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キリヤ公国英雄戦記物語  作者: 伊達教宗
第1章 少年王とキリヤ公国建国創生記編
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第5話 少年王と変態ドМ忍者楓と争乱の足音

マギアンティア世界統一暦・1555年・5月23日・午後20時15分頃・マギアンティア世界・中央世界第一文明圏・ユーラシアン大陸・ユーラシアン大陸南部地方・メイルシュル山脈連峰地方・メイルシュルフラッド公国・ローザンヌ州領・公王都・メイル市にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 ゲルニアン帝国のヒットラン・アドルフラー皇帝は、武力侵攻よる大陸南部地方の平定計画・・・・・・ユーラシアン大陸統一計画を着々と進めて行く。


 その間の準備期間の時間稼ぎ工作として、キリヤ公国と繋がりある二か国に対して使者を送り付け、キリヤ公国の振る舞いを何とかして欲しいと言い放つ。


 ゲルニアン帝国は長きに渡って小賢しい策謀を巡らしながら、マギアンティア世界・中央世界第一文明圏・ユーラシアン大陸の武力平定を企む。



 しかしながら、その野望を長きに渡り阻んで来たユーラシアン大陸南部地方諸国を如何にかしたいと考え、その機会を長きに渡って伺って居た。



 そして、建国して間もないキリヤ公国が、異世界から転移して来た地域と称する一団が所有する土地、撫子皇国領を独占するかの様にして自国領へと編入し、キリヤ公国連合国へと国体制と国名を変更する事態と至った。


 これを好機と見たヒットラン皇帝は、キリヤ公国連合国を始めとする南部諸国を飲み込まんとするべく、直ぐに動き出した。


 その策の一環として、先ずはセレジアの母国であり、キリヤ公国連合国の同盟国のガリアナ王国に対して、抗議分を綴った書簡を送る。


 その差し出し宛はセレジアの父であるジンバル・ユリテリア・ガリアナ国王であった。


 だが、ジンバルは娘婿の事を信用して居るので、舅である自分が婿殿に向かって口を出す理由が無い。


 それにキリヤ公国連合国は、ガリアナ王国傘下の属領・独立国並びに連合加盟国では無く、今や国力が増大した事により完全な独立国と成ったとの公文書を交わして居るので、今さら我が国が彼の国に対して、内政干渉すら出きない。


 ヒットラン・アドルフラー皇帝陛下殿のご期待に沿えず申し訳ないと、丁寧な文面で書簡の返事を送り返した。


 ハッキリ言ってバカバカしいくらいに丁寧な文面で有るが、悪い口調で意訳するならば、一昨日きやがれっと言って居るのだった。



 序でに言うと、先にも述べて居るが、キリヤ公国連合国へと国家体制と国名を変更する際に、勇治はキリヤ公国連合国をガリアナ王国から完全に独立をさせて居る。


 これはセレジアの実家に迷惑を掛けまいとする処置では在るが、キリヤ公国連合国とメイルシュルフラッド公国と言う独立自治国家として独立して居るが、元々この二カ国は宗主国であるガリアナ王国の属領国家である。


 その宗主国よりも国力が上と成ってしまった為に、キリヤ公国連合国は、宗主国であるガリアナ王国から独立する事に成ったのであった。


そして、ヒットラン皇帝は、もう一カ所に書簡を送り付けて居た。


 その場所とは、キリヤ公国の北西に位置する小国家、メイルシュルフラッド公国と言う国だった。



 彼の国は、キリヤ公国連合国とガリアナ王国の北部山脈のであるメイルシュル山脈連峰とその周囲に小さな領地を持って居て、国土の大半の土地が、小さな平地や盆地を中心にした国土を持って居る国だった。



 ガリアナ王国の傘下の分家同盟国でも有り、キリヤ公国連合国とも同盟国関係を結んで居る。


 国土面積がスイス連邦よりも、若干大きい国土を有する国家で、南米のインカ帝国の様に山脈に軍事用の裏街道を作って居り、それ等を利用して建国以来、南部侵攻をしようと、攻め掛かって来たゲルニアン帝国軍の国土侵攻を幾度も防いで退いて来た歴史が在った。


 そんな歴史的な経緯を持って居るメイルシュルフラッド公国にも、外交書簡がガリアナ王国へと届くのと同じような同時期に届いて居た。


 この国はセレジアの母親方の妹が嫁いで居る国で、現在この国はセレジアの従姉妹であるリィーゼ・メイルシュルフラッドが、これからの時代は世代交代をするべきだと言った先代公王であった父親から、最近に成って公王位の後を継いで、女公王として国を治め始めて居た。


 ゲルニアン帝国は言い掛りの様な形で、親族なら新参の一族を如何にかしろと文面を丁寧な文章で送り付けられて居た。



 ゲルニアン帝国からの書簡を公王都・メイル市の中心地に在る小高い丘に建てられた洋風建築様式の城であるメイル城の執務室で読んで居た。


 時刻は夜の20時。


 そんな彼女の元に、勇治から派遣されたキリヤ公国連合国のキリヤ公国秘密工作諜報情報部局を統括し、現場の第一線で国家の暗部である裏の仕事を取り仕切っている服部楓と言うくの一が現れた。


「リィーゼさま。」


「??」


「貴様っ!曲者だな!?出あえぇぇーーっ!!!出あえぇぇーーっ!!!」



 護衛していた女騎士の一人が、ふと窓際に目をやると、其処には不自然な場所に現れた背の高い金髪メイドの女性が窓際に、何時の間にか立って居たのである。


 近衛騎士は曲者を捕らえんと、すぐさま近くの騎士や警備隊の応援を呼ぶべく、大声で叫ぶ。


「待ってっ!!」



 多数の近衛騎士や警備兵が現れ、あっと言う間に侵入者を取り囲もうとした時だった。


「貴女がカエデね。」


「はい。」


「リィーゼ様っ!この者は一体?」


「皆も安心なさい。彼女はカエデ・ハットリ。」


「東の果ての海に浮かぶ島国、アマテラス神皇国から来た伊賀栗衆の頭領よ。」


「今はキリヤ公国連合国のキリヤ公国本国軍内に在るキリヤ公国秘密工作諜報情報部局長として雇われて居る公王であるユウジの配下の一人よ。」


 リィーゼは、瞬時にその者正体に気が付き、近衛騎士や警備兵達を下がらせた。


「ユウジから時より来る手紙のやり取りで、万が一の時は貴女を遣すと言われて居たわ。」


「お気遣い痛み入ります。」


 服部楓は、ユーラシアン大陸での忍びの出稼ぎと遊学を兼ねた武者修行に出て来て居たくの一であった。


 伊賀栗衆切っての天才と言われた女忍者は、アマテラス神皇国から若手くの一の中でも、腕利きの同郷の仲間を揃えて、供に実力を上げる為と新しい取り引き先の開拓をするべく海を渡って、このユーラシアン大陸にやって来て居たのだった。


 アマテラス神皇国は、キリヤ公国連合国から北東へ600キロの所の海洋地域に有る日本の様な和風の文化を持った国だ。


だが、ナデシコ地方自治州区の転移の影響でナデシコ第二地方地域から更に北東部へと追いやられ、今やユーラシアン大陸からかなり離れた島国と成ってしまって居る。




 但し、日本と違う所は天皇の様な存在が無く、力を持った武士同士が戦い、勝ち残った大名王と呼ばれる者が、征夷大将軍王と言う位を名のって幕府と言う中央政府を開いて統治するのが、アマテラス神皇国の建国以来の絶対不変の法とされて居る武士の国であった。


 今のアマテラス神皇国は、4回目の戦国期を迎えており、諜報合戦が盛んで有るが、流石に任務中での親族や顔見知り同士での殺し合いが、多く成ってきた関係で、各地の有力な忍び里では、一族が完全に途絶えたり、少なくなるのを避けるべく、ユーラシアン大陸に新たな販路を求めたのである。


 居残った各地の忍の長達は、地方を区割りして、同族同士の殺し合いを避ける様に勤めて居たが、何れはどうなるかは判らないのが現状と言えた。


 楓は数ヶ月前に、頭領の座を父から譲り受けた若き逸材と言われる忍びだった。


 伊賀栗衆の次代を担う者として世界各地の大陸を見て来いと父から言われ、忍びの仕事を請け負いながらユーラシアン大陸で活動していた。


 そんな中で半月前に、ヒットラン・アドルフラー皇帝から特別な依頼を受けたのである。


 報酬は30万ゴールド。日本円で言うのなら約30万円の報酬である。


 これは個人で請け負う裏仕事人の仕事としては、かなり高い報酬と言えた。


 これに成功すれば、ヒットラン皇帝のお抱え仕官も考えて良いとも言われて、彼女はこの仕事を請け負ったのだ。



 その依頼内容は、キリヤ公国の公王である桐谷勇治の暗殺だった。


 楓はユーラシアン大陸随一の国家で、世界列強国でも在るゲルニアン帝国なら使えるに値すると考え、ヒットラン皇帝からの依頼を受諾する。




 しかし、彼女が請け負った勇治の暗殺は、意図も簡単に失敗に終わった。


 横須賀市や七浜市街の新規都市開拓開発の視察中に、楓は20名の伊賀栗衆の仲間と共に勇治に襲い掛かった。


「お命頂戴っ!!」


 着物姿の市民に化けて、勇治に襲い掛かったが、勇治はこの世界へと転生する際に、女神様から特殊な加護と身体能力アップ改造を受けて為に、逆に楓に対して、拳銃を頭に突き付け、地面に組み敷いた。


 それでも、彼女は腕利きの忍者である。勇治に対して小刀があと一歩の所で止まる。


「へぇーっ、珍しいな。忍者まで居るのか、この世界は?」


「だが、残念だったね。変装して化けるのが、もう少し巧妙ならバッサリと殺ろされて居た所だったよ。」


 近くではセレジアも拳銃を構え、近くに居る近衛騎士団も近衛騎士団長のマリアが手早く楓の部下達を取り囲んで取り抑え、それ以外の騎士達は剣を構えている。


 騒ぎを聞き付けたナデシコ自治統合軍の陸軍歩兵中隊と海軍陸戦隊、更には現地の治安を預かる七浜市警察署の警官隊が、完全武装をして駆け付け、周囲付近の街並みを封鎖して居た。


「何故・・・・分かった?」


「ふっ、そりゃ服の着こなしが微妙に違って居たし、何より髪型ヘアースタイルが新しい物が多いこの七浜市の町中で、あからさまに古風な髪形をした人達が混ざって居れば、悪目立ちして変だと思うのは当然だろう?」


 ナデシコ地方自治州区内は、勇治の故郷の日本国や楓の出身地であるアマテラス神皇国の文化風習に近いとは言え、風習と文化的な時代背景が、それぞれ違い過ぎた。


 楓は近代風のバッサリとして居る髪型の中に、古い簪を刺して結っている女性が少数混じって居れば、一発で見分けられる事を知らなかったのである。



 それだけ文化面での些細な違いが、楓には判らなかったと言えた。


「それに露天業している中にナデシコの300年前のソバ屋と居酒屋が営業して居るって、市民からの通報や公安警察や市街警察の見回り巡回からの情報を聞けば、家の警察庁と公安局から真っ先に見張りを付けられるってもんさ。」


 

 転移国家特有の文化時代的な差異が。此処に顕著に見られた結果だった。


「ぐっ、其処まで見て居たとは・・・・むむっ無念、不覚だった・・・・・」


「さて、これから如何するの?言っとくけど、捨て身で僕を殺ろせば、君の大本の本拠地や、その他の同業者全員を抹殺する。」


「・・・・・・・・」


「存在して居た事すら無かった事にしてね。」


「・・・・・・・くっ、殺ろせ。」


(ああ、くっ殺ろね。この手の人は、本当に面倒だな)


「貴方達が取る選択肢は3つ、此処で特攻して僕らと殺り合って討ち取られるか、大人しく処刑台に送られるか。」


「それとも一人当たり月給20万イエンで、僕とこの国に忠誠を誓うか?さぁ、どれにする?」


「何なら故郷の全ての忍者やその家族全てを移住させても良いよ。」


「仕事も斡旋するし、他にも色々面倒みて上げられるけど、さぁ、どうする?」


 勇治の言った事は、正に悪魔の様な契約内容と選択肢だった。



 それを提示された楓の選択はと言うと・・・・・・・・・・・・・・・・


(ああっ、どう足掻いても、この少年には叶わないっ!)


(それに良く見れば、神々しいっ!)


(はっ?このお方こそ、アマテラス神皇国全ての忍び衆部族を束ねられるお方では?)


(それに、仕事と報酬に目を眩んで居たが、武装の類と港の軍艦らしき船を観察すれば、逆らえない程の高い軍事力を持ち合わせてるとも言える。)


(頭さえ討ち取ればと思って居た私は、なんと愚かだったのだ。)


(このお方はこそ、我が主に相応しいお方。)


(彼に比べたら、ゲルニアン帝国のアドルフラー皇帝なんて只のちょび髭オヤジのおっさんだ。)


(はぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁ、はああぁぁんんっ!)


(可愛らしい少年なのに、冷徹な目付き・・・・あははああんっ!我が君っ!ユウジ陛下っ!私はっ!貴方様に全てを捧げますうううぅぅーーーーーーーーーーっ!!)


 楓は勇治を見詰めつつ、次第に魅入られながらその頭の中で、何やらピンク色に頭の中を染めて行くのである。



 そして、彼女の決断は・・・・・・決まったのであった。



「宜しくお願い致しまする。我が主君、桐谷勇治陛下。」



「此処に居ります服部楓は、愚かにも、はした金で、陛下に刃を向けましたが、今日より改心致しまして、陛下に全てをっ!全てをっ!捧げまするっ!」


「敵対する者は、陛下の御意のままに、全て叩き伏せまする。」



 それは、それは見事な土下座である。


 彼女は、月給20万であっさりと敵方へと寝返ったりして居た。


 ゲルニアン帝国が提示した賞金は確かに高給だった。


 更に皇帝のお抱えになると、月給15万で雇われると言われていた


 それよりも勇治の提示した条件が遥かに良かったりするのだった。


 何せ、有給休暇やボーナスに保養施設や健康保険に生命保険。更には公務員年金すら付いて来るのだ。


 この高条件の何所に文句が有るだろうか?



 こうしてアマテラス神皇国から大陸へと渡って来た腕利きくノ一の服部楓は、年下の少年王の魅力にドハマリする形で跪き、高額な給与で寝返りつつ、ピンク色の欲情に染まった変態の心を持って、勇治に絶対の忠誠を誓ったのであった。


 その後、彼女は各地で暗躍していた敵味方の忍び達を強引に屈服させたり、勇治の厚遇ぶりを宣伝したりと、忍者全員を本気で集め始めた。


 今では世界に散らばって居た忍び衆の大半が、勇治の下へと馳せ参じて来ている。


 特に楓は、忍びを始めとしたアサシン職の人間を大量に確保した功績で、キリヤ公国秘密工作諜報情報部局長と言う重要なポストに付いている。



 直属の上司は軍のトップである山本五十鈴であり、尊敬する人柄を慕って、五十鈴の事を姉上と呼んでいた。


 彼女は、何れはキリヤ公国の太い幹の根元として影から支えるべく、自らが勇治の側室に成ろうと企んで居るのだから、とても侮れない変態さんだ。


 権威権力が欲しいのでは無く、本気でキリヤ公王家に忠誠を誓う親族衆の地位を手にして、キリヤ公国連合国と言う国家に骨を埋める積もりなのだ。


 それだけ、天才くの一と言われた彼女は、勇治にコテンパンに打ちのめされたのが相当な精神的なショックだったらしい。


「リィーゼさまに勇治陛下から書状です。お改めを・・・・・・」


「ご苦労です。返事は?」


「いいえ、私めは中身に付いては存じて上げて居ません。」


「そうなの?では少し待って居てくれるかしら?」


「はい・・・・・・」




 リィーゼは楓を待たせて、勇治からの手紙を読んだ。書かれて居たのは、武器や兵器に援軍を送るとの事だ。


 それとキリヤ公国連合国・メイルシュルフラッド公国・ガリアナ王国・オルトランタ商業連合国へと続く南部ユーラシアン大陸横断鉄道建設を勇治自ら行うと伝えてある。


 リィーゼは勇治が摩訶不思議な魔法を扱う事が出きると聞いて居るので、その事に関しては微塵にも疑いの目を持って居ない。


 建設予定地には、人の出入りの立ち入りを禁止にして、何も置かないでくれとも書かれていた。


 5日後には作業が始まり、建設が終わったら大量の荷物や援軍が派遣され、メイルシュルフラッド公国軍の軍事改革として、特別講師のナデシコ軍の将校を教官とした訓練も始めると伝えて来た。


「ふーん・・・ユウジは、本当にゲルニアン帝国との戦争に勝てる積もりなのね。」


「セレジアから聞いては居たけど、奇妙な力に強力な軍勢。」


「本当に不思議な子。何れ会うのが楽しみだわ。」



 リィーゼもそうだが、この世界では元首同士が、直接会う事は殆ど無いと言って良い。



 元首同士の居る国の在る場所が遠距離な事と国同士が繋がって居る道がお世辞にも良いとは言えないのが原因である。


 勇治はゴッドタブレットの力を有事の時と困って居る時だけ使用するとの決まりを決め、無暗な乱用使用を禁止にする事にしていた。


 ヒットラン皇帝が戦争さえしなければ、南部ユーラシアン大陸諸国は、後数年の間は近世時代だった筈だ。


 それが彼の野心を持ったちょび髭オヤジ皇帝の野望のせいで、あっと言う間に近代へと時代の時計の針が進んでしまったのである。


「カエデ、我が国への素敵な贈り物とご支援を有り難うと、未来の婿殿に伝えて置いてね。」


「それから何れ直接、貴方と会えるのを楽しみにして居るともね。」


 リィーゼはキリヤ公国連合国が行ってくれる国土開発と兵器の売却の支払いを戦争が始まった事で、支払いが困難に陥る形と成ってしまうと予測をしていた



 只でさえ山岳小国であるので、南部諸国の裕福層相手の観光業と各種鉱物を掘り出す鉱山業が主な国の税収の柱だったが、戦争によって殆んどのそれらの業界関係の業務が、一斉停止に追い込まれてしまう。


 国を再建するにも、先立つ物が無い。


 それにこの戦いに勝ったとしても、戦後ゲルニアン帝国から色々嫌がらせが有るだろうと予想されていた。


 成らば借金の肩代わりと国土安全保障をキリヤ公国連合国に丸投げする形で、リィーゼが勇治の第二妃と成る事を決意する。


 と言うよりリィーゼ自身が無理やりに、この一件を勇治に対して、押し切った形で決めたからであった。


 これによりメイルシュルフラッド公国は、宗主国をガリアナ王国からキリヤ公国連合国へと切り替え移り、連合国加盟国入りと成る事と成った為、その国名をメイルシュルフラッド独立自治公国と変更する事に成った。


 ジンバル国王は、姪っ子のリィーゼが勇治と結婚と聞いて、既にリィーゼは我が娘も同然として、これで我が国も含めて安泰だと、彼女が勇治と婚約する事を大いに喜んだと言う。


 だが、ゲルニアン帝国は、キリヤ公国連合国の別方面の国境の変更が、更に成された事をまだ知る由も無いのだった。


 何故ならゲルニアン帝国を始めとする国々には、メイルシュルフラッド独立自治公国がキリヤ公国連合国へと加盟した事は伏せてあるからだ。


それに、その方が攻め込まれた時に、敵を油断させ、騙せるからだ。



 何も知らないままに、メイルシュルフラッド公国に攻め入れば、どうなるかを・・・・・・・・・・・・・・・・



「ははっ!!必ずや・・・・・・・・・・」


 リィーゼは一言だけ礼を述べると、カエデはすうっと魔忍術を使って姿を消したのであった。


「うわぁっ!消えた?」


「・・・・・これが噂に聞く忍びの魔忍術ですか、凄いですね。」


「さぁてっ!これからこの世界の時代が動くわよっ!」


「5日後には、鉄の箱を並べた乗り物、鉄道機関車と言う乗り物が、我が国へとやって来るわ。」


「これで我が国は富めるわよーーーーっ!!!」



 彼女は自国を金融と観光に鉱山、そして鉄道輸送のハブ基地として運営して行く計画を考えていた。


 この話は勇治と従姉妹であるセレジアから持ち掛けられていた話で、もしもゲルニアン帝国さえ何しなかった平時で在ったのならば、この計画をゆっくりに進めて行く国政開発改革計画案として居た。


 だがしかし、リィーゼはゲルニアン帝国との戦争で、その計画が一気に早まったのは、嬉しい誤算であると思っていた。



 それから五日後、忽然と現れた四車線の線路は各国の主要な都市や軍事基地に港湾施設同士を結び、ナデシコ人達の鉄道職員によって鉄道の営業が始まったのだった。


 異世界マギアンティアに措ける電気機関車とディーゼル機関車を使った陸上での大量輸送の始まりで、近代化革命の始まりでもあった。


 勇治は事故が起こらない様に、現代式の鉄道管理システムを、タブレッドによって召喚して導入している。


 鉄道管理公社をして居るのは、キリヤ公国連合国である。


 この事に関しては、何所の国も異議を申し立てる事を言う様な国は無かった。


 これは物流の革命であり、他国にそれを握られてい居たとても、それだけの利益が在ると考えたからだ。


 勇治の方も何時までも主導権を握って居る積もり無いと言って居るので、鉄道に関する人材が育って十分な人数が揃い、営業運営が出きる体制が整ったと成れば、随時独立した鉄道会社や公社の立ち上げを許可するとの条約を各国と結んでいた。



 鉄道の運行が始まったキリヤ公国連合国は、大量に生産された輸出品や軍事物資が物凄い勢いでピストン輸送が開始される。


 工業地帯であるヨコスカ自治州区の横須賀市を中心に、鎌倉市・三浦市・七浜市・小田原市の5都市で兵器生産が、昼夜問わずに交代制勤務で生産が進められて行く。


 キリヤ列島の工業都市であるクレ市、コクラ市、サセボ市、タカオ市、オオミナト市では、船舶関係と航空機関係物資の大量生産が始まっていた。


 公国本土南部では、鉄工に鉄道や電子部品の生産も進められ、ナデシコの技師達によって育てられた技術者が、一段階目の講習と実地講習を終え、仕事が出きる人材が一気に増え始めていた。


 着々と進むキリヤ公国連合国の近代化、ゲルニアン帝国と言う脅威が無ければ、軍事力の強化なんて事を勇治は、殆んど考え居なかっただろう。



 マギアンティア世界統一暦・1555年・5月23日・午後19時30分頃・マギアンティア世界・中央世界第一文明圏・ユーラシアン大陸南部地方・キリヤ公国連合国本国・キリヤ地方・キリヤ公国・公王都キリヤ市・キリヤ城・キリヤ公国・公王執務官邸にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




「うーん。どう考えても人手不足は如何ともし難いね。」


「勇くん、そうは言っても、こればかりは如何にも為らないわよ。」



 勇治と五十鈴の二人は、キリヤ城の公王執務官邸内の公王執務室にて、対ゲルニアン帝国との戦争に付いての対策と、それに対する備えに付いて話し合って居た。


「ガリアナ王国とオルトランタ商業連合国の二か国は、大量の38式歩兵銃ニ式や迫撃砲を送り付けて、オマケで89式歩兵戦車を両国合わせて二千台も送ったから、余裕で守り切るだろうしなぁ・・・・・・・・・」


「メイルシュルフラッド公国には、同じく武器や兵器を送って、兵力もある程度送ったし、その他の軍事支援を行うから心配無い。」


「勇くんが、例の力で無理やりに鉄道を通しちゃったから物流網の不安はもう全然無いのよね。」


 この時の五十鈴は、勇治の素性を大体は教えて在った。


 序でに言うとナデシコ地方自治州区の行政府幹部らには、勇治に付いての素性をある程度は開示して居る。


 まぁ、事情を聞いたら驚くと言うよりは呆れて果てて居て、その力たるゴットタブレットは、政治には余り介入するなと苦言を呈して居るが、戦時や緊急時には仕方が無いと諦めていた。



「だけど、南部諸国全体の事を考えると、ナデシコ自治統合軍だけで、全体をカバーするのは、ちょと余裕が無いかな。」


「あと60万人、60万人の兵力が有れば・・・・・・・・」


 勇治も五十鈴も頭を抱えている。



 国内の防備に回す戦力を前線へと回す事への不安が在って、敵国へと攻め入る事を躊躇していた。


 ナデシコ軍の幹部将校の手前、勇治も五十鈴も少々強気に出ては居るが、人手だけは如何にも為らない。


 食料・兵器・武器・各種部品に銃砲弾薬・医療薬品と物だけは、最終的な手段として手立てである勇治のゴッドタブレットの力で簡単に手に入れられるが、人だけは如何にも成らない。


 その事だけが、二人の頭を悩ませていた。


「はあ、やっぱり楓に頼んで、無茶苦茶な事を言うけど、更に開戦時期を延ばしに延ばす裏工作を・・・・・・・・・・・」


「お二人とも、人手不足を解消すれば良いのですか?」


「うわああああぁぁぁぁーーっ!?」


「あら楓?帰って来て居たの?」


「ただいま帰りました勇治陛下、五十鈴姉上。」


 突然に現れたのは、キリヤ公国秘密工作諜報情報部局の局長として、キリヤ公国連合国の影として働く忍者、服部楓である。


「ゲルニアン帝国との国境各地を回り、色々と情報収集や裏工作を施して参った次第です。」


「そう、ご苦労様。」


「所で、先ほどから人手が足りて居ないとお聞きしましたが・・・・・・・・」


「ああ、そうなんだ。どう足掻いても敵軍の兵力に対する兵が不足して居てな。」


「特に歩兵や騎馬を操る人材が圧倒的に足りて居ないんだよ。」


「家のナデシコ自治統合軍は、武器と兵器主体の近代軍、ガチで物量歩兵戦術で迫られて来られるのも限界が有るのよ。」


「それならば、当てが有ります。」


「我が祖国は、戦乱の只中成れども、色々と事情が有って人が溢れて居ります。」


「其処で如何でしょうか?行き場の無い者達や自分の将来に幸先の悪いと不安を感じて居る者達をキリヤ公国に招いて雇ったり、未開拓の土地の開墾に従事させると言うのは如何でしょうか?」


「「そっ、それだっ!!」」


「楓っ!お手柄よっ!」


「はぁ?」


 楓はキョトンとして顔で目の前の二人が、パぁっと明るく成ったのを見て、訳が分からなかった。


 それだけ二人は悩んで居たのであった。


 勇治と五十鈴の二人は、アマテラス神皇国の人々達に対して、キリヤ公国連合国に仕官や移民の公募政策と言う大胆な策に打って出る事を試みる事にしたのだった。


 アマテラス神皇国の人口は凡そ4千万人、その内、様々な事情を抱えて居る人々は、500万人以上と楓から聞いた事が有った。


 その時は簡単な世界事情の話の一つだと聞き流して覚えて居た二人だが、まさかこの様な結果に成るとは思いもしなかったのである。



 キリヤ公国連合国は人手不足解消の為に、ナデシコ自治統合軍の海軍艦隊と陸軍部隊をアマテラス神皇国に送り付ける事と成った。


 これにより、優れた教養と文武に長けた武士や技能に優れた民と労働力が一気に国内の力と成る事だろう。



 ゲルニアン帝国によるユーラシアン大陸南部諸国への宣戦布告の布告まで、今しばらくは時間が残されて居る。


 この騒動でキリヤ公国連合国は、大国の道を歩み始めたのであった。



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