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キリヤ公国英雄戦記物語  作者: 伊達教宗
第2章 少年王、家臣団をスカウトする編
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第7話 少年王と毛利家・上杉家の転機

マギアンティア世界統一暦・1555年・6月2日・午前8時30分頃・マギアンティア世界・中央世界第一文明圏・ユーラシアン大陸東側・アマテラス列島地方・アマテラス神皇国・畿内地方・播磨国・別所長治居城・三木城付近・羽柴・陽菜・秀良軍本陣・羽柴・陽菜陣屋にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 この日、尼子家の現当主である尼子・勝美・久勝とその旧臣達で構成された1500名の者達は、中津国地方面軍司令官である羽柴・陽菜・秀良に、面会を願い出て居た。



「朝早くから押し掛けた事、誠に有り難う御座います。」


「別に構わないよ。それで何の話なのかな?」


「はいっ!!信長公と並びに秀良殿には、対毛利家との戦に措いて、多大なる支援とご鞭撻のほどを我ら一同は、心より感謝して居ります。」


「・・・・・そう、行っちゃうんだね?」


「はいっ!!」


「こっちも悪かったと思って居るんだよ。でもね、あの・・・・キリヤ公国連合国が来ちゃったから、毛利も羽柴(家)も戦どころじゃ無くなっちゃった。」


「はいっ!!それは理解して居ります。」


「雫から言われてたんだけど、これを・・・・・・」と陽菜が近習達に命じて、運ばせたのは、羽柴家と毛利家の割印と書印の入った通行手形と旅費、そして報奨金であった。



「これは?」


「餞別だよ。せめてこれくらいの事はしないと、浪人して織田家に味方をしてくれて居た人達に悪いからって、急遽、用意をした支度金と通行手形だよ。」



「キリヤ公国連合国に行くんだよね?」


「はいっ!!行きますっ!!!」


「うん。だったら毛利領を通ると良いよ。織田家と毛利家との戦も停戦したばかりで、大坂へと通じる街道はまだまだ危険だからさ、家の方も一通行人の団体集団の人達に護衛なんかを一々付けては上げられない。」


「此処から行くならば、毛利領を抜けた方が安全だよ。」


「宇喜多家と浦上家、それに小早川家には話が通って居るから、安心して行くと良いよ。」


「ははっ!!今まで有り難う御座いましたっ!!!」と尼子・勝美が頭を下げると、筆頭家老姫武将の山中・鹿乃以下の家臣達も一斉に頭を下げて礼を述べる。


 尼子家の一同はこうして、羽柴家を立ち去ったのであった。


 マギアンティア世界統一暦・1555年・6月12日・午前11時30分頃・マギアンティア世界・中央世界第一文明圏・ユーラシアン大陸東側・アマテラス列島地方・アマテラス神皇国・中津国地方・毛利大名王家領・安芸国・広嶋市・広嶋湾港にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 大坂湾沖合に、キリヤ公国連合国からナデシコ自治統合海軍艦隊が現れてから数日が経過して居た。


 キリヤ公国連合国から発せられた自国への移民・仕官公募の一件は、瞬く間にアマテラス列島地方を駆け巡り、各地から食い扶ちに困り果てる者。


 職を求める者、仕官に名乗り出る者と、その目的は様々な様相を呈して居た。


 そんな中で、此処アマテラス列島地方の本州島西部地方に位置する中津国地方の覇者と成った毛利基就を当主とする毛利大名王家の本拠地たる安芸国・広嶋市。


 その眼下に広がる瀬戸内海の港である広嶋港に駆け込む二人の姫武士の姿が在った。 


「「「「「待てえええええぇぇぇぇぇぇぇーーーーーっ!!!」」」」」



「姫様っ!お早くっ!」



 姫と呼ばれた人物は、アマテラス神皇国の由緒ある武士の家系、それも大名王家と呼ばれる領主王の生まれだった。



 この国では当主の座に付けるのは嫡子であれば、男女の差は無いとされて居て、家々によっては、女当主の事を姫か殿と呼んで居るのが通例とされて居た。



「はぁはぁはぁ・・・・・すまない、鹿乃。んはっ!はぁはぁはぁはぁ・・・・・・・・・・」


 

 瀬戸内海と言う内海に恵みに恵まれた地域で、この地方を破竹の勢いで制覇したのが、先にも述べた毛利基就である。


 その彼は権謀術数を駆使して、国人衆から下克上をして、下から成り上がった大名王だった。


 そして、この日は安芸港で、一騒動が起こった。


 かつて中津国地方の覇権を巡って毛利基就に戦いを挑んだのは、出雲国を中心に領土を有して居た尼子と言う大名家であった。


 3代に渡って3カ国も国土を治めてきた名家だったが、毛利家との抗争の戦に破れて、そのお家が没落してまう。


 その末裔たる尼子家の現当主である尼子・勝美・久勝は、尼子家の旧家臣達共に、中央で勢力を伸ばしてきた織田・和紗・信長と言う姫大名王の力を借りて、旧領の奪還を成し遂げ様として、毛利家と戦い続けて居た。


 だが、織田軍として播磨国に進出してきた配下の羽柴・陽菜・秀良の下で、幾度も転戦を繰り返す物の、西進へと進む様な気配が無く、彼女に取っての事態が一向に進展しないのであった。


 そんな中で尼子家の者達は、キリヤ公国連合国海軍艦隊の演説を聞き付けた。


 尼子勝美と筆頭家老姫武将の山中・鹿乃・盛幸は、尼子家の旧臣達と話し合い。織田軍を抜けて急ぎ広嶋湾を目指した。


 彼女達が敵地である危険な広嶋へとわざわざ向う理由は、三木城と言う城で毛利軍と戦って居たからである。


 織田軍を離れてキリヤ公国連合国海軍のが寄港して居る一番に近い港である大坂港へと向かうには、その途上では織田軍と毛利軍共に抗争を繰り広げられて居るど真ん中を通らなければ為らなかった。


 其処は気性の激しい独立国主が乱立して居る播磨国や摂津国等と言った地域を巡って、毛利と織田両軍との戦を繰り広げられて居た。



 それらを避けて通るには、地理的に安定して居る西側の中津国地方方面に在る毛利家の本拠地、ナデシコ艦隊が来て居ると言う広嶋湾港へと向かうしかなかったのである。

 

 キリヤ公国連合国が国力増強を目的とした人員確保の為に、アマテラス神皇国地方に艦隊を派遣し、織田家と毛利家にもそれぞれ使者が派遣された。


 その関係で毛利家はアマテラス神皇国地方内での内戦に関して中立を宣言する事に成った。


 毛利家と中津国地方の覇権を巡って戦って居た羽柴家、延いては主筋の織田家と停戦条約に調印する事に成り、尼子家臣団達等が通る予定と成って居る宇喜多家領と浦上家領、それに仲介役である小早川家らには、それぞれ話が通って居た。


 二人は複数のルートで旧臣達と共に進み新天地を目指した。


 停戦条約が結ばれる事と成った織田家と毛利家の間で、ある取り決めが交わされた。


 それはキリヤ公国連合国へと渡海する者に対して、その者達の過去の咎に関して一切構い無しと定めた、国内外渡河通行許可状と言う恩情が両家の間で布告されて居た。


 それを聞き付けた陣借りをしていた元大名や国人達は、世話に成っていた大名王家やその配下の家臣達に対して、頭を深々と下げて新天地へと去って行ったと言う。


尼子家の者達も、両家からの国内外渡河通行許可状が手渡され、その一路を毛利家の本拠地である広嶋市へと向かう。


「ああっ!?」


「姫っ!」


 港まで200メートルと言う所で、毛利軍の一軍である吉川軍に囲まれてしまう尼子・勝美と尼子家の旧臣達。


「むむ、むっ無念っ!!もう少しだったのに・・・・・・」


 勝美は捕縛される事を覚悟した。


「手配中の尼子家の残党達だな。」


「さぁ、観念して貰おうかっ!!」


「くっ、あと少しだと言うのに・・・・・・・・」



 その時だった。


 パンパンパンッ!と38式歩兵銃2式なる小銃の発砲音が広嶋の港内に鳴り響いた。


「むっ?」


「ええいっ!!又もあやつ等か?」


「其処までだ。この港に来た移民及び亡命希望者は、全て我が国で預かると、毛利公には申し上げた筈。」


「そっ、それは・・・・・・・・・」


「さては、貴様らは血気盛んで、跳ねっ返りで有名な者共と聞き及ぶ、吉川候が率いる吉川軍の将兵者達か?」



 吉川とは、毛利家両川の一角の家柄で、基就の次女である吉川・春美・隆春が養女に入った家である。


 その吉川家は尼子家等の東中津国地方の領主達と尽く討ち取った張本人であり、この度の不穏分子の国外脱出を快く思わない事であること。


 キリヤ公国連合国が領内にずかずかとやって来て、好き勝手な事をされる事の気に食わないと考えて居た強硬派一派の者達であった。


 毛利家はキリヤ公国連合国と争う事は、自分達の首を絞めかねない事を十二分に理解し、キリヤ公国が行う事に対して、不干渉を貫く事や旧主達や浪人達の国外移住を容認すると決めていた。


 その方が後々の自分達の国内統治が、楽だからと言うのが、毛利家としての本音だったからだ。


「待たれえええええぇぇぇぇぇーーーーーーーーーっ!!」


 泡や大騒ぎと成ろうとして居る所に、騎馬に跨った一人の女性が現れる。


 騒ぎの場所に現れたその人物は、ショートの黒髪で、やや背の低い小柄なロリ巨乳スタイルと普段から眼鏡をして居り、その性格は大人しい雰囲気が漂う女の子が現れた。


 その人物は毛利家両川の一角で、三女の小早川・隆美・影長である。


 毛利家での彼女の役目は、主に水軍や外交に諜略を行う某を司って居た。



 父である基就からは、キリヤ公国連合国との外交官としての任務を任されていた。


 


「どうどうどうーーっ!」と馬を宥めつつ、馬から降りる小早川・隆美。


「申し訳ない。姉の隆春が勝手に兵を動かしたらしい。今は長女である姉の隆宗が説教して居る所でしょう。」とナデシコ自治統合軍の指揮官に対して、丁寧に謝罪する隆美。


「尼子を始め、中津国地方一帯の旧領国主と旧臣達で、毛利と反りが合わない。または仕えたくない。」


「もしくは旧主に付いて行きたいと申し出る者達は、好きなようにせよと、我が父上は申されて居る。」


「ですから勇治陛下には、くれぐれも良しなにとお伝えくだいませ・・・・・・・・」


「毛利家の外交官である貴女が其処まで申されるなら、我らは毛利家と事を荒立てる積もりは無い。」


「我が国へと来たいと言う者は、毛利家が責任を持って広嶋港や博多港へと案内する様に取り計らって貰いたい。」


「ははっ、畏まって御座います。」


 毛利家は地方領国王の身分に過ぎない。


 詰まりは、この世界基準の身分地位で言えば、独立諸侯貴族領主の身分にして、準国王と言う立場に在る。


 対する勇治は、見た目は小さい国土だが完璧に独立国の国王の身分である。


 ちょっとした差では在るが、この身分格の差がハッキリとして居るので、流石の武士と言う騎士と同等な身分で、小さい国土持ちの領主王の親族家臣に過ぎない隆美も、一国の軍の士官に逆らって大国と紛争と成るのは、毛利家としても決して出きない事なのであった。


 今頃、騒ぎを起こした姉の春美は、更にその上の姉である長女・毛利・輝実・隆宗から説教をされて居る事だろう。



「ささっ、尼子久勝様。この度の不肖の姉の不始末、父上共々お詫び申し上げる。」


「我が毛利家は、貴女様とご家中並びに、この地を巡って戦い合った全ての武士達の新たな門出をお祝い申し上げ、必ずや安全にキリヤ公国連合国へと御送り致す所存。」


「はぁ~・・・・・」と安堵する勝美。


「さぁ、姫様・・・・・」


 こうして一騒動が有ったものの、勝美は鹿乃の片に捕まり支えられながらナデシコ自治統合海軍艦隊が借り受けている港町へと無事に入り、その保護を受けたのであった。



 一方その頃、毛利家の居城である広嶋城内では・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「春美っ!お姉ちゃん今日は許さないからねっ!!!勝手に吉川軍を動かして・・・・・・・・」とぷりぷりとした感じ怒る毛利・輝実・隆宗。


「じゃけぇ、姉じゃっ!」


「じゃけぇ、じゃないっ!!」


「ううっ、ううっ・・・・・・・・・・・」


 ナデシコ自治統合海軍艦隊の広嶋方面派遣艦隊と大騒動を引き起こした張本人たる吉川・春美・隆春こと通称・吉川・春美は、姉であり、次期当主でもある毛利・輝実・隆宗こと、通称・毛利・輝実から、こっ酷く叱られていた。


「全く、勝手に兵を動かして、尼子家の残党や各地の大名王家の旧臣達をお父様の許しや、そのご意志を無視してまで、その全てを尽く捕らえるなんて、ホンとどうかしてるわよ。」


「この一件は、織田家武将の羽柴秀良殿とご当主の信長様も委細承知して居ると話し合われ、取り決めが済んで居る事なのよっ!!」


「それを勝手に始末をしようなんて事は許されないわっ!」


「確かに織田家とは播磨国を取り合って戦の真っ最中だったし、尼子家を始め中津国地方の旧大名や国衆豪族達らは、我が毛利と覇を争って負け、今も織田家の傘下に居るか、領内外で寝首を狙って居るのは、分かって居るわよ。」


「じゃ、じゃから、わしが始末しようとしたんじゃ、元々はわしのっ、わしの不始末じゃから・・・・・・・・」


 春美は責任感と義理と人情など心構えをとても大事にして居る。


 尼子氏を始め、毛利が東方諸勢力を平らげて行く過程で、討ち漏らしたり、逃げ延びた者達も多く居た。


 そんな討ち漏らしをやらかした事に責任を感じて、長い間、時間を掛けて足取りを追って追撃に次ぐ追撃をし、日夜残党狩りをして来たが、一向に捕まる気配が無い。


 そんな時に、キリヤ公国連合国の移民者募集の布告である。


 春美は、この事に大きく気が焦って居た。


 このままでは部下や家族らに顔向け出きないと、必要以上に残党狩りに励んでしまう。


 だが、父親がその行動に待ったを掛けたが、一度決めたら真っ直ぐな心根の持ち主である春美は、頑なに一人で突っ走ってしまうのだった。


 それで隠れて残党狩りをしていた春美は、遂には己が命に背いた事に激怒した父の基就から兵を差し向けられた捕縛され、こうして姉の説教を受けていた。


 恐ろしい事に、この後には怒ると怖ーい、父の基就からの説教と投獄が待って居るのだ。 



「それは分かって居るのよっ!でもね、お父様は、それでもキリヤ公国連合国からの申し出を受けると決めたのよ。」


「そうすれば、少なくとも中津国地方を含め、アマテラス神皇国内に潜伏する旧大名家の当主とその他の豪族の者達は、渡海して此処から居なくなるの。」


「それは私達に取っては、後々の領国での統治が、物凄くやり易く成ると言えるのよ。」


「貴女のした事は、下手をすればキリヤ公国連合国との大戦を意味して居るわ。」


「大陸の最新情勢の情報では、少なくとも現時点では、あのゲルニアン帝国よりも国力と軍事力等が上の国なのよ。」


「姉ちゃん、そりゃ、デマじゃけぇっ!」



「あんな13のソコソコくらいの小僧が創ったちゅう国に、そんな力が在るわきゃ無いじゃけんねっ!」


「はぁ~、貴女は何所から出た話を信じて居るのよ?」


「これは毛利家お抱えの間者網を使って、調べた正式な物なのよ。」


「隆美の配下の村上水軍の手の者を使って、キリヤ公国本土に人を遣って、実際に見に行って来た本当の事なのよ。」


「まだまだ、発展途上の国では在るけど、少なくとも次の大陸での大戦は、キリヤ公国連合国が勝つと私と隆美は見て居るわ。」


「連合国体制国家に入る前のキリヤ公国と言う国名だった頃なら、如何にも為らなかったでしょうけど、今はナデシコ地方自治州区と言う異界地方と編入合併が為され、大きな連合国と成って居るわ。」


「それに国内編入されたナデシコ地方自治州区のナデシコ自治統合軍は、異世界の強力無比な軍事力を有する軍隊と言う事もね。」


「そそっ、そんなバカなっ!?」


「そそ、そんじゃけぇ、わしは・・・・わしは・・・・」



(わしは・・・親父と姉ちゃん・・隆美。それに毛利家に泥を塗ったんか?)



(じゃったら、どう償えば良いんじゃっ!!)


 

 春美は姉に諭され、頭の中で事の大きさに、ようやく間違いに気が付く。


 下手をすれば、毛利家の滅亡に繋がった事にも・・・・・・・・・・・・



「じゃけぇ、じゃえけぇ、うわわあああぁぁぁぁーーーーん。」



 やっと事の重大さが分かったらしい。


 この後に春美は、キリヤ公国連合国への詫び入れと毛利家としての懲罰の一環で、第一次公帝戦争に吉川軍を率いて参戦し、命賭けの手柄を立てて行く。


 更に春美は、後に近代化吉川軍を作り上げ、キリヤ公国連合軍の将軍の一人として生涯を掛けて、この時の事を償うと決めて職務に励む人材と成って行くのである。


 この一件を通じて毛利家もキリヤ公国連合国の同盟軍として、6万人の軍を派遣して、この騒動関係の事を帳消しにして貰おうと考えに至る。



 また、小早川隆美は、地方独立自治国・毛利家外交大使として、キリヤ公国連合国の本国であるキリヤ公国本国へと赴く。


 彼女は大陸の情勢に付いて収集して行くと同時に、第一次公帝戦争にも海軍司令官として参戦を要請され、勇治から巡洋艦1隻、駆逐艦7隻と揚陸艦5隻を率いる海軍司令官にも任じられる。


 第一次公帝戦争後には、毛利家はキリヤ公国連合国に加盟し、毛利独立自治安芸藩王国を建国する。


 毛利家は、小さい国ながらもキリヤ公国に貢献して行く小国としての道を歩み始めたのであった。



 マギアンティア世界統一暦・1555年・6月2日・午前5時30分頃・マギアンティア世界・中央世界第一文明圏・ユーラシアン大陸東側・アマテラス列島地方・アマテラス神皇国・北陸地方・上杉大名王家領・越後国・春日山城にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 キリヤ公国連合国の移民募集の宣言の報は、冬は雪深く、夏場涼しく過ごし易い上杉家が治める越後国にも届いて居た。



 越後の勇にして、越後の龍または軍神と謳われ恐れられ敬われて居る上杉・剣信・輝清は、ぶっ飛んだ思考の持ち主。


 日本風に言えば、中二病を患って居る歳頃の良い大人の女性である。


 年頃は24歳で、貞操を貫く聖女の様な人物と言われて居たが、単に毘沙門天教に信心深いだけの中二病乙女に過ぎないのが真実の姿なのであった。


 その剣信が、何時もの様に、春日山城の最奥に建立した毘沙門天教堂に篭って、軍神である毘沙門天に祈りを捧げていた。



 そして、深夜まで祈りを続けて居た、とある時間。


 流石に剣信も、眠気には勝てずに、ウトウトと眠り扱けていた。


 そんな彼女の夢の中に、突然、軍神・毘沙門天が現れた。


 この毘沙門天は、日本等に伝わる毘沙門天の姿が似て居るだけで、この世界では、アマテラス限定で崇拝されているマイナーな神様の一人で、軍を率いる戦いの神と言われる軍神であった。


そして、異世界日本の神様とは類似性も関係性も一切関係無い神様なのであった。


「剣信っ!剣信っ!上杉・剣信・輝清よ。」


「はっ?!まさか毘沙門天さま?!」


「そうだ、何時も熱心に祈りを捧げてくれて居る事には、我は心から感謝して居るぞ!!」


「そんな其方が、私にこの世界に戦の無い、民が安心して暮らせる世を作るには、如何したら良いかと願ったな?」


「はっ、はい。この国や世界は、沢山苦しみで溢れ、荒れて果てしまって居ます。如何すれば良いのかをお聞かせ下さい。」


「剣信。そんな簡単に世の中から争いや苦しみに飢え、戦は無くならない。」


「えっ・・・・・・・」


 剣信が心から崇拝する神様は、残酷な答えを彼女に言い放った。


 その言葉を聞いた剣信は、驚いた顔つきで悲痛な顔立ちへと変わって行く。


 だが、軍神・毘沙門天は、同時に救いの答えも彼女に啓示を与えた。


「だが、如何すれば良いのかの方法は在る。」


「そっ、それは一体?」


「西の大陸に世界神が遣わした異界から現れし、少年が居る。その者に仕えれば、お主の問いの答えが分かるであろう。」


「西の大陸・・・・・はっ!?中央世界地域のユーラシアン大陸南東部に最近に成って出きたと言う小国が在ったはず・・・・・確か名は・・・・キリヤ公国。」


「彼の国の王は、異界からやって来た少年王と言う話だ。」


「毘沙門天さま、私はその者に仕えれば、良いのですね。」


「それでは私はこれで去る。これからも精進し、更に励むのだぞっ!我が忠実なる信徒、剣信よっ!」


「決して、その少年を裏切る様な真似はせぬように・・・・・・・・・・・」


 夢枕に立っていた毘沙門天は、消えて行った。


 実はこれ、兵力や指揮官と成る人材に人手が足りないと嘆いて居た勇治の様子を見ていた女神アルテジアが、格下のマイナー神である軍神・毘沙門天に頼んで、勇治の下へ剣信を遣わせようとお節介を焼いたモノである。


「はっ!?夢?いや、これはお告げだっ!軍神・毘沙門天さまから私ヘのご神託なのだっ!」


「私は行かねばっ!行かねば成らないっ!」


「直ぐにでも会いに行かねばっ!キリヤ公国の公王である桐谷勇治殿にっ!」


「彼のお方こそ、私が真に仕えるべき、主君と成るお方なのだっ!」


 外に出ると、夜明けだった。朝陽が春日山城の上で、光輝いていた。


「誰かっ!誰かあーる。」


「剣信様?」


 剣信の呼び出しに応じて現れた近習の配下の小姓侍の者は、またもや気が狂ったような戯言を言うのかと察して、嫌そうな顔に成るのを堪えながら応対する。


「私は昨夜、軍神・毘沙門天さまからのご神託を賜った。」


「私は、これからキリヤ公国に向かう。家督は直ぐにでも甥の影勝に譲る。後の事は、この上杉家の事は任せるぞっ!!」


「あっはい。そうですか・・・・・・・・って?!ええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?」


「お待ちください剣信さまっ!!!剣信さまああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」



 小姓をして居る近習の配下の者は、同僚達を必死に大声で叫びながら、何とかして主を引き留めんとする。


 だが中二病を患う主は、周りに縋りつく家臣に等が諫め留め様と縋るが、決意の固い剣信は、さっさと旅支度を済ませて出て行こうとする。


 この日、越後の龍または軍神と謳われ恐れられ敬われて居る上杉・剣信・輝清は、家督を姉の息子である甥の上杉影勝に移り、一部の重臣と直臣。


 そして、子飼い家臣を引き連れて越後を旅立って行ったのである。


 この後に上杉家が統治する越後国は、剣信が強引に家督を譲られた甥の上杉影勝の名の下で、キリヤ公国へと臣従を宣言。


 能登・加賀・越中・越後の領土は、キリヤ公国連合の傘下の上杉大名王家の独立自治国家とされ、その名を上杉独立自治北陸藩王国と名付けられ事と成る。



マギアンティア世界統一暦・1555年・6月5日・午前10時30分頃・マギアンティア世界・中央世界第一文明圏・ユーラシアン大陸東側・アマテラス列島地方・アマテラス神皇国・北陸地方・上杉大名王家領・越後国・春日山城にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





 それから3日後のこと、致し方無く上杉家の家督を急遽、継ぐ事に成った上杉景勝。


 彼は新たな上杉家の当主を任される・・・・・・と言うか、丸投げをされてしまった上杉・剣信の甥に当たる上杉景勝は、この時18歳。


跡目を相続するには、やや早い年頃とも言えた。


 彼は上杉家のベテラン家臣団が立ち去った事で、若手家臣団で、景勝の直臣達が家老職を務める事に成った為、春日山城の評定所へと集まり今後の方針を決めようと集まる。


 新たな上杉家の筆頭家老と成った直江・愛華・兼継と次席家老と成った大国・七恵・実頼と共に集まった上杉家の評定衆達のメンバー達は、先代達から丸投げされた上杉家の運営を如何したら良いのかと頭を抱えてしまう。


 何せ、引き継ぎ作業もソコソコして、上杉・剣信を追いかけて行ってしまったからだった。



「はぁ~、相も変わらず、叔母上は勝手お方だ。」


「数年前は関東管領・上杉憲政様に乞われて養子に成られた挙句に、長尾の家を上杉家に改名されるし、その後の小田原城攻めでは、関東武士の慣例を知らずに、無知な無礼を成田家にしてしまった事で、一部の関東武士達が怒って帰ってしまう失態を犯した挙句に、兵糧が尽きて撤退。」


「追撃戦で手痛い目合う始末。」


「極め付けは、北信濃国を巡っては、武田家と5度も戦って武田家と共々、共倒れに成り兼ねない程の我が家の大赤字。」


「そして・・・今度は、最近に成って、何かと噂の在るキリヤ公国連合国へと仕官をしに行かれてしまった。」


「オマケに、同盟国と成って居た北信濃地方の国人衆である村上家の村上・清美・隆清殿と真田家の真田・幸恵・幸昌殿たちを伴っての渡海と聞く。」  


「はぁ~、それに加えて、我が家に古くから仕えてる玄人の者達らは 叔母上たちに付いて行くと言って出てってしまった。」


「ああっ!!僕は如何したら良いのだ!!」と普段から寡黙な景勝も、この時ばかりは頭を抱えてしまいながらも、普段とは違って、良くペラペラと饒舌に喋って居たと、後に書かれた上杉家の史記である上杉独立自治北陸藩王国建国記には書かれて居る。


其処へ景勝の母親である上杉綾が現れた。


 彼女は上杉・剣信・輝清とは14歳年上の腹違いの姉妹関係で、その間には旧越後国守護代大名王家・長尾家の当主だった長尾晴景が居る。(当時30歳) 


 越後国・坂戸長尾家の当主である長尾政景へ正室として嫁ぎ、その年の暮れに長尾景勝を産む。(後の上杉影勝)


 だが、その後に足柄幕府王朝・関東管領であった上杉政憲との舟遊びで庭池で転落溺死した事で未亡人と成ってしまう。


 現在は上杉大名王家国の首都である首都・春日山市内に屋敷を構えて静かに暮らして居た。


 その見姿鏡は、サラサラとしたロングストレートヘアーとやや背が高く、中々のボディスタイルとボディライン持った身体付きで、妖艶おっとりな雰囲気が漂う熟女なお母さん系のお姉さんタイプな人物である。



「景勝、悩んで居るようですね?」



「これは母上様。はい。その通りです、今の僕はとても悩んで居ります。」


「剣信も、信心深い軍神・毘沙門天様の事に成ると、盲目に成りがちなのは分かるけど、もう少し身の回りを整理と引き継ぎ作業をしてから、出かければ良い物を・・・妙な所で、せっかちで戦バカなんだから。」と実の妹の事をボロクソに言う姉は、やれやれと言う感じでため息を吐く。


「しかしながら母上様、これは上杉家の一大事。」


「とても僕一人では・・・・・・・」


「成らば景勝、丸投げ序でに、此方も丸投げをして見ると言うのは如何かしら?」


「丸投げですか?一体、何を?」と母上の奇想天外な一言に首を傾げる景勝。


「うふふ、いっその事、戦バカ妹の剣信と同じく。上杉家の身代を貴方に丸投げしたように、上杉家の進退をキリヤ公国連合国へと丸投げして見るのは如何かしら?」


「ななっ!!何んととっ!?」と驚く景勝は驚愕の声上げて驚いた。


「流石は綾さま。」


「良い手かも知れません。」と新たな評定衆の筆頭家老と次席家老を務める双子姉妹も賛成する。


「噂では奥州の伊達家は、キリヤ公国連合国へと臣従する動きを見せて居るとも聞くし、毛利家も何やらキリヤ公国連合国と外交交渉で活発て来な動き見せて居ると軒猿たちの報告では聞き及んで居ます。」


「景勝、此処で我ら上杉家もキリヤ公国連合国へと臣従する事にすれば、少なくともアマテラス神皇国地方内での騒乱、天下統一覇権争奪戦からは離脱する事で御家の安泰を図れて、中立地域と成る事も可能でしょう。」



「おおっ!!流石は母上様ですっ!!この景勝、目から鱗が落ちる思いですっ!!」


「愛華っ!七恵っ!」


「「ははっ!!」」


「直ぐにキリヤ公国連合国へと使者を送れっ!!先代当主である上杉・剣信・輝清が主君と仰ぐ。桐谷勇治公王陛下は名君たる器に在りと見た。」


「我が上杉家は、桐谷勇治公王陛下とキリヤ公国連合国へと臣従を申し出ると伝えるのだっ!!」



 ってな訳で上杉家と上杉景勝は、桐谷勇治とキリヤ公国連合国へと臣従を申し出ると伝える事と成った。


 キリヤ公国連合の傘下の上杉大名王家の独立自治国家とされ、その名を上杉独立自治北陸藩王国と名付けられ事と成る。


 国土はアマテラス神皇国地方の能登・加賀・越中・越後・佐渡に加えて、武田・北条・アマテラス地方東国征伐平定戦に措ける戦功としての褒賞として上野国が与えられ、6カ国領土を本土とする藩王国体制を築く事に成った。



 上杉藩王家は、武門と忠義を掲げる忠孝のお家柄として、後に上杉(桐谷)・剣信・輝清が副性とし賜った桐谷の苗字を頂くキリヤ上杉家を立ち上げる事に成るが、両家共に栄えてキリヤ公国連合国の中核的な家柄として代々続いて行く事と成ったのであった。


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