第1話 成瀬家
私の名前は成瀬 紬。
シングルマザー成瀬 絵里の娘。
お母さんは身内に子供の父親が誰なのか最後まで言わなかったらしい。
だから、私はお父さんの名前を知らない。
お母さんは私を16歳の時に出産した。
※成瀬 絵里 16歳
※成瀬 紬 3ヶ月
私が4歳の頃にお母さんは病気でこの世を去った。
お母さんは13歳から15歳までT.Kアカデミーで歌手を目指していたらしい。
私のためにお母さんは夢を諦めたんだと思う。
でも、お母さんには5つ年下の妹がいて、夢を叶えてくれた。
お母さんの妹、私の叔母は、今や知らない人はいない
アーティストでもあり、タレントのSAE(成瀬 紗絵)。
叔母だけど、私は小さい頃から、紗絵ちゃんって呼んでた。
お母さんが亡くなったあと、私はおじいちゃんに引き取られ、おじいちゃんにおばあちゃん、そして紗絵ちゃんと私は暮らし始めた。
紗絵ちゃんは一緒に暮らし始めた頃は、まだT.Kアカデミースクール生。
レッスンが忙しく、毎日帰りは遅くて、疲れていそうだった。
それでも毎日私の相手をしてくれていた。
姉妹なだけあって紗絵ちゃんは容姿や仕草がお母さんに似ていたためか、私は紗絵ちゃんにお母さんを重ね、よく甘えては思い出し、泣くこともあった。
お母さんは昔から美人で自分よりもいつもモテていたと紗絵ちゃんからよく聞かされたが、紗絵ちゃんは日に日に美しさは増しているように私には見えていた。
そんな二人とは同じ遺伝子を持つようには見えない私…
1年後、私が5歳の頃に紗絵ちゃんは美少女コンテストで準グランプリを受賞し芸能界デビューが決まった。
※成瀬 紗絵 16歳
美少女コンテスト準グランプリ
だが、デビューしてすぐに売れっ子とはいかないのが、芸能界の厳しさ、難しさなのだろう。
デビューしてからすぐはセリフが一言しかないような役。テレビの隅っこに映っていることや、オーディションを受けても落選なんてこともあった。
※成瀬 健一45歳
不動産会社 常務取締役
絵里と紗絵の父親、紬の祖父
※成瀬 亜希子44歳
専業主婦
絵里と紗絵の母親、紬の祖母
※成瀬 紗絵 17歳
大手飲料メーカーCM イメージガール
紗絵ちゃんはなんとかCM上の契約を1件取り付けることが出来た。
紗絵ちゃんを一躍売れっ子に押し上げたのは、17歳の頃に主演に抜擢された映画 名探偵 島 律子〜連続爆破事件編〜
この作品が大ヒットし、紗絵ちゃんは一気にスターへの階段を駆け上がった。
※成瀬 紗絵 17歳
映画 名探偵 島 律子〜連続爆破事件編〜
島 律子役 (主演)
舞台あいさつと映画に招待された、祖父、祖母、私は3人で見に行った。
紗絵ちゃんは凄くキラキラして輝いていた。
祖父や祖母も活躍する紗絵ちゃんを見て凄く喜んでいた。
来年、紗絵ちゃんはグループでの歌手デビューも決まっている。
私にとっては祖父や祖母だが二人とも、40代で見た目も若く、おじいちゃんやおばあちゃんと呼びづらかった。
祖父に祖母そして紗絵ちゃんは私を本当に大事にしてくれた。
私が7歳の頃、紗絵ちゃんは高校を卒業。
仕事も多忙な為、神奈川から通うのがきつくなり、東京に一人暮らしをすることになった。
※成瀬 紬 7歳
正直、紗絵ちゃんと離れるのは寂しかったが、紗絵ちゃんが旅立つ日、私にスマホを買ってくれていて、離れていても、いつでも連絡が取れるようにと渡してくれた。
私はその日から夢中でスマホの使い方をマスターし、紗絵ちゃんにたくさんラインした。
今思えば、多忙な紗絵ちゃんには迷惑だったかもしれないが、紗絵ちゃんは必ず返事をくれた。