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キリヤ公国英雄戦記物語  作者: 伊達教宗
第7章 少年王と魔王織田・和紗・信長との対峙とアイヌル民族解放血盟団の反乱の終焉編
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第53話 少年王と魔王織田・和紗・信長との対峙とシャッコロ族・トゥクル・コシャンの父への想いっ! 2

マギアンティア世界統一暦・1555年・10月26日・午前9時15分頃・マギアンティア世界・中央世界第一文明圏・ユーラシアン大陸東側・アマテラス列島地方・キリヤ公国連合国加盟国家・奥州独立自治王国・北アマテラス北方三方列島地方内・北海島国州・館箱地方・陸館間トンネル北海島国州方面出入り口付近にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 キリヤ公国連合国加盟国家・奥州独立自治王国の肝いりの公共事業政策の一つである陸館間むつだてかんトンネルが遂に完成した。


 トンネル建設を担当したナデシコ地方自治州区の川浪建設を始めとするナデシコ地方自治州区系の建築会社達は、完成式典を複雑な思いで眺めていた。


 本当なら此処には、建設に関わったキリヤ公国連合国の首脳陣達とこれからの未来を共にする北アマテラス北方三方列島地方の原住民族であるアイヌル民族の部族長と代表民達と共にテープカットをする儀式が予定されて居た。



 だが、そんなささやかな友好を目指した未来への事業をぶっ壊そうとアイヌル民族独立解放急進派組織・アイヌル民族解放血盟団は、民族の誇りと北アマテラス北方三方列島地方の独立を目指した解放戦争を伊達家とキリヤ公国連合国に仕掛けて来ていた。


「それではテープカットが終了しましたので、間も無く第一便列車が通過致します。」とアナンウスが流れる。


 すると白い線のラインと赤い塗装が塗られたディーゼル機関車が、トンネルの中から貨物列車と共に現れた。


 貨物列車の貨車の荷台には、伊達家の家紋である竹に雀の紋章が描かれている。


 その荷台には、奥州独立自治王国軍・第一戦車大隊に所属して居るKRY61式戦車部隊の戦車が、ズラリと並んで居た。


 KRY61式戦車とは?自衛隊が使用して居た61式戦車と同系タイプの戦車で、主兵装は90mm戦車砲と12.7mm重機関銃が装備されて居る。


 後に勇治の故郷の日本国から技術盗作だとクレームが来て居るが、知って居た性能をそのまま開発・製造して居ただけで、まさか使用して居た本家が、自分の居る異世界マギアンティアへと現れるとは予想だにしていないとし居る。


 そんな理由から技術流出には当たらないとして居る。


 序でに言うと、対魔法戦・対ビーム光線戦・対近未来戦を想定した複合型装甲版が取り付けられて居るので、本家の車両性能とは違って、簡単には撃破され無い様に成って居る。


 その使用は、キリヤ公国連合国に所属して居る全ての兵器に採用されて居る。


「済まないな勇治。我が国を含めた途上加盟国の全体の軍装備の更新計画で、逸早く戦車の導入と武装の装備更新をさせてしまって・・・・・・・・・・」


「いいえ、もう本気で、この反乱に片を付けると決めました。」


「一輝さんだけに、悪者を演じさせる訳には行きませんっ!」


「本来なら来年の予定だった車両更新計画が前倒しに・・・・・・・・・・」


「まあ、車両に乗って居るアレは、キリヤ公国連合国・仙台市地下秘密基地に用意して有った試作機ですから、然程の手間は掛かって居ません。」


「今生産して居る分は、キリヤ公国本国のキリヤ公国・国営異世界重工生産株式会社とナデシコ地方自治州区系の重工業会社です。」


「61式戦車と74式戦車が、二次独立自治国家と連合加盟国の地方向けの防衛装備として、フル生産をして居る最中でしたね。」


「その先行生産分をアマテラス地方向けに振り分けただけですから、政実さんは気にしないで下さい。」


 勇治は新転移地域たる新トウキョウ湾岸海洋都市・特別地方自治州区での公務と政務の合間に、陸館間トンネルの開通式に参加して居た。


 これが終わったら、再び新トウキョウ湾岸海洋都市へと戻る為に、館箱市空港から羽田空港へと向かわねば為らない。


 彼は新規加盟した新トウキョウ湾岸海洋都市との連合加盟国首脳会合の合間に、こうして理由を付けてわざわざ政実の顔を見に来ていた。


「それに、これを機会に、会って置きたい人も居るしね。」


「噂に聞く尾張の虚け姫大名王にして、アマテラス戦国覇王・織田・和紗・信長か・・・・・・・・・・・」


 織田家の当主にして。アマテラス神皇国の次世代の統治者に成ろうと天下統一を目指す彼女は、破竹の勢いでアマテラス神皇国内の有力な大名王家を次々と撃破しつつある。


 噂では二ヶ月前くらいには四国を制覇し、武田・北条連合勢力、それに南西諸島地方と九州島地方で着々と勢力圏の拡大を狙う島津を打ち破るのも時間の問題との話である。


 四国の長宗我部家は、織田政権の賛同同盟国者として参画して居る。


 その他の十河家・河野家・三好家等の三家は、既に織田家の臣下と成り、九州では大友・相良・伊東・阿蘇等の地元大名王家達は、中央覇権を握る織田政権に従う意向を示して居る。


 残る北西九州島地方の雄である龍造寺家、その傘下である少弐家・秋月家・菊池家・大村家・有馬家・松浦家等は中立を謳っては居るが、領土を求めて、しつこく攻め掛かって来る島津家を含めた南九州勢と交戦中で、中央政権と連絡を取って居る処では無いらしい。


 さて、その島津家は島津4姉妹を筆頭にアマテラス神皇国・九州地方の南を完全に支配しつつあり、数年前から天城諸島・竜珠諸島りゅうきゅうしょとうを支配して居る。


 同諸島を統治下に置いて居たショウ王家を属国化した形で、莫大な交易で経済・軍事の強化図って居り、並のアマテラス神皇国の大名王家では、手に負えない状態と成って居る。


 島津家は何所まで抗えるのかと、自分達の力を試すかの様にして、アマテラス九州地方の北部へと着々と歩を進めている様にも見えていた。


 噂では竜珠王国の皇太子を人質に取って居るとの話も漏れ聞こえていた。



 そんな状況と成って居るアマテラス神皇国内の内戦終焉に、大手を掛けて居る織田・和紗・信長。



 親しい者達の間で呼ぶ事を許されて居る通称名は、和紗と言う。


 その和紗がキリヤ公国連合国の盟主王である勇治に、アイヌル民族の反乱軍の鎮圧する為の援軍を送る事を契機に、二国間首脳会談を申し入れして来た。


 勇治は公王内閣首脳陣と良く話し合い、和紗と会う事を決断する。



 館箱市内にある北海島国州庁は、旧松前家の居城である館箱城。


 その城内に在る大広間は、かつては大名王家である松前家の当主が、客人と会談する場でも在った。


 今は国州庁の国州知事と官僚幹部との会議に使われて居る。


 勇治と織田・和紗の初の首脳会談は、此処で行われる事に成る。


 和紗は元将軍王・足柄・一輝に対してクーデターを起こして討ち取ったと言う噂の嫌疑をアイヌル民族解放血盟団達が聞き付けた、根も葉もない噂話から妙なゴシップ嫌疑へと昇格しつつある。


 そんな今の状況に関しての噂話は・・・・最早、我慢できない所まで、アマテラス神皇国内に広まりつつある。


 織田家としては、例え嘘だと世間が分かって居ても、偽スキャンダルネタにされるのも、今後天下人としては不味い事に成り兼ねないとの思惑があった。


 そんな理由から、キリヤ公国連合国への援兵を出したいとの打診をしたと言うのが、今回の織田軍派遣の表向きの話である。


 しかし、当の和紗本人は、別の狙いが有るのでは無いのか?と読んでるのが、一輝を筆頭とするアマテラス系のキリヤ公国連合国内閣首脳陣達の経験則からの答えだった。



マギアンティア世界統一暦・1555年・10月26日・午前12時00分頃・マギアンティア世界・中央世界第一文明圏・ユーラシアン大陸東側・アマテラス列島地方・キリヤ公国連合国加盟国家・奥州独立自治王国・北アマテラス北方三方列島地方内・北海島国州・館箱地方・国州都・館箱市・旧松前家居城・館箱城・北海島国州庁・北海島国州庁舎本館・館箱城本丸館の大広間にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




 会談の時間に成り、館箱城内の大広間、上座の障子戸から最初に現れたのは、勇治直属の護衛である上泉・伊澄。


 それに続いて柳生・冬香の二人が入室すると、入った順番に左右に別れて二人は着座する。


 続いて勇治が入ると同時に、控えの間から現れた和紗が、和装系の煌びやかで派手な正装姿で同じく相対して着座した。


 彼女の背後には明智・十華・光秀と言う姫武将が、護衛として控えていた。


 名前だけ聞いて居ると本能寺の変でも起こしそうな気がするし、麒麟でも呼んで来そうだが、この世界での彼女は、軍事・経済・政務と何でも出来る器用貧乏な人だった。


 主君である織田・和紗に良い様に便利に使われる苦労人だったりする。


 黒髪セミロングヘアーの凛々しいクールビューティーで、ボデイスタイルはまぁまぁ感じの身体つき。


 文武両道だが器用貧乏の為に、真面目でめんどくさい人であった。


 明智・十華は、アイヌル民族の反乱軍の鎮圧の為に派遣された前線指揮官の役目と、この会談の席で護衛役を務める為に、この場に同席して居た。



 最初に挨拶の口火を切ったのは和紗だった。


「俺が織田大名王家・当主、織田・和紗・信長である。」


「僕がキリヤ公国・公王。そして、キリヤ公国連合国宗主国王・キリヤ勇治です。」


「キリヤの少年王の小僧、噂通りの対した事の無い、何処にでも居る凡庸な少年だな。」


「其方こそ、噂に違わぬアマテラスの魔王とも覇王とも讃えらし、破天荒なお人柄。相対するだけで僕は貫禄負け確実ですよ。」


「で・・・・・あるか。」


 二人の間に暫し、沈黙が流れた。


(和紗さまは、一体何を考えて彼の少年王とご会談を決意されたのか?)


(織田家中内でも、誰にもその真意をお話には為られない。)


(私は如何して、この席に立ち合わされて居るのだろか?)


 織田家中内では、和紗が突然に決めた勇治との首脳会談で、どんな事を話し、取り決めと成る話をするのか?


 それすら誰にも打ち明けては居ないのである。


 和紗は口々にキリヤ公国連合国と一戦交えるかも知れんと公言して居る事も有り、織田新政権下では、キリヤ公国連合国とは一線を画すと見られ、距離を置くのでは無いかと内外から思われて居た。


 同席して居る十華も、そんな考えを持って居た一人で有り、何故自身が此処に連れて来られたのか、その答えが今明らかにされようとして居た。


「さて、信長さん。今日は・・・・・・」


「俺から話す。」


「はい?」


「小僧、俺の・・・子の種馬に成れえええぇぇぃっ!!」


「へっ?!」


 和紗が開口一番に口にしたのは、行き成りの勇治の子種雄親に成れとの求めた事だった。


「今なんて・・・・・・」


「聞こえぬのか小僧っ!!俺の子の種馬親に成れと言って居るっ!!」


「ええっと、行き成り過ぎて、何が何だか話が見えないんですが・・・・・」


(ええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!)と十華は心の内で、主君の素っ頓狂な言葉に卒倒しそうになる位に叫んで居た。



「俺はお前には頭を下げる気なんぞ更々無いっ!!」


「アマテラスの他の大名王家共は、それぞれ好き勝手に貴様に宗主国王だと、崇めて臣下の礼を取った。」


「だが、この俺、織田・和紗は違うぞっ!!」


「だからどう言う・・・・・・」と益々訳が分からないと勇治は混乱してしまう。


「ふっ、だがなこの俺も無能ではない。後二、三年でアマテラスを統一して見せるが、その際にハッキリ言って貴様が邪魔だっ!!」


「折角自力でアマテラスを統一し、国を強く広くしようと思って居たのに、貴様のせいで台無しだっ!!」


「だがな、この俺はお前に抗えるほどの力は無いとも悟って居るし、新しい転移地たる新トウキョウとか言う地区がキリヤ公国連合国に編入されたせいで、我が織田家は大陸との独立貿易が不可能と成ってしまった。」


「だから言う、貴様に頭は下げぬから、形ただけで良いから夫に成れ、そして、貴様は跡継ぎを、この俺に寄こせっ!!」


(ああ、そう言う事ね。要するに、この魔王さんは、このままだと織田家が四方がキリヤ公国連合国に囲まれて色々とやり難いから婚姻関係で、キリヤ公国連合国との国交関係を対等と言う形で、手打ちにしろと言いたいのかこの人は・・・・・・・・・)


「しかし、行き成りそんな事を言われても・・・・・・」


「お前がどうこうは関係無い。俺は貴様の国の正妃の座が欲しいのでは無いっ!!」


「欲しいのは、我が織田家とその国土。貴様のキリヤ公国王家とキリヤ公国連合国の国土同士の共同統治者と成る事だっ!」


「そして、この俺の地位をキリヤ公国連合国・一正妻多側室他愛妾多伽係制度法制で側姫妃か側室妃の座を確約しろっ!!」


「その座なら俺は戦仕事や内務仕事での報酬に応じて、貴様の命令を聞いてやるっ!!」


「それならば俺も含めて、小僧自身には、損が無い筈だっ!!」


「断れば?」と冷静に聞き返す勇治。


「この俺を簡単に屈服が出来ると思うか?」


 それはこの場での話が決裂すれば、即戦だと言って居る様な物だ。


 織田・和紗は此処でこの話を断れば、織田家とキリヤ公国連合国との総力戦をすると勇治に脅しを仕掛けて来て居るのだ。


 だが、それを承諾する事は、織田・和紗と織田家と言うアマテラス神皇国内で最大勢力に、キリヤ公国連合国と言う勢力内で勇治と同等に近い、高い地位と権力を確約してしまう事に成る。


 織田・和紗は、自身の身体・自勢力への命令権と織田家を差し出す代わりに、勇治と言う盟主王との直接的な関係とキリヤ公国連合国の力を差し出せと、悪魔との・・・・・いや、魔王との契約をしろと言って来て居るのだ。


 これは一歩間違えば、トンでも無い事に成るが、反対に考えれば安い買い物とも捉える事も出来た。


「高いか、安いかか・・・・・」


「くっくっくっ、この俺様は安く無いぞ小僧。」と不敵に睨み付けて来る和紗。


 値踏みして居るのは、実は彼女の方であると言って居る様な感じでも在った。


(これを跳ね付ければ、色々と高く付く。だが僕も簡単には自分の手札に安値を付けられない。こりゃあ困ったな。)


「・・・・・・・・・」


「どうした小僧。俺の身体と織田家、欲しくは無いのか?」と魔王の如く威圧感を出しつつも、織田・和紗自身もご自慢のバインバインの豊満なバストを持ち上げて見せ付けた。


 それも熟し切って居る20代半ばを過ぎた大人の色香と肉付きの在るボディスタイルをだ。


(もしかして、僕はこの人に試されて居る?)


 勇治は和紗の意図が色々と読めて来たらしい。


 彼女は勇治と言う公王として、一人の男としての人柄とキリヤ公国連合国と言う国を見極め様として居る。


(この人は確かに勝つために、生き残る為だけに、安易に身体と家や家臣を売り付けて来る様な人じゃない。)


(だけど、反対に僕が彼女の差し出した餌に簡単に靡くようなら、アイヌル民族の反乱軍の鎮圧する援軍の話を最後に敵対し、この地での事が終ったら本気で戦を仕掛けて来る。)


(その時は自決(自害)する覚悟で戦う気だ。)


(試されて居る。これは確かだし、此処で決断を見誤れば、この人を殺す事にも成り兼ねない。)


(文字通りに、この人は自分の命を始めとする掛け金を掛けて、博打染みた試験を僕に仕掛けて居るんだ。)


(どうする。死ぬ気で試さて居る魔王と言う名の最も手強い試験官に・・・・・・)


 悩む勇治、その思案して居る数分の時間は、数時間にも感じ取れる程の緊迫した感覚に感じ取れていた。


「決めました。」


「ほう・・・・で、返答は如何に?」


「申し訳ございませんが、縁組みの話も絡んで居るので、セレジアにお伺いを立ててからと言うのでは・・・・ダメでしょうか?」


「はぁ?何だ何だ、小僧。俺一人の様な女を娶るのに奥室が、第一正妃が怖いか?」


「はい・・・・・・」


「ぷっ、ハハハハハっ!!で、あるか。であるか。そうか、そうか、奥方が怖いか?プハハハハハハハっ!!こりゃ傑作だっ!!」


「そうか、まぁ良いだろう。貴様は合格だ。」


「えっ?!」


「因みに不正解を言ってやろうか?」


「はい。」


「俺に直ぐに食い付く様なら貴様を殺しに掛かる所だった。」


「えっ?!」


「ふっ、その様な輩の子種も旦那も要らんっ!!直ぐにでも根切りにしてやるわっ!!」


「食い付くって言うと?」


「そりゃ決まって居ろうが、この身体と織田家にだ。」


「貴様は選ぶ決断する基準を決める最初に、己の奥方と自国の民、それも織田とキリヤ公国連合国の両国の民草の事を想って悩み抜いた。」


「その挙句に、婚約をする為の断りを入れる為に、セレジア王女の顔を立て居る事にした。」


「及第点だぞ小僧。王たる者、何よりも民と家の風紀を乱さず。それと酒と女と金と権力に負けない心根と気概だ。」


「俺はその内のどれかに、負けたり溺れる奴は大嫌いだっ!!」


「そんな事を言って居たら、お嫁の貰い手も行き先も無く成るんじゃ・・・・・・・」


「だったら俺はそれまでの価値しか、無い女だったと言う事だ。」


「だから言っただろう。俺は値段の安い女では無いとな。」


「アハハ・・・・呆れますね。」


「で、買うんだな俺を?」


「ええ、買いますよ。それも高値でね。」


「良い返事だ小僧。いや、夫殿。」


「ですが、キッチリと残りのアマテラス神皇国内の未統一地域をしっかりと統一してからですね。その話は・・・・・」


「ほう、条件を・・・値段を釣り上げる気なのか?」


「当然でしょう。今のままでは我が国と僕が織田家に肩入れし過ぎて居ると世間から言われてしまいます。」


「それに試験に合格したんです。そろそろ訳を聞かせてくれませんか?」


「てっきり僕とキリヤ公国中央政府の見解では、織田家は独立独歩を歩んで、家とは距離を置いた外交関係に落ち着くと見て居たんですがね。」


「如何して、今なんですか?」


「貴様ならもう知って居るとは思うが、アイヌル民族の反乱を裏で糸を引いて居るのは、ゲルニアン帝国の皇帝ヒットランのチョビ髭オヤジの野郎だ。」


「それは知ってます。家の忍び衆は優秀ですからね。」


「それに付いては、俺は如何でも良かったんだが、あのチョビ髭オヤジは、貿易を通じて、島津にも肩入れして居るって話だ。」


「ええっ!?何でまた?」


「そりゃな、例の新しい転移騒ぎで、密貿易路が塞がれちまったからだろうな。」


「それにゲルニアン帝国とユーラシアン大陸圏内で、昔から使われて居た大華天帝国・クーロンとの交易路である竜珠王国。」


「彼の国の在る南西諸島を通じての二大航路の内、ゲルニアン帝国側のアマテラス神皇国地方まで伸びている北方航路が塞がれて使えなく成って居る。」


「それとは別の航路として、キリヤ公国連合国と我が織田家の在るアマテラス神皇国地方まで伸びている南方航路が唯一航路に成りつつあるからだ。」


「ああ、そう言う事ですか。」



 

 大華天帝国・クーロンからユーラシアン大陸への貿易路として、アマテラス神皇国地方が南北の中間点と成って居る。


 その周辺海域をキリヤ公国連合国が領海としてしまって、ゲルニアン帝国はクーロンとの東側貿易航路の全てを失ってしまう。


 因みに西側航路も存在するが、東側航路の方が輸送費が安価で仕入価格が安く済むと言う利点が在った。


 その為にゲルニアン帝国のヒットラン皇帝は、勇治とキリヤ公国連合国の邪魔をして来る理由なのである。


「新トウキョウ湾岸海洋都市・特別地方自治州区が転移して来たせいでな、ゲルニアン帝国も。そして、我が織田家も北回りの貿易路が完全に塞がれてな。」


「その結果、正面から互いの利益が衝突したって訳だよ。」


 織田家がと言うより織田・和紗・信長が、キリヤ公国連合国と連合し、勇治と婚約したいと政略結婚を求めたのは、新トウキョウ湾岸海洋都市・特別地方自治州区が、この世界へと転移して来たせいでもあったらしい。


 アマテラス神皇国の北部に転移して来たのは、新トウキョウ湾岸海洋都市・特別地方自治州区の在る海域周辺である。


 此処は昔から大型帆船を使ったアマテラス神皇国と北部の大陸列強国やそれ以外の諸外国との重要な交易路で、織田家は若狭国の敦賀港や摂津国の堺港を通じて貿易をしていた。


 しかし、キリヤ公国連合国へと伊達・上杉・毛利の三家が相次いで臣従してしまった為に、独立に必要な貿易路に蓋をされてしまった様な形と成ってしまった。


 幾らキリヤ公国連合国側が、織田家の邪魔はしないと公言しても、貿易の販路は商人たちの気まぐれと、さじ加減で忽然と金周りの流れが変わってしまう。


 今は良くても何れは悪くなると見るべきだろう。


 そんな動きの最たるものとして、ゲルニアン帝国は散々煽って居たアイヌル民族独立解放急進派組織・アイヌル民族解放血盟団を見捨てて、今度は九州地方で暴れ回る島津家に目を付けたらしい。


 此方はキリヤ公国連合国とアマテラス神皇国の大名王家の監視の目が甘いので、キリヤ公国連合国と織田家の動きを封じるつもりなのだろう。


 ゲルニアン帝国としては、少し前から投資を始めて居た島津家によってアマテラス神皇国の戦国時代が、有る程度長く続いてくれた方が都合が良い。


 キリヤ公国連合国と織田家の動きが封じられるし、アマテラス神皇国に中央政権が誕生しなくて済む上に、密貿易を通じて商人達が大儲けして収めた税金の差額で、大儲けが出きるからだ。


 そうした事情から、和紗は勇治と手を組みたいとの考えに至ったと言う訳だったのだ。


 だが、アマテラス神皇国の戦国魔王である織田・和紗・信長と言う大名女王は、どんな相手で在ろうとも、頼み事や配下付く為に、頭を下げる事はしたくないへそ曲がりの大虚け。


 それに愚か者が大嫌いな性格である。



 そんな彼女がキリヤ公国連合国の国力や悪魔の様な国軍の力強さを知って居るが、勇治の人となりは噂に聞く程度で、本物をまだ良く知らなかった。


 其処で和紗は、一芝居を打って勇治を試す様な真似をしたと言う訳である。



「ゲルニアン帝国と皇帝ヒットランのチョビ髭オヤジも、アマテラス神皇国が荒れててくれた方が、何かと安心が出来るんだよ。」


「それで、今になって突然にアイヌル民族の反乱軍の鎮圧するのに手を貸すと言い出したんですね。」


「それに俺が一輝を殺したなんて風聞をばら撒かれただけならまだしも、そのばら撒いた奴らが、ゲルニアン帝国って言うじゃねえかっ!!」


「挙句に、この俺様にけんか売ろうってんだ。だったら俺自ら買ってやろうってな。」


「成るほど、それでどうせ同じ道を行くなら、一緒に歩くメリットが在るって訳ですね。」


「それにな・・・・・」と和紗は不意に立ち上がると勇治の近くまで近寄った。


 すると勇治直属の護衛である上泉・伊澄と柳生・冬香の二人が、腰の刀に手を掛けだが、直ぐに剣士としての鋭い洞察眼が敵対的では無いと悟った。


 十華も上泉・伊澄と柳生・冬香の二人の動きに合わせて斬り掛かろとするが、何も無かったので動きを止めた。


「俺はお前の様な奴が側に居ると落ち着く。」


「人畜無害な気優しい性格の男が、俺が一番に夫として欲して居たが、家中や親族の連中どもが薦めて来る見合い相手は、どれも勇ましいか、俺の女としての身体とオマケに付いて来る織田家の家にしか興味の無い者ばかり。」


「どいつもこいつも虫唾が走りやがるしっ!本当に反吐が出るっ!!」


「その点、お前は良い。」


「金も権力も家柄も女にも、手に入ると分かっても見向きもしない。」


「だから落ち着いて側に居られるんだよ。」


「それにお前は俺と違った意味で、己が心に猛獣を飼い鳴らして居るだろう。」


「自覚も無しに優しい心を持ちながらな。」


「???そんな事は無いと思うけど・・・・・」


「分かるぞっ!!俺にはな。それに貴様にはそれだけでは無い。異能の力すら備わっている。」


「俺はな、そんな雄であるお前と子作りがしたいと俺の中の雌としての本能が言って居る。」


「えーっと・・・・・・」


「お前に逆らいたいでも、逆らうな側に居ろともな。」


「それって和紗さんの性癖ですよね?」


「まぁな。性って奴だよ。他と違うって才が色々と備わって居るせいか、俺は赤ん坊の時から、オヤジや母上達の手に余る程に気性が激しくてな。」


「そんな俺の事を家族も家臣達も、全く理解して貰えなかった。」


「その点、今日会って一目見た時に確信したぜ。」


「お前は俺を乗りこなせる。理解し合える伴侶に成れる雄だってな。」


「だから求婚もしたって言うの?」


「ああ、お前との会談では試験染みた試しと共に、普通に縁組みの申し込みを言う積りで居たが、本気で噛み殺す積りで愛を語らったんだが、ダメだったら其処までの縁だと思ったよ。」


「異世界人のお前なら理解し合えるし、墓場まで一緒に居たいってな。」


「今日、初めて、一目会った瞬間に思えたんだ。」


 多分、それって勇治に掛けられて居る神の加護たるチャーム能力のせいだと思うが、和紗の暴れ回る激しい気性は、チャームの影響で遂に静まる場所を決めた様である。


 何とも物騒なやり方では有るが、失恋したら腹いせに殺しに行くとか、何ともめんどくさい性格だ。


 それに勇治の故郷の信長さんも、その気性の激しさから落ち着いた儚げな気優しい女性を多く侍らして居たとか、濃姫さんなんか良いのは、変わり種的な性格が良かった事も有ると言える。


 織田・和紗も実在の信長公と似た様な感じで、勇治の様な落ち着きのある気優しい男が恋愛感情のストライクゾーンであったらしく、身を任せられる相手を長い間、求めて居たのかも知れない。


「はぁ~・・・まぁ、兎に角今はゲルニアン帝国を相手取るに当たって、手を組む。」


「そして、僕の様な男性が好みで・・・・・政略結婚だけの積りで居たけど・・・舞い上がって勢いで求婚ですか・・・・難儀な人ですね。」


「嫌か?」と恥じらいを見せる和紗、全てをぶちまけた彼女の態度は、今度は嫌われたくないと言う素直なしおらしく、意地らしい態度見せていた。


「まぁ、本心が見られて可愛らしいですよ。でも丸で猛獣ですね。」


「猛獣だが本音で、ぶつかり合える真の家族成り得る男なら、私は本気で命懸けに成れるからな。」


「分かりました。多分ですが、セレジアも良いと言うでしょう。この話は取り敢えずは了承します。」


「そうか・・・・・」


「でも、ダメだったら、如何する気だったんですか?」


「その時は本気で貴様を奪いに来るさ、殺す気でな。」



「おおっ、怖っ!」と言いつつ心の中では、女の愛は重いと思った勇治。


「そ・れ・と、さん付けは止めろっ!俺の名の呼び方は真名での呼び捨て構わんっ!!」


「では和紗姉ぇで良いですか?一回り年上なんで。」


「まぁ、良いだろう。俺も既に呼び捨てにして呼んで居るが、序だ、お前が俺の事を義姉の様な奥室に扱いで接すらなら、俺も義弟扱いの夫殿にしてやるっ!!」


「あ、それは既にその扱いはされて居るので、全然気にならないから、好きにして良いよ。」


「成らば貴様の加盟国の幹部内で一番の姉は誰だ?」


「五十鈴姉ぇだけど。」


「キリヤ公国連合国軍の総司令官の女か?成らば後で挨拶に行ってやる。その時は俺が一番上の長女だからなっ!それとな・・・・・・」


 和紗は顔を更に近づけて勇治の真正面から迫った。


「チュッ、んんっ・・・・・これは前払いだ。」と彼の唇にキスをした。


 これは勇治に取って、セレジアに続いて二人目の女性からのキスだった。


「えっ!?」


「後でキッチリと残り分を・・・俺の身体で払うからな。お前も自分の分の支払いを用意して待って居ろよっ!!」


 肉食獣系の乙女たる和紗は、この会談を契機に急速にキリヤ公国連合国に近付き、最後はキリヤ公国連合国の連合加盟国と成る。


 後にアマテラス神皇国を纏める立場と成る5代目の将軍王朝、織田安土幕府政権を確立した征夷大将軍王として君臨する。


 アマテラス織田自治神皇国は、この直ぐ後に諸事情在って、予定を繰り上げて、キリヤ公国連合国に加盟する事に成る。


 後年、勇治と和紗との間に出来た最初子供は三つ子で、男の子が二人に女子が一人。次に男の子と女の子の双子が生まれる事に成る。


 和紗の本能的な獣染みた野生の感は、見事に未来を言い当てたと言えたのだった。


 その子供達は、キリヤ公国本国の跡継ぎには絶対にしないと公言し、何れの子もしっかりと育てられ、キリヤ公国連合国とアマテラス織田自治神皇国の礎を築いた人物と成ったと言う。


(全く和紗さまには驚かせてばかりだ。)


(米実殿もこの事は予測して居ない筈だ。これは織田軍本陣に戻ったら、大いに荒れる事だが、悪くない話として受け居られる事に成るだろう。)


(と言うか、あのお方を嫁取り出来る殿方は、はっきり言って普通では居ないですしね。)


(その相手がまさか、この少年王とは・・・・・・・・・・・・・・・・・)


 十華は、この勇治との会談後に祝辞を主に述べたが、ポカポカと殴られた。


 どうやら勢いで初めて愛を告白したヤンデレさんは、とっても恥ずかしかったらしい。


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