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オイラは旅人

この作品はフィクションです・・・ちょっと過激な表現もございますが昔のノリで書いているのでご勘弁ください・・・


鉄環鉄鐺で固めた黒呂塗りの小柄付きの鞘、重たい鉄鍔に小判を撃ち抜いて作った切羽。

刀の銘は「武州江戸神田住金常」1尺8寸の長ドスでその刃は重ね極厚くよく寝刃が立っている完全なる武用刀である。

遠い異国の空の下、母国日本から遠く離れて頼りはこの長ドス一本で男は各地を渡り歩いていく

男の名は丈八、愛称をジョーという、浪人髷に無精ひげした意外といい男で粋でイナセで情に厚い江戸っ子である。

帰りたいのに帰れない数奇な運命が丈八を翻弄してどんどん故郷が遠ざかっていく

丈八が日本に帰れるこができるのはいつの日になるだろうか・・・

 これはそう遠くもない昔、とても数奇な運命を辿ったとある渡世人の話である・・・

昔々の空の下、ここはアメリカ西部の荒野のどこか・・・タンブルウィードが転がって、サボテンが咲いていて、やけに砂っぽい如何にも西部劇といったような場所だ。

そんな所を三度笠に道中合羽、手甲脚絆に腰に長脇差ながドス・・・なんて場違いな人間がいるのかしら?と言いたくるなるような”ヤツ”が歩いている・・・


「ふぇぇ~~・・・いやぁたまんねぇなぁ・・・どうしたもんかねぇ、お天道様よぅ!」


この男、自称「神田の丈八」愛称を”ジョー”という、一本独鈷のチャキチャキの江戸っ子渡世人である。

ずいぶん前のことになるが、安房国で船旅を愉しんでいたところ突然天変地異の如き竜巻に飲み込まれ、船はバラバラ、船頭も客も散り散りになり丈八が気がついた時には外国船の船の上であった。

 その外国船は幸い商船で、旅装束一式と腰の「金常」の長脇差を抱きしめたまま気絶して海に浮いていた丈八を助けてくれた船員たちとその後長い航海を共にして、時には海賊と戦い、時にはロマンスもあり・・・いつしか言葉もペラペーラになってしまったが、どういう訳だか日本に帰れず現在アメリカ西部を彷徨ってるという次第である。

 照りつける西部の強烈にギラギラした眩しすぎな太陽が三度笠を焼いている、日本じゃ味わったことない暑さだがそこは旅のプロの渡世人なので割と慣れたものではあるが暑いものは暑いのだ。

丈八は日本じゃ聞いたことも無かったが西部には「サルーン」てぇ物がござっしゃる、つまり・・・洋式の居酒屋である、そこで飲む「びぃる」てのがまた美味い、井戸水で冷やしたのをこう暑いときにキューーーーッっとやると

「っかぁぁぁ~~~~たまんねぇなヨォ!」

なんてしょうもない妄想をしている場合ではない、早いところ次の街に着かないと干上がってしまう・・・革の水筒はもう空っぽっぽっのポ、振ってもなにもでやしない。

周りをぐるりと見渡しても陽炎の先に地平線が見えるだけ、喉の渇きと疲れで足は鉛のように重い・・・どっちに行けばいいのだろうかと思案していると馬の駆ける音がした

しめた!と思ったのもつかの間、よぅく遠くを眺めてみると・・・アパッチ(インディアン)である

「参ったねどうも・・・」

周りに隠れる岩陰もない、相手はもうそこまで来ている、相手は馬に乗ったインディアンが3人、血の気の多い若者だろう、得物はライフルが二丁、あとは弓矢・・・きたっ!!!

 丈八は転がるように横っ飛びになった、先程まで丈八が立っていたところには弓矢が刺さっていた・・・これは狩りだ、連中はこの奇妙なる人物である俺を的にかけている、嬲り殺しにするつもりだろう。

馬がこちらに駆けてくる、ドドドドド・・・と砂煙をあげてもう間近に迫っている、戦闘に見える馬にまたがったインディアンがレバーアクションライフルを構えて丈八に狙いをつける、「パァン!!!」という破裂音がしたかしないかの瞬間丈八はまたも横っ飛びになったが腰の角帯からぶら下げた煙草入れ付きの特注ホルスターから「コルトシングルアクションアーミー」を抜き撃ちあっという間の2連射で二人をあの世に送った。

生き残った1人はまさかの出来事に尻尾を巻いて一目散に逃げていく、丈八は暑さと疲れでヘロヘロになりながらも薄笑いを浮かべながら銃口をフッ!と吹いて


「へっ!おととい来やがれべらぼうめぃ!!!」


と啖呵を切ってホルスターにビシッと銃を収めるまでが丈八なりの渡世人の美学である。

丈八が傍らに目をやると手綱を話した死体がぶら下がったまま馬が立ち止まっていた、これは天からの授かりものだろうと思って馬を拝借した丈八は日の落ちる方角へ歩いていった。


西部の日が沈む・・・真っ赤でおっきい日がゆらゆらと揺らめきながら沈んでいく


(嗚呼・・・なんてぇ綺麗なんだろう)


旅は危険で辛いことも悲しいこともある、でも・・・良いこともある、良いことがあれば旅を続ける甲斐もあるってもんだ、日本に帰りたいのは勿論だが俺は旅人である。

次の街がようやく見えてきた、今はただこのどうしょうもない状況をなんとかしたい・・・


「まずは一杯いきてぇな・・・」

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