第8話 少年王とアマテラス神皇国の独眼竜
マギアンティア世界統一暦・1555年・6月1日・午前9時05分頃 マギアンティア世界・中央世界第一文明圏・ユーラシアン大陸東側・アマテラス列島地方・アマテラス神皇国・東北地方・伊達大名王家領・陸前国中部・仙台市・仙台城にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
新天地を求め出て行く者、又は逃げる者あらば、新たな現れた力有る新興勢力に進んで取り入る者も有り。
此処はアマテラス神皇国・東北地方に在る陸前国中部方を中心とした伊達大名王家が治める地。
この奥州の南部一帯をたった一代で大勢力へと広げた大名王たる伊達・藤枝・政実は、アマテラス神皇国・東北地方に措ける若き大名王として、南奥州地域に善政を敷きつつ、戦では向かう所は敵無しとの評判をされる活躍ぶりをアマテラス神皇国諸国内に見せ付けて居た。
このアマテラス神皇国内では、武士と成った女性が男らしい名前を下に付ける代わりに、真名と言う女らしい名前を付ける慣習が在る。
だが真名は親しい肉親や親族、名を呼ぶ事を許された者以外では、決して呼んでイケない慣習的な決まりが在るのだが、フルネームとして呼ぶ分には、構わないとされて居る。
真名を直接本人や他人の間で、呼ぶ事だけをタブー視して居るので、その辺りは気を付けなければならない事に成って居る。
さて、若き伊達家当主である伊達・藤枝・政実も、アマテラス神皇国地方の姫武士・姫武将の古来からの慣習に乗っ取って、藤枝と言う真の名前が在る。
そして、下の名前である政実の方も、十分に女性らしい名前であり、それで居て分かり易いと言う事も在ってか、他人でも呼んで良い通り名の政実と呼ばれる事を好んで居た。
そんな政実は、真名である藤枝と言う真名が女らしく、とても可愛らしい事を恥ずかしがって、呼ばれる事を嫌がって居るので、如何しても身内を含めた他者の人々に呼ばれる時は、政実と呼ばせて居た。
その政実には、もう一つの通り名が有る。
それは独眼竜・伊達・藤枝・政実と言う彼女の功績に対する異名であり、世間から言われて居る通り名の事だ。
その由来は政実が幼かった7歳の時に、天然痘の後遺症で右目の視力を失って居る目の事に因んで居る。
その事が原因で塞ぎ込みなり、引き篭もりと成ったが、それでも父親である照宗が必死に跡継ぎである政実に対して英才教育を施して行く。
その甲斐あって、病気が原因で心を病んで居た彼女は、次第に従来の明るい性格を取り戻して、立ち治る事に成功する。
そんな政実が14歳で伊達家の当主と成ると、米沢と近隣地域だった領地は一気に陸前国・岩代国・磐城国へと広がり、3カ国半を収める大大名へと一代で、大きく御家を成長させる。
そんな南奥州一帯を治めている伊達家は、キリヤ公国連合国艦隊が現れて以来、その対策と対応に追われしまって居た。
そして・・・・遂に明日、キリヤ公国連合国から派遣されたナデシコ自治統合海軍の司令官を仙台城に招いて、重大な決断をする予定で居た。
伊達家では、キリヤ公国連合国のナデシコ自治統合海軍が現れて以来、三日掛けた伊達家家臣達らよる全体会議が招集された。
伊達家内では、キリヤ公国連合国とは、どの様に接し、その対応を如何するのがで、家臣内では物凄く揉めて居た。
追い払うべしと言う者や、いやいや言う通りにするべきだ。いやいやそれでは、奥州武士の面目にも関わる。
一戦して彼の軍を追い払いべきだ。
それでは我が伊達家領が火の海に成る。
此処は冷静に成り、一度話し合って、意見を纏めてから再度交渉に持ち込むべきだ・・・・・何て意見も有った。
彼らに取ってナデシコ自治統合海軍の登場は、幕末の日本に現れたアメリカ艦隊、ペリーの黒船来航と同様の大騒ぎと言えたのだった
様々な意見が色々と有り、伊達家の内部は真っ二つに分かれていた。
若き伊達家当主である伊達・藤枝・政実は、最後の議決を親族・家老職・重役職で決めると締め括り、全体会議を終らせた。
「私は、もう決めている。」
「・・・・・・」
政実の側に常に控えている伊達政実の片目の喜多と呼ばれて居るお姉さんこと、片倉・喜多・影綱は、既に相談を受けて居るので、何を言うのかを知っており、黙って主の言葉に耳を傾けていた。
「では、殿は如何なるご決断を為さるお積りで?」
「ふっ、我が伊達家は、キリヤ公国連合国と、その公王である桐谷勇治陛下に臣従する事にしたっ!!」
「えっ?」
「えっえっ・・・・・」
「へえ?」
「ふぇ?」
「はぁ?」
「何んと?」
伊達・政実の思わぬ一言に言葉を詰まらす伊達家重臣達。
数分の間を置いて、喉の底から大きな叫び声を上げる事に成る。
「「「「「「「えええええええぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」」」」」」」
その場に居た親族・家老・重役達は、揃って大声を天守館中の声が、城外に丸聞えに成るくらい叫んだのだった。
「そっ、そそっ、それはどう言ったお考えなのですか?」
「それは彼の国と戦をしても勝てないからだ。かと言って、黙って居たら何もしないまま呑み込まれるだけだ。」
「それにキリヤ公国連合国のナデシコ自治統合海軍艦隊が、我が伊達領内の仙台湾を始めとした、このアマテラス神皇国各地の港湾に現れたのも、この国を手中に収める為に来た訳じゃ無い。」
「単に奴らは、自国の民の人口が少ない。更にはゲルニアン帝国との大戦が控えて居る事情も抱えて居る。」
「その為にも形振り構わず、兵力や国力を上げる為にも、多くの人手を欲して居ると聞くしな。」
「そんな理由から、遥々海を越えてやって来たキリヤ公国連合国は、今は移民する人間を欲しがって居るだけだ。」
「それに何れあの国は、近い将来はマギアンティア世界に措いて、世界有数の大国に成ると私は見て居るのだ。」
「今の内に伊達家を売り込んで置けば、高く買ってくれるって事に成る訳だ。」
「それに我が伊達家は、奥州で一番に強いからな。きっと欲しがってくれる筈だろう。」
政実が一通りの考えを述べ終わると補佐として控え、沈黙していた腹心の片倉・喜多・影綱が補足説明に入る。
「ご重臣の皆々様がたっ!政実様の仰る通りですよ。」
「このままでは、このアマテラス神皇国の国も全ての大名王家も彼の国に、その威光と国力、それに強大な軍事力に平伏し、国ごと呑み込まれる事に成るでしょう。」
「かと言って彼の国と事を構えても、無駄に国を危機に陥らす事にも成り兼ねません。」
「例えるのならば、払っても、払っても、払っても、払っても、しつこく寄って来る夏場のハエの様な存在です。」
「下手に抵抗をせず、居のままに動き付き従う。」
「そうすれば、新たな所領くらいポンと拝領させて貰ったり、自領の国政に措いては、普段から自由で好き勝手に動き回り、時には中央政府に意見を具申する重臣にも成れるかも知れませんと言う考えに至ったと言うのが、政実様のお考えなのですよ。」
「「「「「「「おおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーっ!!」」」」」」」
「流石は殿じゃっ!」
「そうか、そうかっ!その手が有ったかっ!」
「公国の増えた領土を何らかの手柄で頂くとは・・・・・・」
「それに功績を上げ続けて居れば、キリヤ公国の中央政府へと取り入る事も視野に居られて居られるとは・・・・・・・・・・・・・」
「何んと言う剛胆なお方だろうかっ!」
「その様な手段を思い付くとは・・・・・・流石は殿じゃ、己の未熟さを恥じ入るばかりだ。」
「ふぅーむ。確かに、全くだっ!全く以って、その通りじゃっ!」
重臣達は、各々の納得が行ったらしく、当主政実の株は天井知らずの鰻上りと成る。
其処へ父である照宗が、大いに感心して居り、大きな声を荒げて言う。
「政実っ!良くぞ決断したっ!」
「お前のその考えの速さは、このアマテラス神皇国の中では、恐らく一番槍に成った事であろう。」
「父上、この伊達家を他国の王に売り渡す行為、お許し下され。」
「良い良い。これも生きる為の立派な知恵である。」
「進んで臣下の礼を取るならば、その地位は決して低い物では無いぞっ!!」
「彼の国を王は、海向こうからの聞き及ぶ、風の噂では心優しき少年王と聞く。」
「上手い事をやれば、その傍らに居座る事に成り、彼の国の重役職の席を置く身に成るかも知れないのだ。」
「お前は、この伊達家を外の世界へと飛び出させ、キリヤ公国連合国内での活躍の場を得て、大手柄を上げて伊達の御家を大国へと伸し上げ様とする事に成るのだっ!」
「これからの先も伊達家と己の飛躍の為に、大いに励めよ政実っ!」
「ははっ!これからは身命を掛けて、桐谷勇治陛下とキリヤ公国連合国に尽くす所存で有ります。」
こうして、伊達家は勇治とキリヤ公国に臣従すると決め、キリヤ公国連合国へと加盟しつつ、独立国自治国の道へと進む決断をしたのだった。
マギアンティア世界統一暦・1555年・6月1日・午後18時15分頃 マギアンティア世界・中央世界第一文明圏・ユーラシアン大陸東側・アマテラス列島地方・アマテラス神皇国・東北地方・伊達大名王家領・陸前国中部・仙台市・仙台城にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
東北地方南部に派遣された、仙台方面派遣艦隊司令官で有り、ナデシコ自治統合軍・第五戦隊司令官・渡辺祥子大佐は、ナデシコ地方自治州区のアセアニア地方・アセアニア自治州区・ゾルモン諸島自治区・バヌアーツ諸島自治区方面を本拠として活動して居るナデシコ自治統合海軍の女性軍人幹部の一人である。
その性格は気さくであり豪快で、面倒見が良く、男口調の彼女を慕う者は多いと言う。
その渡辺祥子大佐は、この地方を制覇した伊達家の当主である伊達政実から突然の宴席の招待を受けて、仙台城を訪れて居た。
招待を受けた祥子は別段、この宴席を断っても良かったのだが、伊達家の外交的な立場を踏まえた上で、「宴席だけか?」と相手側に聞いた上で、出席を決めたのだった。
伊達家当主の政実は、青みの掛かった黒髪を後ろ方向に結ったツインテールをして居て、病で失ったと言う右目には黒い眼帯をして、他人からは見えない様に隠して居た。
伊達家の本拠地である仙台市は、数年前まで南部の羽後国南部地方・米沢市を本拠地として居た所から、北東部にある陸前国に仙台と言う地名が在った地域を治めていた国分氏の国分寺町に、伊達家を引っ越しをして造られた伊達家の新たな本拠地と成った都市である。
その町並みは、青葉山全体を使って建てられた仙台城を中心とした江戸時代風の建物が立ち並ぶ城下町である。
仙台城近くには武家屋敷が立ち並び、付近を流れる広瀬川と名取川を上手く使って水堀と水路を張り巡らし、海の在る東に向かって商業街が立ち並ぶ。
そのシンボル的な仙台城は、日本国の過去に在った戦国時代の様に、未だに木組みで作り上げた館砦城にしか過ぎない造りであった。
その政実は、仙台城に招いた祥子大佐を当主が座る筈の上座に座らせ、贅沢な持てなしを行って盛大に歓迎をして居た。
お酒が大好きな祥子は、伊達家に何某かの思惑が在ると思って居るが、美味い酒をご馳走に成って、とても上機嫌であった。
「くうううぅぅぅぅーーーーっ!!ホンと美味いなあぁぁぁっ!この清酒は?」
「それは良かった。我が伊達家の治める地域には、良い水、良い米所が在り、肴と成る食材も多く在ります。」
「ささっ、どうぞ、どうぞ。ご遠慮為さらずに・・・・・・・・・・・・」と政実はお酌して、祥子の手に在る杯に清酒を注ぐ。
「おおとととっと・・・・・んぐっ!!んぐっんぐっ・・・・ぷはーーーーっ!!」と調子に乗って、じゃんじゃんとお酒をぐびぐびと飲んで行く祥子。
そして、宴席が盛り上がり、頃合いが良いと見た政実は、改まって祥子の前に座り直し姿勢を正して向き合う。
「さて、渡辺殿。この伊達・藤枝・政実は、貴国の公王である桐谷勇治陛下に臣従をお誓い申し上げたい。」
「はぁっ?!アンタ正気かっ!?」
「勿論、正気で御座る。」
「この国は確か、中央の都を抑え、7割近い領土と諸侯を従えれば、征夷大将軍王と言う王様に成れると聞いて居たが、それじゃダメなのか?」
「征夷大将軍王は、所詮は小国の島国の王位に過ぎず、一方の勇治公王陛下は、マギアンティア世界の王族慣例制度の地位に倣って言えば、国土面積から言って我が故郷たるアマテラス神皇国の上を行く国家。」
「そして、王族の系統図を辿れば、ユーラシアン大陸の古い国家の一つであるガリアナ国王の御息女を娶られて居る立派なお家柄です。」
「我が国の慣例制度上と世界の王位の慣例王位制度からすれば、一つ上の位に辺り、臣従を誓うに相応しいお方。」
「更には強力無比な軍隊と国力を有して居られると聞いて居ります。」
「実際、仙台市の目の前には、強力な海軍艦隊を我らは見て居りまする故、この申し出を決意した次第です・・・・・・・・・」
政実は祥子を接待しつつ、その印象を良くするだけでは無く。
キリヤ公国連合国と勇治を褒めるだけ褒めて、何としてでもキリヤ公国連合国に取り入ろうと弁舌を駆使した。
この世界にの国家元首や王家に関する慣例上の上下関係は一番に皇帝、二番に教皇・法王。3番に国王、4番が公王と続けき、5番目に貴族爵位を持った地方王位。
6番が大統領・総統・首長・部族長と続き、7番の地位である国家主席、都市国家市長等の小国の代表関連地位が一番に低いとされて居る。
征夷大将軍王位と大名王家の地位は、5番目に貴族爵位を持った地方王位に当たるらしく、伊達家の政実の地位と言うのは、勇治から見れば、一つ下の位に成るのだ。
「へえ~アンタ、賢い上に耳が結構良んだな。」
「お褒めに頂き恐悦で御座います。」
「でもアンタの目的は、この仙台地方の伊達家大名王家とその領地をキリヤ公国の連合独立自治国として加盟し、其処の庇護下入って、貴族王位クラスの独立自治国王にでも成ろうって魂胆だろう?」
「その方が、この先もずっと誰にも文句を言われずに、国内さえ問題が無ければ、自領内は伊達家が好きに仕切られるのが、伊達家とアンタ自身の真の狙いなんだろう?」と祥子は、政実の目論みなんぞ、大体は予想が付いて居た事を言い当てみせた。
「流石は話が早い。」
「でもよ~家の陛下が、この話をダメと言って来たら、その時は如何する気なんだ?」
「それは無いでしょう?」と政実は言う。
政実は勇治に付いての下調べを済んで居る様であった。
「はぁ~、だよなぁ~。アンタ見たいな奴が、一番好きそうな性格して居るもんな家の大将は・・・・・・・・・・」と、政実とは、ホンの数回ほど会っただけの祥子だったが、それと同じく勇治とも似たような数を会って居り、勇治の人となりをある程度は理解して居た。
政実の方も勇治とキリヤ公国連合国に付いての下調べを済ませて居り、この世界の国々中でも、一番良く調べて居る人物の一人と言えた。
平和的な話し合い、互いに手を取り合う事や私心無く、故国を守る為に進んで臣従すれば、少なくとも譲歩をするのが勇治と言う少年の考え方だった。
但し、信義にも劣る裏切り行為をするのならば 如何なる国家・組織・個人に対して厳しく罰するとして居る。
それは丸でヤクザ見たいな上下関係を持った国家関係だと言える。
「キリヤ公国連合国は、ユーラシアン大陸の覇者と謳われる彼のゲルニアン帝国との大戦争が近いと聞き及んで居ます。」
「ゲルニアン帝国との戦の際の出兵は、微力ながら我が伊達家も勇治陛下の尖兵として、都合3千人まで、でしたら進んでお受け致す所存。」と政実は軍勢を最初から出すと申し出て置きつつ、出兵人数も吹っ掛け兵数を言って置けば、プラマイ千人前後の人数の派遣で済むと目論んでの三千人であった。
「分かったよ。それに付いてだが、家の大将の次第って奴だが・・・・・・まぁ、この件は一応、伊達家の事を上に掛け合って見るよ。」
「でも、あんまり期待はしないでくれよ。俺はキリヤ公国連合国の軍幹部の中でも、上位の位置に居るが、キリヤ公国宰相内閣府の軍政務なんかに口を挟める権限は其処まで大きく無いからな。」
「何とぞ、我が伊達家を良しなにと・・・・・・・・・」
後日、キリヤ公国連合国政府と公王である桐谷勇治から伊達家へ返答が有った。
伊達家のこの申し出は受け入れると決められ、キリヤ公国連合国への加盟が許可された。
伊達家の国名は、仙台陸前独立自治藩王国と名付けられ、世界国家・王位元首慣例順位制度に措ける地位は、侯爵王位身分と成る。
伊達家は陸前国を中心とした3カ国半国を治めるキリヤ公国連合傘下の3番目の独立自治国家の自治大名王として、繁栄を極めて行く事に成るのである。
後に起きる事に成る奥州地方動乱紛争事件が起きた際には、勇治から奥州王称号と連合国軍での階級地位は、大将の位を送られる事に成る。
それに加えて伊達政実は、キリヤ公国連合国内と諸外国の者達は、後にこう呼ばれる事に成るのだ。
伊達奥州王と・・・・・・その名に恥じない働き振りをした彼女は、後世にキリヤ公国連邦の立ち上げの功労者の一人として名を残す事に成るのである。
その後の伊達家は、公国内で強力な近代軍を備えた武士軍団へと変貌して行くのであるのだが、その切っ掛けと成ったこの交渉を取り合った祥子は、伊達の強かさを見て、半ば呆れて居たと言う。




