種
穏やかな秋のある日、郊外の町に隕石が落ちた。
衝撃音と地響きが近隣の家々の窓を振動させ、空に現れた赤い光の筋は人々を驚かせた。隕石の落下地点の空き地では、地面に大きな穴が開き、集まった人々が覗くと、隕石本体が地中に埋もれていた。
警察が通報で現場に到着すると、やじ馬を整理し、規制線で周囲を囲んだ。騒ぎを知ったテレビ局の中継車が駆けつけ、現場から中継を始めた。
遅れて到着したのは、大学の科学者で、現場の写真を撮影し、穴を覗きこんで観察した。
褐色の隕石本体は、表面に大気との摩擦により焼けた跡があり、周囲はまだ熱をもっていた。
テレビ局の記者が、穴の横で科学者にインタビューした。
「これは、太陽系の中からの隕石でしょうか?」
科学者は応えて、
「太陽を周回する火星と木星の間にはアステロイドベルトという小惑星帯があります。恐らくそこから飛来したのだと思われます」
別の科学者は肩から下げた測定機で穴の周囲の放射線量を計測していた。幸い有害な放射線量は計測されなかった。
この出来事はしばらくニュースを賑わせ、ちょっとしたブームになった。隕石の穴を見るために連日大勢の人が押しかけ、付近の国道では渋滞が発生した。町の議会では、隕石をテーマに町おこしをしては、という提案も飛び出した。
地元の大学から訪れた調査チームは、隕石表面を削って分析用のサンプルを採取しようと試みたが、表面の硬度が器具をうけつけず、調査は中断した。
掘削して全体を取り出そうという意見もでたが、予算の負担が計画を断念させた。
それから二週間ほど経った。
明け方に穴の周囲の住宅で地響きがあり、就寝中の住民たちを驚かせた。人々が穴に駆けつけると、穴から太い柱のようなものが、ゆっくりと現れ、まだ薄暗い空に向かって伸びていた。
見ていた一人が言った。
「ありゃ、樹の幹か?!」
その言葉のとおり、穴から天に向かって、ぐんぐんと、それが伸びていく様子は樹木そのものだった。しばらくすると、今度は穴の周囲の土が割れて、樹木の根のような形状のものが地面を這った。
やがて、あたりが明るくなると、新聞社のヘリコプターが穴から上空に伸びた未知の植物のようなものを確認した。
巨大な幹は雲を突き抜ける勢いだった。
ヘリコプターのパイロットは、おや?と思った。その幹をつたわって何かが動いているのだ。
・・・一つ目の巨人は器用に手足を使うと、高空から地上を目指して、そろそろと幹を降りていった。
地上には、うまい獲物が期待できそうだ。大きな身体を揺らしながら、巨人は上機嫌で地上を目指して幹を降りていった。
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