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自殺した少女は異世界に迷いこんだ  作者: yurihana
謎多き国
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生活

1ヶ月経つと、大分この国のことが分かってきた。


カラ国についてのある程度の知識を身につけた私は、既に1人でも行動出来るようになっていた。


そこでトトの家の手伝いを本格的にすることにした。


この1ヶ月、状況を確認することに精一杯で、面倒を見てもらっていたというのに、全然役に立つことが出来ていない。


少しは何かの役に立ちたい。


「メメさん、何か手伝えないかな?」


私はトトのお母さんに声をかけた。


トトのお母さんは最初、少し悩んだ後、特にないと私に言った。だが、私の熱意を感じとったのか、考え方を変えたみたいで、じゃあ色々手伝って貰っちゃおうかな♪と言って、メモを私に渡した。



まずは水汲みだった。


トトの家の近くにある湖は飲めず、カラ国には浄水技術がないらしい。


だから地下から水を汲む。トトの家の井戸はポンプ式だった。


疲れたが、日本でもやったことがあったから苦戦はしなかった。



次は森と湖の掃除。基本はゴミ拾いだ。


トトの家は正面に湖、後ろに森が生い茂っている。


この広さを掃除するとは…


日々のトトのお母さんの苦労が目に浮かぶ。


ゴミはあまり落ちていない。


おそらく、この辺りには元々人があまり来ないのだろう。


私は落ち葉を集めて捨てた。


ゴミは少ないが、落ち葉は多い。


仕事が終わることには、私は汗をかいていた。



最後は買い物。買うものは、人参、豚肉、鶏肉、カリフラワー、イクラ、玉ねぎ。


今日の夕飯だと言われたが、いったい何を作る気なんだろう?



森を抜けて、市場に来た。


人参は『野菜』とかかれた看板のお店に売っているはずだ。


カラ国は肉だったら『肉』、魚だったら、『魚』、果物だったら『果物』というように、売っているものがそのまま店の名前になっている。そのためお店の数は少ない。店舗数が少ないのに、市場がこんなに賑わっているのは、それぞれの店が出張販売として道の所々で呼び込みをしているからだ。



『野菜』の看板を探して、店の中に入る。


店内はとても広い。


鮮度を保つためか、たくさんの野菜がガラスのケースの中に入れられている。


ケースの端からは冷気が漏れだしていた。


私は店員に声をかけた。


「すみません、人参とカリフラワー、玉ねぎが欲しいのですが、何処にありますか?」


「人参、カリフラワー、玉ねぎ、ね。


それじゃ、ケースから出してくるから、少し待ってて。


と、その前に」


店員はそこで一回言葉を切った。


「敬語は禁止だよ」


そう言うと、店員はニカッと笑った。


大事なことのようで、随分ともったいをつけてから言った。


「買い物は初めてかな?


君のお父さんとお母さんもそうだと思うんだけど、敬語はね、基本使わないんだよ。


王様以外にはね。


だから、敬語を話されるのは慣れてないんだ。むず痒くって仕方ない」


そう言うと店員は恥ずかしそうに笑った。



その後の買い物でも、敬語を使うと決まって同じようなことを言われた。


そういえば、トトのお父さんとお母さんにも同じことを最初に言われたな……。










これで良し、っと。


イクラにチェックをつける。


これで全ての店をまわり終わった。



さあ、これで帰るぞ、という時にどこからか泣き声が聞こえてきた。








放って帰ることもできるけど……。


いや、助け合いは大事だよね。


脳裏には、溺れかけていた私を助けてくれたトトが浮かんでいた。



私は声がする方へ踵を返した。



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