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攻略レベル35「欲の魔女」lll

「———なら今しかない!そうですね!?」


 ———戻ってきた‥‥のか?


 死に戻ったことは覚えてる。だが肝心な死因が記憶に残っていない。死に戻りの権能ってのもそこまで便利な力じゃないのか?


「あの‥‥桐谷君?」


—————


————


——


 その後、俺は生徒会役員に連れて行かれるがまま体育館にて行われるパーティ会場に向かった。

 会場に着くなり俺は生徒会役員の人に頼んで男子トイレは駆け込んだ。この不可解な現象を解明するために。


 訪れたのは人生2度目の闇の世界。


「死神!!死神はいるか!!」


 見覚えのある赤い玉座に、派手な王広間。再びここに来るとは思わなかったな。


「あらハデス。よくもまぁこの聖域にズカズカと土足で踏み込んできたわね。いい加減に死になさい」


「‥‥‥おぉ」


「なに?そんなに熱い眼差しで見つめられても私の忠誠はあの方に預けているの。残念だけど失恋ね」


「告ってもねぇのに振るのやめろ!でもまぁ、お前と会うと実家に帰ってきた安心感を覚えるよ」


 目を細めて首を傾げるルナを前に、俺はドカッと赤い床に尻をつけた。


「それで?あの野郎はどこに行ったんだ?」


 あたりを見渡すも死神の姿は見当たらない。あれだけ仰々しい姿をしていたら嫌でも目につくというのに。


「野郎、ではなく死神様と言いなさい。全く‥‥貴方も含めて現実世界の人間たちはどうしてこうあの方への敬えが足りないのかしら」


「人間‥‥?俺以外にも死神と契約している奴がいるのか?」


「正確には悪魔と契約している人間よ。闇の世界の住人と契約した人間は現実世界とこちらの世界を自由に行き来できるわ」


 前の俺ならそんな厨二じみた設定を信じることはなかっただろうが、その恩恵を一番受けている今なら納得できる。

 現実世界でチート級の力を授かったのが俺だけ、なんていう都合のいい話はないだろうからな。


「それで?早く本題に入って頂戴。わたしは貴方と違って暇じゃないの」


「いやさっきお前————まぁいいや。じゃ早速」


 さっき片手に持っていた袋菓子を俺が来た瞬間後方に投げ飛ばしていたことには触れない方がいいな。


「俺の死に戻りの権能ついて教えてほしい」


「死に戻り、死生回帰のことかしら」


「そうそれだ。お前の知ること全部話せ」


「拒否権を認めないその発言、気に入らないわね。それと前から言いたかったんだけど紳士ぶったキャラクターはどこにいったの?あの方と契約する以前の貴方に戻っているようだけど」


「それは‥‥今はどうだっていいだろ。今の俺はハデスじゃない‥‥」


 薄く唇を噛み締める京太がそう言うと、ルナは口角を吊り上げてそんな俺を眺めた。


「死生回帰の権能の特徴は権能者が死ぬごとに自身が指定した時間に死に戻ることができるわ」


「自身が指定した?いや、俺は————」


「ただしそれは死神様の場合」


 ふと聞こえたルナの言葉に、俯いていた顔を上げる。


「貴方はそもそもの魔力が未熟だから、権能も中途半端よ。貴方の顔面みたいにね」


「一言多いんだよお前は!んで?中途半端って?」


「貴方自身で死に戻るタイミングを指定することができないということよ」


 マジかよ‥‥てことは完全ランダムオートセーブ。直前セーブのリセマラが効かないのは辛いな。


「さらに言うと、死に戻る起点以降の記憶は完全に削除されるわ。死に戻りの力を行使した、という記憶だけは残されてね」


 何だその超不都合主義の力。弱点だらけじゃねぇか。


「じゃあ一番最初のあれは死神の力で死に戻りしたわけか。道理で今の俺と才能にバクがかかってるわけだ」


「当たり前よ。貴方如きがあの方と渡り合えると思わないことね」


「困ったな‥‥解決策が見つかるどころかさらに問題が増えてきやがった」


 つまりこの死に戻りループ地獄から抜け出すためには直感と推理だけで俺を殺した犯人を見つけだし、未然に解決しねぇといけないのか


「その様子。何か困ってることでもあるみたいね」


「あぁ実は—————」


 ルナに身に起こった全てを伝えた。正直言ってお手上げ状態なことも、


「———てわけだ。正直死因が分からない、犯人も分からない。気づいた時には死に戻り。もうどうしょーもねぇよ。こんなことしてる暇ないってのに」


「こんなこと‥‥ね」


「そうだろ?俺はこの一年。できるだけ女を弄ぶクソ野郎を殺さねぇといけねぇんだ。こんなことで頭を使ってる暇じゃ————」


 悪態を垂れている途中、ルナは唐突に親指と中指を重ねた状態で手を差し出すと、パチンッと鳴らしてみせた。

 その瞬間、俺の体は地面に伏せていた。


「————アッガッッッ!!?」


 鳩尾を思いっきり殴られた衝撃に駆られたと思うと、みっともなく唾液をその場に撒き散らした。


「テメェ———ッ!なにしやがる‥‥」


「怠惰ねハデス。狩ろうとしている者が、狩られる覚悟がないなんて。とんだ間抜けね」


「どういう、ことだ?」


「貴方のその力。死神様の権能は他の悪魔にとっても、契約した人間にとっても喉から手が出るほど欲しいものということよ」


 腹にかかった苦痛を抑えつつ、その場に立ち上がると鋭く光る桃色の瞳をジッと睨みつけた。


「じゃあなんだ。今回の件の犯人はその悪魔と契約した人間ってことなのか?」


「さぁどうでしょう。ただ腐ってもあの方と契約したその身で何回も死んだのなら、その可能性は高いのではなくて?」


 なんだよ‥‥思ったより結構怠いことになってんのか。契約者か、一体どんな奴なんだ?


「‥‥‥‥」


「なんだよルナ。まだなにか?」


「もし、興味があるのなら聞いていくといいわ」


 それはこの場にいる誰にでもない、ましてや京太への問いかけでもない

 そんな独り言と捉えられる声量でルナは呟いた。


「欲の魔女について」




 

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