第24話 少年王と公帝戦争の終結と勇治の秘密 1
マギアンティア世界統一暦・1555年・7月24日・午前10時35分頃・マギアンティア世界・中央世界第一文明圏・ユーラシアン大陸・ゲルニアン帝国・帝都ベルリナ市・ベルリナ帝城宮殿・皇帝執務室にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ゲルニアン帝国の首都である帝都ベルリナ市にて、敗戦の第一報が戦況が伝わったのは、開戦から3日後の頃の事だった。
伝馬による伝令報告の内容が、日を追う事に酷くなって行くのが分かって居たが、キリヤ公国連合国の様な通信機や自動車などの乗り物が無い為に、戦場からの情報が1日以上も掛かってしまう事から、かなり遅れてからの最新の戦況情報が本国に伝わったのであった。
ヒットランは、的確に事態に対処しようとして居たが、機械化された軍勢の進軍速度の前にして、そのスピードに付いて行く事は、最初から不可能だったと言えた。
その結果、完全な惨敗の訃報が帝都に居る彼の下に伝わるまでに、かなりの日数が掛かってしまっていた。
事が決して居たのは、開戦から5日後で、残り2日間くらいの間には、キリヤ公国連合国軍は、更に軍勢を北上をさせて来て居たと聞くと、彼は只々笑うしか無かったと言う。
その軍勢が新たに国境と成った地点へと到着する1日前に、停戦の使者が辿り着いたのは、ゲルニアン帝国に取って不幸中の幸い的に、運が良かったと言えたのである。
「くくくっ、キリヤの小僧め。最初から勝てると、ほざいて居たが、本当に戯言では無かった様だな・・・・・・・・・・」
「皇帝陛下・・・真に申し訳が御座いませぬ。」
「この巻き返しは、軍を再編制の上で、停戦期間を持ってして、再侵攻をして必ずや・・・・・・・・・・」
「ロンデル。余は今回の戦の積は、誰にも無いと思って居る。」
「その理由は、我が帝国全体が、彼のキリヤの小僧とキリヤ公国連合国、それに南部諸国を舐めて掛かった酬いなのだろう。」
「なんと!?ですが開戦前ですら、彼の小国は、我が国にすら勝てないとの情報を得ていたと、記憶して居ます。」
「それなのに、何故、我々は彼の国に負けたのでしょう?」
「ふっ、それは向こうも間諜に長けた手練れが居た事と、ナデシコなる異界の者共の手によって、有り得ない兵器が多数有った事が、この大戦での大きな敗因なのであろうな。」
「ですが、それは子供が持って居る様な、見てくれだけの玩具だと言われてるとか。」
「ロンデルよ、それよ。その考えこそが、その考えで戦ったと言う事実が、我が軍の負けて居る所だと思わんのか?」
「はぁ・・・・・・・」
「ゲルニアン帝国軍・総合情報工作員局の話では、何れの兵器には、連射力がとても高いとの報告が有り、その報告は前線から指揮官等の名で連名で来て居るし聞く。」
「そう、全ての現場の意見と体験談が、この戦争の勝敗を物語って居るのだっ!」
「これを気が振れたとか、又は戦場の恐怖から鬱病に陥った愚か者と揶揄して、切って捨てるには、不十分な事だと、このわしは思うぞっ!」
「何せ、此方の銃や大砲が1発撃つ間に、敵方の方では10発以上は撃ち込んで居るらしいのだ。」
「これでは、誰のせいにも出きまいて・・・・・・・」
「だからだ、誰の咎めもせぬが、今後はキリヤ公国とその関わりの有る連合国加盟国や同盟国家に対しての評価力と認識力の低い者や卑下して居る人材は、遠慮無く降格させよ。」
「今後は、あの小僧と対峙すると言う事は、生半可な考えでは、此方が危ういのだ。」
「分かりました。陛下のお考えが、其処まで思慮深い物なら、そのお考えに誰も異を唱える者は居りませんでしょう。」
「ですが陛下。それでは南部の各国や世界中の諸外国に加え、国内多くの者に勝って当たり前と豪語してしまった戦での敗戦です。」
「幕引きの仕方を如何にかしませんと、全てに置いて、示しが付きませぬぞっ!!」
「此度の戦では、思った以上に損害も多い。」
「やろうと思えば、もう一度は軍を差し向けられるだろうが、その結果は、何ら変わらんだろうな。」
「それに、またやったのなら、敵軍はもっと我が帝国の内陸へと北進して来る恐れも有る。」
「下手をすれば、この帝都の安全すら危ぶまれる事と成る。」
「そうなる前に、逸早く手を打つのだ。」
「再戦を挑むにしても、キリヤ公国連合国と彼の小僧に付いて、もっと色々調べねば成らんぞっ!」
「でなければ、何度やっても事態は変わらん。」
「だから此処は一旦、多くの情報を集め、我が帝国軍を強化してからでも遅くはあるまい。」
「確かに、此処は無念ですが、今回の軍事侵攻は諦めましょう。」
「最後にの議案に付いてお聞きしたいのですが、陛下は、此度の戦に付いて、どの様な幕引きに為さるお考えのお積りでしょうか?」
「うむ。その件なのだが、今回の大戦で最前線と成ったガントー地方、ダンドー地方、バンドー地方の三地方の領主。」
「それとメイルシュルフラッド公国・・・ああ、そう言えば今はキリヤ公国連合国に加盟したらしいな?」
「その国名も、メイルシュルフラッド独立自治公国と成って居った聞く。」
「そのメイルシュルフラッド独立自治公国の側のランドー地方。」
「更にガリアナ王国との境のザンドー地方。」
「オルトランタ商業連合国と境のアンドー地方を含めた計6州を切り捨てる形で決着を着けるのだ。」
「理由に付いて・・・・そうじゃのう・・・・各地方領主たちが奮戦せず、前線指揮官命令を混乱させたとでもして置けば良い。」
「在地諸侯らは、帝国法の罰則規定に従って領地没収の上で、ユーラシアン大陸南方諸国同盟諸国に賠償金として支払いに充てよ。」
その6つの州は南部連合国に完全に占拠されて居て、現在のゲルニアン帝国の状況から言って、今すぐの奪還が難しく成っている領土だった。
それに戦後交渉するに当たって、国境線を新たに敷くと成ると、どうしてもゲルニアン帝国側が、不利なのは必定である。
従って6つの州は、領主ごと捨てるしか無かった。
それでも6つの州の領主達が、帝国に尽くしたいと言うのならば、最低件の体裁で迎えてやろうとヒットラン皇帝は考えていた。
だが、既に離反者が、この時点で出て居る事をヒットラン皇帝は、また知らないのである。
「成るほど、陛下や将軍たちの責任を少しでも軽くする苦肉の策ですな?」
「出なければ、我が帝国政府と皇室に疑念を抱き、貴族諸侯や帝国民らが反旗を翻すやも知れん。」
「うーむ、この際、それに付いては致し方が無いとしてもです。その6州の領主達の身の振り方は、どう為さるお積りなのですかな?単なる領地没収で済ませるのですかな?」
「好きにせよと言えば良い。」
「今まで通りに帝国に居ると決めるか、在地に居残り、野に下るなり、敵方に付くなり好きにしろとな。」
「戻るのなら、領地無しの法衣爵位を用意するとでも言って置けっ!」
「此度の敗戦で、領土か増えない所か、敵国に引き渡すのだからな。」
「領地を失った者共に、与えられる様な余計な金や土地は、今の我が帝国には無いからな。」
「分かりました。」
「戦後交渉に付いては、国防省と外交省。」
「それに内務省とも協議して、キリヤ公国連合国を通じて、占領地と成って居る6領主達に、正式な通達する様に取り計らいます。」
ヒットラン・アドルフラー皇帝は、キリヤ公国連合国を始めとする南部諸国連合に占領されたザンドー地方・アンドー地方・ランドー地方・バンドー地方・ダンドー地方・ガントー地方の6地方の領主と領地を切り捨てる決断を下したのであった。
どの道、領土が減れば、収めていた領主や官僚に兵士らは、行き場と職や土地を失う。
帝国に居残ってたとしても、祖国での官職が無いのだ。
自然と野に下るしか無いだろう。
停戦日に当たるマギアンティア世界統一暦・1555年・7月27日から5日後。
マギアンティア世界統一暦・1555年・8月1日に成ると、ゲルニアン帝国の講和の使者が公王都キリヤ市を訪れ、双方が良く話し合った上で、正式に戦争が終結を宣言を採択された。
ゲルニアン帝国の南部領土は、戦勝国と成った国々へと譲渡され、各国に日本円で言えば、約20億円。
キリヤ公国連合国共通通貨で、20億イエンづつの賠償金と共に引き渡された。
賠償金の支払いは、混じりっけ無しの純金のインゴットで支払う事と成って居る。
こうして、第一次公帝戦争と呼ばれる大戦が終結する事と成る。
キリヤ公国連合国と同盟各国は、公帝戦争で得た新領土の統治に力を入れて行く事と成るのであった。
それから10日の間、キリヤ公国連合国の加盟国各国の軍部は、新領土の整備と駐留軍の整理に取り掛かる。
盟主国であるキリヤ公国も戦後処理に追われる日々と成った。
マギアンティア世界統一暦・1555年・8月2日・午前9時15分頃・マギアンティア世界・中央世界第一文明圏・ユーラシアン大陸南部地方・キリヤ公国連合国本国・キリヤ地方・キリヤ公国本国・公王都キリヤ市・キリヤ城・キリヤ城中央棟・謁見の間にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
この日、ガントー地方の新領主にして、フェリス家の辺境侯爵位と一族当主の座を引き継いだレイチェル・フェリスは、フェリス一族の新代表と成って、初めて勇治との謁見に望んで居た。
戦後処理の為に彼女は、逸早くキリヤ公国連合国へと降伏し、戦後処理をスムーズに行った事とキリヤ公国との戦後交渉を上手く処理した事が、両親と親戚一族を含めた臣下達から高く評価された事で、フェリス一族の中から新たな時代を切り開く才覚在る者と称えられる。
そんな理由からレイチェルは、フェリス辺境侯爵家の新当主代表に選らばれたのであった。
ガントー地方の南西に位置しているダンドー地方を治めて居た姉のロイチェルは、「あらあら、せめて相談くらいはして欲しかったわ」とニコニコ笑顔で一族会議の席で、しょうがないわねと妹を見つめていた。
ロイチェルは跡取り娘で有ったが、フェリス一族の危機を救った妹の先見性を見定める才を高く評価し、潔くフェリス家当主の跡目の座を譲り、レイチェルの補佐に回る事を内外に向けて宣言した。
北西の沿岸地域のバンドー地方を治めていた妹のライチェルは、「もうっ、姉様は直ぐに先走るんだからっ!」と呆れて居たが、姉の素早い対応には、舌を巻いて居た。
公帝戦争の戦後処理に措いてレイチェルの両親達は、ヒットラン皇帝からの通達で土地を捨てて帝国に尽くすか、野に降るかは、各々の判断に措いて好きにせよとの通達に対して、これからどうしょうとオロオロとした状態で考えつつ、とても深刻な顔付きで頭を抱えていた。
その席でレイチェルは「どうせ捨てられるなら、キリヤ公国連合国に降って仕事を貰って上で、安定な暮らしを手に入れる方が、何ぼかマシっ!」と家族や親族の面々に言い放っていた。
それなら貴女が話を纏めなさいと姉のロイチェルに言われて、フェリス辺境侯爵家当主に一族臣下の総指名され、その代表と成って今日、キリヤ公国連合国の首都である公王都・キリヤ市へとやって来たのである。
「桐谷勇治陛下のお入りであるっ!」
近衛近習衆軍の筆頭大将にして、国防大臣である足柄一輝が、王座から見て右下の指定位置にて、高らかに主の名を叫ぶ。
勇治は、謁見の間の王座の在る席から見て左手の奥の入り口から室内へと現れた。
勇治の左右の横に、護衛としてアマテラス神皇国でも、指折りの剣士とし知られている上泉伊澄と柳生冬香が対と成って居並んで立って居る。
その反対に長野業乃、結城梅晴。細川藤夜と左右交互に居並んでいる。
塚原伝江は、アマテラス神皇国一番の剣術師範と名高いが、キリヤ公国内では、本人の希望も有って、表に出る様な官職を避けて居るが、名誉職として、キリヤ公国・公王専属護衛総隊長を務めつつ、近衛近習衆軍の訓練教官顧問を併せた近衛護衛官長を務める事と成った。
何も無ければ、玉座裏の控えの間で、事が終わるのを待って居る事に成って居る。
武を極めた伝江は、若手を育てる事に専念したいらしく、勇治の下に来たのも、剣の神からの啓示が有ったからと言って居た。
まぁ、この一見も女神アルテジアの差し金だろうと思われたので、勇治は特に気にして居なかった。
貴重な人材が得られて、彼とキリヤ公国連合国には損が無いしね。
伝江が出張る事態は、余程の緊急事態と成って居るので、公の国事に関わる様な事は殆んど無いのだ。
レイチェルは、友好同盟国以外の諸外国から小国の少年王と揶揄され、忌み嫌われて居る勇治に対して、深々と頭を下げていた。
敗戦国の領主として、これからどの様な裁可を下すのかが、怖く感じて居たりしていた。
「お顔をお上げ下さい。」
「はっ、はい。」
「・・・・・・・」
勇治は、肩まである金髪のミディアムロングヘアーの髪型と整ったボディスタイルを持った気が強そうな感じの歳若い女の子を静かに見詰めていた。
「ご尊顔を拝し、真に恐悦至極に御座います。」
「私はガントー地方を中心とした一帯を治めて居るフェリス辺境侯爵家領国の新領主にして、旧ゲルニアン帝国・フェリス辺境侯爵本家の次女でも在ります。」
「レイチェル・フェリスです。」
「今日は先の戦での戦後処理に措けるゲルニアン帝国南東部一帯のフェリス家一族が治める領地と一族の処遇に付いての御裁可を伺う為に、参った次第です。」
「わざわざ公王都キリヤ市までご足労を頂き、ご苦労さまです。」
「初めまして、レイチェルさん。」
「僕が桐谷勇治と言います。」
「そう堅く成らなくても、良いですよ。」
「はっはいっ!実に勿体無いお言葉です。」
(想像して居た人物像よりも、意外と優しい・・・・・)
(これまでの王侯貴族とは違った雰囲気だわ。)
(異界の庶民の出だと、事前に説明を受けて居たけれど、それと違った魅力が有る様に感じられるわね・・・・・・)
(何故かしら?温かみの中に、畏怖を感じてしまうこの感じは?)
(この少年の正体は、一体、何者なの・・・・・・・)
転生した際に、魅了スキルが付与されているので、殆んどの人物は勇治に魅せられてしまうのだ。
特に歳が近かったり、可愛がったりして居ると、心が魅かれ過ぎてしまうのである。
レイチェルもまた、その例外では無かったのであった。
「では、フェリス家とその領地の処遇と裁可に付いてですが・・・・・・」
勇治は関係書類を持って居た外務大臣である梅晴から受け取ると、決定してある事を読み上げた。
「フェリス家の全体意思決定として、我が国に降ると言う事で、間違いは無いですね。」
「はっ、帝国に見捨てられた今では、彼の国での我が家の居場所は在りません。」
「陛下や貴国さえ、良ろしければ、末席でも在っても構いません。」
「貴族の爵位の立場すら捨てる所存です・・・・・・・」
「まぁまぁ、そう生き急がないで下さい。決して悪い様にはしませんから。」
勇治は、レイチェルを宥める様に言うと、真剣な表情で正式な沙汰を言い渡した。
「レイチェル・フェリスに申し渡します。」
「1つ。フェリス家の全領地は、我が国の執政下に置かれ、治安維持の為のキリヤ公国連合軍の駐留を認める事。」
「1つ。同地領内の軍勢は、キリヤ公国連合軍へと編入され、我が国の形式の軍へと再編制と訓練体制への移行をする事。」
「1っ。統治方法も、キリヤ公国連合国中央政府・総務省から派遣される補佐官の助言の下での統治と人事の異動をする事。」
「そして最後1つとして、同領地を治める統治者は今まで通りに、フェリス家と一族代表たるフェリス家当主が治め勤める事とし、速やかに統治代表者を決め、正式な文書で改めて、中央政府へと届け出を出す事とする。」
「えっ?・・・・・・・・・」
「なお、代表者には侯爵位の地位を約束する。」
「つつつ、詰まり・・・・・・・・・」
「ええ、家のキリヤ公国連合国の統治法に従う事以外では、殆んどが今まで通りですね。」
「はああぁぁっ、有難う御座いますっ!有難う御座いますっ!有難う御座いますっ!」
レイチェルは、感激と安心感の余り、何度も頭を下げてお礼を言ってしまった。
「ユウジ陛下っ!キリヤ公国中央政府と連合国加盟各国政府の方々のご配慮とお慈悲に感謝を致します。」
レイチェルは、勇治とキリヤ公国政府の寛大な処置に、満面の笑みと涙溢れ、心から感謝を言って居た。
このレイチェルの勇気有る決断は、フェリス家の命脈を守っただけで無く、更なる飛躍を齎す事と成って行くのだった。




