11話
シャドウの全身から、魔剣が生えてくる。
『漆黒の勇者』という十本の魔剣を操るスキルと、『剣と鞘』という体内や触れた地点から剣を生み出すスキルの複合。
シャドウは生まれ変わったことで強くなっていた。
ゼストが魔剣の合間を縫って銃撃を加えようとする。しかし、シャドウは全身を埋め尽くすように細い針のような剣を発現させることで銃弾を逸らす。
「ばぁっっっ!」
全身を剣に包まれ、針鼠のようになったシャドウが銃撃を恐れることなくゼストへ突進する。
「はは、まるで化け物だ」
シャドウの魔剣の一つが高温の炎を噴出しながらゼストに突き刺さる瞬間、ゼストがその場から消滅した。
シャドウが剣の山の中で目を見開く。
「なにっ」
シャドウの研ぎ澄まされた感覚が、講堂の壇上の音を捉えた。足をその方向へ向け、再度突進しようとした瞬間、シャドウの背後でゼストが話しかけた。
「勝てないと思うよ。僕のスキルは『神隠し』というんだ。何者も僕の行動を知覚できない。戦闘においてこれは決定的なアドバンテージだ」
「ふんっ!」
シャドウが振り返りざまに剣を叩きつける。しかし、いつの間にか少し横に移動していたゼストは難なくかわす。
「……どうやら言ってることは本当らしい」
「信じてなかった?」
軽薄な笑みを絶やさず、ゼストは挑発し続ける。
「俺のスタミナ切れでも狙ってるのか?」
「どうだろうね」
シャドウは少し考え込んでから、スキルを解除した。
元の人の姿に戻る。
「解除してもいいの?」
「何の問題も無い」
銃弾がシャドウに迫る。
ゼストの発砲を知覚できなかった結果、放たれた銃弾を見てからの遅い初動になる。しかし、シャドウは余裕の表情で立っていた。
キン、と金属同士がぶつかる音。何かが銃弾を弾いた音。
「へぇー、第二形態ってわけかい」
講堂の中心で風切り音が響いている。
あまりの速度に、動いている物体を見ることが出来ない。
「早すぎても見れないだろ? お前のスキルは再現出来る」
「ははは、言うねー」
ゼストの目前に剣先が突きつけられる。その剣は、十つの魔剣が連なってできており、その根元はシャドウの腰の後ろあたりにつながっている。
まるでしっぽのような剣の集まりに、ゼストは近づいていることすら気づかなかった。冷や汗をかく。
「冗談じゃないぜ? こっからは互角だ」
ゼストの姿が消える。シャドウに焦りはない。
ゼストのスキル『神隠し』の弱点は、攻撃の瞬間にその攻撃によって生まれた風圧や銃弾などの物体によって位置を特定されることだった。
シャドウが五感を研ぎ澄ませる。
二人ともが同時に理解した。勝負は一瞬、次の攻撃の時どちらかが死ぬと。
「来いっっ!」
ゼストがシャドウの額に銃を突きつける。シャドウは目の前に敵が立っているにも関わらず気づいた様子がない。
ゼストが勝利を確信して引き金を引く。
銃弾が発射される。銃口と額の間はほぼゼロ距離。回避されることなど有り得なかった。
ましてや反撃など。
勝利を確信していたのはシャドウも同じだった。
「ーーッ!」
額に届く直前、シャドウは全力で体を逸らすと同時に、超加速させた連なる魔剣でゼストの胸を貫いた。
「あ、有り得ないーー」
ゼストの心臓が切り裂かれ破裂した。即死だった。
「危なかった……」
シャドウも無傷では無かった。左耳の辺りが弾け、出血は既に致死量を超えていた。
何とか剣を生やして止血するも、意識を保つことは出来なかった。
ーーー
ゼストが死んだことで、学校を囲んでいた結界が解ける。
学校に平和が訪れた。
ー完ー




