客船ヒマワリ出航!
広大な碧海が朝日に照らされ、辺りを鮮やかに彩る。いつもなら憎い照りつけるような強い日差しさえ、今は魅力的に感じた。
「___本船ヒマワリ号は、まもなく港町リリーに向け、港町サルビアを出港いたします。」
注意事項を終え、出航のアナウンスが鳴る。乗客皆が海の美しさに感動したり、仲間たちとの会談を楽しんでいる中____……
「………頭がぐわんぐわんする………」
勇者グレースは早々に酔っていた。
生まれは森の中の小さな村、育ちは王都。
船なんか乗ったことなかったから、油断してたなあ……!
帆にヒマワリの紋章が描かれた、真っ白な船体。 まるで城のようにも見えるこの大きな船には、旅人から冒険者__私の育ちでもある王都が近いからか、貴族まで乗っているらしい。
……変に動いてご令嬢のドレスなんかに吐いたら、それこそ死ぬのでは……?
いや、そんなことを考えている場合じゃない。
今はなんとなくカッコつけて海側を向いて船の塀にもたれているが……かなり限界が近づいている。
このまま海に吐けと?仮にも17歳の少女なのに?
「____おい、大丈夫か……?」
急に声を掛けられ振り返ると、声の主は……
「あっ、昨日のおにぎり戦士!」
「なんだその変な呼び方は」
黒い軽鎧に、明るい橙の瞳、右目の傷。あと筋肉!間違いない。
「同じ船だったなんて、奇遇だね〜。君もリリーに行くのかい?」
「……無理して喋らなくて良い。」
「……分かってたのかよ」
彼は続けて酔い止めの薬を出したり、「落ち着いて息を吸え」「トイレに行くなら案内しよう」などと気を遣ってくれる。
昨日のことも含めて、本当良い奴なんだろうなあ……とは思うが、他人にこうして気を遣われるとなんだか気が狂う。
「ありがとう……」
そう一言伝え、薬を飲み込んだ。