第一章 私の話を聞いてください
父は隠し事が上手く母は思ったことを口に出す性格だ。
妹は生意気で弟は何も知らない。
そう、何にも。
かくいう私は、、、ーーーーー。
私の話を聞いて欲しい。
5月21日。
その日は雲ひとつない青空に雨の匂いがする日だった。綺麗すぎる青空に嫌気がさしたのを覚えている。
「今週1週間は雨が降り続く予報となっていて傘が手放せないお天気となりそうです」
どこかの天気予報士がそんなこと言ってたと思うんだけど。
ふと時計を見ると7時40分だった。
学校までは15分でいつも流れるCMが終わるタイミングで家を出ると信号に引っ掛からなくて済む。
自転車の鍵を持っていつものCMが終わっていつも通り家を出た
はずだった。
なぜか今日は全ての信号に引っかかった。
「今日運勢最下位かも、、。」
でも、心のどこかで何かが起こるんじゃないかと期待している自分がいた。
こんなことが前にもあったのを思い出した。
私の中学生時代は少し変わっていた。
勉強はまあまあで部活に打ち込む日々だった。
地区で結果が出せればいいよねなんて部員と話す程度だった。私の学校は地区では一位だったが県大会になると準決勝で負けてしまう。そんなチームだった。
それがライバル校が人数が足りず出場できずあれよあれよと全国大会出場まで決まった。
まさか自分が全国大会に出るなんて思ってもみなかった。
でも、全国の切符が決まる試合でも今日みたいな何かが起こる予感がした。
高校受験も倍率が4倍近くある偏差値62の高校にダメ元で受験した。
ダメ元だったのはそれまで模試で学科の合格圏内に入ったことがなかったからだ。
塾ではトップの成績だったのに‥。
これは人生で初めて挫折するんじゃないかと思った。内心すごく不安だった。
合格通知を受け取る時も薄い紙一枚だったから
あ、不合格だ
そう思ったが薄っぺらい紙に合格と書かれておりあとなんか印鑑が押してあった気がするが、なんか冷たいなぁと思ったのを覚えている。
そんな私の中の特大イベントの時は決まって変な予感がしたし、運勢はとてつもなく悪かった。
だから今日も何か起こる気がした。
「陽愛おはよー、遅いじゃん!ねぇ聞いてー今日さ、地理小テストだって!!信じらんないんだけど?!」
朝から変わらない優衣の声にがっかりした。
何もないじゃん。てか小テストやばい
一日中ドタバタしてやっと終礼のチャイムが鳴った。
「今日も部活ー?」
「そそ、優衣はー?」
「今日はオフだから、じゃ帰っとくねー」
「わかった、バイバイ」
「うん、バイバイ」
私は今日も部活、
水曜と日曜は休みで週4にするから入るって言ったのに顧問はなぜか期待していて気づけば週に5回6回の時もある。
ありえない。
でも部活をしていると集中できて嫌なことが忘れられる。気がする。
家へ帰るとあの人たちがいるからだ。
大嫌いなあの人達が
憂鬱な気分で家へ帰る。
いつものことだが
帰路の途中に長い長い坂がある。
そこで私は家での私へとモードを変える。
家ではなるべく誰の怒りにも触れずある程度の会話をして部屋で勉強をする。
家族に気を使うことがストレスで堪らないがそうでもしないとこの家は崩壊する。
うちは普通ではないのである。