6話
《警察学校8F階段》
階段を勢いよく飛び降りて、踊り場に着地すると7階からうさぎが飛び跳ねながら登ってきていた。
絶対爆弾にされた動物だ……
うさぎがひとっ飛びに俺の眼前に迫る。
俺は咄嗟に壁に触れてうさぎと顔面の間に大剣を生やした。
壁から不自然に生えた剣にぶつかったうさぎは、そのまま爆発した。
直撃は免れたが、衝撃で後ろによろける。
これは……想像以上に凶悪な能力だな。
「ふぅ」
うさぎ爆弾を何とか躱し、7階に降りる。
不思議なのは、動物の数だな。
今まで見た動物爆弾の中で、1番数が多かったのはアリ。その次に小鳥、そしてうさぎは1匹だけ。
動物を爆弾に変えて操る能力にも制限があるらしい。
とりあえず、生物室へ急ごう。
その後も何匹かのうさぎを撃退しながら、俺は何とか5階に着くことが出来た。
「5階に着いたら、右!」
曲がり角を抜けて最初に見た光景は、シャドウの記憶も含めて人生最悪のものだったかもしれない。
廊下の床、壁、天井をあらゆる多足類の動物たちが覆っていて、足場はどこにも見当たらない。
おそらく1番奥の真っ黒に覆われた扉の先に生物室があるんだろう。
「気持ち悪っっ」
外の窓から突入するかと考えたが、ここは5階でそんなことは不可能だ。
この廊下を抜けないと中のやつは倒せない。
どうする……?
俺が虫たちの前で立ちすくんでいると、ペンダントが眩い光を放った。
ギュイーン!
俺の胸から赤い光線が放たれる。
「え……?」
廊下を満たすほどの光線が、細く収束していく。
光線は扉だけでなく生物室の壁さえ消し飛ばし、反対側の空が目に映った。
残ったのは硝煙を出す焼け焦げた廊下だけだった。
さっきまでいた無数の虫たちはどこにも見つからない。
「つよ……」
ペンダントの宝石は赤い輝きを失い、ただの透明な石になってしまった。
しかし、助かった。これで生物室に入れる。
ひょっとすれば、今の光線で能力者諸共消し飛ばしていた可能性すらあったが、焼けた廊下を抜けて生物室に入るとそんな希望はすぐに消えた。
「お前か? 俺たちを攻撃していたのは」
そこに居たのは黒ローブをだらしなく着たスキンヘッドの男だった。頭には蛇の刺青がある。
「まさか、あの廊下を突破されるとは思わなかった」
「お前を一秒でも早く殺す!」
「その前に1つ。さっきの赤い光線は焦った。直撃したら死んでいただろう」
男は蛇に触れながら話した。
……?この生物室、なにかおかしい?
まあ、そんなことはいい。さっさと殺す!
「どうせ今から死ぬんだから気にするな!」
「……さっきのが最後のチャンスだったってことさ」
俺は違和感を感じながら生物室を駆けた。
しかし、男まで残り半分ぐらいの距離で、嫌な予感がして飛び退く。
俺が後ろに避けたのと同時に、横から俺がいた場所に狼が飛びかかっていた。
「は、狼? この学校狼なんか飼ってたのか!?」
「ふふっ、俺のペットさ。学校が狼なんて飼ってるわけないだろう」
男は随分余裕を見せていた。
未だ蛇をぺたぺたと触っている。生きているよな?あの蛇。
「ちっ、狼爆弾ってわけか……」
今までで1番大きかったうさぎ爆弾でさえ、鉄製の剣で受けきることは出来なかった。
狼の体はさっきのうさぎの10倍近くあるか?
当たったら間違いなく死ぬ。
くそっ。俺の能力的に剣で戦えないのは痛すぎる。どうにかして奴本体に攻撃して殺さないと……
「おい、狼だけじゃないぞ?」
男は半笑いで俺に語り掛ける。
俺はばっと後ろを振り向いた。足元に大量のアリ!
「くっ!」
俺は即座に足元に触れて剣を生やし、それに乗って天井の照明まで飛びぶら下がる。
これでアリは大丈夫だが……
「なぜ俺がわざわざ他の動物がいることを教えたと思う?」
ふふっ、と男は笑いを堪えながら続けた。
「この部屋に入った時点で、あの女と同じくお前の死が確定したからだよ!!」
「あの女……リーザ先輩のーー」
俺が照明にぶら下がりながら男に問おうとした瞬間、後ろから羽ばたく音。
振り返ると、そこには1匹の小鳥が超速でこちらに向かってくるのが見えた。
死を直感し、全身の肌が粟立つ。
「終わりだぁーー!」
俺は男のさけび声を聞きながら、とても冷静な気持ちでこの状況の打開策をさぐっていた。
小鳥が俺に衝突するまで残り2秒ーー
床には大量のアリと狼ーー
そして教室の端っこに佇む爆弾男ーー
いけるか……?いや、やるしかない!
俺は天井に手のひらを触れさせ男の方へ斜め向きに細長い剣を何本も生やし、照明の装飾の隙間へ通した。
それと同時に、照明と天井の留め具を断ち切る。
小鳥との衝突まで1秒ーー!
天井との繋がりが無くなり、自由になった照明は俺が生やした何本もの細剣をレールとして、男の方へ滑り出す。
照明がガシャガシャと音を立てながら男に迫ると同時に、俺の真上を小鳥が通り過ぎた。
避けた……!
小鳥は何とか軌道修正して俺に向かおうとするが、さっきまでのスピードを消しきれず、下の狼とぶつかって大爆発を起こす。
爆発で起きた砂煙を勢いよく抜け、手のひらに生やした剣を男に突き出す。
男のさっきまでの笑顔は既に恐怖に染まっていた。
多分入って30秒ぐらいでこの状況。




