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トリニティ・クライシス 〜三つの意思が世界を変える〜  作者: 加部川ツトシ
第一章 解き放たれたもの

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7話 遺跡、深部突入


 本格的に遺跡を探索するにあたって、地下に降りてくるまでと同様にハルアードが先頭に進もうとすると待ったがかかった。


「ハルアード、すまないが先頭を変わってくれ」

「えっ? 別に良いけど、大丈夫?」

「あぁ、この先はおそらく大丈夫だ。先程の守護者の事もあるが、少し確認したい事がある」


 何か気になる事があるのか、マルスが先導する形で扉の先の通路へと足を踏み入れた。

 だが、一方通行の通路だけで特にこれといった物は見当たらない。通路の両側に周期的に壁が凹んでいるくらいだろうか。

 だが、マルスは周囲を軽く目を通すだけで迷いなく歩みを進めていく。


「……マルスさん、何にもないんだけど」

「いや、扉だらけだぞ。その壁の凹みの先は全て部屋だ」

「えっ、ほんとに!? でも調べなくても良いの?」


 まるで調べる様子がなくどんどんと先に進むマルスから返ってきた答えに、ハルアードは慌てつつ驚きの声を上げていた。いくら帝国兵がいたからとはいえ、事前調査に来たのに何も調べず素通りしてきましたと言う訳にもいかないため、ハルアードが慌てるのも無理はない。


「時間があるなら念入りに調べたいところだが、そうも言ってられん。まず普通に入れる部屋を探せ」


「マルス、さっきの変な守護者の事といい、あんた何か知ってんな?」


 迷いのないその断言に、ジュナスが神妙な雰囲気で問いかける。何かある、と勘が働いた時のジュナスの特徴的な詰問だった。


「あぁ、似たような構造の遺跡を人伝に聞いたことがある。もしそれと同じ形式の遺跡だとすると……」


 そこで一度マルスは言葉を途切れさせ、緊迫感の溢れる雰囲気にジュナスとハルアードは思わず息を呑む。


「一国をも葬れる程の力を持った遺物があるはずだ。それだけは帝国に渡す訳にはいかん」


 予想以上に危険な代物があるという可能性に、ジュナスとハルアードは思わず言葉を失った。一つの道具で一国を葬るとなれば恐ろしい話である。そんな物を暴走中の国に渡すとなると、どのような惨劇が待ち受けているか分かったものではない。


「そんなものあんのかよ……? てか、なんでそんな事知ってんだ?」

「以前、ちょっとな。これから話す事は他言無用だ。下手に話せば首が飛ぶ、いいな?」

「……首が飛ぶって、どっかの国の機密事項って事?」

「その程度の事ではない。二人とも、ギルドの規定している遺物の等級指定は知っているな?」

「あーそういやそんなのあったか? あれ、何種類だっけか。俺、魔力なくて遺物使えんから忘れたわ」

「ジュナスの頭じゃ所詮そんなもんだね。一から三級までで危険度、有用度から等級分けされてるやつだよね?」


 勘が働いていない時の役立たずなジュナスの無駄情報と馬鹿宣言は放置し、ハルアードが一般向けに公開されている情報を思い出しながら確認を取る。


「あぁ、それだ。だが、それには非公開のもう一段上の等級がある。『特級遺物』と呼ばれるそれを知っているのは、各国上層部とギルドの本部と支部長のみだ」

「……そんなものが……ってそれ言っていいの!? 俺たち大丈夫!?」

「やっぱりガキだな、ハル坊は。そんなの大丈夫に決まって」

「正直な所、大丈夫ではない。不必要に話せば、そして知れば、ギルドを通して各国に指名手配を受ける。生死問わずでな」


「「っ!?」」


 ジュナスの言葉に被せるように告げられたマルスの言葉は、とても衝撃的なものであった。

 知るだけで生死問わずの指名手配を受ける程の話だとは欠片も思っていなかったジュナスとハルアードは咄嗟に反応を返す事が出来なかった。

 どれだけの重犯罪を起こせばそれだけの扱いになるのか、それを考えただけで背筋が寒くなる。ただ知っただけでそれと同等の扱いとはどういう事なのか二人は理解が追いつかなかった。いや、理解したくなかったという方が正しいのかもしれない。


 いつまでも沈黙を続ける訳にもいかず、マルスが言い訳をするように口を開いた。


「すまないが、この先に特級遺物がある可能性がある以上、話さない訳にはいかなかった」


「……マルス、あんた何者だよ?」


「知っての通り、魔術以外は取り柄のない中年の冒険者だ。……すまんな、話すとなると私の事だけではないから、勝手には話せない」


「……もしかしてレイアさんが関係してる?」


 肯定も否定もせずにマルスは口を噤む。それはほぼ確実に肯定を意味する沈黙であった。だが、マルスは沈黙をもって答えることを拒んでいる。

 暫く沈黙が続きジュナスとハルアードの視線がマルスを襲うが、マルスの意思は堅かった。


「はぁ、わーったよ。姐さん絡みなら無理には聞かねぇ」

「……そうだね。今回はジュナスの言う事に賛成だ」


「すまんな、二人とも……」


 根負けしたジュナスとそれに追従するハルアード。そして申し訳なさを感じつつ謝罪をするマルスの姿があった。



 ギルドにはいくつかの区分基準が存在している。その中でも代表的なのは、部門別の個人ランク制度と集団ランク制度、そして遺物の等級区分とされている。


 ギルドに所属する者は商業、工業、冒険者、その他多くの分かれた部門の望む所に所属する事が出来る。それぞれに依頼の受注や発注が行えるようになっており、特に個人ランクは多くの業種が新人採用を行う際や、難易度に応じた依頼の発注の基準として利用されている。


 ランクは上からS>A>B>C>D>E>Fとなっており、加入時はFから始まる事になっている。ただしFは多くの場合、新人育成の教育期間とされており、本採用の基準は最低でもEとなっている。ランクアップ基準については部門ごとに異なる為、ここでは割愛する。


 集団ランク制度は個人ではなく集団としてのランク付け、商人であれば店ごとの、鍛冶屋であるなら鍛冶場ごとの、冒険者であればPT毎のランク付けとなる。こちらは個人ではなく団体に対して依頼が必要な場合に基準として扱われる。


 そしてそれらとはまた別物で、古代の遺物の等級区分というものがある。

 一般に公表されている区分は三つ。大雑把な分別方法は主に、効果内容、効果範囲、希少性を基準としている。


 一つ目は一級遺物、主に最低限でも小さな村を超える程の広範囲を対象に殺傷性もしくは有害性を持つもの、同種の遺物の個数が極めて少なく有用性が高いものが指定される。ただし、影響範囲が狭くとも極端に危険性を秘めた物もこちらに含まれる。

 所有にはギルド所属者にはランクB以上である必要があり、国家が所有する場合は内容の開示をするのが当然であるという事が暗黙の了解とされている。


 二つ目は二級遺物、主に大きな広間程度を上限とした範囲を対象とした武具、比較的数の確認された有用性の高めの道具が指定される。一級程の危険性は認められない物はここに含まれる。

 所有にはギルド所属者は一人前と認められるランクD以上が必要とされるが、これは未熟者に持たせるのは危険だからという側面が強い。国の所有は所有数の申告が求められる程度。二級は希少ではあるものの、それなりの数がある為基準は割と緩くなっている


 三つ目は三級遺物。二級にも該当しない主に日用品、生活雑貨など一般人でも認可無しに普通に扱える。

 人が多く住む街中にも当たり前のように古代の遺物は存在している為、その辺りのものは大体三級に該当している。


 そして最後に秘匿されている特級遺物。主に該当するのは宝珠型の物とそれを封じる為の特殊な遺物である。

 過去に特級遺物を使い、暴走したある国が街を滅ぼした事があり、それを切っ掛けに国家外の管理組織としてギルドが設立された経緯があるが、これらも秘匿されている。これらの事を知っているのは一部の例外を除けばギルドの本部と、支部長、各国の上層部だけとなる。




 少し暗くなった雰囲気を壊すように、ジュナスが口を開く。その明るめの口調は、気を使っての事なのか、無意識なのかは本人だけが知っている。


「って言ってもよ、マルスが何も考えも無しにそんな事を俺らに話す訳ないよな?」

「あぁ、特級遺物さえ帝国に渡すのを阻止できれば、私が特例処置を必ず承認させよう。あれは、今の野放しになっているあの国に渡すと何が起こるか分かったものではない。……だからあの時に……」

「……とにかく、今の帝国にそんな危険な物を渡すのが不味いってことだね?」


「……そういう事だ。全てが杞憂であれば良いのだがな……」


 普段感じることがあまりないマルスの本気の苛立ちを感じ取ったハルアードがぶつぶつと呟きだした言葉を遮るように確認を取った。

 それを肯定するマルスの表情は焦りと苛立ちと困惑と、様々な感情が入り混じっていた。




 重苦しい話も一段落し、三人はいつの間にか止まっていた足を再び動かして、遺跡の奥へと進んでいく。先程までの会話の内容が内容であったため三人の言葉数は少ない。


 特にこれといった異常もないまま奥へ奥へと進んでいくと、やがて広間のような所に辿り着く。

 その広間へと足を踏み入れるとそれまで灯りのなかった遺跡に灯りが点いた。


「うおっ、なんだ!?」

「へぇーこんな遺物もあるんだ」

「魔灯か。これくらいのものならば、街中にある遺物にも利用されているところはあるが勝手に点くとは珍しいな。これなら灯りはもう不要だな」


 もう灯りは不要と判断して、マルスが灯りの魔術の発動を止める。広間の魔灯は充分な光量を持っており、広間を見渡すのに問題はなさそうだ。


「ここがマルスさんが探せって言ってた部屋かな? 何かの広場っぽい感じだけど」

「妙な部屋だな。それになんか嫌な感じがしやがる……」


「おそらくここが目的地だ。ここまで聞いていた構造まで同じとはな……。扉かそれを開ける為の物がある筈だ。二人とも、何かないか探してくれ」


 三者三様な反応を見せながら、そのマルスの言葉を切っ掛けに広間の探索が始まった。

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