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トリニティ・クライシス 〜三つの意思が世界を変える〜  作者: 加部川ツトシ
第二章 ギルドという組織

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17話 事情聴取

二章、始まります!


 治療を終えて、ハルアードとエレインが支部長室に戻ってくる。防音設計のなされた部屋の扉を開けた瞬間、グランの怒鳴り声が響いてきて、二人は慌てて支部長室に入り扉を閉める。


「はぁ!? もっと早く連絡寄越せだと! こっちもさっき概要聞いたばっかりだって言ってんだろうが!」


 青筋を浮かべなら、通信用の遺物を使いギルド本部の連絡員へと怒鳴りつけるグラン。

 発見されている数が少ない為に一般向けには使われてはいないが長距離通信を可能とする遺物も存在して『遠声の写し』と呼ばれている。拳より一回りか二回りほど小さいくらいの真っ白い球状をしている。使用時は透明度を増し、相手の声に合わせて球状の内部が発光するようになっている。

 主に緊急時の連絡に使われるが、近年ではギルドと各国で必要数を満たしてきており、ギルドの受付では職員の立会の元で高額ではあるが利用できるようにもなってきていた。


 そんな道具に向かって、怒鳴り声を響かせるグランの姿になんだか不思議な気分になる。知識としては知っているが、ハルアード自身は使った事も無ければ、使う姿を見るのも初めてだった。

 自身のこれからの状況がそれに近い物になる事も、未だ気づかずに……。


「あれはどうしたの?」

「なんか、本部の連中がごちゃごちゃとうるさいみたいだぜ?」


 とりあえずグランが怒鳴っている理由を尋ねるが、ジュナスから簡単な答えが返って来ただけだった。話している相手側の声は聞こえてこないようで、うまく把握できていないらしい。


「詳細はこれから聞くところだ! だから、先にそっちの準備整える為だって言ってんだろうが! こんなもんいきなり詳細送りつけたって本部でも独断じゃ決められないだろ? 会議に人集めるのに時間かかるだろうが! はぁ!? 緊急事態だからだろうが!」

「あちゃー、支部長キレちゃってるなー。本部の対応してる人、異動したばっかの人かな? あれだけの事態の割に対応が悪そうだ、うん」


 グランは温厚な人とはとても言えないが、それでも短気で喧嘩っ早い人ではない。そんな者には、戦闘の実力だけあっても支部長等という重要な役を任せる訳がないのだ。あればあった方が良いが、丁寧さは必要とされない。必要とされるのは緊急時に逃げ出さず立ち向かえる精神力と、冷静に対応出来て決断できる、そういう強さが支部長には求められている。

 本部も同様の基準ではあるがあくまでもそれは上層部の話であり、常時待機している一般職員はその限りではない。支部より遥かに厳しい採用条件とはいえ、誰もがそこまでの資質は持っていない。


「あぁ、そうだよ。こっちが事情聴取してる間にそっちの人員集めとけって事だよ! 後で詳細を送るからそんときはベテランの担当を寄越しとけ!」


 どうにか難儀しながら用件を伝え終えたグランは、苛立ちながら通信を切る。


「ったく、この緊急時に今日異動してきたばっかの新人とか最悪過ぎるだろ!」

「あーやっぱり新人でした? 研修があるとはいえ、本部に行ったばかりだと機密事項の扱う量は一気に膨れ上がりますからね。新人にはこれだけの異常事態の同時処理をいきなりは荷が勝ちすぎますって」


 エレインの予想通り、本部側の担当は新人だったようだ。タイミング次第では退職までに緊急通信を一度も受ける事なく終わる事もあるというのに、初日からかなりの規模のトラブルの対応を受けることになって可哀想ものである。

 流石に可哀想なので、一応はフォローをしておくエレインであった。あと一応はグランの溜飲を下げさせる為でもある。


「おーエレイン、本部に異動した事も無いくせに偉そうな事言ってんな?」

「だって、私は支部でも数少ない機密事項の処理経験者ですもん」

「そういやそうだったな……。普段はのほほんとしてるから、つい忘れそうになるわ……」

「支部長よりはまともに仕事してますよーだ!」


 数年前のマルスとレイアの関わった事件を思い出し、思わず遠い目をするグラン。

 そこでハルアードが戻ってきていた事に気付く。しれっと会話に加わっていたエレインのあまりの自然さに、戻ってきていた事をつい失念していた。


「お、治療は終わったか。さて、後はレイアがいつ起きるかだが……」

「……さっき起きたわよ。あれだけ怒鳴ってたら目も覚めるわよ。……かなり怠いわね、これ」


 怠そうにソファに横になったまま手を上げて、レイアが起きていた事を告げる。あれだけ近くで怒鳴られれば起きても当然だろう。ジュナス辺りなら神経が図太い為、そのまま寝ていそうではあるが。

 怠そうにするレイアを見ながら、困ったようにグランは頭を掻いている。


「あーまぁ緊急脱出は元々の用途と違う使い方だしなぁ……」

「レイちゃん、大丈夫?」

「あ、エレもいるの? そりゃ当たり前か」

「レイア、これから詳しい話を聞くつもりだが話せるか?」

「……寝たままでも構わなければ、話すだけならなんとか」


 レイアは自身を心配するエレインの存在に気付き、怠そうにしながらも話す意思を示す。本当は寝ていたいところだろうが、そうも言っていられない事態である事はよく理解していた。


「なら、そのままで話してくれ。そういや使用者から一律に魔力根こそぎ奪うのに、ハルアードはなんで全然平気なんだ?」

「そもそも俺は転移のペンダントの使用条件すら知らないから、そんなのはわからないよ」

「あ、そうか! レイアとマルスが知ってるから当然と思ってたが、ハルアードとジュナスは知らないか! あぁ、悪い悪い。なら根本的に知らん事だらけだろ?」


 知っていて当然のようにグランが話すが、ハルアードからしたらさっぱり訳が分からない。何か事情があるということだけは察しているが、流石に具体的な内容は分からない。

 そんなハルアードの心境をようやく察したグランが、正しく状況を理解した。


「そうだね、特級遺物とか転移のペンダントとか色々聞いておきたいこともあるかな」

「知ったら生死問わずの指名手配だっけか? まだ見つけてもねぇときにそんな話されたから少しビビったんだよな」


 ジュナスのその発言にグランが反応し、マルスを睨みつける。結果的に知る事になったのは仕方ないとしても、その前に教えていたとなれば罰則とまではいかないが説教ぐらいは必要となる。


「……おい、マルス。お前どういうタイミングで話した? 箝口令忘れてねぇだろうな?」

「状況が状況だったのだ。少し早いか遅いかだけの差だ。それに特級遺物に迂闊に触られてもマズいと思ったのだが……」

「……触らせない為に話したのに、触って発動させた馬鹿がいたってことか」


 マルスの段々と弱々しくなる言い訳に、ハッキリと確信したグランであった。つまりあの馬鹿は聞いた上で特級遺物を発動させたという事を。


「おい、俺が悪いってのか!?」

「お前が悪い」「馬鹿ジュナス、自覚ないのかよ」「私も流石に今回は……」

「わーみんな容赦ないね。ジュナっち、ドンマイ!」


 ジュナスは抗議の声を上げるが、味方は居なかった。エレインの励ましがあっただけでも多少マシだったかもしれない。

 断片的な話だけでは埒が明かないと判断したグランは、本格的に事情を聞く覚悟を決める。正直聞きたくないというのが本音ではあるがそういう訳にもいかないのが辛いところだ。


「はぁ、まぁいい。ともかく一から全部、覚えてる限りの全てを話せ。即座に報告が必要なものは既に済ませてあるからじっくり聞かせてもらうぞ」


 ギルド本部とミーグレイス連邦の首脳部への簡易的な連絡は既に済ませてある。ミーグレイス連邦はギルド本部と違いスムーズに連絡は終えられていた。おそらく、今頃はギルド本部もミーグレイス連邦の首脳部も慌てて、対策会議の為の人員を集めているところだろう。その為に詳細な事情聴取の前に連絡したのだ。グランの仕事はこれから詳細を聞き、資料を纏めてギルド本部とミーグレイス連邦に渡す事である。


「支部長、記録はどうします? 私、やりましょうか?」

「そうだな、任せる。事が事だから『風音の刻み』も使っていいぞ」

「本当ですか!? あれあると楽なんですよねー」

「あーついでに胃薬も持ってきてくれ。多分ダメージが凄そうだ」

「はいはい、支部長も大変ですねぇ」


 記録係を買って出たエレインに、音声の記録が出来る『風音の刻み』の使用許可を出す。するとすぐに保管庫へとそれを取りに行くエレインとついでの要望をグランが出す。

 『風音の刻み』は『遠声の写し』と併用する事で遠距離に情報を送ることも可能だ。紙の資料は遠くに即座に送る手段が無いため、その利用価値はかなりの重要性を持っている。

 もちろん紙に纏めた資料もあとから配達を専門に請け負う冒険者に依頼を出して送るが、先んじて事情聴取の様子の音声を送れば何かと役に立つだろう。


「持ってきましたよー。記録準備も万全です!」

「ご苦労さん。んじゃ始めますか」


 ちゃんと要望どおりに、『風音の刻み』と胃薬を持ってきたエレナに労いの声をかける。


「そうだな、まず遺跡の周りに兵がいたところから話していこうか」


 マルスのその言葉からグランの胃にダメージを与え続ける細かな事情聴取が始まった。



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