第8話 模擬戦闘6
「.....先に言っておくけど、別に手の内を隠してたわけじゃないんだ」
「ほう、じゃあなぜ使わん?」
「ヨハネが言ってたんだぜ、環境を壊して精霊がお怒りだったってな、つまりまあなんだ、やるとちょっと不味いというか、怒られるというか」
「ふむ、ならこうしてやろう。先生よ!」
ヨハネが観客席にいる先生に向かって声をかける。そして、
「結界の強度を最大にして、このアリーナを囲む形で展開させとくれ」
と、ヨハネが先生に対し、言うと
「了解した」
と先生がアナウンス側に要請をかけると、それから10秒もしないうちに今まで不可視の状態だった結界が薄青色の膜となって現れる。
「よし、これで主も気兼ねなく全力が出せるであろう?ほれ、見せてみい」
と、まるで新しい玩具を目の前にした子供のような表情でグランに言ってくる。するとグランは自らの超級身体強化を解き、カグツチを持った右手を前に突き出し、言う
「へへっ、そこまでされちゃあしょうがねえなぁ、じゃあ見せてやるぜ、とは言っても発動まで時間かかりすぎてとってもじゃねえけど実践的じゃないんだけどな」
グランは前に突き出したカグツチを地面に突き刺し、呪文を紡ぎだす。
「炎よ我が身を灼きつくした炎よ 我が身は灰となりてもなお不滅 我は貴様の熱をその熱さを覚えた 我はその熱さを持ちて貴様以外の全てを燃やそう 我はこの怒りを決して忘れない」
全ての詠唱を終わらせた瞬間、グランの周りで炎が燃え上がり、さらにグラン自身も両腕が炎となり、カグツチも炎となる。そして、グランは自分が唱えた呪文の名を紡ぐ、
「万物灼き尽くす巨人の宝剣」
瞬間、結界内の温度が70度を超え、地面の水分が全て蒸発したことにより、地面全体が砂と化す。
「ククッ、本当に愉快なやつじゃ!まさかここまでとは!最高じゃぞお主!」
その光景を見て、愉快そうにヨハンが笑い、グランもまた獰猛な笑みをその顔に貼り付けている。
「さて、その力、あと数十秒ほどしか保つまい、くるがよい!」
ヨハネが言うが早いか、グランは既に前傾姿勢を取っており、そして
「シッ!!!!」
その姿が一瞬で搔き消え、彼女へと突っ込み、そして炎と化したカグツチを彼女に突き出す。それを彼女は鉄扇で受けるが、
「なっ!」
彼女は勢いを止めきれず、そのままグランが剣の先に捉えたまま、押し込み、吹き飛ばす。そして、結界にぶつかりヨハネがその全身から空気を強制的に吐き出させられる。
「ぐっ!」
ヨハネがそれでも前を向いた瞬間、グランは彼女から50m離れた場所で既に必殺の準備を整えていた。剣の鋒を相手に向け、まるでフェンシングの構えのように武器を携える。そして、剣をそのまままっすぐ相手に向かって突き出す!
「炎穿つ剣神の一閃!!」
放たれた一撃は摂氏15000度のもはや太陽の表面温度すら凌駕する直径3mはあるであろうサイズの熱線。迫り来るそれに対しヨハネは、折り畳んでいた鉄扇を開き、両手のそれを交差させる。そして、
「万華繚乱!」
技名を唱えると同時に二枚の鉄扇を前方に向けて交差させながら打ち払うと、魔力で作られた一枚一枚が必殺の威力を持つ花弁がまるで一本の巨大なレーザーのような花吹雪を作り、熱線とぶつかる。そして、圧倒的なエネルギー同士のぶつかり合いにより、大爆発が起きた。爆発が治った後には、ボロボロになっているが、両足で立っているヨハネと気を失ったグランが倒れていた。そこでアナウンスが
『片方の意識の消失が確認されました。時空魔術を使用します。』
と、時空魔術を発動し、なにもかもが勝負前に戻り、グランが起き上がると同時に
「くっそー!!負けたか!」
と悔しそうに叫び、そんなグランにヨハネが歩いて行き、声をかける。
「ククッ、なかなかにいい勝負であったわ。そう悔しがるものでもあるまい」
だがグランは
「それでも悔しいものは悔しいんだよ!あぁー、次は絶対負けねえぜ!」
「ふん、もう主とはやりたくないわ、なんじゃ、あの技は」
「俺の切り札だよ。まあこっち側だとあんな風に結界張らないと使えた技じゃないけどね」
「ふん、使っただけであそこまでとはな、水の精霊も怒るわ。」
「まあ、約束通り全力でやってくれてありがとな!」
「こちらこそ、楽しませてもらったわ」
2人が握手を交わし、グランはシルヴ達の元に戻ったが、グランが戻ると、シルヴが
「貴様!なんだあの技は!ずっと隠していたのか!」
ストレアも
「流石にこれはびっくりなんてものじゃなかったね」
と各々様々な反応を示す。それにグランは
「これが俺の秘策よ!負けちまったけどな、でも驚いたろ?」
と自慢気に話す。そこではしばらくグランの自慢会が開かれ、シルヴがうざくなってきてグランを殴って会話を止めるまで五分近く喋っていた。(主にグランが)