2/4
音だけが残った部屋
録音ブースの中で、ヘッドフォンを着けた。調整室からの合図と共に、ドラムカウントを開始。マルチブースの中で、キーボード、ギター、ベースが各々に音を奏で始める。明の喉さえ良ければ、ワンテイクで収録は終わる筈だ。
――今日まで、一年半待ったんだ。
作詞作曲は明に全て任せる形で、バンドを始めた。それから五年ずっと走り続けたが、フロントマンの明が倒れた。声帯手術を受けた後から、心身の調子を狂わせたせいだった。新しいアルバムの収録直前の出来事だった。
解散の二文字がメンバー全員の脳裏に過ったものの、俺も仲間も、音楽意外で生活をたてる術を持ってない。
貯金を崩しながら生活したが、ドラムスティックを持たない日はなかった。デモ音源に合わせて、何度も練習した。これは、文字通りバンド再生の序曲だ。
俺の刻むリズムが強い背骨となり、明の声を支えながら、サビに突入した。
――ああ、この瞬間の為に俺は産まれたのかもしれない。




