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落ちた先
深く、深く、落ちてゆく。
もう、上下の感覚がない。
私はこの状況に身を委ねた。
一面の黒。
複雑なものが混じりあわないその景色は、不思議と心地よく思えた。
私は再び目を閉じた。
ドポン!
急に感覚が変わったから驚いた。
私は今どこに落ちた?
水?
水のなかに落ちたの?
状況が上手く把握できない。
どうすればいい?
肺から空気が漏れでる。
水が入ってくる。
意識が……遠のいていく……。
視界が……。
体から力が抜ける。
一切の抵抗をせずに、緩やかに落ちてゆく。
浮かんでいく細かな泡が、やけに綺麗だった。
ここで終わりかあ。私の人生。
水死は苦しいから嫌だったんだけどな……。
でも悪くないな。こんな死に方も。
?
何だろう?
白いものが見える。
蛇?
はは、ついに幻が見えるようになったか。
そこで私の意識は
ぷつりと切れた。