた。

「街の中は高い壁で日陰ができるからいいけどよ、外は砂漠なんだぜ?そんな鎧きてたらあっという間に火傷まみれだ」

 ああ、確かに。真夏の車のボンネットで目玉焼きできるのと同じか。死ぬわ。

「んー、隊長の紹介ですし少し奮発させていただきましょう」

 そう言って店主が出してくれたのは、胡麻塩みたいな白黒の模様のレザーアーマーだった。

「親父、いいもん売ってるな」

「ははは、これは砂龍のレザーアーマーですよ。当店で一番の防御力でございます」

「んー、ごめん。俺ちょっとそれ色が・・・・・・」

 相当いいものだったらしいが、どうもぱっとしない。

「なんと・・・・・・残念です」

「わがままな野郎だなあ」

 二人が俺を避難がましく見ているが、なんかしっくりこなかったんだよ!!

「あ、そっちがいい!」

「!!?」

 店主が驚いていた。

「お客様、これはとても売れたものでは・・・・・・」

 店主が嫌そうな顔をしている。

 黒い下地に青い装甲がついている鎧はライダースーツに似ていた。どうもごわごわした鎧然としたレザーアーマーよりこういったやつのほうが好みだ。

「お前、趣味悪いなあ・・・・・・」

「え、そうなの?」

 どうも店主の話では、これは別に呪われてるとかではなく、すさまじく人気の無い形の防具らしい。曰く外見が、曰く蒸し暑い、曰く値段も高い。どうやら在庫を処分できないのは仕入れ値がそれなりだったかららしい。

「いいよ、俺は気に入ったし」

 料金は50アンバーだった。確かに高い。さっそく着込む。やべえ、フィットする。

「うわあ・・・無駄に似合うなお前」

 ボガードが違和感丸出しの顔で、でも不思議とにあってるわと褒めてるんだかけなしてるんだかわからないことを言う。

「お客様、次回も何かありましたら贔屓にさせていただきます」

店主は内心ガッツポーズっぽい。よっぽど処分したかったんだろうな。

「あ、あとさガントレットとかって無い?」

「手甲でございますか?」

 店主が出した物は板金鎧のついた手袋がいくつかと、どうみても万力にしかみえない物体、宝石がはまった装飾のついた青いグローブだった。

「これらは普通の篭手ですな。で、このごっついのが必殺ドラゴンマッシャー。龍ですら握りつぶす攻撃が可能です。最後のグローブは、魔法の力で強度が上がるグローブですが、これをはめてると魔法は使えません」

 デザイン的にも、魔法が使えないこともあって俺は速攻で青いグローブを選んだ。装備した瞬間、全身を何かに覆われた感覚がする。

「お、暑くなくなった」

 どうやら体温調節機能とかもあるようだ。ライダースーツみたいなレザーアーマーは気に入ったが、暑いのは諦めようとしていたのでいい買い物だった。

「これ20アンバーか。いい買い物できたわ」

 俺はホクホク顔で店を出た。

「んー、デザインはともかく気に入ったなら良かったんじゃねえか?」

 ボガードはどうも納得していないようで、巡回する前にマントを買ってくれた。やべえ、これ最高にかっこいい。

「うん、これならいけるな。どうもあの鎧だけで歩いてると、パンツ一丁で歩かれてるような恥ずかしさがあるからそれを装備しててくれ」

 パン1並に恥ずかしいのかよ!?と、思いつつもありがとうと言っておく。

 

 午後の巡回を終えてシリウスのところへ勉強しに来たら、とんでもないことになっていた。

「シリウス!大丈夫か!?」

 シリウスの家のホールに3mくらいの穴が空いていた。

「あ、ネオ、ボガード様、私は大丈夫ですが穴を見てくださいまし」

 覗き込んでみると奥になんかゾンビっぽいのがいっぱいいた。

「いきなり崩落してこんな有様ですの」

「高さは10mくらいあるからいいけどさ、これゾンビだよね?」

「地下通路がこんなところまで来ていたのか?これは危険だな」

「どうにかなりませんこと?」

 とりあえずコンクリートでも流し込むか、ということになったのだが根本を解決しなければ、街のあちこちからアンデッドが出てくることになるだろう。

「これは、守備隊で地下通路攻略をしないといけなさそうだなあ」

「俺は?」

「ネオの攻撃力で地下で暴れたら最悪全員生き埋めだから絶対くるな」

「デスヨネー」

 ということで俺はしばらくお留守番となった。


シリウスとボガードという二人に会えて俺は幸運だったと思う。さすがの俺もいきなり異世界に放り出されて、一人でサバイバルできる自信はなかった。守備隊の連中や街の連中も、ボガードの紹介で仲良くなれた。こんな事件もすぐに解決して、楽しい毎日が続くものだと、俺は呑気に構えていたんだ。未来の俺がこのときの俺に会っていたら、きっと殴り殺していたことだろう。俺はこのかけがえの無い日常をただ過ごしてし


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