異なる世界
「……ーし。……だいじょ……ですか?」
何だろう、声が聞こえる。
「……しもーし。大丈夫ですか?」
はっとして目を開けるとだれかと目があった。
驚いて起き上がる。
私を覗き込んでいたのは、白い服を着た少女だった。
年は同じくらいだろうか。
とても綺麗な顔をしている。
大人っぽい印象だが、子供のようなあどけなさも持っているように感じられた。
そして白い服、白い髪、白い肌。
髪は白髪のように変化したのではなく、元から白いように見えた。
肌は透き通るようだった。
服はワンピースのような形をしている。
声はとても綺麗だ。
純白。清廉。
そんな言葉がよく似合った。
「溺れてたよ。大丈夫?」
少女は首を少し傾けた。
「うん、大丈夫。助けてくれてありがとう」
私がそう言うと、良かったぁ、と少女は胸をなでおろした。
少女の名前はトトだといった。
変わった名前だと言うと、ここに住んでいる人たちは二文字続きの名前の人が多いと教えてくれた。
「ここはカラ国。一人の王様が治めて下さってるの。皆とてもいい人達よ。
…あっ!そういえばあなたの名前を聞いていない。あなたは誰?どこから来たの?」
少女の声はどこかふわふわしていて、優しい響きを持っていた。
「私は茜っていいます。日本から来ました。ここはどこの大陸にある国ですか?私、流されて来たんですよね?」
少女はキョトンとしていた。
3秒くらい考え込んだ後、きっと記憶がまだ安定していないのね、と独り言を言った。
「えっと、まずあなたの言うタイリクというものがなんなのか分からないわ。
少なくとも、この国はタイリクには属してない。
聞いたことないから。
あと、あなたは流されて来たのではなくて落ちて来たのよ」
大陸を知らない?そもそも私はカラ国という国を聞いたことがない。
ここは本当にどこなんだろう。
考えているうちに、ふと思い出すことがあった。
「私、意識を失う直前に蛇のようなものを見たんです。気のせいかも知れないけど。
あれは何だったんだろう」
「それ、私だよ」
「!?」
「そこまで驚くなんて、あなた、本当に違う場所から来たのね。記憶が混濁しているのかと思ったけど、ハズレだったみたい。
……。そんな目しなくて大丈夫だよ。ふざけてる訳じゃないから」
次の瞬間、少女の体は少しずつ歪んできた。
だんだんと変形している…?
私は自分の目を疑った。
私の動揺を置いて、トトの体は大きく、細長くなっていった。
気がつくと、一匹の白い大蛇が目の前にいた。
「怖がらなくていいんだよ。
この国に住んでいる人たちはね、どんな形にもなれるんだよ。
そして、コミュニケーションもとれる。
だから、ヒトじゃない姿の人達が話してることは当たり前だし、ヒトの姿をしている人が一人もいない日なんてのも、たまにある。
さっきは水のなかで、蛇の形は動きやすいからこの姿になっていたんだ」
トトはにっこり笑った。
私は今の状況を上手く把握することが出来なかった。
でも一つ分かったことがある。
私は、自分の世界とは異なる世界に来てしまったようだ。