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その月はとても綺麗で。  作者: 空野 刹那
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第四話「その事実は切ないようで。」

「なーちゃん・・・なのか・・・?」

「うん。ただいま。きー君。三年ぶりだねっ!」

自然と目から涙が落ちる。

手が震えだす。

鼓動が速くなる。

色々な想いがいっぺんにこみ上げる。

どうして今、会いに来たのか

どうしてあの時、何も言ってくれなかったのか。

どうして最初に会った時に言ってくれなかったのか。

どうして、どうして、どうして、どうして。

そんな言葉よりもまず言わなきゃいけない事がある。

いままでの想い。全部、ぶつけるんだ。

「おかえり。なーちゃん」

「うん。ただいま」

「ずっと僕の片隅には君がいた。ずっと君の為に強くなろうとした」

理性を抑える。

「言いたい事がいっぱいあるけど、今はこれだけ伝えたい」



「ずっと好きだった。だからこれからずっと一緒にいよ?」



「ごめんなさい」



あまりの衝撃さに俺は何も言えなかった。

「私はきー君と結婚できません」

じゃあなんで・・・

そんな想いは一言でかき消された。



「私は、来年の三月。この世からいなくなります」


煩悩が全て消し飛ぶくらいの衝撃だった。

「どうして・・・?」

「昔から重い病気だったの。何も言わずにきー君の前から

いなくなったのは、急に病気が悪化して都会の病院に運ばれたから」

そんなことを聞いてるんじゃない。

なんで早く言ってくれなかったのか。

それが聞きたかった。

でも俺は口を開けなかった。

「余命が宣告されて、それで、どうしても

きー君に会いたくなって、それで婚約したいって

きー君のご両親に言ったの。全部話した」

どれだけ自分が無力なのか。

どれだけ自分が醜いのか。

どれだけ自分が憎いのか。

俺はその時、初めて思い知った。

妄想みたいな現実と

夢みたいな理想の狭間で。

きっと彼女は苦しんでいたのだろう。

あぁ情けない。

何もできない自分が。

何も成せないこの手が。

情けない。

俺は地面に両膝を着き、両手で心臓を抑える。

耐えれない。

この言葉を彼女がどれだけ勇気を出して言ったのか。

それは俺にはわからない。

でも。

きっと彼女は自分の想いを押し殺している。

きっと彼女は思っているはずだ。

「死にたくない」と。

「約束は・・・」

涙が止まらない。

「約束したじゃないか」

圧迫感が止まらない

「どうして」

鼓動が抑えられない。

気持ちが爆発する。

「どうしてもなにも、私は死ぬんだよ」

理性が吹っ飛ぶ。

「死ぬなんて二度と言うな!君は僕の全てなんだ!」

「私の全ても君だった」

「これから楽しい事、いっぱいしようよ!」

「悲しい事もいっぱいある」

「いっぱいいっぱい想い出を作ろうよ!」

「作ったら死にたくなくなっちゃうよ」

「まだ時間があるんだろ?」

「もう一年しかないんだよ」

「俺は君の為に生きているんだ!君の為なら何だってする!」

「私は君に何もしてあげれない」

「ずっとそばにいてくれるだけでいい!」

「ずっとは無理かな」

「最後まで一緒にいさせて!」

「きー君が辛くなるだけだよ」

「俺には君しかいないんだ!」

「だめだよ。そんなこと言ったら涙が出ちゃう」

「好きだ!好きだ好きだ好きだ!俺は青花 菜月が大好きだ!」

「私も軌城 夏輝が大好きです」

「全部、一緒に背負わせてくれ!」

「ごめんね」


それはある夏の事だった。

私は近所の池の中心の大きな木のところにいた。

普段は近寄っちゃいけないといわれているが

どうしても行ってみたかった。

中は空洞になっていた。

私は長く生きているこの木をうらやましく思った。

そして見とれてしまった。

その時だった。

彼に出会ったのは。

私の中で何か揺れる。

今思えば「初恋」だったのだろう。

気づいた時には話しかけていた。


「あの?何か?」



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