息衝く星祭り
命溢れる“星”の懐に抱かれる
何か、温かいモノに、包まれる。
其の温かいモノが、触れて来る。
其れが、一体何なのかは、分からない。
だが、不思議と心地良くて、落ち着く。
「いい加減、起きないと、チューしちゃうぞ☆」
きっぱりと、そして明るいセクハラ発言が、耳に飛び込んで来た。
いきなり舞い込んで来た言葉に、重い瞼を、ゆるゆると、ゆっくりと、持ち上げる。
「あ、残念。おはよー。」
目を開けた視界の先の、ど真ん中に、上機嫌な上、愉快犯の様な笑みをニコニコと浮かべる男神、基、“Sköll”の顔が、あった。
「!?……此処、は?」
「地上だよ。」
「ぞよ?でも、“聖地”に居た筈じゃ…、」
「お帰り。」
Hatiの言葉を、強く遮りるSköll。
そんなSköllに気圧されて、口を閉ざすHati。
「お帰り。」
Sköllは、御返しの返事を促す様に、もう1度、同じ台詞を口にする。
「……ただいまぞよ。」
「じゃぁ、歓迎会でも、しようか。」
「ぞよ?」
コロコロ変わる話の脈絡の流れに付いて行けず、戸惑ってばかりのHati。
どう反応し、対応すれば良いのか分からないHatiを無視して、Sköllは、Hatiを抱き上げて居た手を離す。
「!?」
ドサリッ
「~~~~~ッ!!!」
幾らか地面が柔らかい砂の上とは言え、そこそこの高さから落とされれば、其れなりの固い衝撃を感じ、痛みも襲って来る。
Hatiが文句を言おうと、Sköllを見上げると同時に、彼は、指を、くわえ、口笛を吹いた。
ピューーーーイ!
其の音色は、楽器道具でも使って居るのかと思わせる程、最も美しく、空気を大きく震わせ、高らかに大きく響き渡る。
其れに答える様にして、四方八方から、大自然にも負けない、色鮮やかで、様々な形を成した“命”を持った、生命体達が姿を見せた。
「!?!?」
穏やかな気持ちに成る野鳥達の囀りが、其の身と共に、空から柔らかな羽根を散らしながら、舞い降りて来る。
たった今、降りて来たばかりの山からは、猫に犬、狐に狸、猪に熊、鹿に栗鼠等の陸上動物達が、一声鳴いて、温かさを伴った体を順番に、擦り寄せて来る。
カラフルな蝶達や、蜻蛉に蟷螂、兜虫に鍬形虫、蛍や飛蝗、蜂や天道虫、蟻や蝉等の陸上昆虫や、蛙や蛇、蜥蜴やカメレオン等の爬虫類も、木々や草花の中から出て来る。
砂浜には、海老や蟹等の節足動物や、亀やアザラシが姿を現し、海の中からは、水飛沫を上げながら、魚達が存在を主張するかの様に、跳ね続け、其の度に、日の光を浴びて、鱗が、僅かに、キラキラと反射して閃いて居た。
魚達の他に、広がる海では、フワフワと浮かぶ海月や蛸やイカに、綺麗な弧を描く海豚や、潮を吹く鯨に、腹に石を乗せて、其の上に貝をリズミカルに叩き付けるラッコ等の、海洋生物達に因るショーが開催されて居た。
「…………。」
地球に降り立ってからと言う物、次々と絶え間無く、目の前に姿を現す、様々な姿を持った数多の生命体が生存する、大自然。
其の雄大な大自然を、集結させたSköllの御蔭で、一挙に、とことん全身全霊で感じる羽目に成った、Hatiにあるのは、途方も無い、驚き。
Hatiは、呆然と、否、愕然として、瞬きすら忘れ、大きな目を更に見開き、眼福に恵まれ過ぎる光景を前に、座った侭、只々、硬直するしか無かった。
And that's all…?
(それでおしまい…?)