迷子
泣き声は市場の側にある噴水広場から聞こえてきていた。
6歳くらいだろうか?
男の子が大泣きをしている。
男の子は緑色を纏っていて、可愛らしい顔をしていた。
「どうしたの?」
「パパとママがいないの」
迷子か……。
周りを見る。この子を探している両親らしき人はいない。
こういう時、どうしたらいいのだろうか?
日本では交番に届けるけど……。
カラ国のルールが分からない。
遠巻きにこちらを見ている大人達は、『心配だね~』『大丈夫かしら』などと言うばかりで協力してくれない。
私は『交番』と書かれた看板を探しつつ、男の子をなだめていた。
しばらくして、男の子のお父さんだと思われる人が近づいてきた。
男の子を見つけるまでなに食わぬ様子で歩いていたから気がつかなった。
だから、男の子の顔を見た瞬間、急に表情が変わって、ずっと心配していたかのような雰囲気になったのには驚いた。
表情が顔に出づらい人なのかな?
いや、そうならば、男の子を見つけた時にあそこまでの反応は出来ないはずだ。
この男の人だけじゃない。
カラ国にいる人は何かおかしい。
なんだろう?この違和感は……。
「茜ー! 茜ー!」
誰かに呼ばれている。
これはトトの声だ。
私はトトを見つけると大きく手をふった。
トトは私を見ると急いで駆け寄った。
「帰りが遅いから心配したよ。
もしかして迷っちゃってるんじゃないかと思って探しにきたの。
早く帰ろう?皆待ってる」
私はトトに謝った後、町を後にした。
先ほど感じた違和感は、もうほとんど消えていた。