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キリヤ公国英雄戦記物語  作者: 伊達教宗
第2章 少年王、家臣団をスカウトする編
49/321

第9話 少年王と毛利家の仁義と織田家の静かなる考察

マギアンティア世界統一暦・1555年・6月15日・午前11時30分頃・マギアンティア世界・中央世界第一文明圏・ユーラシアン大陸東側・アマテラス列島地方・アマテラス神皇国・中津国地方・毛利大名王家領・安芸国・広嶋市・広嶋城内にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 奥州地方の伊達家が、キリヤ公国連合国に臣従を決めてから遅れること13日後の事である。


 アマテラス神皇国・中津国地方の全土を治める毛利家では、ある事を決断する事に成った。


 それはキリヤ公国連合国・第一連合自治方面軍・ナデシコ自治統合軍から派遣された広嶋方面派遣艦隊と毛利家・次女である吉川春美とその配下である吉川軍が広嶋港で起こした一騒動から、キリヤ公国連合国との間で戦に発展するのではないかと、重臣達のからの反発や懸念が多く寄せられ、家臣達の間で不安に駆られ居た。



 現当主である毛利基就は、万が一に備えて、キリヤ公国連合国との戦争を避けるべく、此度の騒動のけじめを次女・春美本人付けさせると心に決めて居た。


「春美っ!お前の仕出かした事で、大きな問題を起こして迷惑を掛けたキリヤ公国連合国だけでなく、我が毛利家の親族、家臣と領民達にも波及して居る。」


「お前が引き起こしたこの騒動の責任は、一個人では収まりが悪い所まで悪化し、この事の責任は非常に重いと知れっ!!」


「・・・・・・・・・」


「この不始末に決着を付けて見せねば、我が毛利家一族と領内の家臣や領民達に、災いが降り掛かるのは必定だ。」


「だがしかしな、これは元々お前だけの問題だ。わしは助けてやれん。」


「先方のキリヤ公国連合国中央政府と勇治陛下は、此度の騒動に付いては大事にしないと言ってくれて居るが、少なくとも毛利領内と周辺の大名王家の国々の周り者達は、そうは見てくれないだろう。」


「其処でだ、お前はキリヤ公国連合国本土のであるキリヤ公国本国へと渡り、近々起きるであろうゲルニアン帝国との大戦に一軍の将として、旗下の吉川軍を率いて出兵するのだ。」


「・・・・・・・」


「分かるな春美。お前はキリヤ公国・公王である勇治陛下に命がけで手柄を立てる事で、それに併せて勇治陛下御本人に侘びを入れるのだ。」


「それで初めて双方の顔が立ち、我が毛利家の義理と人情の面目が立つ事と成る。」


「それは毛利家が義理と人情と信義を通す家柄だと、この全世界中に示す事と成るのだっ!」


「そうなればアマテラス神皇国、更には世界中にも大いに誇れる事に成ろう・・・・・・・・」



「分かったじゃけん、親父。ゲルニアン帝国が如何に列強の大国で、その軍勢が如何ほどの数の大軍だろうとも、根切りにしてくれるじゃけんっ!」


 この世界の毛利家は、丸で任侠映画みたいな展開のやり取りをしていた。


「そして、輝実っ!此度の騒動では、世界中に向けてのけじめとして、我が毛利は、代替わりをする。」


「家督はお前が継いで取り仕切り、毛利軍の半分近くに当たる6万人の出兵を持ってして、ゲルニアン帝国との大戦に参戦。その後に、キリヤ公国の連合傘下に入り、臣従したいと申し入れよ。」


「はい。ですが、私もしっかりと家督のお勤めが勤まると内外に示す為にも、ゲルニアン帝国との大戦の後に、家督相続を表明したいと思います。」


「ふっ、それはお前の好きにせい。」


「これよりはお前が毛利家の当主の扱いと成る。」


「毛利家の未来を見事に切り開くのも、潰すのもお前の器量次第じゃ。」


「其れならば、大陸での戦では毛利家当主名代・毛利軍総大将として参加しろっ!その方が周囲への名の通りが良いからな。」


「家督相続の件、謹んでお受けし、これからもより一層に精進を致して参りたいと思います。」


「隆美は、毛利家外交大使として一足先に大陸へと渡れ、彼の少年王との繋がりを今からしっかりと強化して置くのだ。」


「はい、畏まりましたお父様・・・・・・・」


 こうして毛利家は、キリヤ公国連合国・第一連合自治方面軍・ナデシコ自治統合軍から派遣された広島方面派遣艦隊との諍いでの一件で、キリヤ公国との繋がりを強化して行く事に、外交政策をシフトして行く事と成って行く。


 後に毛利家は毛利独立自治安芸藩王国として歩んで行く事と成り、初代毛利安芸藩王と成った毛利・輝実・隆宗は、百万一心の仁君として、家督相続時に教わった父からの教えを継承し、その教えを2代藩王であり、長男の毛利輝元も後世に伝えと言う。


 因みに毛利輝元は、側室妃と成った毛利・輝実と勇治との間に出来た子である。


 毛利家は治世と地方独立自治国の手本と言われるほど、キリヤ公国に多くの人材を排出する独立自治国として歩み、連合国全体に貢献して行く国家と成って行くのであった。


マギアンティア世界統一暦・1555年・6月15日・午前10時05分頃・マギアンティア世界・中央世界第一文明圏・ユーラシアン大陸東側・アマテラス列島地方・アマテラス神皇国・東海地方・織田大名王家領・美濃国・首都都市・岐阜市・金華山・岐阜城にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 さて、この世界に在る地球世界の日本国と良く似た文化や歴史を持って居るアマテラス列島は、今の時代は日本の戦国時代と同じ様な文化体型と似た様人物が登場する土地であった。


 これは新米世界神のユイテルシアのドジによる結果で、この世界に初めからある様に思われて居た。


 アマテラス列島はこの世界の歴史上では、700年前に日本列島と良く似た様なアマテラス列島が、この世界に転移してしまったと言う事による奇妙な偶然で生まれた島国だった。



 今では昔から在る島国とされて居て、何で其処に在るのかと言う疑問さえ気にも留めなく成ってしまって居た。


 そんな日本と似ている世界観を持ったアマテラス神皇国にも、何故か織田信長と言う人物が居たりする。



 この世界の信長は、女性で現在は26歳。


 15歳から姫武将としての頭角を現し、16歳の時に他の織田一族を撃破し、守護代家老家だった御家を大名王家までの仕上げ、下剋上して大名王家の当主と成った。


 それから月日、彼女はアマテラスの東海・近畿を中心に破竹の勢いで勢力を伸ばして行く戦国の覇王と言われていた。


 正式名は織田・和紗・信長と言い、この世界の信長は、家中の者以外では、信長と呼ばれていたが、親しい家臣や家族を含めた人達から織田和紗と言う名前で呼ばれて居た。

 

 その織田和紗は、今年の3ヵ月後に、首都都市と本拠地を美濃国の岐阜市と岐阜城から、隣国の近江国の琵琶湖の南に在る安土市・安土港に、新しく築城した安土城と言う城に引越し予定を控えていた。



 だが、その引っ越し予定を前にした彼女は、ある問題で頭を悩ませて居たのであった。



 一つは足柄室町幕府王朝・第13代・征夷大将軍王・足柄・一輝・宗輝が征夷大将軍王位を突然に引退して、隠居する事をアマテラス神皇国の全国の大名王家とその統治下に有った国民達に宣言布告する。



 その事に大いにビックリしたのは、一輝を庇護して上洛させた和紗だった。


 彼女は足柄幕府将軍王家の威光を笠にして、諸国を併呑して行く事を天下統一計画の一環として目論んでいた。



 そして、全国を統一した暁には、己が再興した足柄室町幕府の実権を握って太平の世を築こうとして居た。



これがダメなら、一輝から征夷大将軍王位を譲って貰うプランも考えていた。



 だが、彼女の予想に反して、一輝はキリヤ公国連合国から国防大臣職の誘いを受けて、アマテラス神皇国から出て行くと言って、剣術の師匠である塚原・伝江・朴伝とその一門や足柄家に所縁の有る武家の者達と共に、キリヤ公国へと旅立ってしまう。


 彼女が頭を抱えて居るのは、それだけでは無い。


 それは織田家からもキリヤ公国連合国へと行きたいと言う物が続出する。



 和紗は、信頼の置ける家臣で、内政と外交の政策に明るい丹羽・米実・永秀とキリヤ公国連合国と、どう付き合うかを話し合って居た。

 


「それで米実よ、これまでに何名の者達が、織田家からキリヤ公国連合国へと離れて行ったのだ?」


 和紗は織田領内から出て行くと言う者達の総数を織田領内の内政を司っている丹羽・米実・永秀から報告を受けていた。



 半月前にやって来たキリヤ公国連合国のナデシコ海軍艦隊が、織田家の最初の本拠地である尾張国から見渡せる伊勢湾に現れて、移民の公募を宣言すると、ぞろぞろと織田家の主要貿易港である津田港に集まり出したのであった。

 


「ざっと10万人と言う所ですね。」


「はぁ~!?何だと!!10万もなのか・・・・・・・・・・」


 和紗が溜息を尽きたくなるのも無理は無い。



 60万人の兵力と700万人の人口を抱える織田領内から、10万人がそっくり外国へと出て行く事に、呆れと諦めの気持ちからどう反応して良いのかが、分からないのである。


「あの小僧めが、よくもこの俺の領内で好き放題にやってくれ居ったなっ!!!・・・・・・・」


「確かにあの小僧は、武力でアマテラスを如何こうと言う事はして居らん。」


「だが、奴めはアマテラスの民心を掴んで、今以上に仕事を求める者達の心を動かしおった。」


「織田家中でも、可児・才華・長吉殿。藤堂・吉与・高虎殿。前田・慶南・益利殿。」


「他にも武辺者や政務に長けた者に、当家に戦で敗れ降った者等が、国外で一旗上げ様と、土地やお役目を返上して、次々と渡海をすると申し入れて居ります。」


「で、あろうな・・・・・・・・・・・」


「姫様は、彼の少年王とは、どう相対を為さいますか?」



「当面は静観しか無いだろうな。」


「我が織田家が、この地でどれだけの土地と大名家を従わせられるのか、その結果次第で、俺の織田家が彼の小僧との付き合い方が決まるであろうな。」



「それに毛利家の事も在ります。秀良殿は折角のお役目を果たせずに申し訳ございませんと、言って居られましたしね。」


「全くだ。毛利家の攻略は、連中の国土の半分程度を分捕れば良いと考えて居た所を紛争中の但馬国と播磨国を双方の一カ国づつ治める事で手打ちと成ってしまったわっ!!」と悔しそうに言う和紗。


 しかしながら、後に但馬国は山名家の当主である山名豊国が、先祖代々の土地だからと如何してもと言う嘆願書を受けた勇治は、毛利家と織田家に掛け合い。 


 キリヤ公国連合国中央政府が領土交換と言う形で治めて居る。


 毛利家が代わりに手にしたのは、キリヤ列島のヤマト島地方・ヤマト島地方自治州区の西側地方に在るイズモ地区を支藩王国として譲り受けて居る。


 これが後に小早川・隆美・影長が管理する事に成り、小早川イズモ支藩王国と成る。 


「それだけで無く、アマテラスから独立するとも通知が来て居る。」


「しかしながら、毛利家だけでは有りませんっ!奥州の伊達家もアマテラスからの独立を宣言し、その他の大名王家には中立を宣言して居ります。」


「それに越後の軍神も、何時ものトチ狂った言動を言いながら直臣たちを引き連れて領国を離れたと聞くな。」


「はい。甥の景勝は、家督を放り投げられる形で相続しましたが、そのままキリヤ公国連合国へと臣従をしたようです。」


「お陰で武田は此方に矛先を向けるしか無くなり、より一層攻勢を強めて来て居ります。」


「実に厄介な事だ。」


「それにゲルニアン帝国の事も有る。」


「では、数日前にやって来たゲルニアン帝国使者との話は?」



「あの糞オヤジに味方をしろと言うふざけた要請か?」


「そんな物は聞いたフリをして、知らんかを決めて置けっ!!!」


「どうせ彼の帝国は、此方には何もして来れんし、小僧の鋼鉄船艦隊とキリヤ公国連合国に加盟した者達の国が在るからな。」


「大方の理由は、10万人近い軍勢がユーラシアン大陸へと渡海されるのを厄介と思っての事だろう。」


「今のゲルニアン帝国は最早、キリヤ公国連合国との戦争が原因で、徐々にだが、没落が見え始めて居るし、列強の地位からは何れは転げ落ちて、最後には失墜するだろう。」


「国土と国力の落ちたゲルニアン帝国のヒットランは、恐れるに足りない只のちょび髭オヤジだ。」


「キリヤ公国連合国と比べて、国力と軍事力が劣ると、傍目から分かり切って居る帝国を治めるだけのあんな口先だけのちょび髭オヤジなんぞ、怖くは無いさ。」


「では・・・・・・・・・」


「我が織田家は、今まで通りだ。」


「キリヤの小僧と手を結んでいない大名王共を打ち倒して、征夷大将軍王を名乗ってアマテラス神皇国を支配統治する国王を名乗れば、削られたアマテラス列島の土地でも、十分にその名で統治が出来る。」


「一輝の奴のせいで、トンだ計算違いだ。」と愚痴る和紗。


 

 彼女と一輝の仲は悪くは無い。


 寧ろ仲が良すぎるくらいである。


 それに和紗はキリヤ公国連合国と勇治の事を独自のルートで調べて居るので、ゲルニアン帝国がキリヤ公国連合国へと喧嘩を売った事が間違いであるとも見抜いて居る。


 その為、勇治とキリヤ公国連合国とどう言う風に向き合えば良いのかと言うのが分からないので、困り果て居るのであった。


「それと伊達や上杉に毛利の奴らの事なんぞは、放っておけっ!」


「何れも小僧に臣従を決めた者共に手出しして、あの小僧と張り合うのは、ゲルニアン帝国の様に、これからバカを見る事に成るぞっ!」


「流石は姫様です。」


「では、各地の侵攻軍と徳川殿、長宗我部殿等には、引き続きキリヤ公国とは関係の無い大名王家や諸侯家への侵攻をすると言う事で、通達を致しまする。」


「それと千代には余って居る軍勢を送ってやれ、武田との戦で難儀をして居るからな。」


「では北陸地方戦線が落ち着いたので、柴田殿らを呼び戻しましょう。」


「それとサルと慶香、松永らを四国に向かわせろっ!!ノロノロと攻めあぐねて居る姫若の小娘めの援軍に向かえと命じろっ!」


「そろそろ九州にも出兵準備がしたいからな。抵抗を続けて居る伊予の地侍どもをさっさと一掃させろっ!」


「確か、この前にやって来た河野家の使者が、和紗様のお味方をしたいとも言って来て居ますが?」


「だったらとっとと西園寺の田舎町貴族大名を征伐しろっ!!とでも言って置けっ!」


「あはは、畏まりました。」と言うと丹羽・米実・永秀はその場から下がって行くのであった。 



「くくっ、キリヤの小僧・・・・・ゲルニアン帝国如きに攻め滅ぼされる様な柔な輩なのなら、この俺と対等の関係を築く事すら叶わんぞっ!!」


「貴様と一戦を出きるだけの国力を付けたその時に、俺自ら会ってやろう・・ぞ。くくくっ、がはははははーははーーっ!!」


 戦国アマテラスの覇王は、勇治の力の程を見極め、その器を試そうとして居る様であった。



 織田家は、キリヤ公国連合国とは無関係であるアマテラス神皇国内の大名勢力との国内統一戦を続け、キリヤ公国連合国とゲルニアン帝国とは距離を置く事と決めたらしい。


 和紗はアマテラス神皇国内統一を重視し、勢力の拡大を進めて行くのである。


 岐阜城から見える岐阜市の城下から尾張へと続く道には、近隣の者達がキリヤ公国へと移民する者達で、溢れ返っている姿が見えていた。


 後に織田和紗は、キリヤ公国との直接的な関係を持たないアマテラス神皇国の諸大名王達を打ち負かし、アマテラス神皇国の全国統一を成し遂げる。


 そして、織田安土幕府政権を打ち立て征夷大将軍王と成った彼女は、キリヤ公国連合国に加盟し、強力な近代化軍と経済力を有する大国へと伸し上がって行くアマテラス織田自治神皇国を建国し、アマテラスから戦国乱世を終わらせた人物として名を残す事と成って行くのであった。



  マギアンティア世界統一暦・1555年・6月21日・午前10時21分頃・マギアンティア世界・中央世界第一文明圏・ユーラシアン大陸南部地方・キリヤ公国連合国・三浦川地方・準独立国特別指定権限保有地方自治州区・ナデシコ地方自治州区・州都・横須賀市にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 伊達家の外交大使として、キリヤ公国本国との親善とこれから起こるであろうゲルニアン帝国との大戦に備え、キリヤ公国連合国の連合加盟傘下国として、宗主国と連携を深めるべく伊達家は外交大使をキリヤ公国本国へと送る事にした。


 その大使には、伊達・藤枝・政実の叔母にあたる留守・影菜・景政が、この日、初めてキリヤ公国連合国・ナデシコ地方自治州区・州都・横須賀市へと来日していた。


「ふぅ、大きな鉄の客船だったとは言え、数日掛けての船旅は窮屈な気分だったが、船の中は我々が良く知る木造帆船とは比べ物に成らないくらいに快適だったな。」


「さてと、如何したものか・・・・・・・・・」


 影菜は生まれて初めてアマテラス神皇国外へと渡海し、尚且つ初めて訪れる異国で有るが故に、如何して良いのかとの勝手が良く分からない。


 そんな土地にやって来て、少々困惑していた。


「鉄道とやらの駅の位置が分からん。」


「こうもゴチャコヂャとして居る町並みは、初めてだしな。」


 影菜は戦国期の日本から昭和初期の日本にタイムスリップした感じで居る様なものだ。


 戸惑ったり、道に迷うのも仕方の無い事だった。


 そんな感じにキョロキョロと辺りを見回して居ると、彼女の目線に似た様な感じで迷って居るアマテラス風の着物衣装を着こなして居る女の子を見かけた。


 その娘はショートカットヘアーのメガネを掛けた、やや背丈が低そうなロリ巨乳な女の子が、キョロキョロと辺りを見回していた。


「もしや、あの者はアマテラスの者か・・・・・・・」


 興味を持った影菜は、声掛けてみる事にした。



 もし、同郷からやって来た同じ迷い人なら一緒に迷えば、行き先を見付けるのも楽だろうと考えたからだ。


「もしや、貴女もアマテラスの者か?」


「ええ、そうです。貴女も?」


「ああ、今日初めてこの国に渡海し来たのだ・・・・・・・・」


「私もなんですよ。良かったぁっ!見知らぬ土地で、とても心細くて・・・・・・・」


 同じ同郷出身者と判り、お互いにホッとする二人。


「見た所お武家の様ですが、何方からいらっしゃった方なんですか?」


「奥州の伊達家の者だ。留守家の養女に成った留守・影菜・景政だ。」


「伊達家の重臣じゃないですか!」


「申し送れました。私は毛利家三女の小早川・隆美・影長です。」


 ペコリと丁寧なお辞儀で挨拶をする隆美。


「貴女の噂も聞いているぞ影長殿。毛利の知恵者にして外交を取り纏めて居るとな。もしや、貴女もキリヤ公国連合国に外交目的で?」


「はい、次女である姉がキリヤ公国連合国のナデシコ自治統合海軍と揉めて、一騒動を起こしてしまったので、その非礼に付いての事を勇治陛下に直接その謝罪を申し上げる事と、そのお詫びを兼ねて、ゲルニアン帝国との大戦に参加を毛利家として申し入れをする積りなのです。」


「ほう、毛利家がゲルニアン帝国と戦うと言うのか?それは興味深く、とても面白そうな話だな。」


「留守殿は、ご当主である政実様が、何でもこの度、キリヤ公国に臣従を成され、独立君主と成られたとか、その先触れのご挨拶ですか?」


「まぁ、そんな所だ。今から地ならしをして置いて、姪御がこの地に初めてやって来た時の手助けをするのが、この度の私が担うお役目と言う訳さ。」


「それならば、行き先は同じですね。」


「そうなるな。」


「成らばご一緒しませんか?」


「ふっ、その積りで声を掛けて見た。」


「うふふっ、流石は年上の年の功の方は、知恵者ですね。とても冷静でいらっしゃる。」


「ふっ!年を喰って居る分、小ズルいだけだよ。」


「さぁて、立ち話はこれくらいにして、公王都には到着予定時間を伝わって居ると聞いて居るしな。」


「そんなにも時間も掛けて居られない。そろそろ行くとするか。」


「ふふっ、そうですね。」


「とは言った物の、これから何所に行けば・・・・・・・・」


「確か道に迷ったら、交番とか言う番所に行けと、渡海前の説明で聞いた様な。」


「交番だな・・・・・・・・・・」


 二人は近くでアマテラスでも使われてる日本語形式の文字で、交番の文字を見つけて、横須賀駅へと案内して貰ったのである。




   マギアンティア世界統一暦・1555年・6月21日・午前13時21分頃・マギアンティア世界・中央世界第一文明圏・ユーラシアン大陸南部地方・キリヤ公国連合国本国・キリヤ公国・公王都キリヤ市・公王都キリヤ駅にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 約3時間の列車の旅を終えた影菜と隆美達は、公王都キリヤ駅に到着する。



 その駅にはキリヤ公国内務省・連合加盟外務庁の職員達の出迎えが来ていた。


 連合加盟外務庁は、主にキリヤ公国連合国に加盟傘下と成った独立自治国の応対を対応する部署。


 内務省の下部組織に位置付けられて居るのは、キリヤ公国連合国に加盟したら、その土地は関係が解消されるまでキリヤ公国連合国の統治下で内政と見なして居るからである。


 一方の外務省は、本当の外交をする省庁で同盟国の他、世界中の外国を相手に業務をする所とされて居るので、連合国との外交政策は取り扱っては居ないのである。



「伊達家外交大使・留守影菜さま。」


「毛利家外交大使・小早川隆美さま。」


「御両名には、それぞれ宿舎を兼ねた大使館をご用意して御座います。」


「では留守殿、落ち着いたら何れ食事でも。」


「良いな。楽しみにして居る。」


 二人は、それぞれの家の家紋とキリや公国旗がはためいている公用自動車に乗り込んで大使館へと向った。


 後日のこの二人は、この事が縁で公私ともに交友を深めて行く事に成る。




 マギアンティア世界統一暦・1555年・6月21日・午前9時15分頃・マギアンティア世界・中央世界第一文明圏・ユーラシアン大陸東側・アマテラス列島地方・アマテラス神皇国・四国島・四国地方南西地方・伊予国・宇和津島町・宇和津島城にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 アマテラス神皇国地方には 北海島地方・本州島地方・四国島地方・九州島地方等のエリアに分かれて居る。


 その中でも中津国地方と四国地方との間に挟まれた瀬戸ノ内海を越えた南に位置する島が四国島である。


 現在の四国地方を治めるのは、長宗我部家が同盟大名王家として、土佐国を治め、三好家が織田家の従属大名王家として、讃岐国・阿波国を統治し、それぞれ地域を治めて居た。



 現在の四国地方は、長宗我部家を中心とした織田家による四国平定戦の真っ最中で、中津国地方の毛利家討伐軍と並んでの一大平定戦と成る戦場と成って居たのだが・・・・・・・・・・・・・・・


 キリヤ公国連合国がアマテラス神皇国地方へと大艦隊を派遣した事に由る影響の余波のせいで、伊達家・上杉家・毛利家はキリヤ公国連合国へと加盟を表明し、アマテラス地方での争いから早々に中立を宣言してしまう。


 中津国地方平定戦が頓挫してしまった織田家の姫武将であり、中津国地方毛利家攻略平定軍を率いて居た羽柴・陽菜・秀良は、その矛先を四国地方へと向かえとの織田・和紗から名を受けて10万人の軍勢を率いて瀬戸ノ内海を越える。


 同じく織田家に従属大名王家として仕えて居る三好・慶香・長慶みよし・よしか・ながよしも長宗我部家の後方支援に徹して居たが、アマテラス神皇国内の情勢が様変わりした事により、和紗から出陣を命じられた。 



 三好・慶香は3万5千人の三好軍を率いて、長宗我部軍の最前線基地である宇和津島城へと到着する。



「お早う御座います。長慶さま。」と頭を下げる長宗我部・智華・元親。


「お早う、元親殿。それと、その仰々しい呼び方は止めて欲しい。もうわたしは守護代大名ではないのだ。」 


「いいえ、国人衆上りに過ぎない長宗我部家の当主である私が、長慶さまの事をさん付けや殿で呼称する等とは恐れ多い。」



 守護代大名とは、守護大名王から氏名された人物が守護代理として治める大名王と成った役職の事で、最初の頃は本当に代官みたいな役どころだったが、次第に主筋である守護大名を脅かす存在と成る人物も増え始めて行く事の成ってしまう。


 因みに補足説明をするが、守護大名とは、アマテラス皇国足柄幕府将軍王朝の将軍王が、幹部に任命した者の一族が治める領地を持って居る大名王の事で、権力・国力・軍事力が桁違いの家柄が多かったが、平庵京の乱を切っ掛けにした第4次内戦たるアマテラス戦国時代の到来により、全国規模の内乱勃発の影響で権威が失墜をしつつある。 


 当然の事ながら、力を失えば下剋上される事もしばしば見受けられる。


 三好・慶香・長慶は、10年前に近畿地方で勢力を誇って居た守護大名王家の細川元晴から四国地方の統治を任されて居た守護代大名であった一人。


 そんな理由から地方国人衆の身分から、下剋上をして成り上がった長宗我部家の長宗我部・智華・元親からすれば、雲の上の人物に見えるのであった。


「もう細川元晴も居らぬのだ。我らはあの者の暴政下に置かれ、上下関係同士にも在ったと言うだけだ。」


「それに今の我が三好家と長宗我部家は、織田家では同輩者同士だ。」


「それに足柄・一輝・宗輝様は、このアマテラス地方を去られた。」 


「世間体も在るから、何時までも、足柄室町幕府将軍王朝の身分関係で呼ばれるのも居心地が悪いんだ。」


「出来れば、付き合い易い呼び方をして貰いたい。」


「それでは、何んとお呼びすれば・・・・・・」


「歳も近いんだ。真名の慶香で構わないわ。わたしも智華と呼ぶから・・・・・」


「ええっ!!」


「そんなに動揺しなくても・・・・・」


「そんなっ!恐れ多いです。」


「わたしは長宗我部家のご当主、智華とは五分付き合いをしたいと言ってるのよ?」


「それとも、この申し出を袖にして、恥を掻かせるのか?」


「申し訳ございません。慶香姉さまで良いですか?」


「そう来るのね?まぁ良いわ。それで手を打ちましょう智華。」


「さて、新しい関係を築けた所で、伊予国で抵抗を続ける西園寺家・宇都宮家攻略の軍議を始めましょう。」


「はい。」


 三好と長宗我部両家の武将達はテーブルに置かれた地図と駒を見ながら軍議を始める。


「姫若とも鬼若子とも称される貴女が攻めあぐねて居るのは、知って居たけれど、何が原因なの?」と聞く慶香が言う姫若とも鬼若子とは?  


 長宗我部・智華・元親の異名の事である。


 可愛らしく勇ましい事から姫若と称され、時として鬼の様に強い事から鬼若子とも呼ばれて居た。


「はい。実に不甲斐ない事なのですが、鬼ヶ城山を中心とした四国南西山脈地帯が天然の大要塞と成って居り、西園寺家・宇都宮家が連合を組んで徹底抗戦をして居るのです。」


「元々我が長宗我部家では、四国統一を掲げて居ましたが、明智殿の仲介で織田家との同盟と成り、慶香姉さまとは講和と成りました。」


「其処で残る伊予国だけでもと、且つては一条家の拠点であった中村城を拠点に、伊予へと攻め続けて居ましたが、最近に成って、この宇和津島城を落とすのがやっとでした。」


「宇和津島城が落とせたのはも毛利家が手を引いたからとの噂話も有るようです。」


「ああ、なるほどね。」と慶香は頷く。


 西園寺家・宇都宮家を支援して居るのは、毛利家だったらしい。


 それが引き上げたと成ると、西園寺家・宇都宮家らに取っては苦しい事態と成る筈だ。


「ですが、それだけでは無いようです。」


「それも何となく分かるわ。ゲルニアン帝国のちょび髭でしょう?」


「あはは、その通りですね。」


「薩摩の島津家とも交易をして居るって聞くから、その序でに四国にもちょっかいを仕掛けて来て居るって所ね。」


「織田家とも貿易での取り引きが有りますが?」


「今の所はゲルニアン帝国と織田家は中立同士だからよ。」



「そう、あのちょび髭は和紗殿の事も、其処まで信用はして居ないと言う事ね。」



「・・・かも知れませんね。」


「それじゃ、こうしましょうか。」


「明日の早朝に、わたしの三好軍は、三間表で伊予国連合軍に真正面から挑みます。」


「松永に北東部の三瀧城を奇襲させ、智華が率いる長宗我部軍は、此処からの北に在る大森城に攻め込みなさい。」


「それは読まれて居ると思うでのすが?」


「其処で貴女の旗を借りるわ。」


「貴女軍の旗は少なくして、大森城を牽制して居ると見せ掛けなさい。」



「なるほど、三好軍が囮に成るのですか?」


「それは違うわ。松永が囮に成るのよ」と含み笑いをする慶香。



 彼女が描く策謀とは一体、何なのだろうか?



 マギアンティア世界統一暦・1555年・6月21日・午後16時30分頃・マギアンティア世界・中央世界第一文明圏・ユーラシアン大陸東側・アマテラス列島地方・アマテラス神皇国・四国島・四国地方南西地方・伊予国・三瀧盆地地方・松永・真澄・久秀軍本陣の陣屋にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 四国出兵を命じられた松永・真澄・久秀は、8千の将兵を率いて四国へと渡って来ていた。


 

 細川家・三好家・織田家と使える家々を事在る毎に渡り歩く節操の無い灰色女狐又は男喰らいの女郎蜘蛛と言われる人物。


 趣味は茶道を含めた数寄物の収集で、自力で商売をもする変わり者の姫武将。


 元は商家の娘だったが、16歳の頃から妖艶な雰囲気を醸し出すほどに褐色肌を持ったナイスバディな身体つきとウェーブが掛かった黒髪のロングヘアーを靡かせた妖艶そうな大人の色香を持った姿に近づく男達を手玉に取って、高い地位を得て来た。


 明智・十華とは、彼女が浪人時代の時に堺市で出会った事が切っ掛けで、事在る毎に手伝い仕事をして居る。


 今は明智家の仲介で織田家に従って居る姫武将であった。


 そんな彼女は、三瀧城から南へ8キロ地点に在る三瀧盆地の入り口付近に在る日吉山と日吉村に本陣と陣屋を敷いて居た。



「久秀様っ!」


「何かしら?」


「三好様からです。」と書状を手渡す。


「・・・・・分かったわと、長慶さまの伝令官には伝えなさい。」


「ははっ!!」と言うと近習は下がる。


「全く、長慶さまは、ここぞと言う勝負には、ホンと人使いが荒いお方ね。」と陣屋の外を見や上げて居た。


三好・慶香・長慶。


 且つては天下を取れる才人として知られて居たが、旧主たる細川元晴との抗争で、松永・真澄に嵌められ事で泥沼の抗争へと突入。


遂には織田・和紗に膝を屈する事に成ってしまう。


しかしながら、その才覚は、未だ衰えては居ない様である。


 織田家の四国地方平定戦の一つである三間表の戦いが始まろうとして居た・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




 マギアンティア世界統一暦・1555年・6月22日・午後4時30分頃・マギアンティア世界・中央世界第一文明圏・ユーラシアン大陸東側・アマテラス列島地方・アマテラス神皇国・四国島・四国地方南西地方・伊予国・三瀧盆地地方・三瀧城にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



その日の1時半くらいの事である。



 松永・真澄・久秀が率いる7500人の軍勢は、大森城の東を大きく迂回をして明け方を待って居た。



 三瀧盆地南部入口に置かれた本陣は、煌々と篝火の明かりが灯り、蔦家紋の旗印がはためいて居たのが、三瀧山に在る三瀧城からもハッキリ見えて居た。



「相手は、あの松永・真澄・久秀だっ!!」


「どのような卑怯な手口で来るかは分からんっ!」


「ゆめゆめ油断をするで無いぞっ!」


「ははっ!!」



 三瀧城を任された宇都宮家の城主は、名うての某将たる松永・真澄を警戒し、家臣達に周囲の見張りを徹底的にするように念を入れた警戒監視を命じるが・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 マギアンティア世界統一暦・1555年・6月22日・午後5時30分頃・マギアンティア世界・中央世界第一文明圏・ユーラシアン大陸東側・アマテラス列島地方・アマテラス神皇国・四国島・四国地方南西地方・伊予国・三瀧盆地地方・三瀧城にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 

 明け方、三瀧城の守備兵達は、夜遠しの見張りのせいで、コックリ、コックリと寝落ちを仕掛けて居た。


「・・・・・来ないな。」


「はっ!確かに松永軍は目の前です。」


「これまでの松永の動きの戦績を記した経歴書から見れば、何某かの手を打って来ても良い筈ですが・・・・・・・・・・・・」と家老の一人は言うが・・・・・・・・・



「申し上げますっ!!!三間表で、お館さまと西園寺様らが三好・長宗我部・松永らの連合軍が攻め寄せて、大乱戦と成って居る模様っ!!」


「しまったっ!やられたっ!」


「殿っ!あそこに居る松永は?」


「決まって居るっ!蛻の空だっ!!!我らはまんまと松永に図られたのだっ!!」


「急ぎっ!お館さまの援軍に向かわねばっ!」と焦り、大瀧城主は3000人の軍勢と共に城外へと出ようとするが・・・・・・・・・・・・・・




「今ですっ!掛かりなさいっ!!!」


「「「「「おおうっ!!」」」」」と言う雄叫び声がすると、3千人の軍勢がドッと現れ、大瀧城軍に奇襲を仕掛けた。


「しまったっ!!罠だっ!!」


「退けっ!!退けいっ!!」と命じるが、その背後にも松永軍が現れ、大乱戦と成った。



 マギアンティア世界統一暦・1555年・6月22日・午前7時00分頃・マギアンティア世界・中央世界第一文明圏・ユーラシアン大陸東側・アマテラス列島地方・アマテラス神皇国・四国島・四国地方南西地方・伊予国・三間表地方にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 伊予国は、西園寺家・宇都宮家・河野家の三家が、第4次内戦たる第4次アマテラス戦国時代に措いて鎬を削って伊予国の覇権を争って居た。


 しかしながら、数年前から織田家が四国地方へと介入、皇都・平庵京へとの上洛戦の時に、細川元晴との決戦に向かって居た三好・慶香・長慶。 


 彼女は松永・真澄に嵌められる形で織田・和紗と山崎の戦いで激突し、敗戦を帰してしまう。


 三好・慶香は、無駄な戦は自分とアマテラスの為には為らないと、早々に降伏。


 丹波国・山城国・播磨国を本拠地に置く細川元晴を討伐する気が有るなら、自分は如何なっても構わないと言い切り、それ以来は阿波国・讃岐国を治めつつ、降伏時に差し渡した和泉国も暫定統治と言う形で継続して治めて居た。



 そんな事情から三好・慶香は、織田家の四国地方の抑えとして睨みを利かせつつも、攻略平定準備進める事と成る。

 

 土佐の長宗我部・智華・元親との同盟も明智・十華・光秀と共に進め、野心が特に無かった長宗我部・智華も、アマテラス神皇国足柄幕府将軍王朝一三代目将軍王である足柄・一輝・宗輝の仲介も有って、四国平定軍に加入する同盟大名王家と成った。 


 将軍王の足柄・一輝と名家である三好・慶香からの期待が在ると言われた長宗我部・智華は、伊予国へと侵攻を開始するが・・・・・。


 西園寺家・宇都宮家・河野家の三家、危機的な状況に陥ると、敵は織田だと切り替えると、同じく織田家と敵対する事に成った毛利家の支援を受けて、先鋒軍である長宗我部軍と一進一退の攻防戦を繰り広げる。



 其処へ島津家が、ゲルニアン帝国から仕入れた大陸式の武具や食料品を仕入れる様に成ると益々戦線は膠着状態と成ってしまう。



 それを打破する為にも羽柴・陽菜。三好・慶香。松永・真澄の三名が戦線に投入される事と成った。


 羽柴・陽菜は、10万人の軍勢を摂津・淡路・讃岐から伊予を北回りに向かわせ、織田家への臣従を申し出た河野通直の本拠地である湯築城へと進軍を開始。


 三好・慶香と松永・真澄ら合わせて4万3千は、堺町を出発し、和泉・阿波・土佐を回って、中村城で別れ、三好軍は長宗我部・智華が居る前線の居城である宇和島城へと向かい。


 別れた松永軍は、三瀧城が在る三瀧盆地地方と向かう。



 三好・慶香が企てた作戦への同調要請を受けた松永・真澄は、指揮下の軍勢を深夜の内に移動させ、三好軍が伊予国連合軍の本隊の目の前に現れ慌てふためく事を利用して、三瀧城の軍勢を援軍に向かわせる。



 それを透かさず攻め掛かり、あっと言う間に城を落城させてしまった。


 後は、あの渡り歩く節操の無い灰色女狐の事である。


 碌な手口を使って来るとは思えない。



 一方の3万5千人の主力軍を率いた三好・慶香は、伊予国連合軍の盟主である西園寺公広と、その同盟者である宇都宮豊綱と正面から対峙して居た。


 伊予国連合軍は凡そ3万人。


 西伊予に配備された全軍に近い数を揃え居た。


「・・・・・時間だ。」


「殿っ!!あの松永は・・・・・・・」


「その辺は大丈夫よ。和紗殿がしっかりして居る限りは大人しくして居るわ。」


「わたしも、あの元晴も不甲斐ないと見られて居たから謀殺を仕掛けられたのよ。」


「だから少しは、あの松永に嫌がらせ染みた策で扱き使ってやらないとね。」と不敵に笑う慶香。


「申し上げます。」


「松永さま。奇襲に成功っ!!」


「ほーらね。」


「あはは・・・・・・」


「騙し討ちさせるなら、松永ほどの手練れは居ないわ。」


「手口は好きに為さいと言ってあるしね。」


「それでは敵将が可哀そうですな。」と哀れむ家老。


「先陣の一存に出陣命令をっ!!」


「ははっ!!」


 ブオオオオオオオォォォォォォ――――――――――ッ!!と法螺貝が鳴り響く。



「鉄砲隊っ!!構えっ!!放てえええええぇぇぇぇぇーーーーーーっ!!」


 ズダダダダダダダーーーーーーンッ!!


 ズダダダダダダダーーーーーーンッ!!


 ズダダダダダダダーーーーーーンッ!!


 ズダダダダダダダーーーーーーンッ!!


 ズダダダダダダダーーーーーーンッ!!


 ズダダダダダダダーーーーーーンッ!!


 ズダダダダダダダーーーーーーンッ!!


「よっしゃーっ!行くぞっ!!者共っ!!掛かれえええええぇぇぇぇぇーーーーーーっ!!」



「槍隊っ!!構ええええええぇぇぇぇぇーーーーーーっ!!」


「前へえええええぇぇぇぇぇーーーーーーっ!!」


「「「「「おおおおおぉぉぉぉぉぉーーーーーーーっ!!」」」」」


 先鋒隊の十河一存は、直営軍の十河軍と主家の三好軍と共に鉄砲隊で牽制し、後に槍隊で攻め掛かる。



「怯むなっ!!前へっ!!前へっ!!前へええええええぇぇぇぇぇーーーーーーっ!!」


「「「「「うわあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!!」」」」


「侵略者を押し返せっ!!」


「「「「「うわあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!!」」」」


 伊予国連合軍の盟主である西園寺公広と、その同盟者である宇都宮豊綱らは、領土を取られまいと必死に抵抗をし、敵に抗う。


両軍は三間表盆地で激突し、槍がかち合い、剣先の金属音が激しく鳴り響く。


 キンキンっ!!カンカンっ!! キンキンっ!!カンカンっ!! キンキンっ!!カンカンっ!!


「「「「「うわあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!!」」」」


 キンキンっ!!カンカンっ!! キンキンっ!!カンカンっ!! キンキンっ!!カンカンっ!!


「「「「「うわあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!!」」」」


 古の日本国の戦国時代も、この様な光景が広がって居たであろう事は間違いない。


 長槍同士が激しくかち合い、一進一退の攻防が繰り広げられる。



 そんな時であった。


 伊予国連合軍の第二位の軍事力を誇る宇都宮豊綱は、東側から三瀧城軍が現れると、この戦の援軍に来たのだと思い、自軍と味方軍勢らを本陣から大声で鼓舞する。


「おおっ!!三瀧城の者達か?我らの加勢に来てくれたのかっ!?」


「者共っ!!!援軍だっ!!三瀧城から援軍が来てくれたぞおおおおぉぉぉぉーーーっ!!」


「「「「「おおおおおぉぉぉぉぉぉーーーーーーーっ!!」」」」」



「殿っ!!三瀧城は、松永軍と対峙して居るとの報告が、数日前に入って居た筈・・・・・・・」


「確かに・・・・んん?!見てみろっ!」


「・・・・おおっ!あんな所に松永軍の旗印?」


「それに長宗我部の小娘めの旗印も在る。」


「如何やら我らは諮られて居た様だ。」


「流石は足柄室町幕府将軍王朝・四国地方守護代の三好・慶香・長慶。」


「威光は消え去っても、且つては天下を取れる才人と謳われた才人としての才覚は未だに健在と言う事なのでしょうな。」


「たが長慶の思惑も外れる事がある様だ。」と言うセリフで締めくくると、自軍の伝令官が現れた。



「申し上げます。」


「如何した?」


「はっ!三瀧城から援軍に馳せ参じた姫武将殿が、急ぎ報せたい事があるとの事で御座いまする。」


「通せっ!」と言うと宇都宮豊綱は、三瀧城から援軍を率いて馳せ参じて来たと言う姫武将と会う。


「その方が援軍の総大将か?」


「はい。」と答える姫武将。


 その佇まいには、妙に艶のある色っぽいさの中に気品が満ちている様にも見受けられる人物であった。


「急ぎ報せたいとの事だが、如何なる事なのか?」


「はい。豊綱様、他の者には聞かれると不味い事なのでお耳をご拝借下さりませ。」


「良かろう。」と豊綱は、床几から立ち上がり、姫武将へと近付く。


 すると、姫武将は、透かさず豊綱を捕えると、籠手に仕込んで居た針を豊綱の首筋に突き立てる。


「殿っ!」


「おおっ!おのれっ!何者だっ!」と近習達は、姫武将を取り囲む。

 

 だがしかし、その周りには姫武将が引き連れて居た護衛達が武器を取り出して取り囲む。



「・・・・・貴様・・・松永か?」


「はい。正解です。」


「と言う事は・・・・・・」



「うふふ、三瀧城は貰い受けましたわ。」



「おおっおのれええっ!!卑怯なっ!」


「うふふ、心地良い誉め言葉ですわっ!!」


「これが灰色女狐たる所以・・・・・・」と近習の一人が、松永・真澄の通り名を呟く。


「さて、豊綱様。貴方様が取れる選択肢は二つ、此処で死すか、西園寺公広様を討ち取られるかですわ。」


「さぁ、如何なさりますか?」と妖しく微笑む真澄は、女悪魔の如く妖艶おっとりな笑みを浮かべつつも、相手を威圧する。



「くううううぅぅぅぅぅ・・・・・・・」と悔し気な表情をする豊綱は、生死を掛けた選択肢に迷う。


そんな宇都宮豊綱が取った選択肢とは?





それから数分後の事である。


 伊予国連合軍の盟主である西園寺公広は、戦力差の在る三好・慶香・長慶軍と五分五分の戦いを繰り広げて居た・・・・・・のでは無くさせられて居たと言うべきだろう。



 その理由が間も無く分かる。




 西園寺公広は本陣で、どっしりとしながら各部隊への指示を的確にして居たが、戦闘開始から2時間半が経とうと言うのに、未だに決着が付いて居ない事に苛立ちを覚え始めて居た。


「うぬぬっ!!まだ決着が付かぬとはっ!如何なって居る?」


「やはり、兵数戦力差の5千人は如何にも為らないかと・・・・・」


「誰か三好軍の弱点を突けるような武士は居らぬかっ!!」とも言いたくなる公広。



其処へは急報が入る。


「たっ大変ですっ!!お味方の宇都宮豊綱さまっ!!松永軍に寝返りましたっ!!!」


「なっ!!なっ!!何いいいぃぃぃぃーーーーーっ!?」


「他にも南伊予の名だたる国人衆達も挙って寝返った様です。」


「その数っ!!凡そ5千人っ!!」


「バカなっ!!はっ?松永?松永だっ!!松永・真澄・久秀めっ!!卑怯な手口を用いて、我が伊予国連合軍を総崩れにさせようとしたのに違いないっ!!」と気が付くが、最早それは後の祭り。


「申し上げますっ!!!」


「後方の大森城が落ちましたっ!!!」



「なっ!!何いいいぃぃぃぃーーーーーっ!?大森城がかっ!?」


「やったのは長宗我部元親です。」



「殿っ!!長宗我部軍は目の前に・・・・・・」



「バカ者がっ!!アレは旗しかない幻影軍ぞっ!!松永の旗も見えるが・・・・・アレも囮・・・・と成ると・・・・・・」


「三好・長慶っ!!このわしを謀ったなあああああぁぁぁぁぁーーーーーっ!!」と怒り出す公広。


其処に更なる追い打ちがやって来る。


「大変です、河野通直殿が織田家へと臣従を表明し、羽柴・陽菜・秀良を総大将とする織田軍が、伊予国北部から13万人の軍勢と共に進軍中っ!! 」



「くっ!!法螺貝を鳴らせっ!!黒瀬城まで全軍を撤退させよっ!!」




 ブオオオオオオオォォォォォォ――――――――――ッ!!と法螺貝が鳴り響く。



 西園寺公広は、進退窮まり、やむを得ず全軍を撤退させたのであった。

 



 黒瀬城を包囲された公広は、出家して織田家に降伏し、西園寺家の助命を願い出た。


 陽菜は、これを了承し、伊予国の管理を当初からの予定通りに長宗我部・智華・元親に任せ、今治城に前線居城とする体制造りに取り掛かる。


 アマテラス列島地方の天下統一へ向けての正念場である九州地方平定への準備に取り掛かる事に成った。 


 かくして織田家に由り、アマテラス神皇国地方・四国地方は、武力平定されたのであった。


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