表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自殺した少女は異世界に迷いこんだ  作者: yurihana
謎多き国
7/87

病気

町から帰る途中で、うめき声を出している人に出会った。


体は痩せ細り、目の焦点はあってない。


声はかすれていて、髪はボサボサだ。


明らかに、正気ではない。



「見ちゃダメ。早く帰ろう」


トトは手短にそう言うと、私をせかした後に、急いでその場から離れようとした。



私達が離れきる前に、その人の様子が変わった。


急にうめき声を止めたのだ。


そして、泣き出した。泣き声は出さずに。


自分の意思とは関係なく、勝手に涙が出てきてしまうらしかった。


その人の口が微かに動いた。


『ごめんなさい』と呟いたようにみえた。


次の瞬間、その人は笑いだした。


何かを嘲け笑っているように感じた。


笑い声はだんだんと大きくなる。


壊れたような笑い方だ。



私達は足を早めた。随分と遠くに来ていた。


その人の姿はもう見えない。



笑い声だけが、私の耳に届いていた。


それは悲しい響きを保っていた。





家に着くと、トトはさっき見た人は病気なのだと言った。


「あれに具体的な病名はないの。名付けようがなくて。


原因は分からないけど、急に発病するの。


病気になったら、もう終わり。


死ぬまで苦しみ続ける不治の病。


さっきの人は約10年間苦しみ続けているの」


トトは悲しそうに目を伏せる。


あの病気は私がいた世界にはないものだ。


あの人の苦しんでいる顔が頭から離れない。


しばらくは夢に出てきそうだ。





私達は今日の町の様子について話した。


会話はとても楽しかったけれど、時折あの人の顔がちらついて、


私達はいつもよりも早く寝ることにした。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ