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キリヤ公国英雄戦記物語  作者: 伊達教宗
第3章 少年王とゲルニアン帝国との戦い。激突!公帝戦争っ!!編
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第20話 少年王と公帝戦争とキリヤ公国連合国軍の逆進撃の開始っ!!

 マギアンティア世界統一暦・1555年・7月23日・午前9時00分頃・マギアンティア世界・中央世界第一文明圏・ゲルニアン帝国・フェリス辺境侯爵領・ガントー地方国境付近及び・キリヤ公国連合国・ムツ地方自治州区北部ゲルニアン帝国との国境地帯・ハコダテ国境要塞前・ゲルニアン帝国軍本陣周辺にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 


 時刻は午前9時丁度を指して居た。


 ユーラシアン大陸南方諸国同盟軍が、ゲルニアン帝国軍の総反撃攻撃を開始してから3日後にあたる7月23日の事である。


 ゲルニアン帝国軍の本陣では、ハイレンツ・グデーリアン将軍が率いる100万の軍勢に対して、キリヤ公国連合国の本土であるキリヤ公国本国への総攻撃を命じていた。


 だが、この時のグデーリアン将軍は他方面の味方が、僅か1日半で敗走に追い込まれたとは、この時はまだ知らないのであった。


「攻撃開始だっ!!全各大砲大隊っ!撃てえええええぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」


ズドドッーンッ!ズドドッーンッ!ズドドッーンッ!ズドドッーンッ!


ズドドッーンッ!ズドドッーンッ!ズドドッーンッ!ズドドッーンッ!


ズドドッーンッ!ズドドッーンッ!ズドドッーンッ!ズドドッーンッ!


ズドドッーンッ!ズドドッーンッ!ズドドッーンッ!ズドドッーンッ!


ズドドッーンッ!ズドドッーンッ!ズドドッーンッ!ズドドッーンッ!



 ゲルニアン帝国軍はハコダテ国境要塞群に対して、ゲルニアン帝国史上初めてと成る1万5千門もの大砲をかき集めて砲撃して居た。




 まぁ、扱っている大砲が、旧式のフランキ砲や最新でもガルバリン砲なんだけどね。


 それでも大砲を2交代での一斉砲撃を行う様相は、正に圧巻の姿と言えるだろう。


 ゲルニアン帝国軍の情報部と参謀部は、ハコダテ国境要塞は堅牢な造りかも知れないと考え、大砲戦を主眼とした戦闘を展開するべきと進言し、軍幹部と上層部は、この進言の採用を決定するに至って居た。



 そして、このキリヤ公国本土との戦いが、他の戦線より長引いて居るのは、100万人対20万人と言う兵力差が有るからである。


 この兵力差が在るが故にキリヤ公国連合国軍が、敵に討って出る事が出きないのが最大の理由であり、序盤の間だけ守って居れば、キリヤ公国連合国軍は、近世時代クラスレベルの国家に過ぎないゲルニアン帝国軍を相手にするのならば、余裕で楽に勝てるからである。



ドドッ、ドンドンドン、ヒュウゥゥゥゥーーーーーーーーードッカーンッ!!


ドドッ、ドンドンドン、ヒュウゥゥゥゥーーーーーーーーードッカーンッ!!


ドドッ、ドンドンドン、ヒュウゥゥゥゥーーーーーーーーードッカーンッ!!


ドドッ、ドンドンドン、ヒュウゥゥゥゥーーーーーーーーードッカーンッ!!


ドドッ、ドンドンドン、ヒュウゥゥゥゥーーーーーーーーードッカーンッ!!


ドドッ、ドンドンドン、ヒュウゥゥゥゥーーーーーーーーードッカーンッ!!


ドドッ、ドンドンドン、ヒュウゥゥゥゥーーーーーーーーードッカーンッ!!


ドドッ、ドンドンドン、ヒュウゥゥゥゥーーーーーーーーードッカーンッ!!



「敵軍の各大砲隊が砲撃を開始っ!!」



 砲弾は次々とハコダテ国境要塞へと降り注いで居たが、数回は着弾地点を目標地点に合わせる為の試射である。


 本格的な砲撃には、今少し時間を掛ける必要が有った。


 キリヤ公国本国内へと続く街道にも、牽制砲撃を撃ち込まれキリヤ公国連合国軍が進軍が出きない様にもして居た。



「板垣副司令官元帥閣下っ!報告致しますっ!!他の戦線は我がキリヤ連合国軍と同盟国軍側が優勢の模様っ!!」


「そうか。」


「板垣副司令官元帥閣下っ!!いよいよっ!!このキリヤ公国本土にも敵の総攻撃が始まりましたなっ!!」


 参謀幹部の一人が、キリヤ公国本土にも、ゲルニアン帝国軍がハコダテ国境要塞戦線でも、大攻勢戦を仕掛けて来た事を告げた。


 妙子は堅牢なハコダテ国境要塞地下司令室で、ナデシコ自治統合陸軍幹部らと供に、ユーラシアン大陸の地図を見てゲルニアン帝国の侵攻計画の意図を呼んで見せた。


「ゲルニアン帝国のユーラシアン大陸南方諸国地方への侵攻計画は、実に簡単で単純だっ!!」



「何せ、戦技盤で遊び慣れて居る子共ですら、分かる計画だからだっ!!」


「敵はユーラシアン大陸北部から真っ直ぐに、キリヤ公国本国本土へと向かう計画だっ!!」


「ヒットラン皇帝の奴は、余程勇治陛下に、虚仮にされたのが、気に食わないらしい。」


「それだけで大軍を使って、我が国を大陸ごと包囲網を形成するのも、流石に大人気ない様な・・・・・・」


「金持ちの大人はな。見栄を張りたがる物だからな。」と妙子は嫌味を交えたジョークで話を締め括る。



「ですが、そのお陰で、敵の動きが丸分かりです。」



「だがな。この計画が、もう既に失敗して居る事を正面軍の将軍は、気が付いて居ない様だな。」


 妙子は呆れた顔に成った。


「仕方ありません。近世時代クラス軍の通信手段は、伝馬しか無いでしょうから、真実が伝わる頃には、後の祭りかと・・・・・・・」



「味方が強過ぎるのも考え物だな。」



「敵軍っ!!更に発砲っ!!ハコダテ国境要塞真上に着弾コースっ!!」


「総員っ!!衝撃に備えろっ!!」と妙子は無線と伝声管を使って、各部隊に警告メッセージを命じた。



ドドッ、ドンドンドン、ヒュウゥゥゥゥーーーーーーーーードッカーン。


ドドッ、ドンドンドン、ヒュウゥゥゥゥーーーーーーーーードッカーン。


ドドッ、ドンドンドン、ヒュウゥゥゥゥーーーーーーーーードッカーンッ!!


ドドッ、ドンドンドン、ヒュウゥゥゥゥーーーーーーーーードッカーンッ!!


ドドッ、ドンドンドン、ヒュウゥゥゥゥーーーーーーーーードッカーンッ!!


ドドッ、ドンドンドン、ヒュウゥゥゥゥーーーーーーーーードッカーンッ!!


ドドッ、ドンドンドン、ヒュウゥゥゥゥーーーーーーーーードッカーンッ!!


ドドッ、ドンドンドン、ヒュウゥゥゥゥーーーーーーーーードッカーンッ!!


 

「被害は?」


「有りませんっ!!敵砲弾の威力は想定内ですっ!!」


「板垣副司令官元帥閣下っ!!交戦規定がクリアと成りましたっ!!何時でも仕掛けられますっ!!」


 負けじとキリヤ公国連合国軍の主力軍であるナデシコ自治統合陸軍も反撃の砲撃戦を開始する。 


「分かった。ハコダテ国境要塞戦線の全軍に通信を入れろっ!!


「此方はキリヤ公国連合国軍・統合副司令官兼陸軍元帥の板垣妙子だっ!!」


「たった今、キリヤ公国本国本土の国境防衛ラインであるハコダテ国境要塞戦線内でも、キリヤ公国連合国・国防有事規定法での交戦規定をクリアを確認した。」



「ハコダテ国境要塞戦線で、待機中の各軍に告げる。各軍っ!攻撃開始っ!!」


「ハコダテ国境要塞内に居るナデシコ自治統合陸軍の各隊へ、撃ち方っ始めっ!」


「了解っ!!各軍っ!!各隊っ!!攻撃開始っ!!繰り返すっ!!攻撃開始だっ!!」



 一斉にキリヤ公国連合国軍の大砲が火を噴いた。



 ドドッ、ドンドンドン、ヒュウゥゥゥゥーーーーー・・・・・・ドカドカドカドカドッカーンッ!!


 ドドッ、ドンドンドン、ヒュウゥゥゥゥーーーーー・・・・・・ドカドカドカドカドッカーンッ!!


 ドドッ、ドンドンドン、ヒュウゥゥゥゥーーーーー・・・・・・ドカドカドカドカドッカーンッ!!



 ドドッ、ドンドンドン、ヒュウゥゥゥゥーーーーー・・・・・・ドカドカドカドカドッカーンッ!!


 ドドッ、ドンドンドン、ヒュウゥゥゥゥーーーーー・・・・・・ドカドカドカドカドッカーンッ!!



 その後、両者は2時間近く撃ち合って居た。



 ゲルニアン帝国軍のキリヤ公国攻略軍の指揮を執って居るグデーリアン将軍は、ハコダテ国境要塞の堅牢さに舌を巻いていた。




「うーむ、やはり事前に調べた情報通りに堅牢な要塞だ。」


「それにキリヤ公国連合国の大砲の数も、我が軍にと比べても、全く劣って居ないし、見る限り威力も数も有るようだ。」


「此処まで堅牢な要塞を築いた国は、恐らく、このマギアンティア世界の中でも、世界初であろうな。」


「近代要塞と呼ばれる種類の要塞は数多く在れども、この様な国境沿いに永延と続く要塞を建築するなど、一体如何やったら小国に過ぎないキリヤ公国連合国は、どの様な方法と財政体制を取って造り上げて居るのだ?」


「我が国では、あの要塞群を作り上げるとしたら、10年から15年の月日が最低は掛かるぞっ!」


「キリヤ公国連合国は、我が帝国と戦争を始める為に、従来の同盟国との連携だけで無く。」


「準自治国型の地方自治州区であるナデシコ地方自治州区や三ヶ国の自治連合加盟国と連合を組んだだけの俄か国家に過ぎない筈だっ!」


「幾ら異界地域であるナデシコ地方自治州区の国力とナデシコ自治統合軍の軍事装備が強力でも、数をこれだけ揃えるのに膨大な予算と労力が掛かる。」


「それなのにキリヤ公国連合国とキリヤの小僧は、たったの3ヶ月だっ!!たったの3ヶ月で、これら全て物をいとも簡単に揃えて見せたっ!!」


「単純に少しばかり国力が上がったとは言え、ホンの3ヶ月間の間にだっ!」


「連合国制を敷いただけでの国が、たった3ヶ月程度で税収が飛躍的に上がる筈も無いに、本当に如何やったら、この様な大要塞や、軍装備を揃えたのだ?」


 グデーリアン将軍の言う通りだ。


 この様な山脈とコンクリートや石垣を利用した永遠と続く大要塞を築く事は、地球の中国の歴代王朝でさえ無理な話だ。


 だって、あの万里の長城でさえ、明王朝の時代まで改修増築が続けられて居るのだから、途方もない国家プロジェクト級の事業である事には違いない。



 それにハコダテ国境要塞の建設には、国家予算が僅かしか掛けられて居ない。


 勇治の持って居るゴットタブレットの力で、ちょいちょいと操作して、5分で出現するのだから、敵から見れば、ホンとずるいし、如何にも卑怯でチートと叫ぶ事に成るだろう。


 掛かった予算は人件費と一部の改築費用くらいだ。


 後は物資の輸送費くらいだろう。


 要塞を造るのに、相手からすれば、そんな物は掛かった内に入らないと言われるかも知れないが・・・・・・・・・・・・ 



「グデーリアン将軍閣下、こうして撃ち合って居ても拉致が明きません。」


「やはり戦の決着を付ける為に、彼の城塞を陥落させるしかありません。それには直接攻撃を仕掛けませんと・・・・・・」


「良し、重歩兵に盾を構えつつ、銃兵をその後ろに付かせ前進させよっ!」


「更にその後ろには、弓兵隊を前進させろ。騎兵も後ろに配置。」


「ヒロサキ町へと続くヒロサキ街道には、5万の兵を向わせろっ!邪魔なアマテラスのイノシシ武士どもを打ち破り、キリヤ公国本国本土内へと軍勢を雪崩込ませるのだっ!」


「如何に頑丈な要塞であっても、敵の居ない後背と言うのは、脆いと言う物。」


「我が国の様な武装に優れたと聞くナデシコ兵士よりも、アマテラスのサムライども為らば、確実に討ち破れる筈だ。」


「敵の要塞防衛軍は、我ら本隊軍で引き付けて居る隙に、別働隊5万人で敵の裏手に周り込み。敵を挟み討ちにしてくれるっ!!」


「はっ!!」



 ハコダテ国境要塞が中々落ち辛く、単なる銃砲火では、この大戦の決着を付けられない。 


 これらの事で戦功を焦ったグデーリアン将軍は、旗下の軍勢一部を前進させ、挟み討ち戦法で、難攻不落と思われるハコダテ国境要塞の攻略に掛かる。


 その様子をハコダテ国境要塞から板垣妙子が見ていた。


 平原や小さい林に小高い丘しか無いだだっ広い地域である。


 ちょっとした高い場所さえ在れば、大人数で動き回る群衆なんぞ、丸見えだった。


「やれやれ、やっと痺れを切らしたか?」


「全軍っ!!よーく引き付けてから撃てっ!!」



 ザッザッザッと進軍の足音を立てながらゲルニアン帝国軍は、100万人の軍勢をそれぞれキリヤ公国連合国の要塞群の要所陣地に向けて進軍して行く。


 両者の大砲も引き続き撃ち込まれて居た。


 それでもゲルニアン帝国軍は、怯む事は無い。


「まだだ、もっとだ。もっともっと引き付けろ。」


「早まるな。もう少し・・・・・・」


「今だっ!!撃てえええええぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーっ!!」



 ドッとナデシコ自治統合陸軍の兵士らが塹壕や要塞の窓から顔を出した。


 ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!



 ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!



 ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!



 ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!




 ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!



 ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!



 ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!



「「「「「ぐわあああああぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーっ!!」」」」」


 一斉に銃撃の雨を降らされた帝国側は、負けじと突撃を命じた。


「怯むなあああぁぁぁーーーーーっ!!栄えあるゲルニアン帝国の為にいいいいいぃぃぃぃぃーーーーーーーーーーーーーっ!!!」


「「「「「うあああああぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーっ!!!」」」」」


「「「「「うおおおおおぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーっ!!!」」」」」


「「「「「うおおおおおぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーっ!!!」」」」」


「「「「「うおおおおおぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーっ!!!」」」」」


「「「「「うおおおおおぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーっ!!!」」」」」



 しかし、奮戦虚しく、鉄条網と機関銃の雨に晒さされて第一次攻撃隊は、一瞬にして全滅したのである。


「報告っ!第一攻撃隊は、全滅っ!続く第二次攻撃隊も、持ちそうに有りません。」


「くっ、まだだっ!!即座に第三次攻撃隊を編制、続く第四次攻撃隊も編成させっ!出撃準備をさせよっ!!」


「整い次第、即出撃するのだっ!!」


「はっ!」


「うーむ。」



 グデーリアン将軍は、日露戦争の乃木将軍の様な消耗戦に成りつつあった。


 ハコダテ国境要塞は、撫子皇国があった世界のロシアン帝国と言う国が、魔改造を施した旅順要塞の資料を基にして、更に阿漕な造りへと強化されて作られて居るので、ある意味、卑怯な造りに成って居た。




 マギアンティア世界統一暦・1555年・7月23日・午前9時40分頃・マギアンティア世界・中央世界第一文明圏・ユーラシアン大陸南部地方・ゲルニアン帝国・フェリス辺境侯爵領・ガントー地方国境付近・キリヤ公国連合国・ムツ地方自治州区北部地域・ゲルニアン帝国との国境地帯・ハコダテ国境要塞・ゴリョウカク国境要塞郡・ヒロサキ街道・伊達・毛利・上杉・キリヤ公国武士軍団の連合軍陣地にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 


 ヒロサキ街道の脇には、ハコダテ国境要塞群の東側にヒロサキ街道を通す為に防塁の端っこの部分が在る。


 其処には小高い近代的な防塁を用いた砦を築いて、街道東側の向こう側に在る防塁へと続いて居る。


 その防塁は沿岸地域まで伸びて有り、海上のナデシコ自治統合海軍の警備網と合わせる事で、敵の侵入を完全に防ぐ設計に成って居る。


 そのヒロサキ街道の防衛戦線の総指揮を執るのは伊達軍の総大将たる伊達政実。


 その横には副将として、この軍の主力を担っている毛利軍の総大将である毛利輝実の二人が、頑丈なコンクリートで作られた防塁の中で、監視窓から敵状の動きを見守っていた。


 その後ろに上杉景勝が静かに戦況を見守って居たが、これも単なる寡黙で口下手なだけであった。



「どうやら痺れを切らして、此方にやって来た様ですね。」


「やっと出番か・・・・・」


「では、政実。内合わせ通りに、春美隊と成美隊が先陣を務めます。」


「その後衛には、鬼庭隊の重機関銃隊は迫撃砲隊を潜ませ置こう。何か在れば真礼の奴が上手くやってくれる。」


「片倉殿が前線の総指揮、我が従姉妹の宍戸・竜実・宗成隊が副将と言う事で良いですね。」


「ヒロサキ街道の戦線の主力は、毛利軍だ。ナデシコ軍もキリヤ武士軍団も遊撃に徹して貰う。」


「敵に対しては総崩れが起きるまで、ひたすら耐え抜きつつ、反撃開始の命が来たら一斉に突撃。」


「では我ら上杉勢は、伊達・毛利勢の背後を守ろう。」


「ああ、景勝殿か?済まないな。気を使わせてしまって。」


「・・・・・・・・・」


(うーん、会話が続かない。寡黙で口べたらしいが、気を使える御仁らしい。)


「政実、先陣部隊が万が一と成った場合を考えて、景勝殿は敵の横槍等を防いで見せると仰られて居るのよ。」


「ああ、それ助かる。」


「・・・・・・・・」と口下手な為に黙ってしまった景勝は、褒められたせいか、照れて居た。


「後は喜多の奴が上手くやるさ。輝実殿は、何か気が付いたら助言して欲しい。」


「ふふっ、貴女にそう言われると、何だか妹が1人増えたみたいで嬉しいわ。」


「私は伊達の長女だからな。姉が居ると言うのは、何だか不思議な気分だ。供に陛下に良い報せを齎そう。」


「片倉殿に命令っ!ヒロサキ街道防衛を担う総大将っ伊達政実が命であるっ!」


「吉川春美隊と伊達成美隊は、我が軍へと進軍するゲルニアン帝国軍の先方隊を突き崩せっ!然る後に撤退し、敵軍を釣り上げよっ!」


「ははっ!」


 輝美は、ヒロサキ街道防衛を担う総大将付きの副将として、どっしりと構える大将に代わり命令を発した。


 政実が全体を指揮し、輝美が細かい指示を出すのが役割である。



 だが、片倉隊の喜多が命令を発する前に、春美隊と成美隊のコンビは、直感で仕掛けたのである。


「まだじゃっ!!よーく引き付けいっ!」


「・・・・・・・」

 

 春美隊と成美隊の二隊は、暗がりの早朝から街道筋の脇の草叢に陣取って、各々の兵隊を忍ばせて居た。


 街道の真ん中に両部隊の大将が居座り、敵を引き付ける。


 両脇の部隊は銃歩兵隊で、38式歩兵銃2式を構え、敵を待ち構えて居た。



「進めえええええぇぇぇぇぇーーーーーーっ!!」


「あの街道を抜ければ、我らの勝利ぞおおおおおぉぉぉぉぉーーーーーーっ!!」



 ゲルニアン帝国軍の5万人軍団は、ヒロサキ街道を押し通ろうと、伊達・毛利連合軍へと強行突破を試みた。


「上手い・・・・あの二人、直感で動きを合わせて居る。」



 喜多は、先駆けの二人の勝手な振る舞いを見て、そう思った。


 二人の間には、武人同士の感と言う奴で、心が通じ合って居る様にも見て取れていた。



「今じゃっ!!」


「撃てえええええぇぇぇぇぇーーーーーーーーっ!!」




 ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!



 ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!



 ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!



 ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!




 ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!



 ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!



 ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!


 ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!



 ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!



 ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!



 ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!




 ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!



 ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!



 ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!




「ぐはっ!」


「ぐほっ!」


「がはっ!」


 ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!



 ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!



 ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!



 ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!


「ぐはっ!」


「ぐほっ!」


「がはっ!」



 ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!



 ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!



 ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!


 ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!



 ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!



 ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!



 ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!


「ぐはっ!」


「ぐほっ!」


「がはっ!」




 ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!



 ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!



 ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!ズダダッーーーンッ!!


「ぐはっ!」


「ぐほっ!」


「がはっ!」



 伏兵の罠に掛かるゲルニアン帝国軍は、春美隊と成美隊の二隊の容赦の無い十字交差射撃を受けて、パタパタと倒れて行く。


「今だっ!」


「皆撫で斬りちゃるけんねっ!」



 二人は伊達・吉川の騎馬兵合わせて5千を率いて突撃を敢行する。


「うわあああぁぁぁーーーーっ!!」


 成美が一突きで敵のどてっ腹に槍を突き刺して討ち取る。


「うおおぉぉりやゃゃゃーーーっ!!」


 

 春美は、刀で一振りで敵将の首を切り落とした。


「「コイツにだけは絶対に負けないっ!」」


 この意地の張り合いが、思わぬ誤算を生んでいた。


 二人は次々と敵軍を突き崩して、壊走させて行くのだから、ゲルニアン帝国軍に取っては、堪った物では無いのだった。


「今だっ!!」


「突撃ですっ!!」



「「「「「うわああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」」」」」


「「「「「うおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」」」」」


 成美と春美の凸凹コンビが張り合いながら切り裂いた敵の隙間を毘沙門天の毘の字と乱れ龍文字に、日章旗が掲げられ、竹に上杉雀紋の旗刺し軍旗が居並んで突撃する上杉軍が騎馬隊3千人を率いて仕掛けた。


「何じゃとっ!?」


「此処で上杉勢っ!?」


 成美と春美の凸凹コンビは、先陣の功を立てたが、敵軍を蹴散らす美味しい所は、新上杉家の二枚看板たる直江・愛華と大国・七恵の双子姉妹に横取りされてしまった。


 金ぴかに光る愛文字の前立てと、大国文字の前建てを見付けた姉妹コンビの二人の姿して居た事で、成美と春美は、横取りを仕掛けて来た相手が、何所の誰なのかが判明して居た。


「おいっ!!直江のっ!!先陣は吉川軍と其処の伊達の小娘が務める事になっちょるけんっ!!」


「誰が小娘だっ!!」



「へへんっ!!二人とも手間取ってから、今が攻め時ですって政実様達に進言してから攻めてたから、全然っ!!問題無いよーだっ!!」


「姉さん、もう少し控えめにっ!!」


 上杉の若き才人さんは自信満々言って二人のダメ出しを居つつ、手柄は正当な物だと言い張る。


 それを妹である七恵は窘めるるが、聞き入れて貰えなかった。


「何じゃとっ!!」


「悪いけど、そろそろ戻らないと不味いから、じゃねっ!!」


「本当にすみません。家の姉さんがっ!!それと片倉様が一中てしたら、とっと引き揚げろとの事です。では・・・・・」


 ヒヒーンと馬を本陣の方へと引き換えさせて、同時に上杉勢も整然と引き上げて行く。


 其処にゲルニアン帝国軍の新手の軍勢が現れ、味方軍を救おうと駆け付けた。


「これ以上、敵の好きにさせるなあああぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!」


「押し返して、味方を救ええええええぇぇぇぇぇーーーーーーっ!!」


「「「「「うわああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」」」」」


「「「「「うおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」」」」」




「ちいっ!!」


「あっんの双子めっ!!後で覚えちょれっ!!」



「二人ともっ!ぼさっとしないっ!!!」


 ズダダダダダダダダダッ!!ズダダダダダダダダダッ!!ズダダダダダダダダダッ!!


ズダダダダダダダダダッ!!ズダダダダダダダダダッ!!ズダダダダダダダダダッ!!



ズダダダダダダダダダッ!!ズダダダダダダダダダッ!!ズダダダダダダダダダッ!!


ズダダダダダダダダダッ!!ズダダダダダダダダダッ!!ズダダダダダダダダダッ!!


「鬼庭の姉御か?」


「真礼?」


「喜多に言われて援護に来たよっ!撤退での殿は、このあたしに任せて、あんた達二人は退きなっ!」


「助かるけんっ!」


「うん。」


 ズダダダダダダダダダッ!!ズダダダダダダダダダッ!!ズダダダダダダダダダッ!!


ズダダダダダダダダダッ!!ズダダダダダダダダダッ!!ズダダダダダダダダダッ!!


 撤退にもたついて居る凸凹コンビの援護に現れたのは、鬼庭・真礼・綱元。


 伊達照宗の側近で、元は奥州ブッタ教 ブッタ教寺院の修験者僧だった鬼庭・左月斎・良直の長女で、後に奥州独立自治王国・伊達王家三傑臣の一人で司政の真礼と呼ばれて居る。


 中肉中背のボデイスタイルと美乳のバストを持ちつつ、背丈は165センチにして、パサパサとした黒髪ロングストレートヘアースタイル。


 性格はサバサバとしてさっぱり系のお姉さんで、特技は内政と剣術と槍術を得意とし、専ら伊達家の内政を司りながらも、軍事に措いては中軍を担い、重機関銃隊や迫撃砲隊、それに補給部隊と総大将の護衛軍を始めとする支援部隊なんかを指揮する立ち位置。


 片倉・喜多・影綱とは母違いの姉であり、喜多と真礼の間には5歳年上の姉たる片倉喜美が居るが武士には成らず、片倉家の片倉産土神社の方を継ぐべく巫女に成って居る。


 鬼庭・左月斎は跡継ぎに男子を望んで居たが、一人目の本沢から嫁いで来た直子は、片倉喜美を産んでしまい。


 その後直ぐに、二人目の妻である牧野恵子が身籠った事が発覚。


 直ぐに本沢直子と離縁し、二人目妻である牧野恵子は鬼庭・真礼・綱元を産んだ。


 良直は二人続けて女子であった事に大層がっかりしたと言うが、似たような時期に片倉・喜多・影綱が産まれて居る。


 この事に良直は更にがっかりしてしまう。


 もう一人産めるだけの良い身体を持った直子に謝り、何か在れば直子の娘達の事は、このわしが面倒を見るし、仕事の斡旋やその他の力に成ると述べて居る。


 その片倉喜美・片倉・喜多・影綱・鬼庭・真礼・綱元の三名らは、産まれはどうあれ、とても仲の良い三姉妹として奥州独立自治王国内でも知られて居る人物で、鬼庭・左月斎は、親も血筋も経緯も違う成れども、全員が我が娘であると公言して居る程に可愛がって居ると言う。 


そんな彼女が携帯式機関銃を片手に、撤退に遅れて居る部隊の支援に入った。


 流石にこれは黙って言う事を聞くしかないと思った成美と春美の凸凹コンビであった。



「第一機関銃隊っ!!第二機関銃隊っ!!撤退よーいっ!」


「迫撃砲隊っ!!支援砲撃っ!撃てっ!」



 ドドッ、ドンドンドン、ヒュウゥゥゥゥーーーーー・・・・・・ドカドカドカドカドッカーンッ!!


 ドドッ、ドンドンドン、ヒュウゥゥゥゥーーーーー・・・・・・ドカドカドカドカドッカーンッ!!


 ドドッ、ドンドンドン、ヒュウゥゥゥゥーーーーー・・・・・・ドカドカドカドカドッカーンッ!!


「撤退いいいぃぃぃぃーーーーっ!!!」


 真礼隊は、前線に出た部隊を退かせて行くと、入れ替わりに前線と成った第三機関銃隊と第四機関銃隊らに銃撃をさせ、続けて迫撃砲を撃たせる殿戦を繰り広げた。

 

 その手並みは見事であったと、戦後功労評価を国防総省の幹部と国防大臣の一輝らから受けて居る。


 その後も伊達・毛利・上杉連合軍は、一時的に攻勢出ては退き、また押しては退くを繰り返す。これを前面攻勢の命令が出るまでの間、繰り返す作戦を展開する。


 成美と春美の凸凹コンビと新上杉家の二枚看板たる直江・愛華と大国・七恵の双子姉妹は、色々と反目する部分は有る物の、後の世では名将と言われる事に成る。



 マギアンティア世界統一暦・1555年・7月23日・午前13時17分頃・マギアンティア世界・中央世界第一文明圏・ユーラシアン大陸南部地方・ゲルニアン帝国・フェリス辺境侯爵領・ガントー地方国境付近・キリヤ公国連合国・ムツ地方自治州区北部地域・ゲルニアン帝国との国境地帯・ハコダテ国境要塞・ゴリョウカク国境要塞郡にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 


 午前9時から始まった戦いは、既に5時間が続いて居た。



「伊達・毛利・上杉連合が押して居るな?」


「はい。伊達公も毛利公も、そして上杉公も良い連携体勢ですね。」



「妙子さま。」


 赤い兜の覆面と鎧装束を身に着けた怪し過ぎる、いや、痛過ぎる格好をして居るくの一が現れた。


「籐歌か?」


「只今、我が戸隠侍雷夜衆隊の者が手に入れた情報に由れば、敵軍は更に攻め掛かって参るとの事です。」


「それだと、此方も面倒に成るな。そろそろ此方側にも疲れが出て来る頃合だな。」


「ご心配無く。我々が何とか致しましょう。」


「頼めるか?」


「はい。30分ほとで片付きます。」




 すうっと姿が消える籐歌。


 彼女はアマテラス神皇国の信濃山奥に拠点を置く、戸隠侍雷夜衆と呼ばれる戦闘忍者集団。


 侍雷夜籐歌率いる戸隠侍雷夜衆は、キリヤ公国秘密工作情報部局の第三部隊・戸隠侍雷夜衆隊と成って居る。



 彼の忍び衆達が得意とする事は、戦場での攪乱と乱戦である。



 アマテラス神皇国では、真田や武田に協力して戦果を上げて居たと言う。


 それが伊賀栗衆と似たような理由で、大陸へとやって来ていた。



「何としてでも、ナデシコ自治統合海軍の北上作戦が終わるまで、キリヤ公国本土で敵を引き付けて置かなければ為らない・・・・・・・・・・・・」



 妙子は、ナデシコ自治統合海軍の北上侵攻作戦の成功に導く為にも、ゲルニアン帝国軍の殆んどをキリヤ公国本土と南部諸国に引き付けて置く積りで居るのだ。


 敵はキリヤ公国連合国と南部諸国の事を格下と見て、大軍で攻め掛かって来て居る。


 一方のキリヤ公国連合国と南部諸国側は、守りに徹してキリヤ連合国の最強の矛であるナデシコ自治統合海軍の海上侵攻作戦が成功と成るまでの間だけ。じっと我慢をして居れば勝てる。


 そう、自領陣地で守って居れば、絶対に負けない。


 そう踏んで居るからこその作戦だった。


 その作戦の概要は、丸で朝鮮戦争の時に米軍を中心に編成した国連軍が取った作戦、仁川上陸作戦に似ていた。


 勇治から異世界で、こんな作戦を取った事が有るよと言われて、その概要を見たナデシコ自治統合軍の幹部達は、勇治の居た地球世界の軍事作戦に習う形で、作戦立案計画を立ち上げて、実行に移して居た。


 マギアンティア世界統一暦・1555年・7月23日・午後13時40分頃・マギアンティア世界・中央世界第一文明圏・ゲルニアン帝国・フェリス辺境侯爵領・ガントー地方国境付近及び・キリヤ公国連合国・ムツ地方自治州区北部ゲルニアン帝国との国境地帯・ハコダテ国境要塞前・ゲルニアン帝国軍本陣周辺にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




 その頃ハコダテ国境要塞戦線のゲルニアン帝国軍は、第三次、第四次そして第五次攻撃までに実に四十万人まで失って居た。


「くそっ、これでも落せないのかっ!」


「グデーリアン将軍閣下っ!敵要塞は鉄の茨に阻まれ、敵兵は溝を掘って隠れて、銃と大砲を撃って弾幕を張りつつ、徹底的な陣地防御戦を展開して居ります。」


「街道でも鉄の砲台車に阻まれて、こちらの騎兵や歩兵、砲兵も近付く事すら叶いません。」


「それに伊達・毛利・上杉の軍勢が、入れ替わり立ち代わりに現れ、我が軍を蹴散らす始末。」


「とても手に負えないとの報告が上がって居りまする。」



「うーむ。」


「将軍。そろそろ我が軍は、全軍の総兵力の4割を使い切りつつ有ります。」


「何か手立てを考えるか、仕切り直すかをしませんと・・・・・・・・・・・」

 

 彼らに取って決断の時だった。


 其処へ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「いやあぁぁぁぁーっ!!!」


 突如、10名の者が現れ、グデーリアン将軍の周り似た軍幹部の部下達を斬り捨てられてしまう。


 突如として現れたのは、謎の赤い兜に覆面と甲冑を身に着けた11名のくの一集団だった。


 グデーリアン将軍は、その正体に心当たりが有った。


「貴様ら、もしや・・・・・アマテラス神皇国のシノビとか言うアサシン共か?」


「その通りですグデーリアン将軍閣下。我らはキリヤ公国秘密工作情報部局・第三部隊戸隠侍雷夜衆隊である。」


 彼女らは刀を構えた。


「アマテラス神皇国の傭兵すらすると言うアサシン共か?」



「何故キリヤ如き小国に?」


「良く我らの事をご存知で・・・・・」


「情報通と知られるグデーリアン将軍閣下。」


「実は我らは彼の国で我ら戸隠侍雷夜衆が、主君と仰ぐに相応しい方と見初めましてね。」


「彼のお方はきっとこの世界を導く方に成られる。それを見てみたいと、私は思ったのですよ。」


 籐歌はグデーリアン将軍を仮面越しに見つめながら、勇治との出会いを思い出して不敵に笑った。

 


 戸隠侍雷夜衆頭領の侍雷夜籐歌は、服部楓で誘われて、キリヤ公国で勇治と出会い、魅了効果に当てられた一人である。



 籐歌は勇治が発する不思議な魅力が何なのかが知りたくて使える事にしたらしく、今では 変な格好と揶揄されて自分達一族の忍び装束をカッコイイとまで言ってくれて居る事に感激すらして居た。



 まぁ、勇治は子供の時に見た世界忍者超大戦・ジライシンと言うヒーロー番組に登場する格好に似て居るから、そう言っただけで、それが偶々籐歌を褒めるに至っただけであった。


「ぬかせっ!!あの小僧に何ができるかっ!!世界を導くと言うのならっ!!ゲルニアン帝国っヒットラン・アドルフラー皇帝陛下こそ相応しいっ!!」


  グデーリアン将軍は、己が主を称賛し叫ぶ。


 其処へ戸隠侍雷夜衆隊に囲まれた彼を助けようと、騒ぎに気が付いた将兵達が駆け付けて来た。


「将軍ーーーーっ!!」


 どうやら本陣地警備を担当していた兵達が、周辺の応援を呼び付けて駆けつけて来たらしい。


「将軍閣下っ!早くっ!!此処は我らに任せてっ!!早くっ!!御下がり下さいっ!!」


「目的は果たした。散れっ!散っ!」


 侍雷夜籐歌は退却を命じた。戸隠侍雷夜衆隊が消え去ると、構えて居た武器を下ろして、グデーリアン将軍の無事に安堵する将兵達。



「ご無事で何よりでした閣下。」


「私は大事ない。こうも簡単に本営本陣に、敵の秘密工作部隊が攻め入って来るとはな。」


「此処は一時仕切り直しだっ!此処は戦線の整理する為にも撤退する。」


「全軍に命じる。一時撤退するぞっ!!全軍速やかに撤退せよっ!!」




「はっ、はいっ!!」


「全軍っ撤退っ!!撤退いいいいいぃぃぃぃぃぃーーーーーーーーーーーーーーっ!!」


 

 グデーリアン将軍は、攻撃の一時中止を命じて、撤退を決めたのである。


 籐歌の目的は、グデーリアン将軍に対して、脅しを掛けて撤退を促す事だった。


 グデーリアン将軍は、情報収集に長けた将軍で、アマテラス神皇国地方に付いても知って居た様である。



 何時でも殺せると脅されれば、彼は撤退すると籐歌は読んで居たのである。


 この働きのお陰で、キリヤ公国連合国軍側は、ようやく一息が付けたのであった。






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