友だち
ドンッ
鈍い音が鳴り響く…
「生きてる…?」
木に登っていたあいつは地面に落ちていた。
「いや~、良かったよ〜間に合って」
「お…お前ッ!」
「誤解は後で解く。それよりもあいつだ」
「ガジャァァァァン!!」
キューーーーーー…
「危ない…よけ」
俺が呼びかける間もなく不審者は銃を抜いた。
ドンッ
「ギャーーーンッ!!」
「よっしゃぁ!!クリーンヒット」
発射された銃弾はあいつの銃口のど真ん中に入って射撃機関をぶち壊しちまった。
「すげぇー」
「だろ〜」
俺に褒められてかニヤついてる。
「ニヤついてる所すまないが、おっさん…あいつ逃げちゃった…よ?」
「………」
「君が無事で良かったよ」
無視しやがった。
「俺は君たちの味方だよ。……だが、少しめんどくさい事になってしまってね〜……まず、色々知りたいことがあるだろう」
「さっきの奴の事も…明星の事も…?(あれ?明星がいない)」
「秋野〜助けてくれ〜」
俺が投げたおかげで頭から土に突っ込んでいた…
「すまん…ゔッ!」
「あ~あっ。無理するんじゃない。俺が2人とも連れ帰るから」
「あり…が……と……」
地面にぶっ倒れた後の事はよく知らない。
「中々根性あるな。この坊や」
いつも通りの朝…目を覚ますと明星が横にいた
「秋野!大丈夫か?」
「明星……」
「起きたか…君の家が開いていたから勝手に入らせてもらったよ」
俺たちの事を助けてくれたおっさんだ。
「さっきはありがとうございました…色々と勘違いしてしまってすみません」
「良いんだ。あんな事言われたら怪しむよね〜。だが、あのババァ中々強かったからびっくりしちゃったよ〜。君の悲鳴が聞こえてる間に逃げることができて幸いだった」
この人が悪い人では無いと安心した瞬間に緊張がとけ、もう一つの疑問であったあいつの事が思い浮かんだ……
「あいつは何なんですか?」
「あいつはMPAだ」
「MPA?」
「MPAとはMechanical Plants and Animals…訳すと機械動植物だ」
「でも、何故エゾオオカミなんだ……」
「エゾオオカミを知っているのか!今どき日本にオオカミがいたことを知らない若者もいるのにな〜」
「そもそもMPAの存在意義はそこにあるんだ」
「絶滅しているから……」
「御名答。MPAは生態系の修復のために創られたんだ」
今まで頭の中でモヤモヤしていたものが一気に解消された。エゾシカを襲う行動も威嚇されて怯えていた事も。
「生態系の修復って……そんな事聞いたことが無い」
「MPAの存在自体まだ表に公表されていないんだ」
「今はテスト段階っていうことか」
「何でよりにもよって北海道にしたんだよ」
「実は北海道だけじゃないんだ」
「日本全体でやってんのか?」
「MPAの実用化テストは世界中で行われてるんだよ」
「世界中で?!」
「生態系の崩壊…絶滅種や絶滅危惧種等による影響を解決する事ができる画期的な計画だからね〜ほとんどの国が参加しているんだよ」
あんな化け物が世界中にいるってのかよ…絶滅した動物を蘇らせる…なんて業が深いんだ。
「……そんな事知ってるなんて、おっさんは何者なんだよ」
「私はProject:MPA日本支部の副部長の竹内玄信だ」
「副部長って、偉い人だったんだ」
「最古参だからだよ」
(こんなに偉い人が明星に何のようなんだ?)
「…玄信は私の事をどのくらい知っているんだ?」
明星の質問におっさんはいまいちな表情だった。
「俺は君の事をあまり知らないんだ…」
「だが、1つだけ確かな事は君が日本を救うことができるかもしれないんだ」
「私が?」
「……今日はもう遅い。また、明日話せるかい?」
「秋野。良いかい?」
「もちろんだ」
「ありがとうね」
「それじゃぁ、じゃあね〜」
疲れのおかげか人生で一番の快眠だった。
この時は明星の記憶が戻れば良いぐらいにしか思っていなかった…この選択が俺を壊すまでは。
明星は一体何者なのか?!
次回…「N:2」




