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トリニティ・クライシス 〜三つの意思が世界を変える〜  作者: 加部川ツトシ
第二章 ギルドという組織

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EXTRA.2 変わった世界


 ハルアード達についていくと決めた”精霊”は、いきなり置いてけぼりをくらいそうになって慌てていた。


『なんでいきなり精霊封じなんてモノ使うのさ!? 魔力ごっそり持っていかれたよ……』


 レイアの発動した転移のペンダントに置いて行かれないように一緒に転移されるようにしたけれど、気分の良いものではなかった。

 使用したレイアも魔力切れを起こしているようで、疲労困憊の様子が見受けられる。何故かハルアードはピンピンしているが。


『あーやっぱり、ジュナスの身体は特別なんだね。これは、先祖返りかな? まったく、あいつらどんな”導刻”を作ったのさ?』


 精霊にとってもそれは異常の塊であり、理解の及ばない超常の力である。だからこそ、精霊にとっての切り札ではあるのだが。


 そこに獣の耳と尻尾を持つ男と、人間の女が入ってくる。


『……なに、この生物? 妖精種じゃないね? 僕、こんな種族は知らないよ……?』


 グランというそのよく分からない種族の男がどうやら事情を説明してくれるようである。圧倒的に情報が足りていない。ハルアードとジュナスの二人も詳しくは知らないらしい。どう変わったのかを知るためにも是非とも聞いておきたい情報だ。


『ふーん、転移のペンダントに特急遺物ねぇ? ”精霊封じ”と”精霊珠”の事なんだろうね。時代が変われば、呼び名も変わるか。それにしても用途まで間違ってるとはね……』



 そうしているうちに、次の話題へと移っていく。彼らの過去話は全て記憶が流れ込んできて、既に全て知っている。だけれど、改めて気になる点がいくつかあった。


『やっぱり捕まったのは僕だけじゃないんだね。文明が後退した様子の今じゃ封じる事で精一杯なんだ。……でも二重に封じられてるとなると、僕一人じゃみんなを解放するのは無理そうか……』


 悩ましげな表情を浮かべる少女の姿をした精霊。そもそもが自身が解放された事そのものが偶然による奇跡に近い。かつての時代でさえ、自らが捕まった時には解放させる手段は無かったはずである。


『……それにしてもどれだけ僕たちを捕まえて”精霊珠”を作ってたんだ? 獣人種は”精霊珠”で生み出した? あの争いのためにそんな事まで。 ……だからあいつら”導刻”の力に頼ったのかな?』


 同胞達が精霊にとっての禁忌の術である”導刻”を作った理由が、少しずつではあるが見えてくる。単純な話で、古代の人間がやり過ぎて同胞達の怒りを買ったのだろう。


 精霊は物思いに耽っていく。推測は出来たがまだ情報が足りなさすぎる。それ以前に情報の欠落が激し過ぎる気がする。マルスの記憶を覗いた時も、今の時代には魔法使いが存在していないようだった。古代の遺物と呼ばれていた魔法使いが作った汎用普及品が残っているのと、妙に格式張った汎用性のみを優先した魔法とも呼べない粗末な魔法もどきがあったくらいだ。

 そして一番気になったのは、精霊の存在が一切認知されていない事だ。一体何があったというのだろうか。



 彼らの過去の話も終わり、現代における勢力が少しだが分かってきた。


『ギルドか。いいね、手を取り合って助け合うため、そして危機管理の為の組織か。昔にもこういう組織があったらあんな事は防げたのかな? でも今の時代でも好き勝手にしている連中もいるんだね』


 そう呟きながら、遺跡の中での出来事を思い出す。あの『聖刻』を持つ女側が問題の国なのだろう。こうして話を聞いていると奴らの手に渡る前に解放されたのは幸運としか言いようがない。”精霊珠”に閉じ込められたままであったら、今もまた道具として使われていただろうから……。



 ハルアード達の会話は今後の話へと移っていく。人間の社会は複雑なようで、そのまま事実の公表という訳にもいかないらしい。行方不明扱いにされると聞いて、少し心が痛んでくる。

 別行動になった時はハルアードとレイアに着いていったが、その後の孤児院とやらで子供たちが泣いているのを見て、更に心が痛くなっていた。


『……ごめんね。もっと早くに彼らを信じてあげてればこんな事にはならなかったのに』


 解放直後であったなら、即座に元の身体に戻す事も出来たはずだ。しかし敵視していた為にそれには対応が遅すぎた。状況が状況だった、あれが最善ではあったはず。

 だけどこの子供たちの泣き顔を見てしまえば、後悔の念は消えてはくれない。今の精霊には元の姿に戻してあげる力もない。それが悔しくて堪らない。

 精霊のそんな思いの籠もった声は誰の耳にも届かなかった。




 翌日は何やら試験をするらしい。どうやらあの獣耳の支部長とかグランとか呼ばれている男はかなりの強者のようである。

 そして、どういう基準になっているかは知らないけれどハルアード達は特別扱いではあるらしい。


『へぇ? ”精霊具”に頼らない強さで測るんだ? あ、”精霊具”じゃなくて遺物って呼ばれてたね。道具に頼り切らないそのやり方は僕好みだね』


 かつての人間は道具に頼り過ぎたが故に道を踏み外した。そして道具ではない精霊すらも意思を無視して道具とした。そんなかつての人間達に比べるとこのグランという男は好感が持てる。

 そうこう考えているうちに試験が始まった。


『おーハルアード、やっぱり君にその肉体を使わせて正解だったね。まだまだぎこちないところは多いけど、そこは君ならすぐになんとかなるさ。……それにしてもこのグランって相当強いね。まだまだ手加減してるじゃないか』


 昔に、こんな強さの敵がいればどうなっただろうか? ただの物理攻撃なんかは精霊に効きはしないが”精霊具”や魔法を使われれば話は違う。いや、それともこの獣人種という種族はその為に生み出されたのかもしれない。マルスやグランがその可能性も示唆していた。かつての人間が行った事を考えれば、あれは真実かもしれない。


『あ、試験が終わったみたいだ。あー勝てなくても問題ないんだね? とりあえずハルアード、おめでとうと言っておくよ!』


 誰にも聞こえていないと賛辞を精霊は贈る。それでもただ自由に意思を持って動けて、気付かれないとしても共に居れる相手がいるという事が嬉しかったのだ。



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