ありきたりな勇者伝説。4
【 ソルベキア国 】
ソルベキアの城下町へ辿り着いたザッツロードたち、町の厳戒状態に驚きながらも スファルツ卿の屋敷へ向かう 以前の勇者と同じ様に 門の呼び鈴を鳴らし名乗るザッツロード 先代と同じ様にスファルツが現れ言う
「これはこれはザッツロード王子、そしてお仲間の皆様 ようこそ我が屋敷へ」
ザッツロードが言う
「突然の訪問申し訳ない、スファルツ卿」
ローレシア式の軽い敬礼と共に言ったザッツロードへ スファルツは顔を横に振って言う
「いえいえ、滅相もございません ちょうどローレシアの話を聞き キルビーグ国王陛下並びにザッツロード王子様方の身を案じていた所です さぁ、お疲れでしょう?どうぞ中へ」
スファルツの案内の下ザッツロードたちはスファルツの屋敷へ入る 手厚い歓迎を受けるザッツロードたち お茶を楽しみながら会話をする スファルツが言う
「我々も ローレシアの件には大変驚きました アバロンはそれ以前にローゼントやカイッズとも戦いを行っていたので まさか…ローレシアを落とせるほどの力が残っているとは …気付いていれば事前に我がソルベキアも ローレシアの加勢へ向かえたでしょう 申し訳ない限りで」
スファルツが頭を下げる それを制してザッツロードが言う
「いえ、私も驚いているのです、確かにアバロンの戦力にも驚かされましたが …それ以上に」
スファルツが言う
「それ以上に?何か アバロンに有利なものがあったのですか?」
スファルツの問いに ザッツロードが頷いて言う
「アバロンはドラゴンを操っていたのです」
スファルツが驚いて言う
「ドラゴンをっ?!それは真ですか?」
ザッツロードが言う
「はい、この目でしっかり確認しました 仲間たちも」
言いながらザッツロードが仲間たちへ視線を向ける 向けられた仲間たちが頷いて ソニヤが言う
「黒い大きなドラゴンだったわ!」
ラナが言う
「赤い炎を吐き出して」
ソニヤとラナがスファルツへ説明する それに頷くスファルツ ザッツロードが続けて言う
「しかし…忽然と姿を消したのです、」
スファルツが疑問して言う
「消した?…それは 隠れたと言う事でしょうか?」
セーリアが言う
「いえ、本当に私たちの目の前から消えたのです、まるで魔法で姿を消したかのように」
仲間たちが頷く スファルツが考える素振りを見せて言う
「では…我々との戦いにも そのドラゴンが現れる可能性がありますね 対空武器の所持を進言しておきましょう」
スファルツの言葉にザッツロードが驚いて言う
「そういえば、気になっていたのですが この町の厳戒態勢… これはローレシアが落ちたことを受け、このような厳戒態勢を取っていると言う事ですか?」
皆の視線を受けながらスファルツがザッツロードへ言う
「ザッツロード王子、我々ソルベキアは ローレシアとローレシア王キルビーグ陛下の奪還と救出の為 アバロンへ宣戦を行います」
ザッツロードが言う
「え!?」
ソニヤが言う
「そ、そんなっ!」
ザッツロードが胸に手を当て思わず立ち上がって言う
「スファルツ卿、待ってください!アバロンは 父上に丁重な対応をして下さると 私に約束してくれました 今攻撃を仕掛ける事は その約束を不意にしてしまう事に!」
スファルツが頷いて言う
「ご心配には及びませんザッツロード王子」
ザッツロードが言う
「それは…どういう事です?」
ザッツロードが立ったまま言うのに対し スファルツは椅子に座り優雅に紅茶をすすって言う
「アバロンが単独でソルベキアへ戦いを挑むとしても、制圧した他国の力を使用するとしても 我が国からのプログラマーとハッカーのサポートを全て停止します こうなれば我が国のロボット兵を倒す事は困難 アバロンはあっという間に我が国のロボット兵に破壊され キルビーグ陛下も無事救出されると言うわけです」
スファルツの言葉にザッツロードが更に声を荒げる
「ですからっ!それでは他国王の幽閉条約に違反してしまいます!この大陸に国を持つものは他国の王を丁重にもてなし、万が一その自由を奪い幽閉する事になろうとも国王の尊厳を犯してはならない!そして、その定義に沿う国に対する武力の施行は禁じられています!」
ザッツロードの仲間たちが呆気に取られる中 ザッツロードとスファルツの話が続く スファルツが言う
「勿論、他国王の幽閉条約及びそれに対する武力の施行による解決の禁止…その条約は存じております だからこそ 今回の戦いにおいては 我々の勝利が何よりも重要になる」
スファルツ卿が言って微笑む ザッツロードが顔色を変えて言う
「…まさか」
ザッツロードの異変に気付いたソニヤが恐る恐る声を掛ける
「ね…ねぇ、ザッツ?あ、あのさ… 私にも 分かる様に 話して欲しいんだけど…っ」
ソニヤの言葉に同意するようにラナが頷く ザッツロードがスファルツ卿へ視線を向けたまま言う
「ソルベキアは …世界を手に入れる気なんだっ」
ソニヤが無言で驚く 一瞬間を空けすぐに言う
「ま、待って、世界を …なんて冗談でしょ?だってそんな事したら 全ての国から兵士がソルベキアに来るのよ!?たった一国で勝てる訳無いじゃないっ」
ソニヤの言葉にスファルツ卿が笑って言う
「そうでしょうか?皆さんもご存知だと思いますが 我が国のロボット兵を倒すには それこそガルバディアのプログラマーや魔法剣を持ってしか倒す事が出来ません しかし… ガルバディアは今も昔も国を閉ざし続け そして今回我々は 運良くローレシア国を救うという使命を担っている ローレシア領域の魔法使いたちが アバロンへ手を貸す事は考えにくい そうとなれば… ふふっ アバロンさえ落としてしまえば 他国など いつでも、どうとでもなると言うものです」
ザッツロードが言う
「し、しかし…っ!」
ザッツロードが言い掛けるが言葉が続かない スファルツ卿が席を立ち ザッツロードの横へ来て彼の肩に手を置き言う
「ご安心下さい、ザッツロード王子 我がソルベキアは今も昔も変わらず ローレシアの味方です 必ずやお父上を救い出し、共に世界を手に入れましょう 戦いはすぐに終る、お部屋を用意しますので ザッツロード王子とお仲間の方々は それまでどうぞ、ごゆっくりおくつろぎ下さい」
部屋へ通されたザッツロードと仲間たち ソニヤがザッツロードへ声を上げる
「ね、ねぇ!ザッツ!どうなっちゃうの!?私たち…どうしたら良いの!?」
ラナが下を向いて言う
「私たちに出来る事なんて… 無いんじゃない?だって これは国同士の戦いでしょ?」
ソニヤが言う
「でもっ!…そうよ!今は国同士で戦ってる場合じゃないって教えたら良いのよ!?ねえ!そうでしょ!?今は悪魔力をどうにかしなきゃいけないって時じゃない!」
ソニヤがザッツロードの服にしがみ付いて言う ザッツロードが視線をそらしたまま言う
「戦いを止めるには もう遅すぎる 僕たちが出来るとしたら どちらかに付いて共に戦う事位だ」
ソニヤが言う
「え!?」
皆の視線がザッツロードへ注がれる ザッツロードが皆を見て言う
「ソルベキアのロボット兵は 先代勇者たちの記憶にあったロボット兵とは比べ物にならない位強いものになった、この15年で僕達が力を合わせなければ倒せないほどの…対するアバロンは 15年前とさほど変わらない 強いて言えばあのドラゴン…しかし、1体のドラゴンでソルベキアの用意するロボット兵を全て倒す事は出来ないはず…」
皆がザッツロードから視線を外し各々考える ソニヤが視線を落としたまま言う
「それじゃ…ソルベキアの勝ち…かな?」
ラナが首を傾げながら言う
「ローレシアも国王陛下も助け出してくれるっていうのだし?」
部屋の窓の外をロボット兵の集団が移動する その照準が彼方此方を確認し ザッツロードたちの部屋も確認される その様子を見るザッツロードたち ソニヤがロボット兵と視線が合い 怯えて隣のラナへ抱き付く 呆れるラナが窓の外へ視線を向け ソニヤと同じ行動をする 集団が通り過ぎ 窓の外が平和になる ザッツロードと仲間たちが窓の外を確認する ソニヤが身震いしながら言う
「あ、あたしっあれとは た、たたた戦いたくないっ」
ラナが隣で平静を装って言う
「ど、どどど同感だわ」
セーリアも冷や汗を流しながら言う
「スファルツ卿が仰る通り… このまま大人しく待っていれば 一番安全なのかもしれないわね…」
皆が各々の場所で落ち着き沈黙の間が流れる ソニヤが問い、ラナが答える2人の会話が続く
「ソルベキアは…世界を手に入れて 何をするのかなぁ?…やっぱり まず悪魔力を止めなきゃだよね?」
「そうね、まず最初に悪魔力を止めないと 何も出来ないわ」
「でも、どうやって止めるの?ロボット兵で…あの島を壊しちゃうとか?」
「あの島の悪魔力は強すぎるから ロボット兵やソルベキアの機械がおかしくなってしまう可能性があるって…前に言ったじゃない?」
「じゃぁ 壊さないの?」
「だけど 最初に悪魔力を止めないと 世界が魔物だらけになって そのうち人間だっておかしくなっちゃうのよ?」
「それじゃ やっぱり最初に悪魔力を…」
「ええ、でもロボット兵は島に近づけられないわ 遠くのこの大陸なら問題は無いみたいだけど」
「それじゃ ロボット兵はこの大陸止まり…それじゃ、島の悪魔力は?」
「だから最初に… どうするのかしら?」
2人の視線がザッツロードへ向けられる ザッツロードが2人の会話から思いついて言う
「ソルベキアは…悪魔力を止める気は無いのかもしれない」
ソニヤとラナが声を合わせる
「「えぇええ~!?」」
セーリヤが続いて言う
「悪魔力を止めてしまったら ロボット兵は動かないわよね?」
セーリヤの言葉にザッツロードが続ける
「ロボット兵が動かなくなったら ソルベキアの戦力は一気に半分以下になる たとえ世界を手に入れていたとしても すぐに他国から侵略されるはずだ」
ザッツロードの言葉にソニヤが声をあげる
「それじゃあ!」
ラナが言う
「ソルベキアは悪魔力を止める気は無い?」
ソニヤが声を上げる
「ちょちょちょ、ちょっと待ってよ!?そーしたら いつか人間まで魔物になっちゃうじゃない!?」
ソニヤを落ち着かせようとセーリヤが彼女の肩に手を置いて言う
「待って、まだそうと決まった訳じゃないわ?きっとソルベキアだって何か考えて…」
ラナも少し焦って言う
「そうよ、何か考えているはずだから…たぶん」
セーリヤの言葉を制して声を上げるソニヤ
「何かって何よ!?もぉ~待ってられない!こうしている間にも結界が壊れちゃうかもしれないのにー!!」
ザッツロードが壁を殴って静かに言う
「…クッ…いつもそうだ… いつも…僕は 何も知らなくて…」
驚いた仲間たち それ以上にザッツロードの様子に驚き平静を取り戻す ソニヤがザッツロードに近づいて恐る恐る言う
「ザッツ…?ザッツのせいじゃないよ?私たち皆、いつも一緒でしょ?みんなで分からなくて 振り回されて…」
ソニヤの言葉に視線を変えずにザッツロードが続ける
「…違う、僕が… 僕が 何も分かっていないんだ 勇者の末裔なのに…ローレシアの王子でもあるのに 同じリーザロッテ王女は 115年前の歴史を見つけていた、アバロンのヴィクトール陛下は先代勇者の頃から ずっと色々知っていて色々出来て、ベネテクトのバーネット陛下も… 2人とも…強くて…優しくて…先代勇者を認めてくれて 励ましてくれた 僕は何をしているんだ?これでは先代と同じだっ」
ソニヤが心配して言う
「ザッツ…」
仲間たちが言葉を失う ラナがハッとして言う
「ねぇ?その全ての国が統一されたら 世界が統一されて 全部の情報が一つになったら そこから何か良い方法が出るんじゃない?」
ラナの言葉にソニヤが言う
「…そっか!そうだよ!この戦いは!皆で力を合わせる為の世界大戦なのかも!」
セーリヤが少し無理をして2人に乗る
「そ、そうね!これでソルベキアが世界を統一したら そこで皆が話し合って良い案を出すのかもしれないわね?!そうしたら、それから勇者様の出番よね!?」
ソニヤが疑う事無く明るい声を出す
「そっかぁ~!なぁ~んだ!私たちの出番って もっと後だったんじゃない!?」
仲間たちが笑い合う ザッツロードが俯いて言う
「ソルベキアは…たぶん他国の意見を聞かないと思う…」
ソニヤとラナが声を合わせる
「「え!?」」
ザッツロードの言葉に仲間たちが凍りつく ザッツロードがそのままの視線で言う
「60年ぐらい前に エドの所有権を巡ってカイッズとローゼント、ソルベキアで争ったらしいんだ、エドの町は どの国とも平等にしたいと宣言して その時のローゼントの王とカイッズの王が了承して ソルベキアへも同意を求めたんだけど ソルベキアは譲らなくて戦争になったんだ そして ソルベキアは刺客を雇って両国の王を暗殺した …国王の暗殺は戦争時における 他国王の抹殺、暗殺禁止条約に触れるのに …今回もそうだ ソルベキアは全世界の国家間で取り決めている それらの条約を いつも守らない国として 他国からも良く思われていないんだ そんな国が世界を統一すれば …きっと各国の王や王族は最初に始末され 人々や他国の意見なんて…」
ザッツロードの言葉を聞いた仲間たちが顔を見合わせる ラナが言う
「それじゃ…」
セーリヤも視線を落として言う
「全て ソルベキア次第って事ね…」
ラナとセーリヤが不安そうな顔を見合わせる 俯いていたソニヤがザッツロードへ向いて怒る
「なにそれ!?つまり ソルベキアって悪い国なのね!?」
ザッツロードがソニヤの言動に視線をそらす ソニヤが詰め寄って言う
「どうなのよ!?」
ソニヤの言動にラナとセーリヤが驚き止めようとラナが言う
「ちょっとソニヤ」
セーリアが言う
「落ち着いて、ソニヤ」
2人の制止を振り切りザッツロードへ詰め寄るソニヤ ザッツロードがソニヤへ一度視線を合わせ再び落として言う
「そう…だね…」
ソニヤが怒って言う
「そうだねって!?なら何でローレシアはソルベキアと仲良くしてたの!?」
ザッツロードが言う
「…分からない」
ソニヤが言う
「何で分からないの!?分からないなら自分で判断しなさいよ!!」
ザッツロードが言う
「え…?」
ソニヤが言う
「え?じゃない!!自分で判断して 良いと思う国と 仲良くしたら良いんじゃない!!」
皆の視線がソニヤへ向く ソニヤはザッツロードを見つめている 間を置き背を向けて言う
「分かった!私、分かったわ!」
言い終わると共に振り返って叫ぶソニヤ
「私1人でも!今からアバロンに味方する!」
皆が驚き ラナが言う
「ちょっと!何言ってるのよ!?」
ラナが慌ててソニヤの腕を掴もうとする ソニヤがそれを払って言う
「私、行くわ!皆、今までありがと!」
言うと共に移動魔法の詠唱を始めるソニヤ それを見るラナが一度ザッツロードとセーリアを振り返り 再びソニヤへ視線を戻して魔法の範囲に入る セーリアが叫ぶ
「ラナ!」
ソニヤが驚いて視線を上げる ラナが視線を逸らして言う
「ほらっ!集中解かない!変なところへ 飛ばさないで頂戴よ!?」
ラナの言葉に微笑で答えるソニヤ 2人を見ていたザッツロードとセーリア セーリアがくすっと笑って魔法の範囲に入る 自分の横に立ったセーリアに驚くラナ
「セーリア!?」
セーリアが移動魔法を修正して言う
「今のところ、間違ってたわよ?」
セーリアの言葉にラナがソニヤを睨む ソニヤが笑う 移動魔法の終了間近にザッツロードが意を決して加わる 皆が驚くと共に移動魔法が発動 窓ガラスを破り部屋からザッツロードたちが消える
【 アバロン国 上空 】
対人移動魔法を使ったソニヤ 対人相手はヴィクトール ザッツロードたちは激しい魔法破裂音と共にヴィクトールの前方に現れるが ヴィクトールはドラゴンの背に乗って急降下の途中だった為 ザッツロードたちは空中に投げ出される 自分達の状況に気付いたザッツロードたち 悲鳴を上げている間に地上目掛けて落下する ヴィクトールが叫ぶ
「バーネット!彼らを!!」
ドラゴンがザッツロードたちを助ける ドラゴンの背に掴まり皆がホッと息を吐く ソニヤがヴィクトールのマントを握り締め 目に涙を浮かべて言う
「し…死ぬかと…お、おもっおもっ…」
ヴィクトールが苦笑する 遠くから遠距離攻撃の音がする バーネットの声がする
「…クソッ!また来やがる!掴まってろよっ!?」
ドラゴンが猛スピードで回避する 背にしがみ付くザッツロードたちが悲鳴を上げる その中でヴィクトールが言う
「貴公らが来てくれる事を信じていた!」
ザッツロードが必死にしがみ付きながら言う
「な、何故僕たちが来ると!?」
ヴィクトールが視線を向けずに言う
「悪いがっ!今は詳しい話をしている余裕が無い!貴公らに頼みがある!アバロン側の国境封鎖は解除してある!もし、我らへ手を貸す気持ちがあるのなら!」
遠距離攻撃が一時止む ヴィクトールが振り返って言う
「貴公らへ このドラゴンを貸そう 我々には、我らの剣に魔力を与えてくれる魔力使いが必要だ、後は貴公らで考えてくれ …バーネット、私を2番隊の先頭へ!」
言い切ると共に手に持っている剣で部隊を示す バーネットの声と共にドラゴンが急降下する
「俺が戻るまで 死ぬんじゃねぇぞ!!」
ザッツロードたちが悲鳴を上げる 2番隊の先頭上空で止まるドラゴン ヴィクトールがドラゴンから飛び降りる 地に足を着いたヴィクトールが上空を見上げて言う
「貴公らの戻りを待っている!」
ヴィクトールが言うと共にロボット兵へ向かっていく ドラゴンが急上昇し ローレシア領域へ向かう バーネットが言う
「おいっ!まずはどこへ行く!?いつまでも怖がってやがるんじゃねぇ!」
高度が安定して何とか落ち着いたザッツロードたち ドラゴンの背に乗り直し ソニヤがドラゴンの顔を見ながら言う
「その声 まさかバーネット陛下!?」
ザッツロードたちが驚く ドラゴンがザッツロードたちへ軽く振り返って言う
「はっはー!その まさかだっ!俺もいまだに実感ねぇけどな?まぁ 役に立つ能力を貰えた ってのはツイてたぜぇ!」
ドラゴンが言いながら急降下する ザッツロードたちが悲鳴を上げる 眼下にテキスツ村とキャリトールの町が見えてくる それに気付いたソニヤが言う
「そっか!ヴィクトール陛下が言ってたのって そういう事ね!?」
ソニヤの言葉にセーリヤも頷いて言う
「ええ!私たちで村や町の皆に頼みましょう!」
2人の言葉にラナが続く
「私たちの村や町の皆を 連れてきて欲しいって事ね!」
ザッツロードを覗く3人が理解すると バーネットが問う
「で?手前から降りりゃ良いか!?」
バーネットの問いに 魔力使いたちが頷いて言う
「ええ!」「下ろすだけで次に行っちゃって!」「私たちもすぐ 魔法でアバロンへ向かうわ!」「上等だっ!」
ドラゴンがテキスツの村へ急降下する ザッツロードを除く3人が歓声を上げる テキスツ、キャリトール、ソイッドへそれぞれの魔力者を下ろしたドラゴンがアバロンへ飛ぶ 残ったザッツロードがドラゴンのたてがみに必死にしがみ付く ドラゴンが様子に気付いて背を見てから言う
「おいっ!落っこちそうなら鞍に乗っとけ!勇者様を落としたとあっちゃー 俺がどんな目に遭わされるか分かりゃしねぇよ!」
言われたザッツロードが 必死に返答する
「し、しかし その鞍はヴィクトール陛下のっ…ぼ、僕が座る訳にはっ」
鞍にはアバロンの印がある ザッツロードがそれを指摘するとバーネットが怒る
「バカ野郎ぉおがああ!てめぇえはもう!アバロン帝国の一員なんだよぉおお!」
怒り過ぎたが故に ドラゴンの口から炎が上がる ザッツロードが言葉と声の大きさと炎に驚き思わず手を離し 落下しながら叫ぶ
「うわぁあああ!!」
バーネットが衝撃を受けて言う
「あっ!!」
ザッツロードが落ちる ドラゴンが気付いて追い掛ける 間に合う ザッツロードが鞍に座っている ドラゴンがホッとする ドラゴンが振り返って叫ぶ
「大人しく言われた通りしとけってんだ!餓鬼がぁああ!!」
バーネットの声に驚き怯えるザッツロード 思わず手綱を握る それを確認したドラゴンが再び猛スピードで飛びながら言う
「次落ちたら 拾わねぇからなあっ!?」
ザッツロードが怯えつつ言う
「は、はいっ!!」
ドラゴンがアバロン領域へ戻る 眼下の世界が一変している ザッツロードが声を上げる
「あれは!テキスツの占い師!キャリトールの魔法使い …ソイッドの魔術師!!」
魔力使いたちがアバロン兵の剣を次々に魔法剣へ変え、魔力を受け取った兵たちがロボット兵へ猛攻撃を開始する ドラゴンが笑う ザッツロードも表情を明るめて言う
「みんなっ アバロンに手を貸してくれたんだっ!」
ドラゴンが視線を向け言う
「ハッ! てめぇも だろうがよ?」
ザッツロードが焦って言う
「え?ぼ、僕は何も…」
バーネットの言葉に ザッツロードが言葉を曇らせる バーネットが笑って言う
「ならっ!今から一仕事しやがれ!」
ザッツロードが驚き 悲鳴を上げる
「え!?…うわっわああああ!!」
ドラゴンが急降下して1人の魔法使いの前へ降り立つ ソニヤが驚いて声を上げる
「ザッツ!バーネット陛下!」
バーネットが言う
「お届け者だ 受け取れ!」
言いながらドラゴンが自分の背にへたれているザッツロードをソニヤへ放り投げる ザッツロードが地面に落ちて言う
「ぎゃっ!」
ドラゴンの口に引っ張られ地面に 放り投げられたザッツロード 衝撃に思わず声を上げると ソニヤが名を呼んで近寄る
「ちょっ!大丈夫!?ザッツ!?」
バーネットが笑って言う
「はっはー 精々戦ってくれよぉ!?期待してるぜぇ!?」
ドラゴンが言うと共に飛び去る ソニヤがザッツロードに手を貸しながらドラゴンを目で追う ドラゴンが先行するアバロン部隊の上空へ行き炎を吐いている ソニヤが視線を戻して言う
「ザッツ!ほらっ 早く立って!」
ソニヤが地面に両手を付いて四つん這のザッツロードの腕を引き上げる ザッツロードが苦笑して言う
「あはは…僕はここで待ってた方が良かったね…」
立ち上がったザッツロードが片手で頭を掻く それをみたソニヤが苦笑してから言う
「何言ってるのよ!私たちは仲間なんだから!いつでも一緒でしょ!?」
ザッツロードが呆気に取られて言う
「え?」
ザッツロードが一瞬間の後ふと笑って言う
「よく言うよ…ソニヤが僕を置いて行こうとしたんじゃないか?」
ソニヤがいつもの調子でおどけて言う
「あれぇ?そうだっけ?」
2人が笑う ザッツロードが剣を構え ソニヤが魔法の詠唱をする ザッツロードが魔法剣を手に入れ ロボット兵へ向かっていく 上空ではヴィクトールがドラゴンの背に乗って敵陣へ突入する ソルベキアとアバロンの戦いが終わる
【 アバロン城 】
玉座の間 ヴィクトールの前に跪くザッツロード そこへ衛兵2人に肩を借りながらバーネットがやって来て言う
「いっててて…背中が筋肉痛なんて 初めてだぜぇ~」
ヴィクトールが苦笑する ザッツロードが振り返ってバーネットの頭上に輝く王冠に驚いて言う
「え…っ?」
ザッツロードが驚く中 衛兵に連れられバーネットがヴィクトールの左手前の玉座に座る 正面のヴィクトールとザッツロードの右手前のバーネット 見た事も無い玉座の間の光景にザッツロードが疑問していると ヴィクトールが微笑んで言う
「ああ、そうか、貴公らは地下牢に居たから知らなかったのだね?」
ヴィクトールの言葉にザッツロードとその後ろに控えていた仲間たちがヴィクトールへ視線を向ける ヴィクトールがその視線を受けて微笑み言う
「バーネットには 我らアバロンの第二国王になって貰ったんだ」
ザッツロードが疑問して言う
「第二… 国王!?」
ソニヤが言う
「え?なに…それ?」
ラナが言う
「聞いた事無いわね…」
ザッツロードたちの反応にバーネットが言う
「俺だって最初は 何寝ぼけてやがるんだー… と思ったんだが まぁ… そう言う事らしい」
バーネットが誰にも視線を合わせず 少し頬を赤くして言う ヴィクトールが微笑む ザッツロードがヴィクトールへ視線を戻して問う
「あ、あの ヴィクトール陛下、」
ヴィクトールが余裕を持って言う
「うん?」
ザッツロードが聞きたい事が多過ぎて言葉に困って言う
「えっと…」
後ろに居た仲間たちが顔を見合わせて笑うと ザッツロードの言葉を代弁して ソニヤが言う
「ザッツのお父さんは無事ですか?」
ラナが言う
「ザッツはアバロン国にとってどんな存在になりますか?」
セーリアが言う
「あのドラゴンは…バーネット陛下ですよね?どういう事なのかしら…?」
ザッツロードが慌てて言う
「あっ!み、皆っ…」
ザッツロードの仲間たちの言動を見てヴィクトールとバーネットが顔を見合わせてから笑う バーネットが筋肉痛と笑いの振動で痛がる ヴィクトールが苦笑してから答える
「うん、まず、キルビーグ殿は健在だ、そして今も尚 黙秘を続けている しかし、間もなく我がアバロン国が正式にアバロン帝国となる この大陸の国々からの信頼を得てそうなったとあれば きっとその時には お話もして頂けるのではないかと 私は思っている」
ザッツロードがホッと胸を撫で下ろす ヴィクトールが続けて言う
「次に 我が国の貴公らへ対する扱いだが 現在においては 今までと何ら変わり無い、しかしもし、貴公らが我が国に属し これからも力を貸してくれるというのであれば… 貴公らには対悪魔力の独立部隊として 我々と共に活動して貰いたいと考えているのだが どうだろうか?」
ザッツロードの仲間たちが顔を見合わせ微笑む ヴィクトールが間を置いてから苦笑して言う
「そして、あのドラゴンに関しては… 私が述べるより 本人に確認した方が早いかもしれないな?」
ヴィクトールの言葉に皆の視線がバーネットへ向く 背中の痛みに顔を歪ませていたバーネットが皆の視線を受け 仕方ないといった様子で言う
「あぁ?あードラゴンの件か?あれは俺が昔退治した 悪魔力にやられた竜族に貰った力だ」
バーネットの言葉にザッツロードたちが驚き ザッツロードが言う
「竜族!?」
ソニヤが言う
「竜族は本当に居たの!?」
ラナが言う
「一体どこで!?」
セーリアが言う
「悪魔力にやられたとは!?」
皆が寄ってたかってバーネットへ問い質す バーネットが驚き手で払い除けて言う
「ええい!うるせぇえ!いっぺんに訊くんじゃねぇえよ!下がれってんだ!」
ザッツロードたちが下がりヴィクトールが苦笑すると バーネット背中の痛みに顔を歪めながら説明を始める
「竜族は居た、村も健在だぁ、悪魔力にやられたってのは~ …あぁ~説明がめんどくせぇな!先代勇者様ならひと目で分かるだろうによ」
バーネットが言いながらだるそうに首を掻く その言葉にザッツロードたちが言う
「僕らは先代の勇者や仲間たちの記憶を知っています、もし先代勇者が見たと言うものなら 僕も分かります!」
ザッツロードが言うと共に仲間たちが頷く その言動にバーネットとヴィクトールが疑問する ヴィクトールが問う
「そういえば、貴公らは以前にも… ローレシア城でバーネットと面識の無い貴公が 彼の名と顔を知っていた」
ヴィクトールの言葉にバーネットも思い出した様子で言う
「あぁ…んな事もあったな?どういう事だ?説明しろこらぁあ!?」
バーネットがザッツロードを締め上げる が、筋肉痛の為断念する ザッツロードが苦笑して言う
「僕らも父の命で行ったので詳しい事は分からないのですが ソルベキアのプログラムで先代の記憶を疑似体験したのです」
ザッツロードの言葉にヴィクトールとバーネットが驚くヴィクトールが考えながら言う
「記憶を疑似体験 …そんな事が可能なのだろうか?」
バーネットも少し考えてから言う
「まぁ こいつらが嘘吐いたって意味がねぇし、詳しい事はキルビーグから聞き出すしかねぇだろ?」
バーネットの意見にヴィクトールが頷く
「うん、そうだね それに何よりもキルビーグ殿には 先代勇者達の情報を聞き出さねばならない 彼らが今…どこに居るのかを」
ソニヤが言う
「え!?」
ヴィクトールの言葉にザッツロードたちが驚く ザッツロードが問う
「先代勇者の今の居場所と言うのは?彼らは悪魔力を止める為の方法を求めて 旅を続けているのではっ!?」
ザッツロードの言葉にヴィクトールとバーネットが驚き ヴィクトールが問う
「どういうことだ?彼らの行方が途絶えた故に 貴公らが新たな勇者として 抜擢されたのではないのか?」
ヴィクトールの言葉にザッツロードが答える
「僕らは何も… 何も聞かされていません、彼らは旅を続けているとばかり…」
2人のやり取りを聞いてバーネットが不適に笑う
「はっはー なるほど、さすがローレシアだ、俺の二の舞にでも なってねぇ事を祈るぜぇ」
バーネットの言葉にヴィクトールが視線を落とす ザッツロードたちが顔を見合わせる 少し遅れザッツロードが思い出して言う
「あの、ヴィクトール陛下、もうひとつ お伺いしても宜しいでしょうか?」
皆の視線がザッツロードへ向く 了承を得たザッツロードが問う
「ヴィクトール陛下は、僕らがアバロン側へ味方すると 事前にご存知でしたよね?あれは一体」
ザッツロードの問いにソニヤが言う
「そういえばっ!ヴィクトール陛下は私たちが来ると信じてたって」
セーリアが言う
「ソルベキアから移動魔法で飛んだ時ね?」
ソニヤが頷く ヴィクトールが思い出して言う
「ああ、貴公らが来てくれるという話は 事前に聞いていたのだ」
ザッツロードが言う
「それは一体誰に!?」
ヴィクトールが微笑んで言う
「先代勇者の仲間で 唯一その存在が確認されている レーミヤ殿だ」
ヴィクトールが言うと共に レーミヤが現れる 驚く勇者たち レーミヤが苦笑する ヴィクトールがザッツロードたちへ言う
「詳しい事は彼女から聞くと良いだろう、レーミヤ殿も貴公らと話を出来る日を楽しみにしていた」
ヴィクトールの言葉にレーミヤが頷く
別室でレーミヤから話を聞く勇者たち レーミヤが言う
「魔王の島… 今 私たちは あの島を結界の島と呼んでいるのだけど、15年前私たちが島の結界を解いてしまったせいで悪魔力が島から噴出してしまった事… そして、その悪魔力を抑える為に私たちの仲間のプログラマーが新たな結界を作った事、そのプログラマーが島に残されてしまった事を知っているわね?」
レーミヤの言葉に頷くザッツロードたち ザッツロードが言う
「はい、僕たちは先代勇者である 貴女方の記憶を疑似体験しました ですから、その記憶は共有しています」
ザッツロードの言葉にレーミヤが頷き 話を進める
「結界の島から戻った私たちは 本当ならすぐに仲間のプログラマーを助けに行きたかったのだけど、大陸では私たちがいない間に 祠の祭壇からの悪魔力が増加して通常の結界では支えきれなくなってしまっていの、私たちはガルバディアに残されていた宝玉の力を使い 祠の祭壇へ強い結界を張る作業を行ったわ でも、そのせいで最後の宝玉であったガルバディアの宝玉の力が失われてしまった為 私たちは他の方法を探して旅を続けた…しかし、何の方法も見つけられないまま年月が流れてしまい 結果 島へ結界を張ってから10年が経ってしまったの 方法を見出せなかった私たちは そこで2手に分かれて行動する事に」
ソニヤが問う
「2手に?」
レーミヤが頷き続ける
「ええ、何の方法も無いままだけれど 相棒のプログラマーを助けに島へ向かうと言うヘクターと 当時のローレシア国王イシュラーンへ謀反を起こし、全てを聞き出すというザッツロード6世の案」
ザッツロードたちが驚く レーミヤが続ける
「ヘクターに同行したのがヴェルアロンスライツァーとロキ、そして移動魔法の使えない島へ向かうのにカイザも再び手を貸してくれたわ、一方ザッツロード6世に同行したのがラーニャ、ミラ 私もこちらへ同行したの イシュラーン陛下はザッツロード6世の話に納得して 私たちに全てを打ち明けると言ってくれた そして説明の為にローレシアの地下室へ向かったのだけど その間に私は占いでヘクターたちの身に危険が迫っている事を知って それを皆に話したら 私だけでも助けに行くべきだと言う事で… 私は対人移動魔法でカイザの下へ向かったの …おかげでザッツロード6世と同行したメンバーでは私だけが助かった 彼らの行方はあの日から分からないまま…」
皆が沈黙する 束の間の後ザッツロードが問う
「では、僕たちが疑似体験した先代たちの記憶は?」
レーミヤがザッツロードへ向いて言う
「イシュラーン陛下が説明の前に私たちへ交換条件として行った事よ 魔王との戦いのため 私たちの知る情報を教えて欲しいと…悪魔力を止める為の情報になるはずだと」
セーリアが問う
「結界の島へ行ったヘクターたちは どうなったのです?」
レーミヤが答える
「海上からソルベキアの機械を使って生命反応を調べたのだけど、その反応は無くて それでもヘクターは1人島へ向かってしまっていた それで、ヴェルアロンスライツァーとロキが彼を捜索をしている所に 私が辿り着いて 私の占いでヘクターの居場所を探し当てると 彼を連れて大陸へ戻ったの その時 ヘクターが島で発見したと言う 相棒のプログラマーが使っていたモバイルPCから 結界の正確な期限が判明したのよ」
レーミヤの言葉に ザッツロードたちに緊張が走る 間を置いてザッツロードが問う
「その期限は…?」
レーミヤが皆を見渡してから言う
「ヘクターが確認した時点で残り6年」
ソニヤが皆へ向きなおして言う
「それじゃ…」
ソニヤの視線を受けラナが言う
「それからもう 5年が過ぎたのだから 残りは あと1年って事ね」
緊張が高まる レーミヤが頷いて言う
「ヘクターと私たちは それをヴィクトール陛下へ伝え、ヴィクトール陛下が全国の王へ配信してくれたたわ」
セーリアがレーミヤへ問う
「それで、各国の王様は何と?」
セーリアの問いにレーミヤが顔を横へ振る ソニヤが驚いて言う
「ど、どういう事!?世界の危機に 皆で力を合わせよう!…て?」
ソニヤの言葉にザッツロードが言う
「残りの6年で必死に方法を生み出し、各国と共に乗り越えるか… 6年の間に世界を手中に収め、その後の事態には その時になってから何らかの方法を考えるか…」
ザッツロードの言葉にラナが言う
「ソルベキアは後者ね!」
レーミヤが言う
「…何もせず他国に任せるか 何かを行おうとする その気持ちすら失うか」
ソニヤが苦笑して言う
「その前者はシュレイザー国王だったりして!?」
ザッツロードたちが笑う セーリアが問う
「ヴィクトール陛下は、ザッツの言う方の前者でしょうね?」
セーリアの言葉にザッツロードが微笑み言う
「ヴィクトール陛下は、常に僕らと同じ様に 悪魔力の事を考えてくれてたからね」
ザッツロードと仲間たちが頷く レーミヤが顔を横に振る 皆が疑問する レーミヤが言う
「残念だけど…あの頃のヴィクトール陛下は 傷悴してしまっていて とても各国を率いて悪魔力の対策を行うと言う志は持てなかったわ だから…」
皆が驚く ソニヤが言う
「じゃ、じゃあ、レーミヤの言う後者って」
レーミヤが頷く
「あの頃のヴィクトール陛下はアバロンを支えるので精一杯だった その影響もあって 各国の情勢も悪化してしまったの この大陸にある3大国家の1つであるアバロンがその勢力を欠いてしまう事は 他国にとっては大きなチャンス 各国はこの期を逃すまいと 悪魔力の事など… 皆、どうでも良くなってしまったのよ」
皆が驚く ソニヤが声を上げる
「もぉお!なんで皆 悪魔力に対して そんなに他人事なの!?」
ソニヤの声にレーミヤが言う
「悪魔力が高まっていくと共にソルベキアのロボット兵はどんどんその勢力を上げて行ったわ、ソルベキアはそのロボット兵を各国へ貸し与え お陰で 魔物の数が増えても、その力が強まっても 人々にはあまり影響が無かったのよ」
ラナが腕組みをして言う
「ロボット兵を使ったせいで 人々から危機感も失われてしまっていたのね?」
ラナの言葉にレーミヤが頷き続ける
「それでも、アバロンやベネテクト、スプローニ国の3国は ソルベキアからのロボット兵の供給を断っていたから それなりの危機感は保っていたのだけどね」
皆が黙り ザッツロードが言う
「そして そのまま5年の年月が 悪魔力の影響を受ける前の 平和な頃と同様に過ぎてしまった…」
ソニヤがザッツロードへ向いて言う
「でも、そんな中でローレシアは 唯一悪魔力の事を忘れずに 勇者を旅立たせたって事よね?」
ソニヤが笑顔を向け ザッツロードが苦笑で返し言う
「そうだね… でも 何も知らされては 居なかったけど…」
セーリアがレーミヤへ向いて問う
「ヴィクトール陛下も、再び悪魔力対応のために立ち上がって下さったのよね?」
セーリアの言葉にラナも思い出した様に言う
「そういえば… 私たちが旅を始めて最初にヴィクトール陛下へ謁見した時 あの時は 言われて見れば、まだ傷悴しているって感じがあったけど 今はその感じがまったく無いわ」
ラナの言葉にソニヤも頷く
「そうそう、私も… えっと そう!ローレシアで会った時よ 別人かと思ったわ 今日も!」
皆がソニヤに頷き ザッツロードがレーミヤへ問う
「今のヴィクトール陛下なら 世界を統一して立つ事も出来そうだ …どうして急に元気になられたんです?あの世界大戦の時に何か?」
ザッツロードの言葉にレーミヤがくすっと笑う 皆が疑問する レーミヤが言う
「変化があったのは、丁度 貴方たちが謁見に訪れた あの日よ?まぁ… 色々あったのだけど 結果的にヴィクトール陛下と 元ベネテクト国国王様のバーネット陛下のお2人が アバロンに揃ってから どんどんアバロンの勢力は回復したわ 他国との戦いや悪魔力の調査、アバロンを救う為の行動 …それらの功績からバーネット陛下に アバロン国第二国王の称号が贈られたの」
ザッツロードが苦笑する
「元他国の国王だった人が 国王健在の他国で もう1つの王の称号を得るなんて…」
ザッツロードの言葉を聞いていたソニヤが 考える姿で言う
「う~ん まぁヴィクトール陛下は ホントはとっても強いけど 普段はとっても優しい感じで 対するバーネット陛下は ホントは優しいけど普段は… あの感じだし?」
ソニヤがバーネットの言動を思い出し苦笑する セーリアがくすくす笑いながら言う
「そうね、2人は… きっと、とても相性の良い相棒同士なのでしょうね」
セーリアの言葉にラナが考える様子で言う
「相性の良い相棒同士って言えば 確かに、あのドラゴンを駆るヴィクトール陛下の姿は神々しくもあったわよね」
ラナの言葉に頷く面々 ザッツロードが苦笑して言う
「僕も背に乗せていただいたけど とてもヴィクトール陛下の様には 乗りこなせそうにないよ」
ソニヤが笑って言う
「ザッツったら ドラゴンの背でよろよろになってたもんね?バーネット陛下にお届け者扱いされてたし!」
ソニヤの言葉に慌てるザッツロード
「そ、それは言わないでくれよ…」
ザッツロードを除く皆が笑う ザッツロードが頭を掻いて苦笑する
数日後、アバロン国はアバロン帝国となる アバロン城のバルコニーから民衆へ声明を発表するアバロン帝国皇帝ヴィクトール13世 隣に 同帝国第二皇帝バーネット2世 彼らの後方に控えるザッツロードたち 民衆の歓声と喝采が何度も上がる その後 ヴィクトールがザッツロードたちの名を言う 驚くザッツロードと仲間たち ヴィクトールが言う
「我らと共に戦い 今、この世界を脅かさんとしている悪魔力の解明と静圧を行う ローレシア国の勇者ザッツロード7世と勇敢なる仲間たちだ!」
言い終えると共にザッツロードたちを振り返り 手を差し出すヴィクトール ザッツロードたちが焦る ヴィクトールと共に振り返っていたバーネットが笑い 腰の引けているザッツロードを無理やり引っ張り出す 民衆の喝采が起きる ザッツロードの仲間たちが少し恥ずかしそうにそれに応じる ヴィクトールが確認した後 言葉を続ける
「そして 同じく悪魔力の解明と静圧を行う もう1人の勇者」
ヴィクトールの言葉に驚くザッツロードたち ソニヤが思わず声に出す
「も、もう1人の勇者!?」
民衆、ザッツロードたち 全ての視線がヴィクトールの示すもう一方の手の先へ向けられる そこへ現れるリーザロッテたち ザッツロードと仲間たちが息を飲むのと同じくしてヴィクトールが言葉を続ける
「ツヴァイザー国王女リーザロッテと勇敢、優秀なるツヴァイザー国の兵士 そして仲間たちだ!」
民衆の歓声、喝采が一段と高まる 民衆の後方にはツヴァイザー国の兵の姿も見える ザッツロードたちと異なり リーザロッテは優雅にヴィクトールの隣へ立つと 民衆へ手を振って答える リーザロッテに付き従う兵であるレイトとヴェインが儀式用の槍の振る舞いを行いリーザロッテを引き立てる その様子にザッツロード横に立っていたソニヤとラナがムッと嫉妬する ザッツロードとセーリヤが苦笑する ヴィクトールの言葉が続く
「新生、アバロン帝国と2人の勇者へ祝福があらんことを!」
民衆から再び大きな歓声と喝采が上がる
部屋へ戻ったザッツロードたち ソニヤが声を上げる
「何よ!?あれ!?もう1人の勇者ですって!?」
ラナが静かに怒りを押し殺して言う
「以前会った時、確かにそれらしき事を言っていたと 思ってはいたけど まさかヴィクトール皇帝陛下に勇者と言わせるだなんて」
セーリアが困った様子で言う
「新生アバロン帝国ヴィクトール皇帝陛下に言われてしまっては…世界中の人に知らされたでしょうね…」
ソニヤがさらに言う
「そう!それにっ ヴィクトール陛下も酷いわよ!何でこっちは勇敢な仲間たちで 向こうは勇敢に優秀って付く訳!?こっちは優秀じゃないみたいじゃない!?」
ザッツロードが苦笑しながら言う
「いや…たぶんあれは リーザロッテ王女に付き従っている兵士の2人を表しているものだと…」
ソニヤが怒って言う
「仲間より兵の方が優秀だっての!?」
ソニヤがザッツロードへ掴み掛かる ザッツロードが引きながら言う
「い、いやそう言う事では…」
ソニヤを止めるようにセーリアが言う
「ま、まぁまぁ、とりあえず これで正式に私たちはアバロン帝国の一員になった訳だから これからは皆で力を合わせて…仲良く ね?」
ソニヤが一度セーリアへ顔を向け ぷいとそっぽを向いて言う
「あのお姫様と仲良くなんて 冗談じゃないわ!」
ソニヤと共に不満を顔に表していたラナも腕組みをしたまま言う
「勇者って言うのは 先代やそのまた先代から受け継いだ由緒正しいものだわ パッと出て来たお姫様にマネなんて出来やしないでしょうね」
ラナの言葉に ソニヤが頷く ザッツロードが焦りながら言う
「ま、まぁ… どっちにしても悪魔力を静圧しないと… ただ勇者だって言っても意味が無いよ」
ザッツロードの言葉にセーリアが同意する ソニヤとラナが顔を見合わせソニヤが言う
「そうよ!私たちが悪魔力を静圧して!あの偽勇者のお姫様を あっと言わせてやるわ!」
言い放ったソニヤの後ろ 開かれていたドアの先にリーザロッテが立っていて言う
「あら、それなら是非 私をあっと言わせて御覧なさい?そういう言葉は 実際に可能だと思われる時か ドアを閉めて 言ったら良いわ」
ソニヤが身動きしないまま顔色を変える ザッツロードとセーリアが焦る ラナが近くへ来て言う
「そっちこそ、覇気を失いたくなかったら 下手に私たちの近くへ近寄らない事ね?」
ラナの言葉にソニヤが覇気を取り戻し振り返り ラナと共にリーザロッテへ強気の視線を送る 一瞬引けを取るリーザロッテ リーザロッテの後ろからオドオドしながらシャルロッテが言う
「そ、そんな事 言うなら… ヴィ、ヴィクトール陛下の召集も… お、教えてあげないですぅ…っ」
シャルロッテが言ってからハッとする ソニヤとラナが焦る リーザロッテがぷいと顔を背け 歩みを再開させる ザッツロードが駆け寄ってきて言う
「あ、リーザロッテ王女、言伝を 有難う御座いますっ」
ザッツロードの言葉に足を止めたリーザロッテ 振り返って言う
「良いのよ?私たちの傍に来たくなかったら 私からヴィクトール陛下へ あなたたちは勇者を辞退しましたって言伝を 伝えて差し上げてよ?」
言葉を聞いたザッツロードが慌てて言う
「とんでもないっ リーザロッテ王女を 『ただの言伝係り』にするなんて事 私には出来ません」
ザッツロードの言葉に空気が固まる ソニヤが焦って言う
「た…『ただの言伝係り』」
ラナが焦って言う
「わ、私たちでもそこまでの言葉は 思いつかなかったわ」
リーザロッテの顔が引きつる 呆気に取られたレイトが遅れて怒って言う
「ぶ、無礼なっ リーザロッテ王女へ な、何たる物言いをっ」
槍を構えようとするレイトを後ろからロイが押さえて言う
「…城内での武器の使用は、脅しの鞭以外その全てを禁ずる アバロン帝国憲法三千六百五条」
ザッツロードが焦って言う
「え?あ…あれ?僕は何か…?」
リーザロッテが早足でその場を立ち去る 不思議そうに皆を見るザッツロード 頭を掻きながら 状況が判断できずに困る 仲間たちが呆れる セーリヤが苦笑して言う
「さ、さぁ、勇者が召集に遅れてはいけないわ 急ぎましょ?」
ソニヤが苦笑して言う
「そ、そうね」
ラナが表情を引きつらせて言う
「ええ…」
玉座の間へ向かったザッツロードたち ザッツロードたちが入ると左手にリーザロッテたち 自分らの前に居る人物に気付いて ザッツロードが名を呼ぶ
「オライオン!」
オライオンが自分を呼ぶ声に振り返って言う
「ん?…よう!勇者ザッツロード!」
オライオンの横にいるロスラグも振り返り言う
「あ!ローレシアのヘボ勇者ッス!」
ロスラグの言葉に怒るソニヤ 隣でリーザロッテが笑う ソニヤとラナがリーザロッテを睨む ロスラグの発言に ロスラグの右離れにいるロキが注意する
「…言論は慎め、現在皇帝陛下が議論中だ」
ロスラグがハッとして言う
「はいッス!すみませんッス ロキ隊長!」
ロキへ視線を向ける皆 ロスラグが謝る ロキが視線を変える 皆がそれに倣う 視線の先に ヴィクトールの前に跪く女性 ザッツロードたちが誰か?と話し合う ザッツロードが首を傾げ 隣のリーザロッテへ視線を向ける その視線に気付いたリーザロッテが一瞬ムッとするが 次に首を横に振って小声で言う
「私たちも今来たのよっ それにっ前の邪魔なボウボウ頭のせいで見えないわっ」
リーザロッテの声が聞こえてオライオンが振り返って言う
「あ?もしかして呼んだか?」
隣のロスラグがにやけて言う
「呼ばれてたッスよっボウボウ頭?」
ロスラグにムッと視線を送るオライオン ロキが咳払いをして言論を止める ロスラグが焦るオライオンがちょっと反応した後 溜め息と共に左へ移動してリーザロッテの視界を確保する リーザロッテに続き ザッツロードも覗こうとする ロキがロスラグを力ずくで自分の横まで移動させる 前方の視界が確保される 皆が確認すると同時に リーザロッテが叫ぶ
「お母様!?」
リーザロッテの声にその部屋に居る者全ての視線がリーザロッテへ注がれる 皆に遅れて振り返るアンネローゼ アンネローゼがリーザロッテの姿を確認するのと同時にリーザロッテがアンネローゼへ駆け寄り抱きつく アンネローゼが抱き止める リーザロッテが泣きながら声を上げる
「お母様っお母様っ!」
アンネローゼが微笑んで言う
「リーザ…」
アンネローゼがリーザロッテを呼び優しく頭を撫でる リーザロッテが顔を上げ泣きながら微笑む アンネローゼがその涙を拭ってあげながら アンネローゼも泣きそうな微笑を見せる アンネローゼが自分の涙を止め 気を取り直しヴィクトールへ向き直って言う
「ヴィクトール皇帝陛下、申し訳有りません お恥ずかしい所を…」
アンネローゼと共にリーザロッテがヴィクトールへ視線を向ける ヴィクトールが微笑んで言う
「いや、構わない 長期の幽閉生活 さぞ苦労があっただろう リーザロッテ王女も心細かった筈だ …ヴェルアロンスライツァー、あの混乱の中 よくぞたった一人でアンネローゼ殿をお救いしてくれた 貴公の忠義は賞賛に値する」
ヴィクトールの言葉に敬礼を深くするヴェルアロンスライツァー アンネローゼが軽く振り返り ヴェルアロンスライツァーを見て微笑む ロスラグがヴェルアロンスライツァーへの賞賛に表情を明るめる ロキが顔を背ける 気付いたロスラグが不思議そうに眺める ヴィクトールが間を置いてから再び言葉を発する
「さて、折角の再会の場に申し訳ないが 先ほどの話に戻らせてもらいたい アンネローゼ殿 シュレイザー国にて シュレイザー国国王殿から聞いたと言う話、聖魔力をローレシア城へ転送する機械を シュレイザー国の兵が取り付けたと言う その話の信憑性は如何程か?」
ヴィクトールの言葉を聞いたザッツロードが表情を暗くする ソニヤが心配して視線を向ける アンネローゼが答える
「はい、最初に取り付けを行ったのは115年前 祭壇から宝玉を取り外した後 宝玉の代わりにと 祭壇から発生する全ての魔力を抑える為に使われる予定だったそうです、しかし ソルベキア国は他国からの信頼に乏しく、全国との繋がりがあったシュレイザー国がその任を請け負ったと …シュレイザー国王は ソルベキア国からの攻撃があった際 その機械の隠蔽を条件に シュレイザー国への攻撃を停止させました」
アンネローゼの言葉を聞いて考えるヴィクトール バーネットが問う
「話は115年前の出来事だ、あの頃の記録は曖昧なものが多い …その話も あのチョッポクルスのハッタリなんじゃねぇのか?」
バーネットの言葉にヴィクトールが問う
「うん…確かに その可能性は否定できない しかし、曖昧な時代の話だけでソルベキアが 物流の要であるシュレイザー国の制圧を取り止めるだろうか?」
間を置き 再びバーネットが問う
「…なら、もしその話が事実だったとして 何でソルベキアがローレシアの為に シュレイザーへ依頼してまで その機械を付けさせる?ソルベキアにも それなりの得が無けりゃやらねぇだろ?」
ヴィクトールが言う
「当時のローレシアはかなりの力を有する大国だった…対するソルベキアは一国としての力も乏しく 他国からの信用も無かった ローレシアへ取り入る切っ掛けを求めていた…という可能性もある だが、ソルベキアは機械技術に優れた国だ ローレシアへ聖魔力を送る事以外の ソルベキアにとって得になる何かが隠されているのかもしれない」
バーネットが答える
「確かに、丁度あの頃 ローレシアはソルベキアと協定を結んでやがる でもって、その後はソルベキアがどんなデカイ事をやらかしても手を切らねぇ異常さがあった お陰でローレシアの繁栄まで落っこちるザマだったしなぁ?」
ヴィクトールが頷いて言う
「うん、たとえローレシアが聖魔力の力を必要としていたとしても、魔王退治の勇者伝説が終わり、更にその後の宝玉戦争が終った後まで 他国に引けを取らない武力をも有したローレシアが それを固持する理由は無かった筈だ、実際、聖魔力の値が高いローレシア領域には魔物が少ないが それでも ソルベキアとの協定を守り抜いてまで必要とする程のものではない」
バーネットがニッと笑い言う
「決まりだな?」
バーネットの言葉にヴィクトールが頷き 視線をザッツロードたちへ向けて言う
「聞いての通りだ、諸君にはシュレイザー国が委託され 祠の祭壇へ取り付けたとされる機械の調査、及びその解析 またその機械より供給されているという 聖魔力の送り先ローレシア城の調査 共に 機械を造ったというソルベキアでの調査 これらを至急行ってもらいたい」
ヴィクトールに続きバーネットが言う
「機械の解析には 機械に詳しい奴が必要だろ、そいつを見つけ出す作業も必要になる 人選はてめぇらで勝手に決めやがれ」
2人の言葉を受け その場に居合わせた戦士たちが顔を見合わせる それを確認したヴィクトールが兵を呼ぶ
「誰か、地下牢に居るシュレイザー国の…」
そこまでヴィクトールが言うと 続きをバーネットが言う
「あのカス チョッポクルスを引っ張って来やがれ!」
「はっ!」
兵が返事をして走る リーザロッテがハッとしてヴィクトールへ言葉を発しようとする タイミングを同じくしてヴィクトールが言う
「アンネローゼ殿、有力な情報の提供を感謝する 後は我々へ任せ 休まれると良い」
ヴィクトールの言葉に表情を明るめたリーザロッテが 俯いているアンネローゼへ声を掛ける
「お母様、さぁ、ヴィクトール陛下が仰って下さっています、…あの者の顔を見ないで済む内に」
リーザロッテの言葉を聞いてアンネローゼが顔を上げ ヴィクトールへ言う
「いいえ、ヴィクトール陛下 私も残ります!」
言葉を聞いたヴィクトールが一瞬驚いてから言う
「…しかし」
今まで膝を付いていたアンネローゼが立ち上がり 強い視線で言う
「あの方は、口先の上手い方です 人の隙を付いて巧妙な嘘を吐く可能性があります、私は… あの方がヴィクトール皇帝陛下やバーネット第ニ皇帝陛下へ その様な嘘を吐かない様 見張らせて頂きたいと思います」
リーザロッテが驚いて言う
「しかし、お母様っ」
リーザロッテが心配する アンネローゼがリーザロッテへ向いて言う
「私なら大丈夫よ リーザ、この世界を守るため… 私も あなたの様に強くなるわ」
リーザロッテが驚いて言う
「え…?」
ヴィクトールが微笑んで言う
「アンネローゼ殿は 先日の貴公の勇士をご覧になって居られたのだ わが子を誇りに思えるとは素晴らしい事 貴公もその期待に答えると良い」
リーザロッテがヴィクトールへ向いて驚き 視線をアンネローゼへ戻す アンネローゼが微笑んで頷く
「さぁ、リーザ あなたも、あなたの任務に戻りなさい」
アンネローゼの言葉にリーザロッテが微笑んで強く頷き言う
「…はい!お母様!私が… 私が必ず勇者になって きっと!我れらがツヴァイザーを大国にしますわ!」
アンネローゼが微笑む 話を聞いていたヴィクトールとバーネットが顔を見合わせ笑う ヴィクトールがバーネットへ言う
「これは大変だ… バーネット、ベネテクト国は大丈夫だろうか?」
バーネットが苦笑して言う
「はっはー、さぁな?まぁ たまにはツヴァイザーの女王様に ケツを引っ叩かれるのも良いんじゃねぇか?」
2人が笑う それを聞いてアンネローゼとリーザロッテが笑い 頷き合うとリーザロッテがザッツロードたちの下へ戻る
リーザロッテが仲間から自分の槍を受け取り 見つめていたザッツロードたちの下へ戻る リーザロッテがザッツロードへ言う
「…何よ?人の顔をじっと見るなんて失礼でしょ?」
言われたザッツロードが一瞬焦って言う
「あっ…すみません、その… 良かったですね」
ザッツロードが微笑んで言う リーザロッテを含む皆が一瞬驚き リーザロッテが一度視線を彼方此方へ向けた後 ザッツロードへ戻して声を上げる
「べ、別にっ わ、私が救出して差し上げるつもりだったのよ!私が勇者になればっ シュレイザーなんて… どうにでも出来ると思ってたんだからっ」
リーザロッテの言葉に ザッツロードたちの下へ来たロキが言う
「…シュレイザーは内外共に難攻不落と言われている たとえ卿が勇者になろうと、皇帝になろうと あの国の幽閉する者を救い出す事は難しかっただろう」
ロスラグが喜んで言う
「その難攻不落のシュレイザーからアンネローゼ王妃様を救い出すなんて… っくぅ~!やっぱり我らがヴェルアロンスライツァー副隊長は凄いッス!!」
ロスラグが歓喜の声を上げる ロキがロスラグの言葉を聞いて視線を逸らす リーザロッテが言葉を聞いて一瞬困った顔をするが 気を取り直し手を腰に当てて言う
「…まぁ、確かに?あの騎士は お母様がまだローゼント国の姫だった頃から仕えていた者だし …お母様がそれだけ素晴らしいお方だって事よね?」
リーザロッテの言葉に彼女の後ろに控えていたレイトが頷いて言う
「はい!アンネローゼ王妃様はツヴァイザー国の民を守る為 自ら敵陣へ赴きその御身を差し出されたお方 真、素晴らしいきお方です!」
話を聞いてロスラグがリーザロッテへ掴みかかって言う
「だーから!その王妃様をたった一人で救い出したッスよ!やっぱヴェルアロンスライツァー副隊長が凄いんッス!」
リーザロッテが言う
「その『ヴェルア何とか』を仕えさせるほどの お母様が!素晴らしいのよ!」
ロスラグが衝撃を受けて怒って言う
「ヴェルアロンスライツァー副隊長ッス!」
ロスラグとリーザロッテが火花を散らす ザッツロードが焦って言う
「ま、まぁまぁ、どっちも 凄いって事で良いじゃないですか?」
ザッツロードの言葉に2人か顔を向ける ザッツロードが再び焦りながら言う
「あ、えっと… 1人の騎士へ 属する国が変わっても忠義を尽くさせる程の王妃様も、王妃様が他国に移っても忠義を突き通す騎士も どっちも凄いと 僕は思います どちらも真似しようとして簡単に出来る事では 無いですから」
ザッツロードの言葉を聞いてリーザロッテが後ろのレイトを振り返る リーザロッテの無言の問いにレイトが答える
「自分も、勿論!例え国が変わろうと リーザロッテ様へ忠義を誓います」
レイトの言葉に微笑むリーザロッテ 逆側を振り返り 同じくヴェインに無言で問う ヴェインが慌てて答える
「無論っ自分もリーザロッテ様に忠義を!」
リーザロッテが笑みを声に漏らしてから ザッツロードへ顔を向けて言う
「この2人ならやってくれる筈よ?貴方には~ 真似すらも難しいかもしれないわね?」
ザッツロードが苦笑して言う
「あー…はは、そうですね…」
後方でソニヤとラナが膨れる ロスラグがニヤニヤ笑ってザッツロードへ言う
「ヘボ勇者には とーてー無理ッス!」
ロスラグの言葉を聞いてザッツロードが苦笑する ロスラグの横で ロキが顔を背け言う
「…国を守らず1人の王にのみ仕えるなど …俺には到底理解できん」
ロキの言葉にハッとするロスラグが焦って困る リーザロッテの後ろに居るロイが頷いて言う
「…同感だ、兵は国を守り 王は兵と共に国を守る 属する国が変われば その国の兵と王でその国を守るべきだ」
全員の視線が再びザッツロードへ向く ザッツロードが焦って言う
「え?!ええっと…」
ザッツロードが返答に困っていると オライオンが両手を頭の後ろに回して言う
「なぁ?んなのどっちでもいーからよ、早く 誰が何やる って決めねぇと…」
オライオンがそこまで言った時 彼らの後方玉座の近くで鞭の音が響く 皆が驚き振り返る バーネットが鞭を片手にチョッポクルスへ怒鳴る
「このカスチョッポクルスがぁあ!さっさと全部言わねぇえと 本当にぶん殴るぞぉおお!!」
チョッポクルスが怯えながら言う
「ま、待て~~ よ、余の し、知っている事は~~ も、もう全部 い、言ったと も、申しておる~~ あ、あと そ、その名を呼ぶで」
アンネローゼが怒って言う
「嘘ですわ!あなたはその機械の事を詳しく知っている事を理由に ソルベキアからの物資を独占していらしたではありませんか!?」
チョッポクルスがバーネットへ言った後 振り返ってアンネローゼへ笑顔で言う
「呼ぶでない~~ お!?お、おお~~ き、妃? き、妃ではないか~~ よ、余を助けに き、来てくれたのかっ お、おお~~ や、やはり そなたは よ、余の事を~~」
アンネローゼが怒って言う
「違いますっ!」
ヴィクトールが片手で額を押さえ 呆れながら言う
「シュレイザー国元国王、そろそろ 本当の事を言って頂けなければ 私はバーネット第二皇帝への拷問禁止令を解かなければならなくなります、そうなる前に」
チョッポクルスがヴィクトールへ向き直り焦って言う
「ヴィ、ヴィクトール~~!は、早く そ、そこのバかーネットを と、止めないか~~っ も、もうちょこっとで む、鞭が よ、余に~~ あ、当たってしまうわ~~」
バーネットがヴィクトールへ向いて言う
「ヴィクトール… もう良いだろぉ?!これ以上待ったって このカスチョッポクルスは 知らねぇの一点張りだぜぇ?」
ヴィクトールが一度息を吐き バーネットへ向いて言う
「いや、我らアバロン帝国は 王国時代から拷問を禁じている 帝国として成り立ち 日の浅い内に その過去の栄誉を踏みにじってしまう事は 極力…」
チョッポクルスが笑顔で言う
「そ、そうじゃろ~~!?ご、拷問など お、お前には~~ に、似合わん や、やっぱりお前は~~ ち、ちっこい頃と か、変わらんな? な、泣き虫ヴィクトール~~?」
ヴィクトールが衝撃を受け 真顔で言う
「バーネット第二皇帝、現時刻を持って貴公への拷問禁止令を解除する」
チョッポクルスが衝撃を受ける
「!?」
バーネットが一瞬呆気に取られた後 にやりと笑って叫ぶ
「…はっはー 喜べ!このカスチョッポクルスがぁああ!!!」
バーネットが鞭を振るう チョッポクルスの身を鞭が僅かに掠る チョッポクルスが涙目で言う
「い、いいい 痛った~~~!か、掠った!掠ったぞぉお!?」
バーネットが迫力を付けて言う
「次は外さねぇ…」
チョッポクルスが慌てて言う
「わ、わわわ、分かった!い、言う!い、言うから よ、余を叩くでないっ そ、それから余を そ、その名で呼ぶでないと な、何度言ったら分かるんじゃ? バ、バカーネットめ」
鞭の音が一発鳴り響く オライオンが視線を戻して言う
「あの鞭 本当に当たると すっげぇ~~痛てぇって 昔、親父が言ってたんだ、あのオッサンが終った後、俺たちが まだ ここに居たらよ…」
オライオンの言葉に皆の顔が引きつる リーザロッテがザッツロードへ言う
「い、今は とにかく急がないといけないわ!…と、言う事で今回だけ人選を あ、貴方に任せてあげる」
言われたザッツロードが焦って言う
「え!?わ、私がですか!?」
リーザロッテが慌てて言う
「そうよ!急ぎなさい!!ほらっ!もうあの『オッサン』が喋り始めているわ!は、早くなさいっ!」
皆の視線がザッツロードへ向けられる ザッツロードが言う
「え、えっと 僕らが任された事は【祠に設置された機械の調査】【その機械を解析する人を探す事】【ローレシア城の調査】【ソルベキア国の調査】この4つだ …えっと…」
ザッツロードが悩むとリーザロッテが言う
「それじゃ、最初の一つ目よ!祠に設置された機械の調査なら その祠の場所を知っている人が居なければ分からないでしょ?私たちなら分かってよ!?」
リーザロッテが言うと オライオンが声を発する
「あ、それなら俺も分かるぜ!」
隣のロスラグも言う
「俺も分かるッス!」
ラナが言う
「私たちもソイッドの祠なら分かるわ」
ザッツロードへ視線が集まる ザッツロードが言う
「う~ん、では最初のは誰でも大丈夫そうだね?先に他のを決めてからにしよう 次は【機械の解析をする人を探す】…これはどうかな?」
リーザロッテがシャルロッテを振り返り言う
「シャル、貴方なら分かるのではなくて?」
シャルロッテが衝撃を受け顔を横に振って言う
「わ、わわわ私はプログラムならっ 分かりますがっ 機械その物の解析となるとっ ちょっと自信ないですぅ!ご、ごめんなさいっ」
オライオンが隣のロスラグを振り返る ロスラグがその視線に気付いて言う
「あーっ 俺は機械詳しいって言うかッスね?市販されている機械を使いまくってるだけッスから~ んな見た事も無いものを 解析しろなんて 無理ッス!」
ロスラグが両手を前で振ってみせる ザッツロードが考えて言う
「ソルベキアの機械だから ソルベキアの人なら…?」
ザッツロードの小さな声にソニヤが言う
「ソルベキアの機械をソルベキアの人に解析してもらうって… ちょっと危険じゃない?嘘言われちゃったら困るし?」
ソニヤの言葉にラナが頷いて言う
「ソルベキアを立て直す為にどんな手を使ってくるか分かったもんじゃないわ もっと客観的な第三者が居ると良いのだけど」
リーザロッテが言う
「そんな人… ガルバディアは国を閉ざしているし、他にソルベキアの機械が分かる人なんて」
セーリアが思い出して言う
「待って、彼なら分かるんじゃないかしら?!」
皆の視線がセーリアへ集まる ソニアが声を上げる
「あ!そっか!」
ラナが言葉を繋げる
「バッツね!?」
ザッツロードがはっとして言う
「そうか!彼ならきっと分かるはずだ!」
ザッツロードたち以外のメンバーが疑問する レイトが言う
「諸君らの知り合いで居るというのであれば その人物の下へ諸君らが行くべきだ」
リーザロッテが頷いて言う
「そうね、それじゃ 貴方たちはそうして頂戴」
ザッツロードが顔を横に振って言う
「いえ、彼を迎えにいく程度なら1人か2人も居れば十分です、ラナ、セーリア頼めるかい?」
ザッツロードの言葉に2人が顔を見合わせ ラナが言う
「な、なんで私たちなのよ?」
ザッツロードが驚いて言う
「え?いや、だって 以前連れて来てくれたから」
セーリアが微笑んで言う
「それなら、今回はラナだけで大丈夫ね?」
ラナが焦って言う
「ちょ、ちょっと待って!今回はセーリアが飛び込んで頂戴!」
セーリアが顔を赤くして頬を両手で覆って言う
「わ、私には出来ないわ… あ、面識があるのだからソニヤでも」
ソニヤが驚く
「え!?わ、私!?い、嫌よザッツ行ったら!?」
ザッツロードが驚く
「え!?僕が?…いや、たぶん『レディ』の方が良いんじゃ…ないかな?」
ザッツロードが苦笑して言う リーザロッテが溜め息を付いて言う
「つまり、貴方方の 誰かが行けば良いって事ね?」
リーザロッテの後ろからロイが言う
「…では次の項目へ移るべきだ」
ロイの横に居るシャルロッテが続ける
「も、もももう 急がないとっ じ、時間がないですぅ!」
ザッツロードたちが思わず玉座の方を向く 視線に気付いたバーネットが顔を向け 迫力を付けて疑問する
「あん?」
ザッツロードたちがすくみ上がり 再び皆の視線がザッツロードへ向く ザッツロードが焦って言う
「の、残りはローレシアに行く人とソルベキアに行く人だ!どうしよう!?」
シャルロッテが手を上げて言う
「あ、あああのっソルベキアは複雑なので 案内出来る人が ひ、必要だと思いますっ」
リーザロッテが頷いて言う
「なら、シャルと私たちが行ったら良いかしら?」
ザッツロードが頷いて言う
「それなら、ローレシアへは 私と仲間たちが」
ロスラグが声を上げる
「ちょっと待つッス!ローレシアはヘボ勇者の故郷ッスよ!?隠蔽とかされたら それこそ台無しッス!」
ザッツロードが思わず声を上げる
「そんなっ僕は!」
オライオンが首を傾げる リーザロッテが頷いて言う
「そうね!貴方たちだけでは行かせられないわ!」
ソニヤが怒ってロスラグとリーザロッテを向いて言う
「ちょっと!ザッツはそんな事しないわよ!」
ロキが静かに言う
「…ではリーザロッテらの隊員を 諸卿へ取り入れ行けば良いだろう」
ロキの言葉にソニヤとラナが驚く リーザロッテが手を腰に当て頷いて言う
「そうね!偏見が無い様に メンバーを変える と言うのは良い手だわ」
ザッツロードが仲間たちを見てから言う
「では…私の仲間とリーザロッテ王女の仲間 半分を交換して…それぞれローレシアとソルベキアへ 後、バッツを呼びに行くのに…えっと?」
リーザロッテが溜め息を付いて言う
「こっちは貴方のメンバーが居なくても そっちのボウボウ頭とかでも良いわよ?」
リーザロッテに指差され オライオンが言う
「あ?俺か?」
隣でロスラグが笑い 笑顔で言う
「なら!俺とロキ隊長で祠の調査ッスね!」
ロスラグの言葉にラナが首を傾げる
「貴方たちは同じ国の同じ部隊の人でしょ?ローレシアやソルベキアの調査とは違うかもしれないけど 偏見を無くすって案は 祠の調査でもあった方が良いのじゃない?」
ラナの言葉に ロスラグが膨れる リーザロッテが言う
「それは一利有るわね、となると…」
リーザロッテが周囲を見渡してから言う
「私と一緒に行くのはシャル、ロキ、それと…あなた!」
リーザロッテに指差されて ラナが驚いて言う
「わ、私?」
リーザロッテが顔をしかめて言う
「そうよ、文句があるなら」
ラナが間髪いれず言う
「良いわ!」
ラナがリーザロッテの近くへ行く リーザロッテが続ける
「ザッツロード王子と一緒に行くのが レイト、後そこのボウボウ頭!」
オライオンが怒って言う
「オライオンだ!」
オライオンが怒りながらザッツロードのもとへ行く レイトがシャルロッテとリーザロッテへ声を掛ける
「シャル、リーザ様を頼むぞ リーザ様、どうかお気を付けて…」
レイトがザッツロードの下へ行く リーザロッテが続ける
「祠の調査にヴェインとロイ この2人は私のメンバーだけど、2人とも気が合わないから丁度良いわ!それに…そこの貴方!」
リーザロッテがロスラグを指差す ロスラグが声を上げる
「俺はヴェルアロンロキスライグッス!」
ヴェインとロイがロスラグの下へ行く ヴェインが小声で文句を言う
「ふんっ姫様の命とは言え こんな馬鹿と一緒か」
ロイも文句を言う
「…その馬鹿のお守りらしい」
ロスラグの下にヴェインとロイが文句を言いつつ行く ロスラグが2人を睨む 二人が顔を背ける メンバーを見てザッツロードが言う
「セーリア、1人だけどバッツに宜しく」
セーリアが呆気に取られてから頬を赤らめ困る 気を取り直して頷いて言う
「わ、分かったわ、なんとかやってみるわ」
オライオンが決まったメンバーを一通り見て言う
「なぁ?ソルベキアは… その機械を調べる俺たちの事 敵視してくるかもしれないだろ?そのソルベキアへ行くのにたった4人じゃ貧弱じゃねぇか?俺はそっちに行くぜ?」
言いながらオライオンがリーザロッテの下へ行く ザッツロードが頷く
「確かに、ソルベキアの方が危険だから この方が良いね」
リーザロッテがメンバーを確認して言う
「でも、これでは…もし貴方が裏切った時 そっちに優位だわ」
リーザロッテの言葉にソニヤが怒る その時ヴェルアロンスライツァーがやって来る ザッツロードがヴェルアロンスライツァーに気付いて声を掛ける
「ヴェルアロンスライツァー」
ザッツロードが名を呼んで見上げる ヴェルアロンスライツァーがザッツロードとリーザロッテを見て言う
「私も貴殿らと共に行く …どの部隊へ入ったら良いだろうか?」
言うと共にメンバーを見渡す ロキが言う
「…アンネローゼ王妃の護衛はどうした?」
ヴェルアロンスライツァーがロキへ向いて言う
「アンネローゼ様の命だ 貴殿らと共に向かう様にと」
ヴェルアロンスライツァーの言葉を聞いたロキが顔を背ける それを確認してヴェルアロンスライツァーが再びザッツロードたちへ視線を戻す ザッツロードが言う
「万が一ソルベキアで戦いが行われるとすれば ラナの魔法と彼の剣が役に立つ筈です」
言葉を聞いたリーザロッテが考えて言う
「…確かにそうね」
話を聞いていたロキが言う
「…なら俺がザッツロードと共に行く 卿がこちらのメンバーに入れ」
ロキが言って移動する ヴェルアロンスライツァーがその場所へ入る 改めてメンバーを見るザッツロード ふと気付いて言う
「あれ?そういえば…オライオン、君の隣に居る その人は?」
ザッツロードの言葉にその場に居るメンバーの視線がオライオンの隣に浮かぶシュライツへ向く リーザロッテが言う
「あぁ、あんまりにも喋らないからメンバーとして考えなかったのよね 何なの?魔法使い?魔術師?…身体が浮かぶって事は 相当の魔力なのかしら?」
リーザロッテが言うと共にシャルロッテが魔力を計測して驚く
「す、凄い…こんな魔力 魔法使いでも魔術師でも …まさか15年前の! ガルバディアのウィザードでは!? な、ないで しょうかっ…?」
途中でモバイルPCから顔を上げ語尾がごもるシャルロッテ シャルロッテの言葉に皆の視線がオライオンの相棒に向けられる 皆の視線を受けシュライツがビクッとして オライオンの背に隠れる オライオンが苦笑して言う
「いや、違げぇよ、こいつはシュライツ 俺の相棒 でもって 俺の兄貴なんだけど~ 長い間ガルバディアに居たもんだから ちょっと色々世間知らずでよー?言葉も喋れねぇし」
オライオンが頭を掻く 皆が驚く リーザロッテが問う
「ガルバディアに!?一体どうやって!?」
ザッツロードが続いて問おうと言葉を発する
「ガルバディアの… あのウィザードと同じほどの魔力を持っているのなら!」
2人に詰め寄られオライオンが後退る
「ちょ、ちょっと待てって、色々あり過ぎて そんないっぺんにっ」
2人に押され困るオライオン その後ろでシュライツが後方を見てビクッと驚き オライオンを奇怪な声で呼ぶ オライオンが振り返って言う
「あぁ?ちょっと待てって 今こいつらが」
シュライツが後ろを指差して騒ぐ その騒ぎ様にオライオンがシュライツの指差す方を向く バーネットが怒って言う
「…てめぇら…」
オライオンに続き リーザロッテとザッツロードもバーネットに気付きすくみ上がる バーネットが鞭を振るって叫ぶ
「まぁあ~だ 居やがったのかぁああ?! この…薄のろどもがぁああ!!」
周囲に鞭の音が響き渡り 玉座の間の出入り口からザッツロードら全員が逃げ出して行く バーネットの後方でヴィクトールが苦笑している
【 ローレシア国 】
アバロン帝国から移動魔法でローレシア城へ飛んだザッツロードとソニヤ、レイト、ロキの4人 ザッツロードを先頭にローレシア城へ入る ザッツロードが周囲を見渡して言う
「聖魔力が送られているとしたら…?」
ザッツロードが考えながら周囲を見渡していると レイトが言う
「以前、我々がローレシアを訪れ 竜族の者たちから聞いた話をローレシア国王へ進言した折 我々はこのローレシア城の地下へと案内された」
レイトが地下へ向かう階段を指差す ザッツロードがその階段を見て言う
「地下…確かに 地下にはソルベキアからの機械が 多く置かれている 聖魔力を受け取っているとしたら そこである可能性が高い 行ってみよう」
ザッツロードたちが地下への階段を降りる 通路を進むと簡単な扉がある ソニヤが扉を指差し問う
「ねぇ、そこの扉は?」
ソニヤの問いにザッツロードが答える
「ここは武器庫だよ」
言うと共に少し開いてみせる 扉の中を覗いたソニヤが頷いて言う
「ザッツはローレシア城の全部の部屋を知ってるの?」
会話をしながら歩くザッツロードたち ソニヤの問いにザッツロードが答える
「うん、そうだね大体は… でも 兵たちの宿舎や客室や城に仕える者の部屋なんかは その部屋がそうだって事を知っているだけで中を見た事は無いし あと 父上のお部屋や入室を禁じられた部屋とかも」
ザッツロードの言葉を聞いてソニヤが声を上げる
「それよ!そこに決まってるじゃない!?」
ザッツロードが疑問して言う
「え?」
ザッツロードが足を止める ソニヤが詰め寄って言う
「その お父さんの部屋と!入室を禁じられた部屋!その2つに決まってるでしょ!?」
ソニヤの言動にザッツロードが苦笑して言う
「もし 父上の部屋にあったのなら 既にアバロンに押収されていると思うし、入室を禁じられた部屋って言うのも沢山あり過ぎて…どこから手を付けて良いのか…」
ザッツロードの言葉にソニヤが顔をしかめて言う
「な…何それ?そんなに沢山 入っちゃいけない部屋があるって言うの?」
ソニヤの言葉に苦笑するザッツロードが答える
「うん… 今思いつくだけでも170部屋位はあるよ」
言葉を失うソニヤ 話を聞いていたロキが言う
「…ローレシアは歴史の古い国だ 今は使われていない部屋や 何に使っていたのかすら 忘れられた部屋もあるだろう」
言うと共に歩みを再開させる 皆がそれに続き歩き始める ロキの言葉に ザッツロードが頷き言う
「そうなんだ、僕が子供の頃 その今は使われていない部屋へ迷い込んで そのまま戻れなくなってしまったんだ ローレシアでは僕が行方不明になったって大騒ぎになってしまって …それからは なるべく普段使わない部屋へは行かない様にしたんだよ」
ザッツロードが照れ臭そうに頭を掻く ソニヤが顔を引きつらせて言う
「…自分の家で…迷子?」
話を聞いていたレイトが誇らしげに言う
「その点、我が国の姫 リーザロッテ様は 幼少時、ご自分で城内の地図を作成され 更に1つ1つの部屋へ名前を付け城内を探察されていた 今でも半数以上にその当時付けられた部屋の名前生かされ 普段は使われない部屋も大切に管理されている」
レイトの言葉を聞いたザッツロードが驚く
「そ、それは凄い…」
レイトとザッツロードの様子にソニヤが膨れて言う
「ム~ッ…ザッツも!悪魔力を静圧したらローレシア城の部屋にぜ~んぶ名前付けなさいよ!」
ザッツロードが焦って言う
「えぇえ~!?む、無理だよっ」
話をしながら歩いた先 レイトが1つの扉の前で立ち止まって言う
「この部屋だ、我々はこの部屋へ閉じ込められ 悪魔力に命を奪われかけた」
レイトの言葉にザッツロードが扉へ近づき言う
「では、まずはこの部屋から確認しよう」
言うと共に扉を開こうとする だが鍵か掛かっている 皆の視線がザッツロードへ集まる ザッツロードが微笑んで言う
「あ、…ああ、大丈夫 城のマスターキーを持っているから」
言いながら鍵を取り出すザッツロード ソニヤがレイトを振り返って言う
「やっぱりザッツが来て正解だったわね?」
ソニヤの勝ち誇った笑みにレイトが答える
「万が一、リーザ様が来る事になっていたら 事前にヴィクトール陛下へ進言し この城の鍵を預かれば良いだけの話!」
レイトの言葉にソニヤが顔をしかめる その後ろでザッツロードが言う
「あれ… ダメだ鍵が合わない どうやら特注の鍵みたいだ…」
皆が扉を見上げる レイトとロキが顔を見合わせザッツロードへ向ける ソニヤがにやりと笑って言う
「ねぇザッツ、特注の鍵って事はやっぱり妖しいわよね?…こういう時は!」
ソニヤの言葉にザッツロードが苦笑して言う
「う、うん…仕方ないね その手で行こうか?」
ザッツロードの返答にソニヤが喜ぶ レイトとロキが顔を見合わせ ロキがザッツロードへ問う
「…ザッツロード、その手…とは?」
ロキの言葉にザッツロードが苦笑のまま顔を向ける ソニヤが笑って言う
「こういう時は!そのお城の関係者と一緒に!」
続けてザッツロードが言う
「はは…うん、ベネテクト式…だね?」
ザッツロードの言葉にソニヤが笑顔で力強く頷く レイトとロキが再び顔を見合わせ首を傾げる レイトが言う
「その ベネテクト式 というのは?」
その頃アバロン城では アバロン帝国第二皇帝バーネット·ベネテクトが 盛大なくしゃみをする
「へえっくしょいっ!」
隣に居るヴィクトールが振り向いて言う
「風邪かい?バーネット」
バーネットが口を拭いながら言う
「うん?…いやぁ んな事ねぇんだが?」
チョッポクルスが怒って言う
「か、かかった~~ か、かかったぞ~~バカーネッ…」
再びローレシア城 ソニヤが集中して魔法詠唱を行う その両サイドの壁にザッツロード、レイト、ロキ レイトが身を避け レイトが問う
「鍵を開ける魔法…などというものでもあるのか?」
レイトの問いにロキが答える
「…そんな魔法が有っては 世界から鍵を掛ける意味が無くなる」
ザッツロードが2人の会話に苦笑する 会話が終るとソニヤの魔法詠唱が終了し 魔法が発動 扉が破壊される レイトとロキが破壊に驚く ザッツロードとソニヤが部屋の中を覗く ソニヤが声を上げる
「だーい成功!」
ザッツロードが苦笑する ザッツロードたちが部屋の中に入り辺りを見渡す レイトが壁を指差して言う
「あの機械を操作すると この部屋の中心に宝玉が現れ」
ザッツロードが驚いて言う
「宝玉!?」
レイトが頷いて言う
「ああ、その宝玉を取り外すと 悪魔力が吹き出すのだ あの扉を閉められ 密室にされた状態でな」
レイトが元扉があった場所を指差し言う ソニヤがそれを見て言う
「なら もう密室にはならないから 大丈夫って事よね?」
ソニアが言うと共に機械へ駆け寄る ザッツロードが慌ててソニヤの傍へ行って言う
「ソ、ソニヤ 機械の操作なんて出来るのかい!?」
レイトとロキがやって来て ロキが言う
「…宝玉に関する機械なら 慎重に事を進めねばならない」
続けてレイトが言う
「また軽率に破壊などしてはっ」
レイトの言葉にソニヤが振り返って言う
「破壊なんてしないわよ!失礼ね!私がそんな事する様に見えるっていうの!?」
レイトとロキが頷く ザッツロードが苦笑する ソニヤが怒ってその場を退いてザッツロードへ言う
「ならザッツが操作してよ!」
ザッツロードが慌てて言う
「えぇえ?!ぼ、僕が?」
ザッツロードが驚いて一歩下がる レイトとロキが両サイドからザッツロードを引っ張ってロキが言う
「…この場では卿が相応しい」
レイトが言う
「この城の持ち主でもある ザッツロード王子が行うべきだ」
ザッツロードが言う
「い、いや、城の持ち主は父上だし、僕は第二王子だし…」
ザッツロードが言い訳をするが レイトとロキの2人に引かれ 機械の前に立たされる ザッツロードが機械に向き合って考えて言う
「えっと…」
ザッツロードが言いながら機械を操作する 何度かエラーが起きる 後に機械の横の壁が下がり ソニヤが覗くと通路がある ソニヤの様子にレイトとロキもその場へ行って確認する 遅れてザッツロードが見て言う
「通路が…」
その横でソニヤが魔法の詠唱を終え光りの球体を作り出す 明かりを得て通路の奥が照らされる ソニヤがザッツロードを振り返り言う
「さ、行きましょ?」
ソニアが言うと共に歩き出す レイトとロキが続きザッツロードが慌てて続く 通路の先 部屋がある 鍵の掛かっていない扉を開き 中へ入る 皆が周囲を確認する ソニヤがザッツロードへ問う
「ここは?」
ザッツロードが顔を横に振って言う
「分からない、初めて見るよ」
レイトとロキが周囲にある書類や本を手に取って確認する 埃の積もっている机の上にあった手紙を手に取りレイトが読む
「『親愛なるアバロン国国王ヴィクトール4世 北の国に続き ガルバディア国からの連絡が途絶えてしまった 貴殿のもとには連絡は繋がっているのであろうか?至急連絡を取り継ぎ かの時に備える様伝えて頂きたくここに』」
レイトの言葉にザッツロードとソニヤが驚く ソニヤが言う
「それって!もしかしてローレシア国王から昔のアバロン国の王様への手紙!?」
ザッツロードが考えて言う
「ヴィクトール4世…というと 今のヴィクトール陛下が13世だから9代前 180年以上前の物という事に」
ザッツロードとソニヤがレイトの持つ手紙を見る レイトが他を探す ソニヤが手紙を読み返し問う
「ねぇ、ガルバディアは分かるけど 北の国って何?」
ソニヤの言葉にザッツロードが言う
「ガルバディアはこの大陸の一番北にある国だ」
ザッツロードの言葉にソニヤが問う
「じゃぁ、北の国はガルバディアの事?だとしたらちょっとおかしな手紙じゃない?」
ソニヤから手紙を受け取りザッツロードが言う
「『北の国に続き ガルバディア国からの…』そうだね、これを読む限りガルバディアよりも以前に 連絡が途絶えた北の国 があったと言う事になる」
ソニヤが首を傾げて問う
「でも、ガルバディアより北に国は無いわ?…北の国はずっと昔に滅んでしまったから 連絡が途絶えたって事?」
ザッツロードがう~んと唸りながら手紙を机へ置く
「分からない、先代勇者の記憶で僕は115年以上前の地図を見たけど その地図にもガルバディアより北に国の名前は無かった…でも、もしかしたら」
ソニヤが言う
「もしかしたら?」
ザッツロードが言う
「竜族の村の様に…何らかの閉鎖処理がされて 容易には近づけない様にされた上 地図からも消されているのかもしれない それなら… 国名が無い事にも納得が出来る」
ザッツロードの言葉にソニヤがハッとしてもう一度手紙を見て言う
「そっか!北の国って 国名じゃないわ! ガルバディアはガルバディア国って書いてあるのに」
本棚の本を手に取って見ていたロキが言う
「…『ローレシア暦1032年デネシア国の宝玉が先住民族に奪われる』 ザッツロード、ローレシア暦1032年と言うのは 今から何年前の話になるのだ?」
ロキに問われ考えるザッツロード
「1032年…今がローレシア暦1166年だから134年前の話だ」
ロキへ顔を向けて言うザッツロード ロキが頷いて言う
「…では今から134年より前まで 宝玉はデネシア国にもあったという事になる」
ソニヤが声を上げる
「その『先住民族』って言うのは?」
ソニヤの問いにザッツロードが考える 机の引き出しを調べ終えたレイトが数枚の紙を片手に言う
「『北の国』も『先住民族』も今では使われていない言葉だ、だが 考古学者などに聞いたら分かるかもしれない」
レイトの言葉に続きロキが言う
「…今は分からぬ言葉の詮索を行うより それらしき資料を集め 後に考えるなり学者を頼るなりを行うのが得策だ」
言うと共に再び本へ目を向けるロキ ザッツロードがソニヤへ向いて言う
「うん、僕達も探してみよう、ロキの言う通り 考えるのは後だ」
ザッツロードの言葉にソニヤも頷いて言う
「そうね!それじゃ、私はあっちの本棚を調べてみるわ!」
言うと共に一番遠い本棚へ走っていくソニヤ ザッツロードも辺りを見渡し向かう
集められた資料を確認するザッツロード 一度頷き皆へ言う
「どうやら、この部屋にある資料は どれもローレシア暦1000年から1050年のものみたいだね」
ザッツロードの言葉にレイトが頷き言う
「うむ、ただ、最初に発見したこの手紙だけは少し様子が違うらしい
レイトの言葉にソニヤが問う
「様子が違うって?」
ソニヤの言葉にロキが言う
「…この手紙に書かれている文字は 他の資料にある筆跡と異なっている それにヴィクトール4世は ローレシア暦で言う所の950年前後の人物だ つまり、これは他の資料よりも以前の人物にあてた手紙だという事になる」
ロキの言葉にソニヤが納得の声を上げる
「なるほど~」
レイトがザッツロードへ向けて問う
「それで、大体どの様な事が分かり、そしてどの様な点が疑問になるのだろうか」
レイトの言葉を受け ロキが言う
「…俺が集めた物には ローレシア国とデネシア国に関する事が書かれていた 特に注目する点として『ローレシア暦1032年デネシア国の宝玉が先住民族に奪われる』この後、ローレシア国はその宝玉を奪還するべくデネシア国へ手を貸している しかし、結果として宝玉の奪還は失敗に終わり 宝玉の力を使われての仕返しを恐れたデネシア国の依頼を受け ローレシア国はローレシア国の有する宝玉の力を使い その先住民族の国を閉鎖したと」
ロキの言葉を聞いてザッツロードが言う
「では、もしやその『先住民族」というのは!」
ザッツロードに続きソニヤが声を上げる
「竜族の事ね!?」
2人の言葉にロキが頷く
「…断言は出来ないが その可能性が極めて高いと思われる」
ロキに続きレイトが話し始める
「こちらにあった資料には ローレシア領域の宝玉が1つ失われたと言うものだ」
皆の視線がレイトに集まり レイトが本を片手に話を進める
「『ローレシア暦1050年かの時に備え宝玉を確認、ソイッドの民宝玉を紛失』その行方は分からず捜索は難航であると」
レイトの言葉にソニヤがザッツロードへ言う
「ねえ!それって!」
ソニヤの言葉にザッツロードが頷く
「ああ!先代たちがソイッド村で聞いた 115年前の戦争より前に ソイッド村の宝玉が隠された と言う話と繋がる」
2人の言葉にレイトが続ける
「そして、重要なのがここで言う『かの時』だ、ローレシア暦1050年と言えばローレシアの初代勇者が旅を始めた時期、時を同じくしてローレシアは各国の宝玉を確認していると言う事になる つまり、あの手紙にもある これらの『かの時』というのは」
レイトの言葉にザッツロードが言う
「『かの時』と言うのは! 悪魔力が世界を覆う危機 を表す言葉であると!?」
ザッツロードの言葉にレイトが頷いて言う
「こちらも確証は無いが、そう考えれば話が繋がるのではないだろうか?」
レイトの言葉に皆が頷く ソニヤが声を上げる
「ねえねえ!聞いて!こっちにはね!」
ソニヤが本を片手に飛び上がってから本を開いて読む
「『ローレシア暦1000年予てより続いていたアバロン国、ツヴァイザー国、スプローニ国の戦いが終戦を迎える』!」
ソニヤが本から顔を上げツヴァイザー国のレイト、スプローニ国のロキ 2人の顔色を伺う その様子にザッツロードが焦る ロキが軽く咳払いをしてから問う
「…それで、その歴史の何が重要なのだ?」
ロキの問いにレイトが逸らしていた視線を戻して話の続きを促す ソニヤが微笑と共に再び本を開いて言う
「続きはね!『ツヴァイザー国、スプローニ国を制圧したアバロン国、2国が在する東の大陸に新たな国の建国を開始する』」
レイトとロキの2人が一度顔を見合わせ ロキが逸らす レイトが問う
「それで、その歴史の何が重要なのだろうか?」
レイトとザッツロードの視線を受けながらソニヤが笑顔を向け 再び本を見て言う
「『ローレシア暦1032年アバロン国の建国した東の国へツヴァイザーの宝玉を謙譲させる この新国の名はベネテクト国とされた』!」
ザッツロードが驚いて言う
「それは凄いっ!」
ザッツロードの驚きにソニヤがはしゃいで言う
「でしょ!?でしょー!!」
ザッツロードとソニヤが笑顔を向け合う レイトが声を上げる
「ではっ元々ベネテクト国の宝玉は 我らがツヴァイザー国が保持していたと言う事になる!これは…きっと姫様も喜ばれるだろう…」
レイトが1人で喜ぶ そのレイトから視線を外しロキがザッツロードとソニヤへ言う
「…では、ベネテクト国はアバロン国が創った第二のアバロン国であると言える そうなると今 かのベネテクト国国王がアバロン帝国の第二皇帝と言うのは あながち間違えでは無い様だな」
ロキの言葉を聞いてソニヤが笑う
「そうそう!これさ!ちょっと運命的だと思わない?!バーネット陛下喜ぶかなぁ~!?」
言いながらザッツロードへ問いを向ける ザッツロードが苦笑しながら言う
「ど、どうかな?まぁ…悪くは無いと思うけど」
ザッツロードの曖昧な返答に ソニヤが不満そうな顔をして言う
「で?ザッツの方は?」
ソニヤに言われ ザッツロードへ皆の視線が向く ザッツロードが苦笑しながら頭を掻いて言う
「あ…僕もソニヤと同じ様な事なんだけど」
言いながら本を開いて読む
「『ローレシア暦1000年アバロン国の新国家建設に対応するべく 予てよりアバロン大陸の南端にあった町へ融資を行い これを我が国の第二の国家と見越す』」
ザッツロードの言葉にソニヤが声を上げる
「それじゃ!」
レイトとロキも言葉を押さえザッツロードへ話の続きを促す ザッツロードが一度頷き 再び読む
「『ローレシア暦1032年我が国の第二国家と見越していた町が独自に国家宣言を行い 隣国ローゼント国の宝玉を強奪 その国名をソルベキア国と発表した』」
ザッツロードの言葉を聞き皆が顔を見合わせる ザッツロードが言う
「アバロンの第二国家がベネテクト国なら、ローレシアの第二国家となる予定だったのがソルベキア国 でもソルベキアはローレシアに属する事無く独自の道を行く事を選んだんだ」
ザッツロードに続きロキが言う
「…そして、独立したソルベキア国はローゼント国の宝玉を奪った」
ロキに続きソニヤが言う
「もう!やっぱりソルベキアって昔っから勝手なのね!」
ソニヤの言葉にレイトが言う
「この話を聞いては 元ローゼント国のアンネローゼ様や同国の騎士であった ヴェルアロンスライツァーは悲むだろう」
皆の意見を聞いてからザッツロードが再び言う
「あと、もう1つ気になる事が」
ザッツロードの言葉にみなの視線が再びザッツロードへ集まる ザッツロードが本のページをぱらぱらめくりながら言う
「詳しくは分からないんだけど、当時宝玉に聖魔力を集めるには魔力穴と言うものが必要なのだと思われていたらしくて その魔力穴と言うのがあの祠の祭壇に設けられているのだと」
ザッツロードの言葉にソニヤが言う
「あ!だから昔は 祠の祭壇に宝玉が置かれていたのね?」
ソニヤに続きロキが言う
「…だが、実際には 宝玉はどこに置かれていても大気中の聖魔力を吸収する事が出来る 恐らくそれ故に 初代勇者が祭壇から取り外した後 各国で保管される時も 祭壇へ置かれる事が無くなったのだろう」
ロキの言葉を聞いてザッツロードが頷き言う
「うん、僕もそう思う しかしこの時代には 宝玉を保管する国は新たに魔力穴と祭壇を作ったらしいんだ」
ザッツロードの言葉を聞いてソニヤが言う
「じゃあ…きっとこの時出来たベネテクト国もソルベキア国も祭壇を作ったんでしょうね?」
ソニヤの言葉を聞いてレイトが言う
「それでは!悪魔力を噴出させる あの祠の祭壇は 我らの先祖が自ら作ってしまったと言う事か?」
レイトの言葉にザッツロードが頷いて言う
「うん、きっとこの時代に両国合わせて2つ作られたはずだ、それで もしあの祠や祭壇が本当に人の手で作られると言うのなら その祠より強力な悪魔力を発する…あの島も…もしかしたら元は」
ソニヤが悲鳴を上げて言う
「そんな!嫌よ!あの島の悪魔力は 人の手で造られた祠のせいだって言うの!?」
ソニヤの言葉にロキが言う
「…そうと決め付ける事は出来ない、ただ 可能性は…」
ロキの言葉に頷きレイトが言う
「否定できない」
沈黙が流れる 間を置いてロキが言う
「…何にしろ不透明な部分も多い 本当に魔力穴を人の手で作る事が出来るのか そして、あの島程の悪魔力を噴出させるとなれば 相当なものだ あれほどのものを それこそ人の手で造る事が可能なのか」
ロキについでレイトが頷き言う
「ではいくつかの資料を持って一度アバロンへ戻らないか?この部屋や、この部屋の上にあるあの機械の事も なるべく早く連絡した方が良いだろう」
ザッツロードが頷いて言う
「そうだね、一度アバロンへ戻って報告をしよう 他の場所へ向かった皆からの情報も有るかもしれない」
【 アバロン帝国 】
アバロン城へ戻ったザッツロードたち そのまま玉座の間へ向かうと そこではリーザロッテたちがヴィクトールへ報告を行っている 丁度報告を終えたリーザロッテと 話を聞き終えたヴィクトールがザッツロードたちへ顔を向ける ザッツロードがヴィクトールの前へ行き跪き形式ばった挨拶をしようとする それをヴィクトールが止める
「いや、畏まる必要は無い 我々は今、共に悪魔力対策を行う仲間だ」
ヴィクトールが言って微笑む ザッツロードが一瞬驚いた後 隣に居るリーザロッテらを見てから 微笑んで言う
「はい、有難う御座いますヴィクトール皇帝陛下」
言うと共に敬礼を解く ヴィクトールが頷いて言う
「では、貴公らからの報告をを頼む」
ザッツロードがローレシア城で得た情報と 持ち帰ったいくつかの資料を渡す 報告を聞いたヴィクトールがしばらく考えて言う
「うん…ローレシア暦1032年にデネシア国から宝玉が奪われたと言う事だが それが事実であるなら 現在もデネシア国には 宝玉が置かれていた祭壇があるということだ、共に、ベネテクト国の宝玉が元々ツヴァイザー国のものであり、さらにローゼント国の宝玉はソルベキア国が… これらの事を踏まえるとリーザロッテらが持ち帰ったソルベキア国の 祭壇の場所を表したデータは 完全に正しいと言う事になる」
ヴィクトールの言葉を聞いてザッツロードがリーザロッテへ顔を向ける リーザロッテがザッツロードの視線に気付き言う
「私たちは、ソルベキア国で 機械を設置した全世界の場所を示す情報を手に入れたのよ、でもそれだけを見ると 私たちが知る宝玉の保管国以外にも祠と祭壇がある事になってしまうの だから その情報の信憑性が問われていたのよ、でも、貴方たちが持ってきた話を聞けば 全部つじつまが合ったって事になるわ」
リーザロッテの言葉を聞き納得したザッツロードが言う
「なるほど…それなら逆に 僕達が持ってきた情報の信憑性も得られると言う事になりますね」
リーザロッテへ言うと共に視線をヴィクトールへ向けるザッツロード ヴィクトールが頷いて言う
「ああ、確かにそうも言える しかし、貴公らが言うようにソルベキア国が第二のローレシア国であるなら 両国が結託して事実を隠蔽する可能性も否定できない もう1つでも客観的に記録している国があれば良いのだが」
しばらく沈黙が流れる その後にヴィクトールが言う
「後、事実確認が出来ないのが 北の国と先住民族 後者が貴公らの推測する通り竜族であるとしたら 逆にその先住民族の 後の民族と言うのは誰になるのだろうか?」
ヴィクトールの問いにザッツロードが焦って言う
「え?」
ザッツロードが隣のリーザロッテへ視線を向ける リーザロッテが焦り言う
「先住民族が竜族なら… 他の~ デネシアの巨人族とか?」
リーザロッテの意見を聞いてザッツロードが言う
「なるほど、確かに巨人族なら竜族と比べるにも近い気が…」
再び沈黙が流れる 再びヴィクトールが問う
「…では次に北の国 ガルバディアと名を連ねている以上 言葉の通りに考えれば 現在のガルバディア国より北に位置する国 という事になるが」
ヴィクトールの言葉にザッツロードが続ける
「竜族の村の時のように人の目から隠されている可能性が有るのでは無いかと」
ザッツロードがそこまで言うと後方でソニヤが頷く ヴィクトールがザッツロードらを見て言う
「うん、確かにそういう考え方はある、だがそれには1つ問題もある」
皆がヴィクトールへ視線を向ける ヴィクトールが続ける
「竜族の村と同様であるなら 外部からの見た目だけを隠す事は出来ても 実体を消す事は出来ない つまりその場所に存在すると言う事実は変わらないのだ ガルバディア国の北側にはこのアバロンの北側にある アバロン山脈の3倍以上あるであろうと言われている高い山脈があり、今だかつてあの山を越えた人間は居ない そして、ガルバディア国とその山脈の間は僅かの距離しかないのだ その場所には国どころか村さえ作る事は不可能だ」
ヴィクトールの言葉を聞いてザッツロードとリーザロッテが考える 三度沈黙が訪れる ヴィクトールが言う
「だが、どちらの言葉も詳しく調べてみる価値はある アバロンだけでなく他の国の学者へ確認を取るとしよう ローレシアの機械も詳しく調べなければならないな」
言うと共に控えていた兵へ資料を渡すと共にローレシア調査を命じるヴィクトール ヴィクトールの言葉にザッツロードが頷いて言う
「はい、お願いします」
ヴィクトールが頷いて言う
「では、後は祠の機械の解析に行った者たちからの報告を待つ事になる それほど時間はかからないだろうとの事だ それまでの間 貴公らで情報の共有を行って置いてくれ」
言い終わると共に ヴィクトールが資料へ目を向ける その場に居た者たちが部屋を後にする ザッツロードが間を置いてから問う
「あの、ヴィクトール陛下」
ヴィクトールが疑問して言う
「…うん?」
ザッツロードの呼び掛けに顔を向けるヴィクトール ザッツロードがもう1つの玉座へ視線を向けてから言う
「えっと バーネット陛下は…?」
ザッツロードの問いに同じ様に視線を一度向けたヴィクトールが軽く笑って言う
「ああ、彼は今 スプローニ国へ赴いている 後にツヴァイザー、ベネテクト それらの国を回り情報を集めるとの事だ 何か有力なものがあれば 勿論、貴公らへも伝えよう」
ヴィクトールの言葉を聞いたザッツロードが礼をのべ その場を後にする
ザッツロードが彼らへ与えられた部屋へ向かう そこに ヴェイン、ロイ、ロスラグ、バッツを除く 全員が揃っている ザッツロードに気付いたソニヤが声を掛ける
「もお!ザッツ!遅い!」
ザッツロードが慌てて言う
「え!?あ、ごめんっ」
ソニヤの言葉と皆の視線に謝りながらザッツロードが椅子に座ると リーザロッテが話し始める
「ローレシアの情報は私たちの前で ヴィクトール皇帝陛下にお伝えしたもので全てね?」
リーザロッテの問いにザッツロードが頷いて言う
「はい、それで、ソルベキアの方は?」
ザッツロードの言葉に リーザロッテが腕組みをして言う
「こっちで手に入れた情報は 115年前にシュレイザー国を使って取り付けた機械 その機械の制御はローレシアが行っていると言う事」
驚くザッツロード
「え!?ローレシアで?」
その言葉にラナが補足する
「厳密には操作作業を行う人はソルベキアの技術者なのだけど、制御を行う機械はローレシアに置かれているから ソルベキアだけでは操作できないらしいの」
続いてリーザロッテが言う
「そして、シュレイザー国が取り付けた機械の数は11個 現在私たちが知る宝玉の数より多いわ」
レイトが言う
「それは現在宝玉を有する国や村と共に 過去に有していた国へも 機械を設置したと言う事ですね?」
レイトの言葉にリーザロッテが頷き言う
「その11箇所の機械を使って ソルベキアは当初、聖魔力をローレシアへ送り、同時に悪魔力をソルベキアへ送っていた」
ソニヤが声を上げる
「え!?どうして悪魔力を!?」
オライオンが言う
「機械を付けたばっかりの頃は 世界に悪魔力は無かったんだってよ、だから わざわざ悪魔力をソルベキアへ引き込んだんだ」
ロキが問う
「…ソルベキアが善意だけで 有害な悪魔力を受け取るとは思えない ソルベキアはその悪魔力を何に使用していたのだ?」
ヴェルアロンスライツァーが答える
「ソルベキアはその悪魔力を使用して動く ロボット兵の研究を行っていたのだ しかも」
ヴェルアロンスライツァーの言葉にシャルロッテが続ける
「そ、その研究の依頼は 元々ローレシアからの依頼なんですぅ」
ザッツロードが驚く
「それではっロボット兵を必要としていたのはローレシアだと!?」
リーザロッテが頷いて言う
「ええ、ソルベキアはローレシアの依頼で 祭壇に機械を取り付け、聖魔力をローレシアへ、悪魔力をソルベキアへ送り 悪魔力で動くロボット兵を研究していた」
レイトが言う
「ソルベキアはローレシアの第二国家となる事は否定したが それでも国として成り立つまでに受けた融資に報いる為に ローレシアからの依頼を受けていたのだろうか?」
レイトの独り言にオライオンが言う
「そーかもしれねぇし、そーじゃねーかもしれねぇんだけど、やっぱソルベキアなんだよなー?」
ロキが問う
「…どういう意味だ?」
答えをラナが言う
「ソルベキアは途中まで ローレシアの言う通りにしていたけれど、その後は ロボット兵の情報をローレシアに伏せるようになり、更に悪魔力の受け取りも行わなくなった」
ザッツロードがラナへ視線を向ける 隣のヴェルアロンスライツァーが言う
「ソルベキアが受け取らなくなった悪魔力は祭壇からそのまま溢れる形となり、ソルベキアはそれを承知の上で放置した」
ソニヤがザッツロードへ向け声を上げる
「もお!だからソルベキアなんかに依頼するから!」
ザッツロードが焦るラナが言う
「ザッツに言ったってしょうがないじゃない、…それに、当時のローレシアは それに気付いてソルベキアへ改善を命じたのよ?」
ザッツロードがリーザロッテへ言う
「それじゃぁ!?」
リーザロッテが言う
「だけど、残念な事に 時を同じくして この時ローレシアの勇者伝説が始まるの、ローレシアはソルベキアへ聖魔力の供給を強化する事を依頼 それを行う代わりに悪魔力の事は隠蔽する事を約束」
ロキが言う
「…悪魔力はそのまま100年以上放置されて来たと言う事か」
ロキの言葉にオライオンが続ける
「ローレシアへの聖魔力の量を増やすと 同じだけ悪魔力が出来る だから俺たちの前、親父たちの時代に一気に悪魔力が増えたってのも 丁度 あの頃ローレシアがソルベキアへ聖魔力の増量を依頼したらしい」
リーザロッテが頷きいう
「現代でも ローレシアの依頼でソルベキアは聖魔力を調整してローレシアへ送り 悪魔力は世界に捨てている きっと、わざわざソルベキアに悪魔力を送る必要が無いくらい 世界にはロボット兵を動かすだけの悪魔力が満ちているのよ」
扉の外からロスラグの声が掛かる
「やーっぱり 悪の元凶はローレシアだったッスね?」
皆の視線が扉に寄りかかって話を聞いていたロスラグのもとへ注がれる ロスラグの隣に居たセーリアが困った顔をしながら言う
「あ…祠の機械の解析が一応終ったの、ヴィクトール陛下から みんなを連れてきて欲しいって頼まれて…」
リーザロッテが椅子から立ち上がり皆へ言う
「さ、行きましょ?時間を無駄にする訳には行かないわ」
リーザロッテの仲間たちがリーザロッテに続き部屋から出て行く ザッツロードが視線を落としたまま動かない ソニヤが声を掛けようとしてラナが先に言う
「ザッツ、今はもう誰がどの国で なんて考えるのは止めて、皆で協力すれば良いのよ」
ザッツロードが一度視線を下げてから立ち上がり言う
「うん、そうだね でも、もしローレシアが悪魔力の元凶なら 僕は人一倍頑張らないと…」
言うと共に苦笑する セーリアがそばに来て言う
「ええ、頑張って世界を守れば良いのよ!ザッツがやった事ではないのだから」
ソニヤも傍に来て言う
「そ、そうよ!ほら!きっとローレシアの王様がやった事でしょ!?ザッツは第二王子なんだから 王様じゃないし!」
ソニヤの言葉に苦笑するザッツロード ラナがソニヤに文句を言い2人が言い合う中ザッツロードが部屋を出て行く
玉座の間へ集まる ザッツロードたち、リーザロッテたち、ヴェルアロンスライツァー、ロキ、オライオン、ロスラグ、ヴィクトール、バッツスクロイツ ザッツロードたちが来たのを確認してヴィクトールが言う
「揃ったな、ではバッツスクロイツ、貴公らの報告を頼む」
ヴィクトールの近くにいたバッツスクロイツが振り返って言う
「オーケー!それじゃーなるべく分かりやすくって事で!」
バッツスクロイツの姿を確認してザッツロードが軽く笑う ソニヤがセーリアを突っ突いて言う
「…ねえ、バッツの胸に ばびゅーんって飛び込んだの?」
セーリアが顔を赤くして言う
「そ、そんな事する訳ないでしょっ?!ちゃ、ちゃんと1キロ手前に着地したわっ」
話を聞いていたラナが呆れて言う
「1キロ…」
ソニヤが苦笑する その後ろでバッツスクロイツが説明を始める
「あの祭壇って所に付けられていた機械ってのはー 俺たちの世界じゃCITCって呼んでるんだけど 空間転送システムの一種なんだ だからセンコンで… あぁ、センターコンピュータって言ったら分かる?え?分かんない?え~っと中枢制御システムの… あれ?ダメ?えっとぉ~」
皆が疑問して言う
「おれたちのせかい?」「しーあいてぃー?」「空間てんそ…?」「せんこん?」「せんたーこんぴゅ…」「ちゅ、中枢…?」
ザッツロードらへ向いて話していたバッツスクロイツ 皆が分からない様子の顔をするので言葉を変え説明しようとするが玉砕 最後の希望で後方のヴィクトールへ振り向く ヴィクトールが苦笑しながら言う
「…あ、ああ、そうだな …とりあえず もう少し先まで 話してもらえるだろうか?」
ヴィクトールの言葉を受けバッツスクロイツが頷き 再び話し出す
「オーケ!それで、センコンで操作すれば出力も出力先も選べるんだけど、今使ってるのは3つの内1つだけみたいだな、 あ、それと面白い事に最初に付けられたCITCには黒い雷のマークが付いてるんだけど、二つ目の方は赤いトカゲみたいなマークが付いてるんだ」
バッツスクロイツの言葉にザッツロードが言う
「赤いトカゲのマークは ソルベキアだ!」
続いてオライオンが言う
「あ!俺ガルバディアで 黒い雷のマークを見たぜ!?」
2人の言葉を聞いてヴィクトールが言う
「ああ、どちらも国印だ では その… CITCというのは過去にも取り付けられており、そちらにはガルバディアの国印が つまり115年前にソルベキアが操作を開始する以前から あの祭壇はガルバディアからの制御を受けていたと言う事になる バッツスクロイツ、そちらの古い方の装置は 現在も使用可能なのだろうか?」
ヴィクトールの言葉にバッツスクロイツが振り向いて言う
「ああ、使えるーけど、俺たちが確認した所のはかなり長い間使ってないみたいだった 最後に使ったのは今から200年近く前だったかなー?」
バッツスクロイツの言葉に皆の緊張が高まる ヴィクトールが問う
「それは確かな情報か?」
バッツスクロイツが頷いて言う
「うん、けど、今俺何にもコンピュータ持って無いからさー 携帯でちょっと確かめただけで 途中でバッテリー切れちゃって!はははっ」
ヴィクトールが間を置いてから問う
「…では もっと詳しく調べる事は出来るだろうか?この世界で2番目に機械に優れている国の装置なら 貴公へ渡す事が出来るのだが」
ヴィクトールの提案にバッツスクロイツが喜んで言う
「ああ!それ嬉しいな!俺こっちー来てから ずっと確認したいこと山積みでさ!こんなに情報解析に燃えるのは何年ぶりかなーって?」
ヴィクトールが微笑して言う
「それは良かった 必要なものは揃えさせる、貴公の好奇心に期待させてもらおう」
ヴィクトールの言葉にバッツスクロイツが大喜びでヴィクトールの手を取って言う
「まじで!?良いのー!?やったー!!…なーんだ 俺もっと早くこっちの国来たら良かったのにー すげー遠回りしたって感じだわー」
後方で呆気に取られていたザッツロードたち ソニヤがザッツロードへ言う
「…ね、ねぇ… やっぱりバッツって …変」
その横でラナが言う
「…変って言うより …異様よ」
ロスラグの両サイドに立っていたロキとヴェルアロンスライツァーも驚いている ロキがロスラグへ言う
「…卿は…奴と同行したのだったな? …奴は何者だ?」
ロスラグが頭を掻きながら言う
「あー…あいつ 前に違う世界から来たって言ってたんッスけど …本当だったッスかね?」
ヴェルアロンスライツァーが驚いてロスラグを見下ろし言う
「違う世界?」
ヴェルアロンスライツァーの声が周囲に響く ヴィクトールとロスラグを除く全員が驚く ソニヤが言う
「え…?ちょ、ちょっと、う…」
ラナが続ける
「嘘…よね…?」
ザッツロードたちの様子に気付いたヴィクトールがバッツスクロイツから ザッツロードたちへ顔を向け言う
「ああ、すまない 余りにも信じ難い話であった為 事前の説明を省いてしまったのだが …彼は 我々の住む この世界とは違う 他の世界から 事故でこちらへ飛ばされてしまったと言うのだ 私も困難ではあったが 彼から詳しい話を聞き 信じるに至った …バッツスクロイツどうか彼らに もう一度『南の世界』の話をして貰えないだろうか?」
ヴィクトールの言葉を聞いてバッツスクロイツが笑顔で言う
「オーケー!いやぁー今まで誰に話しても信じてもらえなかったのに ここに来て一気に信じてもらえて 俺、嬉しーよ!」
バッツスクロイツが言いながらザッツロードらへ振り返って話す
「俺たちの世界では、こんな昔話が残ってる!『この世界の南の果て、ワールドエンドマウンテンを越えた先には 9つの王国と9つのパワーストーンが残されている しかし、かの先にある 9つの国と9つのパワーストーンは 時の果て 過去の過ちの下に散り行くであろう 我々人類は 過去の過ちと罪、新たなる罪 3つの大罪から逃れる事で 生き延びる』」
バッツの言葉を聞いたザッツロードたちが言葉を失う 間を置いてヴィクトールが言う
「ザッツロード、貴公らがローレシア国で探し当てた『北の国』 それこそが 南の果てにワールドエンドマウンテンという高い山脈を持つと言う 彼の故郷なのでは無いかと 私は思う」
ヴィクトールの言葉にザッツロードが言う
「では…ガルバディア国の北にバッツの国が 北の国が 今もあると!?」
ヴィクトールが頷いて言う
「彼の言う9つの王国と9つのパワーストーン これは新たに作られたベネテクト国とソルベキア国が加わる以前のこの大陸に存在した王国の数に比例している、そして9つのパワーストーンこれは もはや明確な確証の下9つの宝玉を示している バッツスクロイツ、貴公の持つパワーストーンを彼らへ見せて貰いたい」
ヴィクトールの言葉にバッツが笑って頷き 宝玉を取り出してみせる
「これだろ!?ジャッジャーン!パワーストーン!」
ソニヤが指を指して声を上げる
「ほ、宝玉!!」
他の者も驚きの声を上げる 間を置いてヴィクトールが言う
「セーリア殿が彼を連れてきた時には 実に色々と驚かされた だがその後にリーザロッテ王女 そしてザッツロード、貴公らの報告を聞き 全ての辻褄が合ったのだ これらの事は既に各国へ配信され 間もなくこの世界の全ての国王が アバロン城へ集まる 貴公らには申し訳ないが、今までに済ませた報告を再度行ってもらう必要もあるだろう その為、各箇所へ向かった者の代表を一名ずつこの城へ残した状態で これからの数日間行動をしてくれ そして、その行動内容だが」
ヴィクトールがそこまでを一気に話す ザッツロードたちが真剣に聞く中 後方に居たロスラグが隣のオライオンへ小声で言う
「まだ何かやらせるんッスかね?…ヴィクトール陛下って 意外と人使い荒いッスね?」
ロスラグの声が聞こえたヴィクトールが一度咳払いをして言う
「…もちろん、戦いに備え 休憩は取ってくれて構わない」
ヴィクトールの言葉にビクッと驚き焦るロスラグ 隣のオライオンが言う
「へへっ …歴代のアバロン国王って地獄耳なんだぜ?」
ロスラグが小声で怒る
「先に言って欲しかったッス!!」
ヴィクトールが話を続ける
「バッツスクロイツと共にソルベキアへ向かい 彼の求める機械を揃える事、及びこちらの世界を知らない彼の手助けをしてやって欲しい そして装備が整い次第 各国の祭壇のCITCを確認、報告を 更に、それらの作業を円滑に行うため 彼らが祭壇のある祠へ辿り着く事前に 周囲に発生している魔物の排除作業を行う様に …人選、その他は全て貴公らへ任せる」
ヴィクトールの言葉を聞きザッツロードとリーザロッテを含む皆が敬礼する ロスラグが慌ててそれに続く
玉座の間を出たザッツロードたち ソニヤがバッツスクロイツを見上げ言う
「変な人とは思ってたけど…まさか別の世界の人だったなんて~」
ソニヤの言葉にバッツスクロイツが苦笑して言う
「『変な人』だなんてー ヒドイなぁレディ、俺傷付いちゃうかも」
バッツスクロイツの言葉に呆れながらラナが言う
「まぁ、良く考えたら色んな変な言葉使ってたし ちょっと考えたら分か…らないわよ」
ラナの言葉にバッツスクロイツが振り向いて泣きそうに言う
「オカシイなぁー俺これでも向こうじゃ かなりモテてたんだけど」
バッツスクロイツの下にロスラグが来て言う
「まぁまぁ、元気出すッスよ!バッツは機械に関してだけは天才なんッスから!」
ロスラグへ視線を向けてバッツスクロイツが言う
「ロスっち!やっぱその服返してー!俺こっちの服似合わないんだきっとー!」
ロスラグがバッツスクロイツに服を掴まれ揺すられる ロスラグがその手を掴んで叫ぶ
「嫌ッスよ!最初に服交換してくれって言ってきたのバッツの方ッスよ!」
2人の横でリーザロッテがザッツロードへ問う
「それで?人選はどうするの?」
リーザロッテに言われて驚くザッツロード
「え?リーザロッテ王女が お決めになるのかと…」
ザッツロードに言われてハッとするリーザロッテ 視線を逸らして言う
「そ、そうだったわね 今日は…そう、バーネット第二皇帝陛下も居らっしゃらないのだし 焦る事なかったわね」
その様子を見てソニヤとラナが顔を見合わせてラナが言う
「別に さっきは焦ってる様子 無かったわよね?」
ラナに頷きソニヤが続ける
「何か…普~通に仲間っぽい感じだった?」
ザッツロードが苦笑しながら言う
「あー…えっと、ヴィクトール陛下が各箇所に行った人を1名ずつ残して欲しいと言ってたんで 前と同じメンバーで分かれても良いかもしれませんね?」
ザッツロードの言葉にリーザロッテがそっぽを向いて言う
「まぁ、それでも良いし 別のメンバーにしても良いわよ?」
リーザロッテの言葉に再び疑問するザッツロード
「え?」
ザッツロードの後ろでソニヤが小声で言う
「え?何?もしかして もうホントーに 仲間になっちゃったって事?」
ラナが小声で言う
「リーザって もしかして 本当は勇者の仲間になりたかったって訳じゃ…」
2人の話が聞こえたリーザロッテが持っていた槍の柄で一度床を叩いてから言う
「ちょっと!そこの2人!内緒話は もっと遠くか 小声で なさいっ!」
リーザロッテの言葉に驚くソニヤとラナ 近くに居たシャルロッテが苦笑して言う
「あ、あの…お、王族の方は 地獄耳だったりするって データが…」
ソニヤとラナがシャルロッテへ向いて小声で怒る
「「そういう情報は もっと早くっ!」」
2人に小声で怒られ小声で焦るシャルロッテ
「きゃ~っご、ごめんなさいっ!」
人選に悩むザッツロードとリーザロッテの下へロキとヴェルアロンスライツァーがやって来てヴェルアロンスライツァーが言う
「報告に残るメンバーが決まらないのであれば 我々が残っても良いが?」
続いてロキが言う
「…相手は各国の王 彼らの前で 詳細を簡素明確に話せる人物が 適任と思われる」
2人の言葉にザッツロードがリーザロッテへ言う
「それならリーザロッテ王女は適任ですね」
ザッツロードの言葉に驚くリーザロッテ
「え!?わ、私が?」
ザッツロードが笑顔で言う
「はい、以前 ヴィクトール陛下に2人の勇者だと 民の前で紹介された時 私はただオドオドしてしまいましたが リーザロッテ王女はとても凛となさっていらしたので」
ザッツロードの言葉に リーザロッテが焦って言う
「あ、ああ言うのは慣れてるのよっ 民の前で話をしたりとかは…ツヴァイザーに居た時もしていたし… で、でも他国の王族相手となると…」
リーザロッテが言葉を濁す ザッツロードが心境を理解できないままに問う
「え?他国の王族相手だと…?」
リーザロッテが焦って言う
「な、なら貴方がやったら良いわっ!」
リーザロッテに言われてザッツロードが焦って言う
「えぇえ!?わ、私は…その、あまり人前で話すのは…」
2人の話を聞いていたオライオンが言う
「なぁ?だったら2人が残ったら良いんじゃねーのか?」
オライオンの言葉にザッツロードとリーザロッテが驚く レイトが話に入って言う
「各国の王と顔を合わせる好機とも取れます、リーザ様にはとても相応しい場かもしれません」
それを聞いたソニヤがザッツロードへ言う
「ならザッツも残った方が良いわ!当然よ!」
自分の仲間に後押しされ更に焦るザッツロードとリーザロッテ 話を聞いていたヴェルアロンスライツァーが言う
「確かに、王族の場には王族が相応しいかもしれん、では祠の調査及び解析を行っていた部隊の代表は誰にするのだ?」
ヴェルアロンスライツァーの言葉にヴェインが言う
「俺は…共に行っていたのだが 機械は苦手で 正直あいつらが話している内容の半分も理解できなかった」
ヴェインの言葉にロイが続く
「…俺もだ、メンバーの中で唯一バッツと会話を出来ていたのは…不本意だが奴だ」
ヴェインとロイが同時に指差す 指差されたロスラグが不思議そうな顔をした後に驚いて嫌がる
「えぇええ!?い、いやいやいや、お、俺は無理ッスよ!多量の王様の前で話しするなんてっ無理ッス!」
ヴェインとロイの話を聞いてザッツロードが言う
「ああ、そう言えば 彼は意外と機械の操作に長けているよね」
ザッツロードの言葉にロスラグが怒る
「い、『意外と』ってどういう意味ッスか!」
隣に居たロキが言う
「…見た目が馬鹿そうだと言う事だ しかし、卿の言う通り 実に意外だが 『コレ』は器用な男だ 俺も認める」
ロキの言葉を聞いてロスラグが泣きながら言う
「ロ、ロキ隊長…?ほ…褒められてるのに ちょっと嬉しく無いッス… それから 『コレ』じゃなくて 名前で呼んで欲しいッス…」
そこへヴェルアロンスライツァーが来て言う
「ロキ、あまり『隊員A』を虐めるのはよせ だが、意外ではあるが 彼の器用さは私も認めよう」
ヴェルアロンスライツァーの言葉にロスラグが顔を向けて言う
「ヴェルアロンスライツァー副隊長まで… あ…相変わらず『隊員A』止まりッスか…?もうだいぶ活躍してるんッスけど…」
ザッツロードが苦笑しながら頷いて言う
「それじゃ、祠の機械の説明は彼に ソルベキアの説明をリーザロッテ王女に そ、それで…」
言葉に詰まるザッツロードへ ロスラグが立ち上がって言う
「ローレシアの説明に! ローレシアのヘボ勇者ッス!」
ロスラグの言葉にザッツロードが苦笑する
【 アバロン城 会議室 】
アバロン城会議室に全国王とザッツロードとリーザロッテ、ロスラグが揃う 全国王が揃っているその威圧感にザッツロードらが緊張している ロスラグがザッツロードへ小声で言う
「お…お、おおお俺、ぜ、絶対 場違いッスっ!!」
ザッツロードがロスラグへ顔を向けると 今にも泣き出しそうなロスラグが居る ザッツロードが苦笑して言う
「あっはは…そんなに堅くならなくても…」
その横でリーザロッテが小声で言う
「そ、そそそ、そうよね、べ、別に こ、この王様方に お、お叱りを受ける訳では な、無いのだしっ?」
リーザロッテの恐れ様に 顔を向けたザッツロードが再び苦笑する
会議が開始されるヴィクトールがその場に居る者へ向け言う
「親愛なる国王諸卿 今召集への迅速な対応に敬意を表す、本来であるならこの場において畏まった挨拶を取り行うべきだが、今はこの世界に住む我々を含む 全生命の存続が掛かっている、故にそれらの形式は省略する 理解い頂きたい」
ヴィクトールが周囲を見渡し話を進める
「では、早速本題に入る 現在この大陸から西の海上にて 既に知られている様に大量の悪魔力が溢れようとしている この悪魔力は現在から15年前 それ以前に造られた結界を破壊した事により発生したものだ、そして同じくして15年間、1人の優秀なるプログラマーによって 新たに作り出された結界の力を持って押さえられている だが、その新たな結界には時間の制限が有り その期限は残り1年と差し迫っている」
ヴィクトールの言葉に数人の王がキルビーグへ視線を向ける ツヴァイザー国の王が言う
「15年前に最初の結界を破壊したのはローレシアの勇者だと聞いている つまり、責任は全てローレシアにあるのだろう その責任を取らせるべきではないのか!?」
ツヴァイザー国王の言葉にヴィクトールが顔を横へ振って言う
「今はどの国に責任が有る無いの話をするべきでは無いのだ、必要なのは この大陸に生きる者全ての命を脅かす 悪魔力をどうするのか、又どの様にする事が出来るのか と言う事だ ここで1つ重要なのは 過去の歴史 近いものから15年前 この時は先ほど述べ1人のプログラマーが結界を張り防いだ だが、この時同時に1つの宝玉が使われた それは過去、人知れぬ場所へ隠されたと言うソイッド村の宝玉だ」
ヴィクトールの言葉に 今までポーカーフェイスで黙秘を続けていたキルビーグが僅かに驚きその視線をヴィクトールへ向ける ヴィクトールが続ける
「そして、今から115年前には 竜族の力と デネシア国の宝玉が使われ結界が張られた」
周囲にざわめきが起こる ローゼント国の王が言う
「では、今回も何処かの国が保管する宝玉と、結界を張る力を持つ者が島へ向かい、新たな結界を張ると言う事か?」
ヴィクトールが間を置いてから言う
「確かに、ただ悪魔力を封じると言う事であれば そちらの考えもある、だがその方法には2つの問題がある 1つは結界を張るのに使用する宝玉 115年前に使用されたデネシア国の宝玉が発見された しかし、その宝玉は全ての聖魔力を失い 更に悪魔力に晒された事により完全に破壊されていた 恐らく現在使用されているソイッド村の宝玉も同じ事になるだろう」
ヴィクトールが言い終わると共に1人の兵が壊れた宝玉を テーブルに置く 黒く濁り割れている宝玉 王たちがそれを見てからヴィクトールへ視線を戻す ヴィクトールが続ける
「そして、もう1つの問題 それは島に結界を張る際 その結界を守るための防人が必要になる 何故なら 宝玉は人の意思が無ければその力を発揮しない …この事は先日 ローレシア城に備えられている機械から得た情報だ、キルビーグ殿、これは正しい情報なのだろうか?」
皆の視線がキルビーグへ向けられる キルビーグは黙秘を続ける ヴィクトールが一度頷き言う
「後者の情報が例え正確では無いとしても 1つ目の問題は確固たる証拠がここにある」
皆の視線が再び壊れた宝玉へ向けられる ベーネットが言う
「宝玉は失われる だが、世界が救われるのであれば その代償は無きも等しい 現在差し迫っている期限へはベネテクトの宝玉を使い 乗り切り 再び得る期限の間に 更なる良案を見出しては如何でしょうか?」
王たちから静かな歓声が上がり ベーネットへ向けられていた視線が問うようにヴィクトールへ集まる ヴィクトールが言う
「残念だが、それは出来ない 理由は、現在の結界は元ガルバディア国のプログラマーがその優秀なる頭脳にて作り上げたプログラムと100年以上誰にも使われる事無く蓄積された聖魔力を有した完全なる宝玉の力 この2つの恩恵の上に与えられた16年と言う年月 だが、現在我々の持つ宝玉は 全て15年前の混乱時に使用され 宝玉に蓄積された聖魔力は一度 その全て使い切ってしまっている その後 多少の使用の違いが有ろうとも 宝玉に聖魔力が蓄積された年月はたったの15年だ」
周囲から落胆の声が上がる カイッズ国王が声を上げる
「それでは、ヴィクトール皇帝陛下は何のために我々を召集されたのか!?この召集は 我々へわざわざ世界の終焉を伝える為のものなのか!?」
カイッズ国王へ向けられていた視線がヴィクトールへ集まる ヴィクトールが間を置いてから言う
「…ああ、そうだ」
全員が息を飲む ヴィクトールが続ける
「この世界の現状は十分に分かって貰えたと思う、しかし、だからこそ、私は ここに諸卿を集めた 今こそ、我らの記憶と知識そして力を合わせ この世界の危機を 共に乗り越えるべきなのだ」
しばしの間の後 皆が各々考える スプローニ国王が言う
「ヴィクトール皇帝陛下、たとえ我々の命で…いや、全魔力者が世界の為に 力を合わせさせたとしても その魔力は宝玉にすら到底及ばない ヴィクトール皇帝陛下の仰る知識と言う物がソルベキア国の機械であるとするなら 残された宝玉と、魔力者とソルベキアの技術で乗り越える という事でしょうか?」
皆の視線がヴィクトールへ向く ヴィクトールが答える
「確かに、最悪の場合その手段に縋るという事もあるかもしれない、だがそれでは今だけを乗り越える事になり、その期限は著しく短い物となるだろう …私は この世界には忘れられている …もしくは隠されている歴史と知識があるのではないかと思うのだ」
皆の視線が強まる ローゼント国の王が言う
「その歴史と知識を得る為に 各国の王を集めた…それが今回の召集の本当の狙いと言う事ですね?」
皆の視線がヴィクトールへ向く ヴィクトールが間を置いてから答える
「その通りだ 過去の遺産である宝玉も 現在の技術では再現が不可能な物、その宝玉をかつて保管していたと言う祭壇も、現在の我々の知識ではその構造すら解析が不可能 ならば 現在の我々の手に負えない悪魔力に対応するには 各国が保有する歴史と知識それらを再び見直し その中で対策を見出す事が出来るのではないだろうか?」
ヴィクトールの言葉にツヴァイザー国の王が言う
「しかし、各国のそれらのものに本当に価値が有るとすれば それは各国保有の宝だ たとえ世界の危機を乗り越えたとしても その後の世界で 謙譲した自国のそれらを逆手に取られては それこそ台無しだ」
ツヴァイザー国の王に続きソルベキアの王が言う
「ソーロス殿の仰る通りだ、この危機に便乗して他国の知識を得て 自国の知識を隠し 自国のみを守ろうとする者も現れるやも知れん」
2人の意見を聞きスプローニ国王が言う
「1つ私から謙譲させて頂ける歴史として、あの宝玉を作り出した国 それは、かのガルバディア国だと記録されている」
ざわめきが止まり 皆の視線がスプローニ国王へ向く ヴィクトールが問う
「ラグウェルス殿、それは確固たる歴史でしょうか?」
ヴィクトールの言葉にスプローニ国王が頷き続ける
「先日バーネット第二皇帝陛下が 私を尋ね今のヴィクトール皇帝陛下と同様に歴史と知識の提供を求められた それを機に我が国に残されていた歴史を確認した所 現れた記述です 更にこの歴史は隣国シュレイザー国でも同様の記述が残されておるとの事です」
スプローニ国王の言葉を聞いたヴィクトールがアンネローゼへ視線を向けて言う
「アンネローゼ殿、シュレイザー国の王となり未だ日が浅いとは思うが、シュレイザー国に同記述が残されていると言うのは お分かりになるだろうか?」
アンネローゼが困った顔で言う
「…申し訳有りませんヴィクトール皇帝陛下、私も何とか手がかりをと シュレイザー国の歴史を確認しているのですが、余りにもシュレイザー国の歴史は膨大で その全てを把握するには至っておりません」
ヴィクトールが頷いて扉へ向け声を掛ける
「シュレイザー国元国王殿をここへ!」
門兵が返事をすると共に扉を開く チョッポクルスが蹴り飛ばされて入室させられる 床に倒れ打ち付けた鼻を擦りながら言う
「い、痛った~~ よ、余を蹴り飛ばすでない~~ こ、この バ、バカーネ」
バーネットが叫ぶ
「るせぇえ!このカスチョッポクルス!さっさと行きやがれ!」
皆の視線が扉の前に居る2人へ向く 視線を受けた2人が顔を上げ 視線に気付き衝撃を受ける ザッツロードが苦笑したまま思わず声を漏らす
「バ、バーネット第二皇帝陛下…」
隣のロスラグがハッとして言う
「あっ…お、俺今まで何してたッスか?」
リーザロッテが呆れて言う
「い、今までの緊張感は 何だったの…?」
バーネットが周囲の状況に少し顔を引きつらせると 素早く振り返り言葉と共に立ち去ろうとする
「邪魔したな」
チョッポクルスが周囲の威圧感に恐れバーネットの足にしがみ付いて言う
「お、おい~~っ ま、まて~~っ ど、どこへ行くんじゃ!よ、余を置いて行くでない~~っ そ、それから そ、その名で呼ぶな~~と い、いつも申しておる~~」
バーネットがしがみ付かれた足を払いながら言う
「なっ!?は、離しやがれっ!呼ばれてんのは てめぇえだろ!このカスチョッポクルス!」
バーネットが力づくで引き離そうとする チョッポクルスがしがみ付いて言う
「い、嫌じゃ~~っ よ、余は こ、こんな堅苦しいのは~~ き、嫌いじゃ~~っ せ、せめて お、お前もおれ~~ バ、バカーネット! そ、それから よ、余をその名で…」
チョッポクルスの言葉にバーネットが怒って言う
「てめぇええ!俺が居たら 堅苦しくなくなる みてぇーな言い方すんじゃねぇえよ!…でもって 離せってんだ!」
バーネットが再びチョッポクルスを払おうとするが離れない ヴィクトールが咳払いをして言う
「シュレイザー国元国王殿、そして、バーネット第二皇帝、両名とも 本会議への参加を命じる」
バーネットが衝撃を受け チョッポクルスとバーネットがヴィクトールへ向く チョッポクルスが微笑む バーネットが鞭を振り上げ怒って言う
「てめぇえ!このカスチョッポクルスっ!てめぇえのせいで 俺までっ!」
ヴィクトールが視線を向けないまま言う
「バーネット第二皇帝、本会議中の鞭の使用を禁ずる」
チョッポクルスの襟首を締め上げていたバーネットが衝撃を受けヴィクトールへ視線を向ける 兵がやって来て言う
「お預かりいたします」
バーネットが渋々鞭を渡す チョッポクルスが笑って言う
「は、はは~~ ざ、残念だったの? バ、バカーネット~~? あ、あと、よ、余を そ、その名で呼ぶでないぞ?」
バーネットがチョッポクルスを睨みつける
会議が再開される ヴィクトールが言う
「さて、先ほどの話だが ラグウェルス殿の話によるとスプローニ国に残されている歴史から 宝玉を作り出したのがガルバディア国であるとの事だ この歴史の裏づけとして隣国シュレイザー国にも同記録があるという話なのだが シュレイザー国下国王殿、貴公は既知だろうか?」
皆の視線がヴィクトールからチョッポクルスへ向く チョッポックルスが国王たちの威圧に押され怯えて隣のバーネットへ頼る バーネットが顔をしかめて言う
「知ってるか知らねぇかって訊いてんだ!答えろ!この…」
バーネットの言葉をヴィクトールが咳払いをして止めさせる バーネットが一度ヴィクトールへ視線を向け チョッポクルスへ戻して睨む チョッポクルスが泣きそうな顔で言う
「し、知っておる~~ ガ、ガルバディアが作った ほ、宝玉を~~ か、各国の こ、国王へ譲渡したんじゃ~~ そ、そんなもん シュレイザー国にある れ、歴代の王の日記を よ、読んだら~~ ぜ、全~部 き、記録されておるわ~~」
場がざわめく ヴィクトールが問う
「全部記録されているとは!?その他にも多くの世界的な歴史が記録されていると言うのか!?」
チョッポクルスが怯えてバーネットへしがみ付く バーネットがその手を外そうとする ヴィクトールが控えの兵へ問う
「シュレイザー国の歴史はどうなっている!?あの日記の解析はまだ終って無いのか!?」
ヴィクトールの言葉に兵が言う
「はっ!シュレイザー国歴代国王の日記は全て回収されております ただ…解読にいまだ手間取っており、量も膨大である為 時間を有しております」
兵の言葉にざわめきが起きるベーネットが問う
「膨大な量と言う事は 古いものではどの程度 過去の物となるのだろうか?」
ベーネットの問いに兵が答える
「はっ!年号のみ確認した所現在からおおよそ350年前後の 過去の物まであるのではないかと予測されております」
周囲のざわめきが増す チョッポクルスを離そうとしていたバーネットも兵の言葉に驚き顔を向ける ヴィクトールがチョッポクルスへ向いて問う
「シュレイザー国下国王殿、貴公は 歴代国王の日記を どの時代の物まで把握しているのだろうか?」
皆の視線が向き チョッポクルスがバーネットの腕にしがみ付いたまま答える
「ど、どの時代の~~じゃ、じゃと?ど、どの…?」
チョッポクルスが理解できずにバーネットの顔を見上げる バーネットが怒って言う
「だぁあ~~から!てめぇの何代前のシュレイザー国王の日記までを 読みやがったのかって訊いてんだ!」
チョッポクルスが言う
「ぜ、全部~~ よ、読んだ~~ あ、当たり前で~~ あ、あろう~~?お、お前も し、知っちょろうが~~?」
チョッポクルスの言葉に疑問するバーネット 周囲がざわめく ヴィクトールがバーネットへ問う
「バーネット、君が知っているとは?」
ヴィクトールの言葉にバーネットがヴィクトールへ振り向いて言う
「ああ!?俺があの気の長げぇシュレイザー国王の日記なんざ 精々このカスチョッポクルスの代程度だ」
バーネットが言葉を途中で切ってチョッポクルスへ向き直って言う
「おいっ!てめぇえ!分かんねぇえからって 下手な嘘吐いてんじゃねぇえ!」
言うと共に拳で殴ろうとするバーネット チョッポクルスが怯えて頭を抱えながら言う
「う、嘘ではないわ~~ お、お前には む、昔っ お、お前がまだ ち、ちっこかった頃~~ よ、よく読んで き、聞かせてやったではないか?」
ヴィクトールがバーネットへ叫ぶ
「それは本当か?!バーネット!!」
バーネットが驚いて振り返る バーネットが困った様子で視線を走らせながら言う
「あぁ!?…いや?お、俺はそんな古いのなんて… おいっチョッポクルス!!」
バーネットがチョッポクルスを締め上げる チョッポクルスが悲鳴を上げながら言う
「ほ、ほれ!い、今だって~~ お、お前は も、申したではないか!? チョ、チョッポクルスの冒険じゃ~~」
バーネットが疑問しながらチョッポクルスを手放して言う
「…あぁ?」
チョッポクルスが地面に落ちる ヴィクトールが問う
「バーネット… その… チョッポクルスの冒険… とは?」
しんと静まり返った中 ヴィクトールの声が消えるとバーネットが周囲の視線を受け 溜め息を吐いてから椅子に座って言う
「…チョッポクルスの冒険ってのは… 俺も聞いてる間に何度も寝ちまったから よく覚えてねぇんだが ただのガキ用の童話みてぇ~なモンだ」
言って終らせようと顔を背けるバーネット ヴィクトールが更に問う
「それで?」
ヴィクトールの問いにバーネットが視線を向け周囲を見渡してから 仕方なく言う
「えっと…確か… 昔今のシュレイザー国にネズミの王国があって 反対側の…デネシア辺りに 竜の王国があって… あと どっかにも何か動物の王国があるだかで」
バーネットの言葉に ロスラグが思わず言葉を発する
「あーそれ知ってるッス!ネズミの王国の北には 犬の王国があるッスよ!」
皆の視線がロスラグへ向く ロスラグが焦って椅子に縮こまる チョッポクルスが続いて声を上げる
「そ、そ~~そうなんじゃ!い、犬の王国が あ、あってのぉ~~?あ、後は真ん中に きょ、巨人王国じゃ~~」
視線がチョッポクルスへ向き チョッポクルスが怯えてバーネットの後ろへ隠れる ヴィクトールがバーネットへ向いて問う
「それで…内容の方は?」
バーネットが思い出しながら言う
「…でだ ある時 竜の王国の奴が なんか別の生き物を見つけて 大陸に連れて来るんだよ …けど あんまりにも量が多いから~ 他の国にも連れてってよぉ で~…」
バーネットが悩み始める 話が止まって ロスラグが思わす声を上げる
「犬の王国では そいつらに狩りの方法を教えるッスよ!でも そいつらはすっごく足が遅いッスから~ 全ッ然ダメで 代わりに犬達が餌を用意してあげるッス! あ、その代わりにそいつらには背中のノミ取りをしてもらうッスけどねー!」
言い終わると周囲の視線にハッと気付いて 再び椅子へ縮こまる チョッポクルスがバーネットの後ろから出てきて話を続ける
「な、なんと~~ い、犬の王国では そ、そうであったか?ネ、ネズミの王国では や、やつらの餌が大変でのぉ~~」
チョッポクルスが話を進めようとする バーネットがテーブルを叩いてそれを止めさせて言う
「だぁ~~から!その辺の余計な話が長すぎるんだ!!お陰で俺は何百回 途中で寝たと思ってやが」
バーネットが周囲の視線に気付き言葉を止める 一度咳払いをしてから椅子に身を静めて話し始める
「ああ…そうだ、そうやって各国に分けられた で、そいつらが いつか戦争を始めるんだ、各国の動物達も一緒になって戦うんだが…」
そこまで言ったバーネットがチョッポクルスへ視線を向けて言う
「このカスチョッポクルスどもが 全っ然役に立たなくってなぁ~?」
言いながら意地悪く笑うバーネット チョッポクルスが照れながら言う
「しょ、しょうがないで~~ あ、あろう? チョ、チョッポクルスは ネ、ネズミなんじゃ~ き、近郊の い、犬族なんか こ、怖いであろ~?」
ローゼント国の王が問う
「それで、その子供用の童話が 宝玉を作り出したガルバディア国の歴史とどのような関係があるのだろうか?」
周囲の空気が一度ハッとなり再びバーネットへ向けられる バーネットが話を再開させる
「あ、ああ、それで… その世界では 新たにやって来た奴らの影響で 科学がどんどん進歩して行く、で~…かなり飛んでだな、何でだったか忘れたが その世界に危機が訪れる、それを、世界中の奴らが力を合わせて乗り越えるんだ、でもそのせいで チョッポクルスたちは その時の姿のままになっちまう、それを何とかしようって 一番頭の良い連中が すげぇ力を持ったガラス球を作るんだよ …って事で、その頭の良い連中が ガルバディアの連中で、 ガラス球が宝玉だってんだろ?」
バーネットが言うと共にチョッポクルスへ顔を向ける チョッポクルスが頷いて言う
「そ、そうじゃ~~ に、にしても か、かな~~り と、飛んだのぉ? そ、それでは~~ チョ、チョッポクルスの ゆ、勇士が ぜ、全然伝わらんでは な、ないか~~?」
話を聞いていたソルベキア国王が笑う
「あっはははは どんな話しかと思えば くだらない子供だましの話に 強い力を持ったガラス玉が現れ 宝玉だなんて… それがシュレイザー国歴代国王の日記ですか?まったくもって 話になりませんな?歴史的価値どころか シュレイザー国歴代の王の人格が問われるでしょう」
シュレイザー国王の言葉と視線にチョッポクルスが怯えバーネットの後ろに隠れる バーネットがソルベキア国王を睨み付けて言う
「ああ、確かに つまらねぇし やたらクソ長げぇ話で 毎回聞くのがだるくて 堪んなかったんだが… それでも聞く価値があったぜ?え?赤いトカゲの国さんよ?」
バーネットの言葉にヴィクトールがハッとして言う
「そういえば、シュレイザー国の国印はネズミ、スプローニ国の国印は狼、カイッズ国の国印は巨人、そしてデネシア国の国印は竜…」
ヴィクトールの言葉に続けてバーネットが言う
「そして、この話の中には トカゲの国も出てくる その場所も赤いトカゲの国印を持つソルベキア国の場所と同じ 大陸中部の南側になぁ?赤いトカゲはズル賢いトカゲで、いろんな国をだまして情報を引き出して利用して捨てるんだ… お陰でそのうち どっからも相手にされなくなって 国が滅んで 町になっちまうんだぜ?」
バーネットに続けてチョッポクルスが言う
「そ、そうじゃ~~ し、しかし 馬の王国が、た、助けてくれるんじゃ~~ お、おかげで ト、トカゲの王国は 再建するんじゃ~~」
ザッツロードがハッとして言う
「馬の王国!?馬の国印はローレシアのっ!?」
ソルベキア国王が焦り始める バーネットがにやりと笑って言う
「おいっ チョッポクルス!言ってやれ!赤いトカげの国は 馬の国に助けられて いつ 再び国になった!?その話は今から何年前の話だ!?」
チョッポクルスが調子に乗って言う
「い、今から ひゃ、134年前の話じゃ~~」
ザッツロードたちとヴィクトール ソルベキア国王が驚く ザッツロードが言う
「今から134年前!?それでは ローレシアに有った ソルベキアが国になった記録と同じ」
バーネットがソルベキア国王へ視線を送る ソルベキア国王が悔しそうに視線を逸らす その様子を見ていたローゼント国の王が言う
「…つまり、バーネット第二皇帝陛下とシュレイザー国元国王殿が仰りたい事は そのシュレイザー国歴代国王の日記が 歴史を元に、国名を伏せ国印を擬人化させて書き残している歴史書であると?」
ローゼント国王の言葉にざわめきが起こる バーネットが微笑して言う
「ああ、無駄な事まで書かれているから 無駄に長ったらしくなる だが、それが日記なら 日々の無駄話まで書かれてるのも 仕方がねぇってもんだな?」
バーネットの言葉にチョッポクルスが怒る
「む、無駄無駄~~と い、言うでないっ そ、それでは よ、余の日々の公務が む、無駄である様では な、無いか~?!」
話を聞いていたツヴァイザー国王が言う
「しかし、無駄な部分が書かれる日記であるのは仕方が無いとして」
チョッポクルスが口を挟む
「む、無駄と言うでないっ」
ツヴァイザー国王が無視して言う
「何故 国名を擬人化させる等という事を? その様な無駄な事をなされては それこそ無駄に信用を失いますな?」
チョッポクルスが怒って言っている
「む、無駄無駄~~と い、言うでないと~~」
ツヴァイザー国王が鼻で笑って言うと 話を聞いていたロスラグが椅子から立ち上がって叫ぶ
「それはーっ!!先住民族としてのプライドッスよー!!…あっ!」
言ってはいけない事を言った事に気付いたロスラグが 口を押さえて椅子へ腰を戻す チョッポクルスが焦って怒る
「お、おいっ そ、そこの~~!む、無駄に せ、先住民族の事を い、言うでないっ … あっ」
言ってはいけない事を言った事に気付いたチョッポクルスが 口を押さえて椅子へ腰を戻す 沈黙の間 バーネットがチョッポクルスを締め上げて言う
「おいっ!?このカスチョッポクルス!!なんだ~?今てめぇえの言った 先住民族ってぇえのは!!てめぇえ!さっきは 黙ってやがったじゃねぇえかぁああ!!」
バーネットに締め上げられ焦るチョッポクルスが言う
「ま、待て~~ よ、余を殴るでないっ そ、それは し、仕方ないんじゃ~~ で、でも お、お前には み、見せた事が あ、あるではないか~~!?あ、あと、そ、その名で」
バーネットが怒って凄む
「あぁあ!?」
バーネットがチョッポクルスを締め上げている間に ザッツロードが隣のロスラグへ問う
「ロスラグ!君も先住民族を知っているのか!?」
問われたロスラグがたじろぎながら言う
「あ…いや…それは…ッスね…」
ロスラグが視線を逸らせて困る リーザロッテが問う
「知っているなら仰いなさい!今は世界を救う時なのよ!」
チョッポクルスとロスラグが困っているのを確認したヴィクトールが言う
「待て バーネット、それと 貴公らも」
バーネットとザッツロードたちが尋問を止めてヴィクトールへ視線を向ける ヴィクトールが言う
「先住民族の話は後で訊く事にして これで宝玉がガルバディア国で作られたという事の他国からの裏づけは 少なからず得られたと思う それと、シュレイザー国の歴史書についても 資料としての価値はありそうだ」
ヴィクトールの言葉を聞いて ソルベキア国王が言う
「馬鹿な!あんな話を信じるおつもりですか?もしそうと仰るのであれば、私はこの会議から辞退させて頂く 下らない子供話を信じて会議を続けるなど私には 到底我慢なりません」
ソルベキア国王が言うと共に席を立つ ヴィクトールが言う
「辞退は許されない、ガライナ殿」
ヴィクトールの言葉にソルベキア国王が一度立ち止まりヴィクトールへ向いて言う
「フッ、では 止められますか?もし私へ強制的な命令を下すと言うのであれば 悪魔力が世界を覆う前に あなた方1人1人の国へ 世界中の悪魔力をお贈りする事も可能ですよ?」
ソルベキア国王の言葉に ザッツロードが言う
「ソルベキアによる悪魔力や聖魔力の制御は ローレシアでしか出来ないはずです」
ザッツロードの言葉に ソルベキア国王が笑う
「それが、出来る様になっていたら?」
ザッツロードとリーザロッテが驚く ソルベキア国王が笑って言う
「いつまでもローレシアのお守りなど 出来ませんからね?苦労しましたが…我々も我々の過去の歴史を調べ その方法を見つけました ヴィクトール皇帝陛下、貴方の目の付け所は中々だ 未来を守る為に過去の歴史を調べる 貴方からの助言が無ければ 我々もこの偉業を成し遂げる事は出来ませんでした 感謝いたします」
ソルベキア国王が部屋の出入り口の前に立つ 兵が止めようとするが視線だけでそれを制す ヴィクトールが兵に言う
「…構わない、通してやれ」
ヴィクトールの言葉を聞いて扉が開かれる ソルベキア国王が軽く笑って去って行く
ヴィクトールが話を再開させる
「では、会議を再開させる ガライナ殿が言う事が確かであるなら、我々も過去の歴史を再度確認し その中から この世界の危機を救う方法を探し出すのだ」
ヴィクトールの言葉を聞いて 各国の王たちが一度考える ベーネットが言う
「我がベネテクト国の歴史は浅く、私が国で集めた歴史では今から133年前 アバロン国の強力な後押しの下 ベネテクト国として生まれ 時同じくして戦いになったツヴァイザー国を討ちツヴァイザー国の宝玉を戦利品として持ち帰ったとありました そして…」
そこまで言ったベーネットが一度言葉を切ってから チョッポクルスへ向いて言う
「手に入れた宝玉の力と 先住民族の助けを得て宝玉へ力を満たす為の穴を掘らせたと」
ベーネットの言葉にチョッポクルスが付け加える
「お、おお~~ そ、そうじゃったの!あ、穴を掘ったのは~~ い、今から133年前の話じゃ い、犬の王国の犬に ま、魔力の匂いを嗅がせての? そ、その場所をチョッポクルスたちが が、頑張って掘り進んだじゃ~~ じゃ、じゃが一仕事終えた後の ア、アバロン料理を期待したんじゃが ベ、ベネテクトの料理人が へ、下手でのぉ~~ い、犬たちに か、確認させたら そ、その料理人は~~ ア、アバロンの民では な、無かったんじゃよ~~ あ、あれには よ、余も驚いたのぉ~~」
チョッポクルスの話にバーネットが驚いて振り返って問う
「おいっ!その話は聞いてねぇえぞ!?」
チョッポクルスが言う
「お、お前は ちょ、ちょうど ね、寝ておったのぉ~~」
バーネットが怒って言う
「…そーゆう所は 起こせって 何度も言ったじゃねぇえか!!このカス」
ヴィクトールが咳払いをして話を止めさせる ヴィクトールがベーネットへ問う
「ベーネット殿、その先住民族に掘らせた穴と言うのは 過去、宝玉を保管する為に作らせたという祭壇にある魔力穴である と言う事で正しいだろうか?」
ヴィクトールの問いに ベーネットが頷いて言う
「はい、その場所を示す言葉に従い確認した所、現在も存在するベネテクト国の あの祠の祭壇へ辿り着きました その点も踏まえ正しい歴史ではないかと それと、先ほどシュレイザー国下国王殿が仰った年号、私が確認した物と同じ 穴を掘らせたのは今から133年前の事だと」
話を聞いていたバーネットが問う
「俺の知る限り ベネテクトに歴史を記す書物は無かったはずだ だいたい有ったとしても 城をぶっ壊した時に瓦礫の下だろぉ?まさか掘り返したとでも言うのか?」
バーネットの言葉にベーネットが笑って言う
「貴方の部屋の 隠し扉の先にありましたよ?とても丁寧にまとめてありましたので 助かりました」
バーネットが驚いて言う
「なっ!?」
その場に居る全ての視線がバーネットへ注がれる バーネットが焦る ヴィクトールの視線が強くなる バーネットが更に焦って言う
「…っ あ…う…っ お、俺は… 爆薬を仕掛けてねぇ 場所に ついては… 覚えてねぇもんだから…」
ザッツロードが思い出して言う
「ああ、そう言えば 先代勇者がベネテクト国の宝玉を預かりに伺った時も 宝玉を隠した隠し扉の事を 忘れていましたよね?」
バーネットが焦って言う
「てめぇっ!余計な事をっ!」
他国の王たちが呆れる ベネテクト国の宝玉の元の持ち主であるツヴァイザー国国王が一層視線を強めて言葉を漏らす
「我らから宝玉を奪っておきながらっ その宝玉の保管場所を 忘れるとは…っ!」
バーネットが視線を逸らす ヴィクトールが咳払いをしてから再び話を進める
「さて、話を進めよう」
ヴィクトールが皆へ向かって言う
「ベーネット殿の話が正しければ、祭壇に作る魔力穴の場所を探し、更に掘り進める事が出来るのが先住民族と言うことになる 話を聞く限りその存在は各国の国印に近い姿の様だ それと共に、魔力穴と言うものを作る方法も 示された 多少信じ難い部分も多くあるが これらの話を一度全て信じた上で 会議は進めようと思う」
周囲に息を吐く音が聞こえる それでも各王たちが姿勢を正し 再び気を引き締める それを確認してヴィクトールが言う
「私がアバロンにて確認した事では 今から136年前デネシア国が我が国へ和平協定を求めて来たとある、我が国はこれを受け入れデネシア国と和平協定及び両国の繁栄協定をも結んだ しかし、それらの協定はたった2年後に決裂している 理由として 我がアバロン国がデネシア国からの救援を拒否した為とだけ残されており、その詳細は明らかにされていなかった」
ヴィクトールの話を聞き その視線を強めるデネシア国王 ヴィクトールが続ける
「…だが、先日ローレシア国の歴史を記録する機械を解析中 その事件に関連する歴史が発見された それによると 今から134年前デネシア国に保管されていた宝玉が先住民族に奪われ その宝玉の奪還を行うデネシア国がアバロン国へ支援を要求し それをアバロン国が拒否したと アバロン国に裏切られたデネシア国が過去に協定を結んでいたローレシア国へ再び協定を求め それをローレシア国が受け入れたとの事だ この歴史は我が国の歴史と年号も一致する」
ヴィクトールがデネシア国王へ視線を向け問う
「ルーゼック殿、この歴史の裏づけとなるものが、貴公の国に残されてはいないだろうか?」
ヴィクトールの言葉にデネシア国王が怒って言う
「ああ、残されているともっ!アバロン国は我がデネシア国の危機に手を貸さないどころか!あろう事か我が国の宝玉を奪った 先住民族の手助けをしたのだ!」
デネシア国王がテーブルを叩いて怒って言う
「わが国とローレシアが宝玉を奪還しようと聖戦を行っていた折 先住民族の救護要請に応じた巨人族へ 貴様らはアバロンの国境を開いたのだっ お陰で我が国は惨敗し宝玉も奪われたまま その後2度と宝玉は戻らなかった!おまけに ローレシアと共に何とか竜族を隔離したというのに その時貴様らが 巨人族へ我が国の領土を見させおったせいで…っ」
デネシア国王の言葉にチョッポクルスが付け加える
「お、おお~~ そ、そんな事も あ、あったの~~?あ、あれは今から133年前じゃ~~ きょ、巨人族の だ、大移動じゃろ~~? そ、その年の前に起こった せ、戦争で~~ きょ、巨人族が う、海の見えるデネシア国を き、気に入ってのぉ? み、みんなで巨人族の王国を い、移動したんじゃ~~」
ローゼント国の王が言う
「そうか… ヴィクトール皇帝陛下、その話が事実であれば 今から133年前 カイッズ国がその勢力を落としたと残されている 我が国の歴史とも その話は繋がっている様子です」
ヴィクトールが頷いて言う
「カイッズ国の国印は巨人、そして現在巨人族が存在しているのがデネシア国 133年前にその巨人族が住む土地を デネシア国に移したため、カイッズ国の勢力が落ちたと 隣国のローゼント国に残されている …そして、宝玉を奪った先住民族が 竜族なのだとしたら その隔離された竜族の村も現在確認されている」
バーネットが天上を見上げながら言う
「…にしても、何で竜族の連中は 宝玉を奪ったりしたんだ?俺が会ってきた竜族の連中は そんながめつい連中とは 思えなかったけどなぁ?」
バーネットの疑問にチョッポクルスが答える
「りゅ、竜の連中は ず、図体が デ、デカイじゃろ?あ、あの図体を~~ ち、ちっこくするには せ、聖魔力の力が い、一杯必要でのぉ~~」
デネシア国の王が怒りのままに言う
「そうだ!奴らは…竜族のやつらは!この世界の聖魔力が弱まった事を 我ら後住民族のせいだと言い!その代償に宝玉を奪ったのだ!」
デネシア王の言葉に ヴィクトールが驚き声を上げる
「後住民族!?それはっ!我々が 先住民族に相反する 後の民族だと言う事か!?」
デネシア国王が皆の視線に焦り 視線を逸らして言う
「だ…だから何だと言う? 姿を変える事の出来ぬ 我ら後住民族を見下し… 歯向かえば竜族の炎に脅され… 奴らが居なくなったかと思えば!今度は巨人族だと!?…我らデネシアの民は 常に他国へ救いを求めていた だがっ どの国も我々を受け入れようとはしなかった!唯一協定を結んでいたローレシアさえ!自国の先住民族との絆を守る事を重視し 巨人族の排除には一切手を貸してはくれなかった!」
デネシア王の言葉にチョッポクルスが付け加える
「ち、違うわ~~ りゅ、竜たちは お、お前達後住民族が~~ りゅ、竜族を馬鹿者扱いすると い、いつも嘆いておったわ~~ だ、だから何度も は、話をするために ほ、宝玉を借りとったんじゃ~~ そ、それを ぬ、盗人よばわりしての~~?お、お前らが りゅ、竜たちの急所を つ、突っついたりするから りゅ、竜たちが お、怒ったんじゃ~~」
チョッポクルスの言葉にデネシア王が怒ってテーブルを叩いて言う
「我ら後住民族の小さき身体で!あのデカ物どもと対等にやり合うには 奇襲を掛けて急所を突くしか無かったのだ!!」
デネシア王の言動にチョッポクルスが怯えてバーネットの後ろへ隠れる バーネットが呆れて言う
「…はっはー… 奇襲を掛けて… 急所をねぇ~ そいつぁ また、随分と戦略的な事で?」
バーネットの脾肉にデネシア国王がバーネットを睨む バーネットがにやにや笑う ヴィクトールが軽く息を吐いてから言う
「ここまで来ては…信じざるを得ない」
ヴィクトールの言葉に 各国の王が視線をヴィクトールへ向ける 丁度その時 伝令の兵がヴィクトールへ耳打ちをし、ヴィクトールが各国の王へ視線を向けて言う
「諸卿も、今までの会話を聞き、疑惑の念に囚われていると思う このような状態で伝えるべきかと 悩む所だが 私は諸卿へ今までの話と同等の疑惑を持たれるであろう話を伝えなければならない だが、こちらには確固たる証拠がある 従って 諸卿も信じるに至るであろう」
ヴィクトールが王たちへ言うと共に 部屋の扉が開かれ バッツスクロイツが入室する ザッツロードが声を掛ける
「バッツ!あの機械の解析は終ったのかい!?」
ザッツロードの言葉にバッツスクロイツがピースサインで答える
「イエース!ばーっちり!」
バッツスクロイツがヴィクトールの横へ座る ヴィクトールが王たちへ向かって言う
「彼の名はバッツスクロイツ 約半年ほど前に我々の住むこちらの世界にやって来たという ガルバディア国より北の世界に住む住人だ」
ヴィクトールの言葉にざわめきが起きる ローゼント国王が問う
「ガルバディアより北!?ではあの山の向こうにも世界があり、その者の様に 我々と同じ人間が住んでいると!?」
ローゼント国王に続き チョッポクルスが指を指して言う
「な、なんと~~ き、北の国の つ、月が~~ か、帰って来おったのか~~?」
チョッポクルスに続きヴィクトールが言う
「ローレシア国に残された歴史では ガルバディア国より北に国を有した彼の先祖たちが はるか昔、我々との連絡を絶ったそうだ それはガルバディア国が国を閉ざすよりも過去の話 更に 彼らも我々と同じ 宝玉を有していたとの事、そして約半年前こちらの世界へ 事故で飛ばされた彼は その証拠となる宝玉を持って来てくれた」
ヴィクトールが言い終わると共に バッツが宝玉を取り出して笑顔でそれを見せて言う
「ジャーン!向こうじゃパワーストーンって言うんだけどねー?」
キルビーグが驚いた表情でバッツスクロイツを見る それを確認したヴィクトール ヴィクトールが続ける
「彼はとても優れた機械知識を有している 恐らくその知識はかのガルバディア国に匹敵する物では無いかと思われるほどだ そして、私は彼へ祭壇へ取り付けられたソルベキア国の機械の解析作業を依頼した バッツスクロイツ、この場で報告を頼めるだろうか?」
ヴィクトールの言葉に驚くバッツスクロイツ ヴィクトールへ問う
「え?こんなに人が居る所でしちゃってオーケーなの?なんかー見るからに他の国の人ーって感ーじだけど?」
ヴィクトールが微笑んで言う
「ああ、他の国に住む国王たちだ、しかし、この世界に住む 同じ仲間でもある」
ヴィクトールの言葉に驚く国王たち バッツスクロイツが笑って言う
「仲間?そっか!そーゆー事なら 俺も気兼ねなく報告出来るって感じー?俺もさー いくらヴィクトールっちの頼みでも いかにも他国ーって感じの情報はプライバシーの侵害かなぁ?って気もしてて …ちょっち気になってたんだよねー でも、オールフレーンズなら いっか?」
バッツスクロイツの言葉に驚く人々 リーザロッテがザッツロードへ言う
「ちょ、ちょっと…? プ、プライバシーって …何よ?」
ザッツロードが苦笑したまま言う
「さ、さぁ…?」
ザッツロードの隣でロスラグが静かに焦る
「あ、あいつ!ヴィクトール皇帝陛下を ヴィクトールっちって言ったッスっ!!」
ザッツロードが苦笑したまま言う
「君も…言ったね?ロスラグ」
ロスラグが硬直する
バッツスクロイツが説明を開始する
「赤いトカゲのマークが入った方のCITCの記録には 今から15年前と115年前の2回に渡って強力に出力を上げて 各国の魔力穴から聖魔力をローレシアへ送った って記録が残されていた、でもって その他の時も多少送ったり送ってなかったりー?するみたいなんだけど、基本的にこの赤いトカゲのCITCは魔力穴から吹き出る魔力の内 聖魔力だけをローレシアに送って 残った悪魔力をソルベキアに送ったりー どこへも送らずに駄々漏れさせたりしてたー」
ロスラグの言葉を聞いた王たちがキルビーグへ視線を向ける キルビーグは目を閉じて聞いている スプローニ国王が言う
「聖魔力をどこへ送るという事より 悪魔力を放流するとは…」
スプローニ国王に続き ローゼント国王が言う
「悪魔力が世界に溢れたのは ソルベキアのその機械のせいなのだな?」
ヴィクトールが話の先を求める様子でバッツスクロイツへ視線を向ける バッツスクロイツが頷いて言う
「それよりー、面白いのは黒い雷の方のCITC、こっちは215年前と315年前の2回の記録が残されていて 黒い雷のCITCは 魔力穴の上に置かれていたパワースト…じゃなかった、宝玉と 魔力穴からの聖魔力 両方を やっぱりローレシアのへ送ってるんだー」
ざわめきが起きる ヴィクトールが言う
「諸卿も知っての通り、黒い雷の国印はガルバディア国を表している バッツスクロイツ、その黒い雷のCITCを制御していたのはどこの国か分かるか?」
ヴィクトールの問いにバッツが答える
「うん、黒い雷のCITCはガルバディア国で制御されていた、今は完全に止まってっけどー それより!こっちのCITCはすげぇー出来がよくってさ!聖魔力を転送する際、宝玉に蓄積された聖魔力を 一定量留めた状態にするっていうハイクオリティな調整が出来るんだ!おかげで、魔力穴から聖魔力を取り出した後に残る悪魔力を その宝玉に残された聖魔力で押し止めておく事が出来る!」
バッツスクロイツの説明にバーネットが言う
「なるほど…宝玉を祭壇で保管するってぇのは 宝玉と魔力穴の2つの聖魔力を取り出すと共に 残った魔力穴の悪魔力を押し留める役割があったてぇ事か 祭壇はただの保管場所ではなく 魔力穴の上に宝玉を置いておく事に意味があったんだ」
バッツスクロイツがバーネットの言葉に頷き続ける
「うんうんー でもってー?315年前はチョー良い感じに行ったみたいなのにー 次の 215年前の時には ちょーっと無理が入っちゃったみたいなんだ」
ヴィクトールが問う
「215年前の時に 何か問題が?」
バッツスクロイツが頷いて言う
「うん、最初の時は10個の宝玉と10個の魔力穴、10個のCITCで制御して筈なんだけどー 215年前の時は どっちも1つずつ減っちゃってる、9個の宝玉と9個の魔力穴9個のCITC 一箇所がなくなっちゃってんだよねー」
バッツスクロイツの言葉にチョッポクルスが言う
「そ、そうじゃ~~ 今から215年前に~~ う、裏切り者の月が き、北に山を作って逃げてしまったんじゃ~~」
チョッポクルスの言葉を聞いて バッツスクロイツが言い辛そうに言う
「実はさー… 俺が向こうの世界で このパワーストーン見つけた時… あの黒い雷の方と 同じCITCを見たんだよね」
皆がざわめく ヴィクトールが言う
「では215年前に消えた1つの宝玉とそれらは バッツクロイス、貴公の祖国という事か?」
バッツスクロイツが苦笑しながら言う
「どうやらーそーみたいなんだー まさか俺の先祖様たちまでエスケープ常習者だったなんてねー?はははっ」
皆が息を吐いて落ち着く ツヴァイザー国王が言う
「だが…安全な土地を見つけ、その場所へ移動すると言うのは 何も間違えでは無い あの高山をどうやって越えたかは知らぬが 大したものだ…」
バッツスクロイツが照れながら言う
「いやぁー褒めてもらった所ー自分で落とすのもナンなんだけどー… そのせいで こっちの世界…特にガルバディアは大変な惨事に見舞われたらしい」
バッツスクロイツの言葉に今まで緩くなっていた場の雰囲気が一変する ヴィクトールが問う
「それは一体?」
バッツスクロイツが少し真剣な表情で言う
「何が基準なのか までは分からなかったんだけど、必要な聖魔力の量は決まっていたらしいんだ、だから その一箇所が無くなって 9個になっちゃった事で たぶんそれを補う為に魔力穴から取り出す聖魔力の量をギリギリまで調整したんだ、それでも足りないから 宝玉に残す聖魔力の量も減らしてあった それでも減った1個分を補う事は出来なかったらしい」
皆の視線を受けつつバッツスクロイツが続ける
「CITCに残ってた最後の記録に 聖魔力を送った後に発生した悪魔力の量が記録されている その量の測定値がとんでもなくってさ、このアバロンに残されてる資料を基に計算すると 野生生物の魔物化現象ってのが起こるそれ以上の悪魔力が ガルバディア国に流れ込んでしまってる、その次に酷かった国はアバロン、次がデネシア、次がツヴァイザーって順、つまり、失われた北の国に近いほど 影響は強く出たらしいんだ」
バッツスクロイツの言葉を聞いてヴィクトールが言う
「では、ガルバディアが国を閉ざしたのは その時のその影響なのかもしれないな」
皆がヴィクトールの言葉を肯定するように頷く バーネットが隣のチョッポクルスへ視線を向ける チョッポクルスが困った様子で視線を泳がせる 皆が黙るとキルビーグが言葉を発する
「…そうではない、ガルバディアが国を閉ざしたのは 悪魔力の影響だけではなく その時アバロンに裏切られたからだ」
黙秘を続けていたキルビーグの言葉に皆が驚き 話を聞く ヴィクトールが問う
「裏切られた とは…?キルビーグ殿はこの当時の歴史を何かご存知なのか?」
皆の視線が再びキルビーグへ注がれる キルビーグが静かに言う
「ガルバディアは北の国ローンルーズが逃避した事により 減った聖魔力量を補う為 残った9つの国に強い悪魔力の影響が出ると言う確証を得ていた その為、聖魔力の転送を行った後 悪魔力の脅威を乗り越える為に 宝玉に残るであろう聖魔力を 各国で分け合い 共に乗り越えようと打診したのだ 各国はこれに賛同しガルバディア国は 全ての国の了承と協定を得た上で 無理のある聖魔力の転送処理を決行した」
キルビーグが言い終えると共にヴィクトールへ視線を向ける ヴィクトールがその視線を受け取り言う
「アバロンはその聖魔力の転送の後に起きた悪魔力による危機に 他国へ宝玉に残った聖魔力を分け与えなかったと言う事なのか?」
ヴィクトールの問いにキルビーグが答える
「そうだ、アバロンは暗黙のうちに決められていた 協力相手国であるガルバディアへ聖魔力の援護を行わなかった そのせいでガルバディアは大打撃を受け、国民の9割の人間が魔物化し、残りの1割の人間が 魔物化してしまった同国民の彼らを始末し そして生きながらえたのだ」
皆がざわめくヴィクトールも言葉を失う