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トリニティ・クライシス 〜三つの意思が世界を変える〜  作者: 加部川ツトシ
第二章 ギルドという組織

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18話 質問と語られ始める過去


 遺跡で兵を見つけた時から始まり、脱出してこの部屋にやってくるまでの知っている限り全てのことを話し終えた。予想以上の壮絶で困惑極まる内容にグランは随分と疲れていた。


「それで終わりか?」

「あぁ、終わりだ」

「エレイン、記録はここまででいいぞ」

「はーい、わかりました」


 確認を取る意味で問いかけるとマルスはそれを肯定する。それを聞きエレインは『風音の刻み』の発動を終了させた。記録はここまで充分であった。


「……お前ら、よく生きてたな?」

「ですねー。無茶苦茶過ぎますよ」


 グランは全てを聞いて思った事を素直に口にした。エレインも同意見のようである。


 ハルアードは短期間でDランクまで上がったものの地力が足らず決定打に欠けるために伸び悩んでいる。技術は優れているのに、天性の身体的な資質に恵まれなさ過ぎている。

 ジュナスは天性の勘で戦闘能力は高いがそれ以外はからっきし駄目な為、そこがマイナス査定となり同じくDランク。

 マルスは魔術の才は非常に高く知識も豊富だが、冒険者歴は長い訳でもなく学者の経歴が長かった為に戦闘経験は冒険者を生業としてきた魔術師達には経験で数段劣る。次第に経験が蓄積されてきて元々威力は強力な魔術を扱える事もあり、ここ最近で急激に伸びてはいるがそれでもCランク。

 レイアは地道に訓練してしてきたものの戦闘スタイルの問題として個人ランクはあまり影響してこない。特殊な妨害枠としての査定ではBに近いCランクである。


 ただしこの四人をPTとして集団ランクとして査定するとBランク手前のCランク評価となっている。役割がうまくバラけているので、チームとして見れば欠点を補いあってかなり戦力が跳ね上がっている。

 だが、今回の相手はそれを加味した上でも遥かに格上が二人。本来ならば勝てる筈がない戦力差であった。そこから生還した事に素直に称賛するグランであった。


 そしてもう一つの偽らざる本音を告げた。


「……そしてお前はどうしようもなく馬鹿だな、ジュナス」

「あんたまでそれを言うか!?」

「仕方ないってジュナっち。事実なんだから」

「エレインさんまで!?」


 グランもジュナスにハルアード達と同じ評価を下す。そしてエレインはそこに追撃を行った。詳細を聞いた後には励ます気もなくなり、意見が変わったエレインである。

 だが、グランはジュナスが馬鹿をやらかしたとは思うが他にも思うところがあった。


「一応聞くが、ジュナス、なんで特級遺物に触れた?」

「なんかやべぇ予感がしててよ、マルスの手段じゃ無理だって思って、俺ならいけるんじゃねっていきなり頭に浮かんだから突っ込んだ」

「どっから来るんだよその発想!? お得意の勘はどうなってた馬鹿ジュナス!?」


 ハルアードのその言葉はグランが気にしている事に関係しているものでもある。異常過ぎるジュナスの勘がそんな事を見落とす事があるのかと。


「いや待て、ハルアード。こいつの勘は多分『聖刻』持ちの対策まで行ってるぞ」

「流石にそれは無茶な解釈すぎない!?」

「よく考えてみろ。こいつが馬鹿がやらかしてなければ、お前ら生きてたと思うか?」

「それは!? ……多分死んでたと思う」

「確かにそうね……」

「そう言われるとそうだが……」


 ハルアード以外にマルスとレイアもグランの突拍子もない推測を無茶な解釈だと感じたが、あれがなければ全員がは生き残れたかどうか自信はない。誰かを犠牲にしたならば全滅は防げた可能性はある。だが確実に最低でも誰か一人は死んでいただろう。

 そして、空気の読めない馬鹿がその様子に勘違いし、調子に乗りだす。


「あれ? これ俺が褒められるパターン!? 珍しくね!?」

「この馬鹿にこの姿にされて、その上助けられたとか認めたくない」

「「「「あーそれは確かに……」」」」

「なんでそうなるんだよ!?」


 ハルアードの言った事に、ジュナス以外の全員が異口同音でしみじみと同意した。身の危険以外にも空気を読む勘とかは磨けないのかと思いながら全員がジュナスの反論はスルーした。

 そして空気を切り替えるようにグランが口を開く。


「まぁそれは置いといてだ、こっちから聞くことは聞いた。お前ら知りたい事だらけだろ、質問を受け付けるぞ」


 マルスとレイアは特に聞くこともないのか、それとも二人より知りたい事が多いだろうハルアードとジュナスに譲るつもりなのか何も言う気配がない。

 ハルアードは意を決して、ずっと気になっていた事柄に足を踏み込むことにした。


「じゃあ一番気になってる事を。マルスさんとレイアさんって過去に何があったの?」

「あれ? ハルアードは知らねぇのか? ジュナスは?」

「俺も知らねぇよ」

「なんだよ話してねぇのか。薄情な奴らだな」


 気を引き締めて決意をして聞いた割にグランからは意外と軽い返事が返ってきた。ハルアードは思わずレイアの顔を伺ったが、その顔は引き攣っていた。マルスの表情は大剣であるために様子は分からない。


「ちょっと待て。私達の事情は機密事項として箝口令を出したのはグランだろう?」

「冗談だよ、冗談。その分だとちゃんと守ってたみたいだな?」


 少し苛立ちの混じったマルスの声に、笑いながらもグランは軽く流そうとする。


「……試したのか?」

「怖い声を出すなよ。これも仕事の一つなんだ、大目に見てくれや。で、二人としては話してもいいのか? いいならハルアードとジュナスに対しては箝口令は解くぞ?」


 一段低くなって怒りが少し増したマルスの声に、至極真面目な声に切り替えながらグランが応じる。普段は適当で役立たずと言われる支部長グランではあるが、決して仕事をしていないわけではない。

 レイアとマルスに向かい、目で覚悟は良いかと問いかけていく。


「構わないわ」

「私も問題ない」

「なら、ちょっと昔の話でもしようかね」


 二人の了承を得たグランの口から過去の出来事が語られ始める。


「さてと、何から話したもんかな?」

「どちらも話すのであれば、まず私の方からではないか?」


 何から話すか悩み出したグランにマルスが方向性を与える。それを聞き、何から話すかを決めたようである。


「それもそうだな。それじゃマルスの過去と今のギルドでの扱いの状況からいくか」

「マルスさんの過去か。一体どんな事が……」

「結構無茶な事やってんじゃねぇの?」


 だがその言葉をきっかけに、本格的に話し始める前にいきなり話は脱線する。


「ジュナスじゃあるまいし、そんな」

「おう、ジュナス、それ当たりだぜ」

「「えっ!? マジで!?」」

「おう、マジで。マルスはな、元々はグレヴィティア共和国の国家認定魔術師でな、ガキの頃のレイアを助ける為に国を放り出して大暴れして国家認定の剥奪と一時期は指名手配も食らってたか? 今はグレヴィティア共和国から国外追放で済んでるけどな」


 大雑把過ぎて詳細は全く分からないが、とんでもなく色々やらかしていると思わしき発言が多々見受けられる。


「……事実だが少しばかり大雑把過ぎはしないか?」

「……事実なんだ」

「……やるな、マルス」


 予想以上に大事になりそうな過去話にハルアードは息を呑み、ジュナスはどことなく楽しそうであった。



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