第29話 少年王とビクトリナ共和国の独立を巡る世界の策謀 1
マギアンティア世界統一暦・1555年・8月16日・午前12時15分頃・マギアンティア世界・中央世界第一文明圏・マーリーナ海洋海洋地域・旧ビクトリナ王国・フォーチュン諸島・フォーチュン諸島領・ニュジェンーランド本島・トリントンシティにて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ナデシコ自治統合海軍所属・第五戦隊が同地に来訪し、両者の政府機関による第一回目の会合が始まろうとしていた。
キリヤ公国連合国本土であるキリヤ公国本土から遠い地域であり、この案件は本来ならば、外務省の担当であるが、キリヤ公国連合国の転移物対処法の法律では、調査対象地域が遠方である場合。
本土本省の外交官の早急な派遣が困難または、危険性が高いと判断した場合は、その近くにキリヤ公国連合国の地方管区・駐在の外交官と共に軍幹部と一個師団または一個艦隊を護衛として派遣する。
又は軍幹部高官が本国の委任状を以てして、外交官高官の代理をするとして居る。
今回の場合は、ナデシコ第三地方地域・アセアニア地方・アセアニア地方自治州区の近くにビクトリナ王国・フォーチュン諸島領が転移して来た為に、同地の防衛を任されて居るナデシコ自治統合海軍・第五戦隊の渡辺祥子大佐と近藤信代大佐のコンビが派遣される。
それとアセアニア地方自治州区・キリヤ公国連合国外務省出張所に常駐して居る外交官が外交文書の書記官として同行する事に成って居る。
因みにアセアニア地方自治州区・キリヤ公国連合国外務省出張所の外交官達は、その殆んどが、撫子人5割と現地人4割、キリヤ公国本国に帰化したガリアナ王国人官僚で構成されて居る。
今回の一件に同行する事に成ったのは、撫子人外交官であった。
「クローディア司令官、キリヤ公国連合国のナデシコ自治統合海軍の方々をお連れしました。」
副司令官のネイレス・ガーネット中佐がドアを開けて中とヘ入り、敬礼をする。
「ご苦労、入って貰ってくれ。」
「はっ!」
「さぁどうぞ、中へとお入り下さい。」
ネイの後に続いて通される祥子と信代。
二人が着て居たナデシコ自治統合海軍が指定して居る白い軍服が一際目立っていた。
ビクトリナ王国軍の軍服は、青色をして居るので、その差異がハッキリとして居り、ビクトリナ王国軍の二人からすれば、物珍しさからその純白の軍服姿に目を奪われてしまう。
「ようこそビクトリナ王国・フォーチュン諸島領・トリントンシティへ、お二人とキリヤ公国連合国・ナデシコ自治統合海軍所属・第五戦隊の皆々様の事を心より歓迎するわ。」
「私が当基地と当地方の防衛責任者であり、今回の天災問題への対処に当たるべく、フォーチュン諸島領地方政府と市民から臨時地方総督と請け負う事に成ったジェシカ・クローディア大佐だ。」
「キリヤ公国連合軍・第一連合自治方面軍・ナデシコ自治統合海軍・第五戦隊司令官の渡辺祥子大佐だ。」
「同じく、副司令官の近藤信代大佐です。」
3人はそれぞそれ握手を交わし、祥子と信代の二人は、近くに有る応接間へと通された。
デーブルを挟んだ席に互いが着くと、早速、彼女達はお互いに議題と成って居る件に付いて話し合いが始まって行く。
「早速だが、クローディア。」
「あんた達の状況を説明するとだな。この俺らが居る異世界に、あんた達の地方領ごと転移しちまって居るんだ。」
「そのようね。貴女達の接触してから、私達成りに色々と、この辺り一帯の周辺の偵察・警戒・調査をして居るわ。」
「その結果と接触時の不可解なやり取りの言葉から察するに、この世界が異世界だと言う結論に達したわ。」
「先に誤解の無いように言うけど、貴女達の事を疑った訳でないの。」
「この地を預かる軍の責任者として、周辺海域を偵察・警戒・調査をするのは当然だったからよ。」
ジェシカは転移して来た後、転移災害時に起きていた嵐が止んだ後に、周辺海域の偵察・警戒・調査を行って居た。
その結果は驚くべき事で、全ての方向にフライヤーパック装備をさせたモビル・アイゼンが飛行して2時間先の所に在る筈の他国やその地方地域が存在して居ない事が発覚する。
その状況が判明すると、ビクトリナ王国・フォーチュン諸島領司令部内では、異世界に転移して来てしまったと言う事実である事を幹部らを含め、フォーチュン諸島に在留する全ての軍人と民間人は、同地の地方政府によって公表され、認識共有をしていた。
混乱を避ける目的で異世界転移の事実を公表したのだが、領内では目立った混乱無く、普通の日常の時が流れていた。
元々地方領の土地の人々は自立心が高いので、今回の天災に関しても、今さら慌てても仕方が無いと考えて居たからだった。
「それに本国との連絡が突然に不通と成ってしまうし、それ以外の国や地方との連絡途絶や衛星端末の使用不能。」
「それら全てが、貴女達の言を真実だと物語って居るからなのよ。」
「それは理解が早くて助かります。」
「それで、クローディア大佐は、これからの事をどうするお積りですか?」
信代は話がし易くて、理解に飛んで居るジェシカ達の応対と対応に安堵するが、これからの希望や行動に付いての質問をする。
「行き成り直球ね。まぁ、それもそうか。」
祥子達の直球の質問に戸惑うジェシカだったが、予想されて居て、そして当たり前の質問だったので、特に驚きもして居なかった。
「悪りぃな。俺達もあんたを急かす様で心苦しいが、早めに立場をハッキリとさせて置いた方が、後々の為には無難だと助言して置く。」
「どうしてと言いたいけど、私も軍人の端くれよ、大体の事は想像が付くわね。」
「ホンと理解と話が分かる相手で助かるぜっ!だけどよ、こりゃマジな話だ、真剣に聞いてくれ。」
「此処から1千5百キロ先にドラリュウス帝国って言う竜人族が治めている覇権列強国で軍国主義大国が在りやがるんだ。」
「しかも、はた迷惑な事にだ、そいつ等は周辺国に向けて度々領内へと攻め入り、ドンドン領土や従属国を増やしてやがるんだっ!」
「その先の話の展開は読めたわ。」
「詰まり、私達のこのフォーチュン諸島領は、今や本土政府とは切り離され、無政府状態に陥っている。」
「そんな状態で、この世界の国々から何らかの接触をして来て、何かを交渉したり、要求を突き付けられたら、私達は単なる地方政府ですのでと言うんじゃ、この世界の国々は見下して来るって言うのね。」
「厄介な事に、そうなんですよ。」
「だから早く去就を明らかにして、早急に対策を講じないと、この地は何処かの国の物ですと勝手に宣言して、貴女方は反乱軍または蛮族として討伐軍を差し向けられる事に成ります。」
「ふっ、それで私達が負ける風に見える。」
「見えねぇな。」
「確かにね。ですが、クローディア大佐。長い目線で見た場合は、如何でしょうか?」
「問題は其処なのよね。」
「此処で私達が、この世界で安易に強がって、強がって、独立を維持を宣言をしたとしても、何れは限界が来るわ。」
「強力な武装で、数十年は安全でしょうね。でもその先となると・・・・」
そう、ジェシカ達がどんなに強力で近未来的な兵器や装備を持って居ても、領土外から数や特異な力で年数を掛けて軍事侵攻を繰り返されると成るとだ。
幾ら彼らがロボット兵器と戦艦艦隊が強力とは言え、何れは力尽きる可能性が高い。
いや、最後には敗れる事が考えられると言えた。
特に食料や日用品に軍事物資の元となる素材やその材料鉱物類が圧倒的に不足し始めるだろう。
そう言った理由が有るので、今のジェシカ達の頭を悩ませてしまう政治的な頭痛の種だったのである。
「だろうな。」
「だから如何するのかと俺達は聞きたい。せめてあんた達の立場を独立国か保護領のどちらかを選んで欲しいんだ。」
「貴女達の国が、その後ろ盾に成ってくれるって言うの?」
「ええ、そうです。」
「でも決めるのは貴女方です。」
「それと、これを・・・・・・・」
信代はジェシカに勇治が電文を送って、祥子達に託した親書を基にして書かれた親書の書状を手渡した。
「この親書は・・・・・貴女達の王様からね。」
察しの良いジェシカは送り主が誰なのか分かっていた。
事前に言われて居た事だが、差し出された物がキリヤ公国連合国の中央政府や他の連合加盟国の元首か政府関係者からの手紙かも知れなかったこの状況で、一発で誰かを言い当てた眼力と先見性の高さに感心した祥子達。
此処に居るジェシカは、とても優れていた人物の様である。
その内容は、ジェシカとフォーチュン諸島領民達への気遣いに溢れ、必要が有れば無償の支援も惜しみないと書かれていた。
更に転移に付いても書かれ、これからもそう言った天災は続くし、それに便乗して戦争すら起きる可能性も示唆する警告も書かれていた。
そして、自分の身の上に付いての事と祥子達の身の上に付いても書かれており、遠慮無く相談してから決断しても構わないと言って居たのだった。
「・・・・・・・私達の力が欲しいとは言わないし、書かないのね。貴女達の王様は・・・・」
「でも、普通は欲しがる筈よ。」
「なのに一言も書かれては居ないし、触れても居ない。」
「ねぇ、どんな奴なのよ。勇治って言う少年の王様は?」
ジェシカは書かれて居た内容に対して、不思議そうに読みつつも、ある事だけ書いて居ない事を不思議に思ったのであった。
それはジェシカ達の力が欲しいと一言も言って居ない事だ。
「まっ、そう言う奴だよアイツはな。」
「人並みの欲は有っても、野心見たいな欲は持って居ない気優しい性格で、俺たちに取っちゃ、弟ような奴さ。」
「とても大人しいし、他人や近しい人達を大事にしてくれて、彼と近しい関係を築き上げつつあるキリヤ公国連合国の政府幹部である私達全員に取っては、ホンと弟みたいな存在よね。」
二人は勇治に付いての印象や感想を簡単に答えて述べる。
「まぁ、良いわ。直に会って確かめれば、私達の行く末を決断する良い判断材料には成るでしょうね。」
「それに早く如何するかを決めないと成らないから、地方領内政府の総会議は、船の中で領内の首脳部を同行させて決めるわ。」
「随分と強引な事をするな。」
「他国の介入を防ぐには、今はそれしか無い物ね。」と信代は渋い顔をしながら言う。
「最終判断はキリヤ公国の王様を見て、どう付き合うかを持ってして、最終判断とするわ。」
「これは司令官でもあり、臨時地方総督でも在る私の権限で決める事だから、安心して信頼して欲しいわ。」
ジェシカは臨時地方総督の権限を使って、強引に事を決する決断を下した。
事態はビクトリナ側に取っても、予断を許されず、尚且つ切迫して居ると見られていた。
「じゃ、決まったな。」
「会わせてくれるのよね。勇治公王に・・・・・・・・・・」
「早速、本国に連絡を入れるわね。」
こうして話は纏まり、ジェシカは自領と己の運命を決断するべく、勇治との面会を決めた。
ビクトリナ王国・環太平洋方面軍は、一個艦隊を編制して公王都キリヤ市へと向うのであった。
マギアンティア世界統一暦・1555年・8月26日・午前10時05分頃・マギアンティア世界・中央世界第一文明圏・ユーラシアン大陸・ユーラシアン大陸南部地方・キリヤ公国連合国・三浦川地方・準独立国特別指定権限保有地方自治州区・キリヤ公国連合国・特別独立地方自治州行政区・ナデシコ地方自治州区・ナデシコ地方自治州区本土・ナデシコ地方自治州区・主都及び州都兼務都市・横須賀市・横須賀港にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ジェシカは、祥子達の案内でキリヤ公国連合国の構成地方自治州区にして、巨大な軍港であるナデシコ地方自治州区・州都・横須賀市・横須賀港へとやって来たのだった。
ビクトリナ王国・環太平洋方面軍と環太平洋方面海軍艦隊・第七艦隊の表敬訪問は、キリヤ公国連合国軍・第一連合自治方面軍・ナデシコ自治統合海軍所属・第一戦隊に熱烈な歓迎を受けていた。
横須賀港内では、歓迎の礼砲が100発以上も撃ち放たれ、返礼の礼砲も同じ数が打ち返されて居た。
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ジェシカは、港に降ろされたタラップの階段を降り立つと、其処には白い軍服を着たスラリと背丈の有る撫子美人と呼ぶべき女性軍人が出迎えてくれて居た。
「貴女が山本五十鈴総司令か?」
「ええ、そうよ。ジェシカ・クローディア大佐。」
握手を交し合う二人。
これが後に無二の親友と成る二人の出会いであった。
「ジェシカで良い。同じ歳だと聞いて居る。」
「では私も、五十鈴で良いわ。よこうそ、キリヤ公国連合国・ナデシコ地方自治州区・横須賀港へ。」
「此方も盛大な歓迎を感謝する。交渉中の間、暫く世話に成る。」
盛大な歓迎を受けたビクトリナ王国・太平洋方面軍と太平洋艦隊・第七艦隊の者達は、一休憩を挟んだ後に、電車でキリヤ公国本国の首都、公王都・キリヤ市へと向って行くのであった。