表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

推しと共に、虐められて死にました。


———これは数週間前のことだった。



「うわっ!」


 俺は地面に頭を強く打った。

 くらくらとよろけながらも、必死に落とした小さなキーホルダーを手に取った。


「…ふぅ、よかった。傷ついてない…」


 大切そうに手に取ったキーホルダーには、()()が刻まれていた。

 しかし、そのキーホルダーをすぐに誰かが奪い、握った。


「あっ…」

「よそ見するんじゃねぇよ!!」


 俺の足を強く踏み込み、頭を殴る。

 殴られた自分の頭から、血が流れ出る。

 ズキズキと痛みが広がっていく。


「…返して、それ」

「それって、このちんけなキーホルダーのことか?」


 あいつがキーホルダーを汚らしい手でベタベタと触る。

 あぁ、可哀想な俺の推し。あんな奴に汚されて…

 俺は痛い頭を押さえて立ち上がり、あいつに向かって一言言い放った。


「俺の大切なものなんだ!!!」


 奴は「は?」という顔を俺に向ける。

 キーホルダー、たかがキーホルダーだ。

 だけど、俺にとっては大切なオタ活グッズのひとつだった。


 こんなことになった経緯を今更説明しよう。

 俺は天野 星。15歳。

 毎日推しに金を貢ぎ、オタ活に励んできた。

 しかし、オタ活に励みすぎて「キモい」と思われたのだろうか…

 虐められるようになってしまったのだ。

 大切な推しは踏み潰され、割られ、投げ飛ばされ…

 本当にコイツらが憎い。

 俺の推しをこんな目に遭わせるだなんて…


「…お前らっ、俺の推しをこんな目に遭わせておいて…ッ」


 俺は我慢できずに癇癪(かんしゃく)を起こし、手を握りしめて、推しのとあるセリフを叫んだ。


「『腕一本でも置いて行け』!!!」




 ____勿論、殴り合いで相手に勝てるわけがなかった。

 でも、推しのセリフのおかげか、少し力が湧き上がっていた気がした。

 どんどん意識が遠のいていく。

 俺は…推しと共に死ねるなんて、幸せ者だな。

 でも、このまま死ぬのは嫌だ。

 死ぬのなら…



 あのゲームに転生したい。



「…ゆるさ……ない…ぞ……」

 その想いと言葉と共に、俺はこの世を去った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ