大3
話がまとまり戦士を集めに行こうと思ったのだが、大事なことに気が付いた。
「あ、あの。帰り方が分かりませぬ……」
「んん? 便所に飛び込んだら便所から出てきたのであろう? ならばもう一度飛び込めば良かろう……くくっ。ガァハハハ!」
一瞬耐えたカムイだったが、すぐに自分の言葉に耐え切れなくなって大笑いを始めた。
「そうですね……他に思いつきませぬし。ですが、もし帰ってから二度とこちらに戻って来られなければ?」
「グフフ、ふふ。おう? そんな事を気にすんじゃあねえ。それならそれで、ワシはやれるだけのことをやるつもりさ。誰に無茶だと言われようともな」
潔い。同時にカムイの姿は儚げにも見えたが、それはきっと今までに死んでいった戦士を想っていたのかもしれない。
「カムイ様、このアイヌ刀をお持ちになってくだされ。俺たちの、カムイ様への想いが詰まった刀でさ。 もし……二度とお会いできずとも。きっとこいつを戦に連れていってくだせぇ」
「祭事に使うと言っておった刀か。うむ、実に見事な装飾じゃ。刃を研がせれば充分に戦でも使えるであろう。もしものことがあれば、必ずやこの刀を携えて戦地へ赴こうぞ」
「はいっ、ありがとうごぜぇます……。名残惜しゅうごぜぇますが、戻らせて頂きやす」
深々とカムイに礼をして小屋に入り、便所穴に向かい来た時と同じように軽やかに跳ぶ。無傷の左足を少しあげ、既に糞の付いている右足から勢いよく飛び込んだ。
やはり右足が糞に触れたかどうかという内に吸い込まれていく。ヒザ、腿、腹、胸。
カムイの声が聞こえた。
「次来る時までに糞、汲み上げとくからなあ!」
はいっ!! と元気よく答えて、俺は小屋から姿を消した。