最終話「その想いは届いたようで。」
「ねぇ。きー君。もし病気が治ったら
結婚してくれてた?」
俺は言葉が出ない。
その質問に答えるのはあまりにも
「無責任」だと思ったからだ。
「ねぇ。何とか言ってよ。
私、死んじゃうんだよ?」
死。
分かっている。
俺はたった今、その事実を突き付けられたのだ。
分かっている。
俺には何もできることはない。
でも、だからこそ。
こう言うべきだと思った。
「ずっと一緒にいよう」
菜月は笑って言った。
「無理だよ・・・」
多分、菜月は不安定になっているんだ。
それを隠すために笑っている。
「最後までそばにいるよ」
「どうしてそんなに優しいことを言うの?」
「俺は君が好きだから。
もっと一緒にいたいから」
きっと俺はもう
君の事しか考えられないだろう。
「あれ?どうして涙が出るんだろ・・・
大丈夫なのに・・・どうして・・・」
「頑張らなくていいんだよ」
俺は「無責任」な言葉を言った。
でも、俺にはこれくらいのことしかできない。
「ねぇ・・・そばにいてくれる?」
そんなの答えは決まってる。
「結婚しよう。菜月。
これからいっぱい想い出を作ろうな」
「おきてください。夏輝先輩。
もうすぐはじまりますよ」
もうそんな時間か。
というか、わざわざ起こしに来てくれるなんて。
いい後輩を持ったな。
そんなことを考えながら、扉の前に立つ。
扉の向こうから声が聞こえる。
「それでは入場です。拍手でお迎えください」
扉が開く。
今日俺は結婚す・・・
ドタッ!!
背中に衝撃が走る。
「夢・・・か・・・」
「どんな夢みてたの?」
彼女は昨日とは別人のように元気だ。
その彼女の為に
僕の新しい一日が始まる。




