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北の森の魔女 第2シーズン  作者: 鉄猫


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炎の悪魔

「さて、はじめようか」

 魔女がそう宣言する。シールドガーディアンの眼に赤い光が宿る。両腕があがり、首がぐるりと1回転した。

 ボルトとレンチの二人は、シールドガーディアンが起動する前に、その隊列の裏に出ていた。脳啜り(ブレイット)を攻撃するためだった。M4とMk48の銃口が上がる。

「撃てっ!」

 銃声が響く。薬莢が床で跳ねる。ナイグロッドは両手に魔法の盾を展開し、その弾を防ぐ。しかし、何発かはそれをすり抜け、脳啜りの身体に当たる。

「シールドガーディアンをすべて倒さねば、余の身体に傷はつかぬぞ」

「それは知ってるさ」

 ボルトは弾倉を取り換え、銃撃を続けた。

 シールドガーディアンたちが動き出す。2体が振り返り、ボルトたちに向かおうとしていた。

「そうはさせるかっ!」

 ラチェットが跳んだ。シールドガーディアンの頭上を飛び越し、その前に着地する。大剣とハンマーがシールドガーディアンを襲う。

 ナットがポケットに手を突っ込み、ある物を取り出した。城の外壁にある小塔を模した小さな駒だった。ナットはそれを床に置き、短い合言葉を口にした。

 次の瞬間。白い光と共に床から1基のターレット(小塔)が出現した。入口を開けている鉄色に光るそのターレットにナットは入ると、跳ね橋を上げた。そして屋上に出ると、ジャベリン(FGM-148)を構えてシールドガーディアンに向かって、対戦車ミサイルを放った。

 爆煙があがり、シールドガーディアンがガクリと膝を落とす。もう1体が、ターレットに殴り掛かるが、ターレットはびくともしなかった。

 2体が魔女の方に向かう。だが、その前にリベットが立ちふさがった。前肢の爪を開き、姿勢を低くすると、威嚇音を立てながら突進した。タックルを受けた1体が転び、もう1体にリベットの爪が突き立つ。

 ジャベリンの立て続けの攻撃を受けたシールドガーディアンが、煙を吹きながら前のめりに倒れた。ナットはそれにとどめの一撃を加える。魔法のターレットに攻撃を続けるガーディアンだったが、ターレットはその連撃を防いでいる。

 ラチェットの一撃がシールドガーディアンの首を飛ばす。視界を奪われたガーディアンは、無くなった頭を探すように腕を左右に振っている。そこにハンマーが命中し、壁まで吹っ飛ばされる。

「どうだい? 圧倒的じゃないかね」

 魔女はM14を肩に載せ、銃弾を防ぎ続けているナイグロッドに言った。ナイグロッドは余裕があるとばかりに、片手でシールドを張り、魔女の方を向いて見せた。

「これは前菜にすぎない。おまえたちは自分の力を過信しすぎているぞ」

「その言葉、そっくりそのまま、あんたにお返しするさね」

 魔女は煙草を上下させた。ナイグロッドの触手が怒りを抑えようとわなわなと動く。

 ナイグロッドが本棚の方を向く。そして、1冊の古びた魔導書を、怒りに身を震わせながら勢いよく引き抜いた。触手を這わせてページをめくり、目的のページを探り当てる。

 呪文の声が高らかに響いた。

「させるかよ!」

 ボルトが手榴弾を放り投げる。手榴弾は脳啜りの手前の空間で爆発する。

「くそっ、魔法の盾か」

「ボルト! あぶない!」

 レンチの声に振り向くと、首の無いシールドガーディアンが殴りかかってきていた。ボルトはポケットに手を突っ込み、キューブを起動させる。

 がつんっという音が響き、ガーディアンの拳が宙で止まる。ボルトは大きく息を吐いた。間違えたスイッチを押していたら、頭を潰されていただろう。ガーディアンは2発3発と拳をフォースシールドにぶつけてくる。

「まかせて!」

 レンチがハンドアックスを抜き、そのまま下からガーディアンの脇めがけて振り上げた。前のレンチなら無謀な攻撃であったが、今のレンチには魔法のアイテムにより巨人の力が宿っている。ハンドアックスはガーディアンの腕の付け根にめり込み、変な角度でひん曲がった。しかし、レンチはそのまま力を入れ続けた。遂に総チタン製のハンドアックスがぐにゃりと曲がり、ガーディアンの腕が転がり落ちた。

「すげぇ……怒らせるのはやめよう……」

「何か言った?」

「別に」

「それなら、よかった」

 レンチは左手をシールドガーディアンの腹に当てると、ふっと前に押し出した。巨人のパワーで押されたシールドガーディアンが、おもちゃのように反対側の壁まで吹っ飛んだ。そして壁に激突し動きを止めた。

 2体のシールドガーディアンが沈黙した。しかし、まだ4体が残っている。このすべてを破壊しなければ、ナイグロッド本体に損傷を与えることはできないのだ。

 ナットは最後のミサイルコンテナを装填すると、ジャベリンを構えた。それを見たシールドガーディアンが顔を上げる。シーカーがロックされ、ミサイルが発射される。ガーディアンは腕を突き出し、それを受けた。爆煙が引くと、片腕を失ったガーディアンの姿があった。ナットは撃ち殻を放り投げると、ハバーサックからAT-4を引き抜き、すぱんっと撃った。弾頭が爆発したが、ダメージは少しだったようで、ガーディアンは嘲笑うかのように顔を上げた。ナットは肩をすくめると、もう1本のAT-4をサックから引っ張り出し、また発射した。撃ち殻を捨て、また1本取り出す。

 ナイグロッドの呪文が完成した。ボルトとレンチの目の前の床に、おどろおどろしい文字で描かれた魔法陣が現れる。魔法陣は赤い光を発し、硫黄の匂いが噴き出してくる。

「さあ、来い。そして、この者たちを殺せ!」

 魔法陣から炎が吹きあがった。ボルトはシールドを展開してそれを防ぐ。炎は形を変え、徐々に人型をとりはじめた。

「行け! バロール! 地獄の将軍よ!」

 ナイグロッドが勝ち誇った声で叫ぶ。赤く燃える肌。猛る熊のような顔の左右に生えるねじ曲がった角。両手に剣と鞭を携えたデーモンは、大きく吠えた。

「ボルト! レンチ! そいつにかまうな。わたしが殺る!」

 魔女はナットのターレットの脇を抜け、ガーディアンの攻撃を前転してかわして、今にもボルトたちに襲い掛かろうとしていたバロールの脇腹を至近距離からM14で撃った。脇腹を撃たれたバロールは振り向き、魔女の方を向く。

「おまえの相手は、このわたしだ」

 M14を構え、バロールに向き合う。バロールは威嚇の咆哮をあげる。心が弱い者が聞いたら逃げ出してしまうような、地獄の底から聞こえてくるような叫びだった。

 魔女は撃った。銃弾がバロールの左眼を貫通する。しかし、このデーモンはそれを意に介していないようだった。剣を振るい、魔女を両断しようする。魔女は転がり、距離を取る。

『メム!』

 シールドガーディアンを大剣とハンマーの連撃で打倒したラチェットが、魔女の方を向く。

「こっちは大丈夫だ。ラチェットはリベットを援護しろ」

『i,copy』

 ラチェットは動甲冑をひるがえし、2体のシールドガーディアンと戦っているリベットの方に向かった。

 バロールは威嚇の咆哮を続けていた。その周りに石炭の燃えカスのような粉塵が舞う。魔女は何かを悟って、低い姿勢のまま立ち止まった。バロールの周りに飛んだ粉塵が爆発する。爆風が放射状に飛んだ。魔女は顔を両腕で覆い、大事な眼鏡を守る。それが無ければ、超人的な狙撃の技が使えないのだ。

「やるじゃないか」

 灰を振り払い、魔女はニヤリと笑った。バロールの背後では、ボルトとレンチがナイグラッドへの攻撃を再開している。ナットは1体のシールドガーディアンと交戦中。ラチェットとリベットは2体と戦っている。

 バロールが剣を振るう。魔女はそれをM14でいなす。連続した剣撃と鞭が飛ぶ。魔女はそれを銃で受け、流し、ダンスを踊るようなステップを踏んで華麗にかわす。剣が当たらないことに、バロールはいらだち、首を振る。

「さて、と」

 魔女はM14をザックの中に放り込むと、返す手でM200狙撃銃を引き抜いた。

「こいつはどうかね?」

 魔女はバロールに向けて銃口をあげ、無造作にぶっ放した。M14とは比べ物にならないほどの威力を持つ弾頭が、バロールの胸にめり込む。

「ん?」

 魔女は違和感を感じた。ドラゴンの鱗も貫通する弾頭が、バロールの皮膚には思ったほどめり込まないのだ。

「ちっ」

 思わず毒づいた。あまり数はいないが、この世界には魔法の武器ではないと有効打を与えられない存在がいるのだ。このデーモンもその一つであろう。

 そんな魔女の落胆を感じたのか、バロールが剣と鞭の左右の連打を浴びせてきた。魔女はそれを寸での所でかわす。髪の先が炎に当たり、ちりっと音をたてる。

『メム! 弾倉を一つ、投げてください』

 耳にリベットの声が聞こえてきた。何か考えがあるのだろうと、魔女は素早く決断し、ザックの中からM200の弾倉を取り出し、リベットの方に向けて投げた。リベットはそれを空中で受け取ると、くるりと回って着地した。

『ラチェット、360秒時間を作ってください』

「なんだって?」

『時間を稼いで』

「了解!」

 ラチェットはハンマーを1体に叩き込み、もう1体に大剣を打ち込んだ。曲芸師が操る球のように、剣とハンマーが交互にシールドガーディアンを連打する。

 リベットは弾倉を手にすると、そこから6発の銃弾を抜き出した。そしてプレキャリにつけたポウチから、銀色の液体が入った小さなビンを取り出した。そして、その液体を弾頭に、爪を器用に使って塗っていく。

 バロールの攻撃をかわしながら、魔女はバロールに向かって銃弾を放ち続けていた。弾頭はあいかわらず致命傷にはならず、バロールは両手の武器と、粉塵爆発で攻撃してきた。魔女は徐々に壁際まで押し込まれていた。

 ついにバロールの息が感じられる距離まで詰め寄られる。火をつけていなかった煙草の先がオレンジ色に変わる。

「火をありがとうよ。これで一服できる」

 魔女は不敵に笑い、紫煙をバロールに吹きかけた。バロールは匂いが嫌なようで顔を歪ませる。

「メムがやばい! リベット、何をしてるんだよ」

『もうじき終わります』

 液体を塗り終わったリベットは、弾倉に銃弾を入れなおすと、高々と頭上に差し上げた。

『いきますよ。メム』

 リベットの手から弾倉が飛んだ。

 部屋にいた皆が、それを見、その行方を眼で追った。弾倉はゆっくりと回りながら飛び、魔女の右手がそれを受け止めた。


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