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召喚されしモノ

「離せクソ共!!」

 気がついたら俺は召喚されていた。

 回りはどうみても貴族や神官、王族ですといった雰囲気のいけ好かない連中ばかり。

「皆の者、一斉攻撃で葬るのじゃ!!」

 拘束術式で囚われた俺に光の魔法が連射される。熱い!が、耐えられる。

「今度は俺の番だ、くらえ!!」

 攻撃魔法でほころびが出た拘束術式から腕を貫通させ、ありったけの魔力を込めた紫の光弾を射出する。石室の壁に罅が入るが気にせず次弾を発射。室内にいた全員が粉々になるまで打ち続ける。防御結界で1発2発は意味がなかったようだが、次第に効果が衰え最終的には全員を粉砕することができた。拘束術式の残りを振り切り、俺は伸びをする。

「まったくふざけた奴らだ。何が勇者召喚だ、俺を誰だと思ってやがる!」


 石室から出てきた俺を騎士団らしき連中が歓迎してくれた。ので、全部ひき肉にした。

玉座を見つけ、そこに腰を下ろす。映像魔法を展開し、城の内部に魔物を設置。さっきのひき肉を原料に強力な魔族を錬成する。

「ふん、ここを俺の城に変えてくれる」

 こうしてセントハイム王国は人知れず滅びた。国の上層部がまるごと魔王に取って代わられたことを国民は誰ひとり知りはしなかった。



「ネオ様、文字は覚えられましたの?」

 シリウスから勉強を習い始めて一週間。とりあえず読み書きは覚えた。どうもこの世界の言葉は俺にテレパシーみたいな翻訳がかかってるらしい。文字自体は平仮名に似てるので普通に覚えられた。教わり始めてからわずか1週間にも関わらず、俺は賢さを50まで上げていた。どうも知能より知識量に比例するようだ。

「シリウスが教えるのうまいからもう大丈夫だと思う」

「まあ、お上手ね」

 二人で午後のお茶会よろしく、のんびりした雰囲気だ。こういうのも悪くない。

「あー、いい雰囲気を邪魔して悪いが、ネオ。こっちはダメだ」

 そう言って採点をしてくれていたボガードが計算問題のダメだしをしてきた。

「通貨単位は間違えてたら外なんていけないからちゃんと覚えろよ」

 買い物できないと困るし、俺はまじめにその話を聞く。

 1フォシルが大体パン一つ。100円てところか。100フォシルで1アンバー。これが1万くらい。だいたいこのあたりを覚えていれば今のところ問題ないはずなのだが、どうも桁を間違えがちだ。数学や算数は苦手だったなあと今更ながらに勉強しておくべきだったと後悔して思い出した。しなかったというかできなかったのだ。クソ親父め!!

 「どうでもいいが、最近になってから王都が不穏な動きを見せているという話があった。場合によっては俺も城へ行くことになるだろうから、ネオはなるべく早く勉強を終わらせろよ?」

 ボガードの表情はかなり真剣だった。ひょっとしたら王都の不穏な動きって重大なことなのかもしれない。

「ああ、そんときは俺もついていくぜ!」

「さすがに身元不明の正体不明人は城にはつれてけねえよ」

 ボガードが困りがちにそう答える。あ、考えてみれば俺って不審人物だもんな。

「ああ、悪い。それもそうだ」

 二人でこのやりとりに笑い出す。

「失礼します、隊長!アンデッドの群れが第4区画に突如出現しました!!」

 守備隊の人が走りこんできた。いつもは忍者みたいなのに、今は息を切らして伝令っぽさがよくわかる。

「何だと?あそこは誰も住んでない閉鎖区画じゃないか。ネクロマンサーでも居たのか?」

 ボガードに見当がつかないことがあるというのも珍しい。

 シリウスが遠見の魔法で壁に映像を映し出してくれる。

「これはひどいですわね・・・・・・守備隊の皆さんの人数で足りまして?」

 ざっと3,400体のゾンビがうごめいていた。グロイ!!

「今は入口で封鎖しておりますが、そこかしこで壁に攻撃を開始しているようです。破壊される前に対処できなければ少なからぬ被害が出るかと」

 伝令の人は真剣な眼差しでボガードの指示を待つ。

「よし、俺が行こう。守備隊は第5ブロック側から包囲し、殲滅を開始せよ。俺は中央管理区の連中と連携を取って第3区画から攻める」

「はっ!」

映像の中のゾンビは俺が知ってるゾンビよりはるかに強そうだった。なんというか、爪で引っ掻いた壁ががりがり削れてるのだ。かなり厚さはあるようだが、あんな攻撃をされ続けたらいずれは破壊されてしまうのだろう。

「俺どうすればいい?」

「ネオ、お前が来てもやることはないぞ?」

「だよねー」

 しかしシリウスは何か考え込んでる。

「シリウス?」

 俺が尋ねると決心したのか俺に

「ネオ、貴方も一緒に行ってきてくださいまし」

こう言ったのだった。



「シリウス様が言うからには何かあるのだろう。嫌な予感がするな」

 俺はボガードの馬にタンデムで乗せられて高速移動していた。ボガードの手綱裁きはどこぞの将軍様もびっくりだ。

「なあ、ボガード?アンデッドってやばいのか?俺のいたとこだと雑魚が多かったんだが」

 イメージ的な物を告げるとボガードは少し悩んだようだ。眉間にシワが寄っている。

「雑魚と言えば雑魚なんだが、あいつらは体が壊れても動くんだわ。で、そのエネルギー代謝の排泄として呪いをばらまくんだよ。土地が汚染されて地面は腐るわ、水も腐るわ、あげくの果てには空気まで腐る。だからさっさと倒すに限るな」

「へー、めんどくさいな」

「だろ?」

 色々聞いてるうちに風が臭くなってきた。

「なあ、これって?」

「ネオ、思ったより事態が深刻かもしれない。常駐していた中央管理騎士団が相当数死んでるぞ」

「ボガード殿!敵は本当にアンデッドなのですか?」

 並走してきた騎士団長のドラスが焦りを帯びた表情で聞いてくる。どうも騎士団の方が偉そうなイメージだったが、実はボガードの方が偉いらしい。砂漠の凶悪生物とやりあったり、人間屈指の実力者だったりと、ボガードの凄さを知っていればそれも当然か。

 第3ブロックに入った時点で死体が点在していた。民間人はいないようだが、騎士団の人と思われる死体はいたるところを損壊されていて、ほとんどが原型をとどめていない。

 この街の構造は壁と、部屋に分かれている。中枢の中央管理区は騎士団が、外周の経済区画、居住区画、外壁を守備隊がそれぞれ警備しているそうだが、第四区画は中央管理区画から僅かに2ブロックしか離れていない。当然中央管理騎士団も出張るのが当たり前の区画なわけで、本来ならこの当たりはもう騎士団が包囲してるはずだったらしい。

「ドラス、まだ敵の戦力は未知数だ。お前は騎士団でアンデッドが流出することを抑えてくれ。守備隊と俺らで殲滅する」

「なあ、守備隊の指示だしとかってお前がしなくていいの?」

「ああ、あいつらは一騎当千の猛者だからな。大体5人もいたら騎士団の20人と同じくらいの実力がある」

 守備隊強すぎるだろ。

「お恥ずかしいかぎりです。騎士団は警察組織のため、守備隊に比べると戦闘力では落ちるのは今後なんとかしていきたい課題ですね」

 日本で言うと警察と自衛隊くらいの戦力差があるのかもしれない。

 人手はいるかもしれないけど、警官をイランに派兵したら役に立たないだろう。ボガードがこっちにいるのはそのへんの指揮を取るためか。これは思ったよりまずい状況なんじゃないのか?


 俺が思案していると馬に衝撃が走る。すれ違いにボガードがアンデッドを一体斬ったらしい。

「全員気をつけろ!もうアンデッドがいるぞ!!」

ボガードは馬を止める。どうやら大通りにはアンデッドが待ち伏せしているようだった。通行止めと言わんばかりに溢れかえっている。

「騎士団は火炎魔法を用意!ドラス、突出した奴に集中砲火の指示を出して足止めしてくれ」

「分かりました。分隊長は3段階に分けて詠唱の指示、私の号令で打て!」

「さて、ネオ、お前はドラスの横にいろ。俺はちょっと数を減らしてくる」

 そう言ってボガードはダッシュした。まるで暴風のような勢いでアンデッドの群れを蹴散らす。というか文字通りアンデッド飛び散ってるし。アンデッドが吹っ飛んでいくのでボガードの位置は丸分かりだ。後方も同じような光景が見えるので守備隊がよくやっているのだろう。しかしそれでもこっちに近づいてくる奴らがいるのだが・・・・・・そいつらは炎の魔法で黒焦げになっていく。だいたい5分かそこらで、ボガードが戻ってくる。

「だいぶ斬ったが、ちょっと多いな」

 額から汗を流しているものの、怪我はなさそうだ。

「なあ、俺ちょっと攻撃してみていいか?」

「ん、じゃあ予備の剣を貸してやるからそこらへんの斬ってみろ」

 ボガードから日本刀をの反りを更にきつくしたような片手剣を借りる。けっこう重いが、よく斬れそうだった。ゾンビは、俺を見るなりさっき蹴散らされていた雑魚と思えない瞬発力で食らいついてきた。だが俺の方が速い!

「死ねぃ!!」

 横凪に斬ったつもりだったが盛大にすっぽ抜けた。やば。


ズドム!!


衝撃音が遅れてやってきた。

恐る恐る振り返ると、ゾンビは爆散。ついでに少し離れてたゾンビも肉の塊になっていた。

「お前、何やったんだ?」

 ボガードが目をまん丸にして聞いてくる。

「いや、すっぽぬけた」

 強さ999、まさかここまでのものとは・・・。

「ネオ、うっかりで味方が死ぬからお前は剣を持つな!!」

 うん、確かに後ろまで切ってたら騎士団全滅しかねないな・・・・・・。

 結局その後は守備隊と騎士団の連携で、一方的な大掃除でアンデッド軍団退治は終わったのだが・・・・・・。

「隊長!第4ブロックの地下通路が解放されていました」

「ご苦労」

 ボガードの表情は渋かった。

「地下通路ってどうなってんだ?」

「俺も知らない。というか誰も知らないはずだ」

 度々こんなことがあると想定したら、とんでもないことだ。

「何か、起きそうだな」

「ああ」

 地下通路は再び厳重に閉鎖の魔法で閉じられることとなった。


 余談だが、俺は翌日から力加減の授業も受けることになる。

 


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