エピソードブラス・アマテラス神皇国・戦国無双・萌将伝 尾張の大虚けと岡ヶ狭間の戦いっ!!4
更に織田の軍勢は富田宿内の中央通りを進み行く。
「陽菜っ!!頃代っ!!恐らくアレが信長様の旗本本隊だろう。」
「何所っ!何所っ!何所って・・・・ああっ!?あの真ん中に居るのが、織田・和紗・信長様なの?」
「どれどれ?私も見たいっ!見たいって・・・・んんっ!?な、なんと・・・・・・・・・・!」と頃代は、和紗をもっと近付いて良く見ようとするべく、半ば強引に前例へと出た。
「あーあー、やっぱり噂に違わぬ虚けぶりだね。」と頃代は、和紗の事を酷評する。
和紗は古惚けた薄着の着物を右側に袖を通し、反対側の袖には腕を通さず、叩けさせた状態で服を着ていた。
そのせいで当時Dカップだったオッパイが、半分だけ食み出て居る。
しかも晒を巻いた状態を晒し、瓢箪から水を仰ぎ呑み、懐からはおやつとして持って来た梨を頬張り、食べ辛い部位を地面に吐き捨てて居た。
何所の誰が見ても行儀が悪いと、呆れたり、怒り出すに違いないと言える姿を世間の皆様に晒して居た。
「・・・・・・・・・・」と和紗本人の事を初めて見つつ、勇ましい織田軍の行列と和紗本人の見姿とのギャップから、如何いう事なのかと思案に耽るべく、少しの間だけ押し黙ってしまう陽菜は、違う見方をし始めて居た。
「・・・・・・・・違うよ、二人共。アレは馬鹿でも阿呆のする所業じゃない。」
「みんな、あの人の策に嵌まって騙されて居るんだっ!」
「陽菜ちゃん、それって如何言う事なの?」と頃代は聞く。
「あの人は、尾張国に金は集まっても、国力と兵力がそれほどの物では無い事を理解して居るんだっ!」
「だから、それを逆手に取って、攻め込んでやって来た大物の敵を討ち取って、その居城を攻め取り、その国土すら我が物にしようと目論んで居るんだよ。」
「まっ、まっ、まさか・・・・・・・・・」と恵那も陽菜が言い当て居る事を少しだけ考えると、的を射て居ると思えて来た。
「あの人は怖い人だ。並大抵の人物じゃない。」
「恐らくは道三様は、あの人とは・・・・何らかの形で協力する様に成る筈だよ。」
「おいおい、冗談だろう?陽菜っ!あの虚け姫様が道三様よりも格上だって言うのか?」
「そうだよっ!・・・・・・農民出身のこの私でも分かるよ。あの人の敵に回ったら生きては居られない。絶対にっ!敵にして逆らっちゃイケない相手だっ!」と和紗の正体を知り、本当の姿を感じた為か、陽菜は和紗から発せられた覇気に当てられたのか、ガタガタと震え出して居た。
やがて織田軍の行列は、静かに富田宿を通り過ぎて行く。
陽菜達は、その後を追うようにして、和紗と道三達の会見場所である聖徳寺へと向かう。
当初の予定通り、仕官として自分達を売り込む事や警備の仕事に有り付けるかも知れないからであった。
だが、陽菜は富田宿で見た和紗の事が忘れられなかった。
その不思議な魅力に憑り付かれ始めて居たからであった。
後に歴史にアマテラス列島地方・アマテラス神皇国・戦国時代に措いて、その名も名高い名場面とされて居る。
和紗と道三との聖徳寺の会見が始まろうとして居た。
マギアンティア世界・中央世界第一文明圏・ユーラシアン大陸東側・アマテラス列島地方・アマテラス神皇国・尾張国・美濃国境周辺地域・聖徳寺にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
小奇麗にした普段から使って居る簡素な和服姿の道三と完全に着飾った姫武士用で、上位階級の家柄の娘が着る最高級の織物で作られた紅葉色の晴着姿を披露する和紗。
相対した戦国の傑物たる二人は、相向いに成りながら対面の席に着座した。
織田家側は近衛旗本隊として組織した赤母衣衆筆頭隊長たる、前田・利美こと犬千代が、只一人を護衛として連れて来るのみであった。
残りの護衛家臣団らは、聖徳寺周辺を取り囲む様に巧みに配置し、斎藤軍1500名もの軍勢を牽制する態勢を取って居る。
然しもの斎藤軍も、弱小兵揃いの織田軍が相手だったとしても、数倍する人数を相手に戦いを挑む様な選択を選ぶ事は出来なく、これを見越した和紗も、相手を圧倒する事が出来る子飼い中心の精鋭軍から成る手勢を引き連れて来て居た。
木下・陽菜を頭とする一団も、織田軍に遅れる事30分、斎藤軍に売り込みをする。
売り込んだ先が美濃三人衆の一人、安藤守就であった。
美濃三人衆は安藤守就・氏家ト全・稲葉一徹の3名の事を指して居る。
その内の安藤守就は、温厚な人物として知られ、織田軍が4000人だと知ると、彼は兵力差を補おうと、出来るだけ似たような数に近づけ様と傭兵を雇う事にした。
木下・陽菜を頭とする一団は、聖徳寺の裏手配置され、和紗と道三らの会談を上手いこと覗く見る定位置に付けて居た。
会談の席に着いた二人は、少しの間を置くと堀田道空が、自らが使えて居る主の紹介を始めた。
「織田・和紗・信長さま。此方にお居すお方こそ、斉藤・入道・道三公に御座いまするぞっ!!」
「で・・・・あるか。」と言うと黙り込む和紗。
更に少し間を置いた二人。
この場は、年長者である道三から名乗りを上げると言う慣習が在るので、道三が先に名乗りを上げた。
「斉藤・入道・道三である。織田信秀殿がご息女、織田・和紗・信長殿と会談の儀。」
「実に楽しみにして居り申したぞ。姫殿。」
道三が社交辞令を交えながら名乗りを上げ、それから更に間を置いてから 和紗も自己紹介を交えた挨拶を始めた。
「・・・・・・この俺が織田・和紗・信長である。」
「この俺も、彼の美濃国りマムシの道三と恐れられし御仁のご尊顔を拝せる事を楽しみにして居たが・・・・・先刻、道三殿とそっくりな御仁を富田宿内に在る一軒の古惚けた居酒屋の二階席から、この俺を高みの見物をして人物と良く似て居るので、驚き居ます。」
「くくくくくっ!!ぐははははははっ!!ワシもその昔を辿れば、信長殿と似たような年頃だった頃は、商人をして居った。」
「それ故に、居酒屋で飲んだくれて居る人物に間違われれる事も在るやもも知れんのう。」
「その様な奇縁な出来事が在りますかな?」とワザとらしく聞き返す和紗。
「本当ようのう。」と、道三も悪乗りをして白々しく、白を切り通して居た。
「所で御父上、織田信秀殿のお加減は如何であろう?」
「大事ないと申し上げたい所だが、此処は正直に言って、先が無いと申し上げ他にない。」と和紗は言う。
本当ならば、少しくらい嘘を言うのが、外交上の駆け引きなのだが、和紗は敢えて道三には噓を言う積りは無かった。
その方が後々お互いに良い関係を結ぶ上で、絶対に大事な条件と思ったからである。
「そうか・・・・」と道三は、信秀の近況を聞いて、何だか少しだけ寂しそうに言う。
自分よりもやや若いライバルが先に逝くのは、喧嘩友達を失う様な事に近かった様である。
「其処で道三殿には、大垣地方の領地をご返還し、この俺の後見人と成って欲しいとの事だ。」
「委細承知して居る。此方も交換条件である。我が娘、帰蝶姫を信秀殿のご養女として差し出し、以後は織田家の親戚として、そして信長殿の後見人たる義父として盛り立てて行く所存じゃが。」
「其処でどうじゃ、このワシと手を組んで天下に覇業を唱えてはみんかのう?」
「貴殿と対峙した、先の揖斐川での戦い振り、誠に持って才在る者と見て居る。」
「このワシとお主が組めば、出来ん事はあるまい?のう・・・・」
道三は天下統一を共同でしないかと誘う。
これは冗談と本気が交じり合う提案であった。
斉藤家の家臣達も、会談の席での戯れ言と思って、真に受ける様な反応は一人も居なかった。
だが・・・・・・・・・・提案をされた和紗はと言うと・・・・・・・・・・・・・・・・
「断るっ!!天下統一は、この俺一人の力で十分に成し遂げて見せるっ!!」
「それに天下人の椅子はただ一つっ!!このアマテラス神皇国と言う国家の主はただ一人のみ。」
「それを義父殿の力を借りて成し遂げたち成れば、この俺は天下の笑い者だっ!!」と言い切った和紗。
斎藤家の家臣達は、ポカンとした顔付で呆然として居た。
尾張国の虚け姫が、天下統一をして見せると、公式の場で宣言したのである。
啞然としてしまうのは無理も無い事だった。
だがしかし、道三の反応は違って居た。
「ぐははははははっ!!うはははははははははっ!!」
「そうかっ!!そうかっ!!そうかっ!!うむ。その通りようのう。」
「誠に大層な大ぼらを吹くものよ。」
「面白き虚け姫殿じゃ、何か在れば、このワシに遠慮なく申すが良い。」と和紗の大風呂敷を広げる言葉を気に入った事で、機嫌よく支援の確約を決めた道三であった。
マギアンティア世界・中央世界第一文明圏・ユーラシアン大陸東側・アマテラス列島地方・アマテラス神皇国・尾張国・美濃国境周辺地域・聖徳寺にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
その日の夜のことである。
道三は直臣たる堀田道空と共に酒を飲んで、今日有った出来事を振り返って居た。
「何と言う断端不敵な奴じゃっ!!家来一人を付き従えるだけで、堂々とワシらの目の前に現れ居ったっ!!」
「誠にその通り御座いまするな。」
「それに道三様。織田軍は、あの虚け姫殿の手配りの指揮下で、この聖徳寺と我が斎藤軍を取り囲む様にして、巧みに部隊を配置して居りまする。」
「うむ。油断の為らない奴じゃ!!」
「そのせいか、会談の席では、終始っあの虚け姫めに主導権を取られそうになるばかりで、何だか此方の方が小童扱いされて様で、何んとも言えぬ気分よのう。」
「道三様。あの虚け姫殿は、並大抵の武家のご息女では在りませぬぞっ!!」
「ふむ。」
「・・・・・・・アレは獰猛な猛虎の目つきをした獣じゃ、その覇気はこの国の全てを飲み込む事に成るじゃろう。」
「じゃが、躾けの仕方しだいじゃが、本当に天下を取れるやも知れん。」と道三が呟いた時である。
「父上っ!!」
斉藤道三の嫡男で、ちょっと大柄な体形を持った人物で、とても厳つい風貌の顔付きをして居る斉藤義竜が現れた。
「おおっ!!義竜か?如何いたした?」
「今夜の内に信長めを討ち果たします。父上は稲葉山城へと御帰り下さい。」
「成らぬっ!!」と道三は息子を睨み付ける様にして言う。
「でっ!!ですがっ!!父上っ!!」と義竜が反論をしようとするが・・・・・・・
「和紗姫殿は、このワシの大事な客人にして、我が義娘じゃっ!!」
「手出しをすれば、実の息子と言えども容赦はせんぞっ!!」と述べると、義竜は供回りの手勢と共に稲葉山城へと引き払って行くのであった。
それを見送った道三は・・・・・・・・・・・・・
「何と言う器の違いなのじゃ。」
「アレでは先行きに不安を感じられるには居れまい。」
「我が愚息があの様な体たらくを晒し続ける様では、我が斉藤家と美濃国の地侍どもは、皆全て彼の虚け姫の門前に轡を並べる事に成るじゃろう・・・・・・・・」
「それ程までにっ!!あの虚け姫殿の事を高く買って居られるのですか?」
「くくくくくっ!!先行きが楽しみじゃが、ワシがあの姫が天下を治める姿を見られるのかは、分からぬ。」
「それは・・・・・・・・」と言いかけ道空は、その言葉を飲み込む。
それは道三が、何らかの理由で近い将来、死んで居るかも知れないと言えるからであった。
その様な未来が考えられると悟ってしまった道三は、黙り込みながら考える。
「・・・・・・・・・」
「道空よ。美濃と斉藤家に不測の事態を考え、万が一の事を書き記した遺言書を平庵京・妙覚寺の沢庵和尚に手紙を添えて書いて置く。それを密かに届てはくれぬか?」
「はっ!!畏まりました。」
「良いか、これから書く、遺言書と沢庵和尚への書状の中身は、沢庵和尚以外の人物に決して誰にも渡しても漏らしても為らぬぞっ!!」と言いつつ、手紙を書き始める道三であった。
これが後の世に言う、道三が義娘たる和紗に送った遺言状たる美濃国譲り状であった。
これが和紗の手元に届く時、道三はこの世には居なかった。
そして、遺言状たる美濃国譲り状を盾に、和紗は美濃攻めを始めたのは、岡ヶ狭間の戦いで今川義本を討ち取ってから後の事である。