表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/20

革命前夜

身代わり人形は果たして誰か

長年に渡り続いた戦争のせいで、荒れた魂は、神々の体に変調を来して居た。


褐色や色白の肌は黒く煤けて怪我や(アザ)だらけで、深紅や金色に輝いて居た髪は、数多の血で赤黒く変色し、白金色や銀色だった瞳は黒く澱んで居た。




だが、誕生したばかりの幼い男神と女神は違った。




勇ましさを感じる褐色。


清らかさを感じる色白。



太陽の様に煌々(コウコウ)と輝く深紅。


月の様に爛々(ランラン)と輝く金色。



頭が上がらない程の力に満ちた白金色の光。


(アラガ)いがたい魅力(ミリョク)(アフ)れた銀色の光。




其れは、かつての自分達の先祖の様に。


そして、“星”と成った男神と女神の始祖神(シソシン)様に。




其の神々しい姿を見た瞬間、神々は、我に返るよりも、先に平伏(ヒレフ)した。


穢れの無い、幼くも、(トウト)く、光り輝く姿を前に、皆、両手の指を、折り組み合わせ(タタ)み、其れを額に当て、許しを乞う様に目を閉じて、涙を流した。



幼い男神と女神が、平伏した者達に次々と触れて行く。


すると、其の者達に、こびり付いて居た穢れは、幼い男神と女神へと移り変わり、本来の美しい姿へと身を清められた。



幼い男神と女神が起こした“奇跡”の御蔭(オカゲ)で、両国共に、以前の繁栄が戻った。


そして再び、心洗われ、かつての輝きを取り戻した金烏帝国と、玉兎王国の間には、不干渉の契りの約束が、結び直された。




皆の黒不浄(クロフジョウ)の穢れを、一身に請け負った幼い男神と女神は、其の身を癒し、清める為、“誓いの塔”と“祈りの塔”へと()もった。


しかし、思った以上に黒不浄の穢れは強力だったのか、幼い男神と女神の髪色と瞳の色は濁ってしまった侭だった。



そんな幼い男神と女神は、皆に無い神通力を持った存在として(マツ)られ、(ウヤマ)われ、(オソ)れられた。


結果、幼い男神と女神は、皆から、余所余所(ヨソヨソ)しく、接しづらい者として、(オソ)る恐る話しかけられたり、必要以上に変に気を遣われたりと、腫れ物扱いを受ける。




そして、(イク)ばくかの時間が流れ去った頃、惨憺(サンタン)たる悲劇と喜劇が、幕を開けた。




奇跡を起こした頃から、少しだけ成長した女神は、今日も“祈りの塔”に籠もり、静かに泣いて居た。


悲しみだけで満たされた涙の雫達を、必死で手で(ヌグ)う女神は、塔の外からの、騒音が聞こえなかった。





バゴッ!!





「!?」






突如(トツジョ)、女神の涙を止める出来事が起こった。


目の前の塔の壁をブチ破って、腕が乱入して来たのだ。






「あり?騙された?」






腕の先に付いて居る手が、握っては開かれ、また、握っては開かれを数回繰り返された後、女神達の声とは思えない低い声で、しかも妙に陽気な声音が耳に入って来た。






「……誰ぞよ?」




「!……ちょっと伏せてて。」






女神の存在に気付いたのか、壁の向こう側の者が、声を掛けて来た。


訳も分からず、混乱しつつも、言われた通りに、頭を抱えて伏せる。






「伏せたぞよ。」




「ん。良い子。」






ザンッ




ガンッ




ドカンッ




ガラガラガシャン!






次の瞬間、頭上から上部分の塔が何かで切られ、蹴飛ばされ、月宮殿の壁に当たり、粉々に砕け落ちた。


特別な素材で出来た強固な塔を、あっさりと壊した…と、塔の成れの果てを見て、呆然とする女神に、先程の低くて陽気な声が降って来る。


破壊された塔とは反対側を見上げれば、其処には、漆黒色の錫杖(シャクジョウ)を肩に(カツ)いだ自分と同年代位の男神らしき者が、たった1人で、悠々(ユウユウ)と、立って居た。




しかし、髪色は、深紅では無い。


髪色は、白に近いが、白髪と言う訳でも無く、近くで見ると、薄紅色だ。



ニコニコとしていた目を見開けられれば、瞳の色は金色では無い。


黒曜石(コクヨウセキ)(ウタ)われる、漆黒の黒色で、其の瞳は、何処か無機質で硬質的だ。






「ふ~ん。髪の色は金色じゃなくて、灰色。瞳の色は銀色じゃなくて、銀灰色…か。間違いないね。」






確認する様に、女神をジロジロと見回した後、男神らしき者は、目線を合わせる様に、しゃがみ込み、お互いに見つめ合った。






「女神…じゃないぞよね?」




「あっは。女神に見える?」






色々と、一気に起きた、突然な出来事達に、女神は、唖然(アゼン)とした。


大きな目を見開き、動揺と不安に揺れる瞳を、無防備に(サラ)しながら、すこぶる明るく、元気一杯な謎の男神らしき者を、凝視(ギョウシ)する。


そんな女神の戸惑(トマド)う様子を、揶揄(ヤユ)する様に、軽く笑い、唇を意地悪そうに、三日月形に歪めて、男神は、質問に質問で返し、更に女神を混乱させては、揶揄(カラカ)った。






「君様チャンは、男神ぞよか?」




「確かめてみる?」






軽く笑う男神らしき者を見つめながら、(ヨウヤク)く、思考が現実に戻りかけて来た女神が、絞り出す様に、弱々しくも小さな声で、確認を取る様に、再度、問う。


今度も、誤魔化(ゴマカ)すかの如く、茶化す口調に、楽し気な色が加えられた声音で、男神らしき者が、また、質問に質問で返す様に、女神に、確かめてみるかと、聞く。



女神は、意味が分からず、眉間(ミケン)を、(シワ)立たせる。


其の様な反応を示す、女神の心情を、容易(タヤス)く見透かす様に、益々(マスマス)笑い、(ソソノカ)すみたいに、色白で細い手を()らえて、自らの胸元に、其の手を押し付けた。


無理矢理、押し付けられた、其の胸元には、全く柔らかい(フク)らみは無く、胸板が厚い感触を服越しに感じた女神は、何故こうも疑問と謎が、てんこ盛りに成って、押し寄せて来るのかと、(シカ)めっ面をした。






「どうして…、太陽の“純陽(ジュンヨウ)王子様(プリンス)”である君様チャンが此処に?」




「クスッ…会いたかったよ。“純陰(ジュンイン)御姫様(プリンセス)”であり、俺の“宿命の片翼(ベターハーフ)”。」






女神の問い等、気にも()めず嬉しそうに言葉を投げ付けて来る此の男神の正体は…――――、


“星”と成った、始祖、男神と女神の代わりに、神々の穢れを引き受けるよう、太陽と月の国の元へ(ツカ)わされた、女神と同じ身代わり人形の『宿命』を背負いし、同じ存在だった。











And that's all…?

(それでおしまい…?)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ