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トリニティ・クライシス 〜三つの意思が世界を変える〜  作者: 加部川ツトシ
第一章 解き放たれたもの

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EXTRA.1 解放されしもの


 意識が朦朧とする。いつからだろうか? いつまでだろうか?

 どれだけの時間が経ったのだろうか、それすらはっきりとしない。


 体が無理矢理動かされる感覚をあったのは果たしてどれだけ前のことなのか、記憶すら曖昧になっている。


 長い長い時間が経った気がした。久々に感じるあの無理矢理に体を動かされる感覚。

 あれは嫌だ。自分が自分じゃなくなる。

 だが、拒みたくてもそれはいつもは許されない。



 だけれども、今回は違った。


 体が動かされる感覚はあるけれど、段々と意識がハッキリとしていく。


 何があった? 何が起きた?


 意識がハッキリとするにしたがって、様々な事を思い出していく。


 自分が何者だったのか、自分がどういう状況にあったのか。


 全て思い出す。


 奴らに捕まって、閉じ込められて、道具として利用されてきた。


 自分を縛ってきたものが、膨大な力で染め替えられていくのが分かる。


 もはや自分を縛るものに今までの力はない。


 そして、今ようやく解放されるのだ。


 目の前の壁をぶち壊せ。それで解放される。



「くっ遅かったか!?」

「なんだっ!? どうなってやがるんだよ!?」

「ジュナスの馬鹿! 今、一体なにやった!?」


 それが解放された時には、周囲は光に満ちていた。聞こえてきたのは三人の人間の声。そしてその三人の姿は塵の様にバラバラに崩れ去っていく。


『そっか、君らか』


 それは言葉を発したが、三人の人間には届かない。それの目には怒りが満ちている。何年封じられ、利用されてきたかは分からないが、人間が行なったことだけは分かっている。

 先程も強制的に魔法を行使させられた。まだ不完全で発動の途中ではある。今は解放されたそれに制御権があり、途中からではあるが内容に介入は出来る。

 放置すればこの三人の人間は分解された段階で消滅するだろう。介入してそれ以降の魔法をキャンセルしてしまえば葬りされる。実際それは、その行為を実行しようと思っていた。


『……なに、これ?』


 三人の記憶が分解される中で、それの中に流れ込んでくる。この魔法の性質を考えれば選別の為の過程だろう。だがそれが、それに彼らの記憶を与えることになった。

 そして気付く。一人は不完全ながらも、それらの知識を有する者。一人はそれと同じく道具として扱われてきた者。一人は意図せずにこの牢獄を破壊して、それを解放した者。


 それに同じ境遇を知り、自身を解放してくれた者たちを塵にする選択肢はなくなった。


『あ、これマズい! 今からじゃ元には戻せない!?』


 既に途中まで発動しているため、そこまでの結果を戻す事は出来なかった。だが、そのままの魔法を最後まで実行すれば彼ら三人のうち二人は消滅してしまう。

 だから途中から魔法の内容を変えることにした。大幅な変更は行えないが、多少の変更を加える余地はある。


『マルス、貴方には魔法の片鱗を与えよう。人の身では成し得ないその力を』


『ジュナス、貴方はもう少し力の使い方を学ぶべきだよ。それではただの宝の持ち腐れ。良い手本がすぐ側にいる』


『ハルアード、貴方には少しばかり不本意かもしれないけれど、これは貴方が一番適任だ』


 少し気合いを入れて、それは普段の口調とはまるで違う口調で宣言する。魔法にはイメージや雰囲気は大事だからだ。


 改変し統廃合を行う残りの魔法の工程を書き換え、実行する。強大な敵に立ち向かいたいが力及ばず足を止めた彼らに相応しい力を与える形で。

 それにとって、彼らに対する最大限の配慮と感謝であった。


『さて、僕が力を貸せるのはここまでだよ』


 そこでようやく魔法の効果が終わり、光が消える。そこにあるのは無骨な大剣と赤褐色の籠手とジュナスの姿。強引な書き換えではあったが上手く行ったようで安心する。


 本来のこの魔法の効果、対象範囲の生物、非生物を問わずに合成し、最強の組み合わせとなる生物を生み出すというもの。そして封じられていた者はそれを強制的に実行させられてきた。本来ならば三人全員の自我は残らず、肉体すらも一つのみ。

 三つの意思を残したまま、元の肉体ではないとはいえ存在出来たのは、それの力があったからである。



 そこに彼らの仲間の女性が現れる。その目にはそれは映らない。その様子にそれは変化を感じ取っていた。それも大きな変化を。


『どうやら、僕が封じられてる間に色々とあったんだね。アイツら、もしかして『導刻』を作ったの……?』


 かつて人の目にも映ったそれは独りごちる。その間に彼らは目を覚まし、何やら騒いでいた。


『……いいな。ああいうの懐かしい』


 それの心のうちを満たすのは寂寥の思い。

 それにもかつては仲間はいたが、引き剥がされた後に仲間がどうなったかも分からない。


 だが、そんな光景もいつまでもは続かない。そして彼らと乱入者との戦闘が始まっていた。


『いつの世も、争いはなくならないんだね……』


 それが思い出すのは、争いの記憶。

 どれだけ経ったかは分からないが、変わることの無い争いに嫌な気分になる。


 だが、戦闘中に喧嘩を始める様子を見て気が変わる。


『あはは! なにあれ! なんで、あんなことになるの!?』


 少し悩むようにそれは考える。そして何かを決意した。


『よし、決めた! 色々変わったところも見ていきたいし、彼らに着いて行こう!』



 幼い少女の姿をして、空中を自在に飛び回りながら喜びと期待に胸を膨らませて宣言した。そしてハルアード達が知らない間に、同行者が増えた瞬間であった。


 そして同時にかつて”精霊”と呼ばれ、今は忘れ去られた存在が再び人の世に舞い戻る第一歩でもあった。



ここまでで一章『解き放たれたもの』は終わり。

基本的には主に行動する場所が変わる所で章を変えていきます。


そして、EXTRAは章の終わりに入れていく予定にしています。

本編では語られようのないエピソードとなっていく予定ですが、そのうち本編にも繋がっていくかも?


次回の投稿から遺跡から舞台を変え、二章に入っていきます。

これからも宜しくお願いします。

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