第7話 模擬戦闘5
グラン達の目の前にはにわかに信じがたい光景が広がっていた。
「おいおい、なんだあれ。さっきの試合にあんな奴いたか?」
グランがいうとそれに追従してストレアも
「いや僕の見てた限りだとあんな子いなかったよ」
グラン達が見ている試合では、一人の男子生徒がのどをつぶさんばかりに叫んでいた。
「やだ、やめてくれ!俺に近づくなあああァァァああ!!!」
そしてその目の前には黄金を溶かしたかのようなきれいな金髪を白鳥が化粧をするのかといわんばかりに無造作に垂らし、彼女の召喚獣である真っ黒な色の子猫を抱きかかえた人形のような少女がただ立っているだけであった。
「おいおい物知りシルヴさんや?彼女だれかわかる?」
グランが問いかけると、シルヴは珍しく困ったように、
「あ、ああ。彼女の名前は黒崎 環奈、召喚獣は災厄かたどった猫と言われるランクS+の厄災猫だ。確かに間違ってはいないんだが...」
「だが?」
ストレアが言葉を引き継ぎ問いかけると、シルヴが
「厄災猫はそれ自体が圧倒的な戦闘力を持っている完全なパワータイプ、つまりストレアのドラゴンとかと似たような戦い方になるはずだ。あんな風に相手の精神に異常をもたらすような戦い方になんてなるはずがない。....それに一回戦の戦い方は普通の戦い方だったというところも気になるな...これは一体...」
シルヴが思考の波を漂い始めたタイミングでグランが、
「まあ、今気にしたって答えが出るもんでもねえんだからさ、今は試合だ。考えるのはあとにしようぜ。」
と声をかける。すると、シルヴも考えるのを切り上げ。
「そうだな、珍しく貴様が正論を口にしたんだ。その意見に乗っかってやろう。」
「おう、そうだぜ!よし、じゃあ俺の試合見とけよ見とけよ~?」
言いながら、グランが観客席から立ち上がり試合する場所へと降りていく。
お互いがスタートラインに立ち、グランとグランが試合開始前にしゃべっていた少女、ヨハネ・ルーンが向かい合う、
「ヨハネ、手加減とかはなしだぜ?」
グランが確認をとり、
「安心せい、我は気まぐれじゃが一度交わした約束を破るなんてことはせんわ」
ヨハネがそれに返答を返したところで、二人の目の前にカウントが現れる。そして、そのカウントがSTARTという文字に変わった瞬間二人が召喚獣を呼び合う。
「出番だぜ、イナリ」
「来んしゃいな、銀」
グランの頭の上にイナリが、ヨハネの背後には全身を白銀の毛で覆った、巨大な狼が現れる。
一方、シルヴたちは、
「ねえ、シルヴ?彼女は?」
「ああ、彼女はヨハネ・ルーン、学年次席、召喚獣は白銀狼、ランクはA+だ」
「へえ、学年次席かあ、グラン大丈夫なの?」
「さあな、俺は別に奴についてすべて知ってるわけではないからな...だがあいつが何か策があるといって出て行ったんだ。少しは面白いものが見れるかもしれんぞ?」
場面はグラン達へと戻り、
「さて、グラン君もお望みのようだし、見せてやるとするかの。ゆくぞ、銀」
銀がその声に応えて、短く吠える、そしてヨハンが二度、手を打ち鳴らし、呪文を紡ぐ
「我が身は神に捧しもの、我に自らの身の自由は無し、それ故に我が身は神の化身へとなりうる」
呪文を紡ぎ終えた瞬間、その身が纏う魔力が膨れ上がる。
「どうじゃ?これが我の新たな境地じゃ」
グランはその少女の小さな体から流れ出てくる膨大な魔力の奔流を真正面から受け止めながらもいう、
「すげえ、マジで期待以上だ。俺ごときにこんな力使ってくれたことに感謝するぜ。」
「くくっ、存分に感謝するがよい、して?主はこの力と渡り合えるだけの力を見せてくれるんじゃろうな?われの全力がみたいだけなどと言ったら、時空魔術が働かない場所で主の頭を吹き飛ばすところじゃが」
「そこは安心してくれ、さっきの試合ではあんたをびっくりさせたかったから俺のお気に入りは一瞬しか使わなかったが....今回は最初からフルスロットルで行かせてもらうぜ、イナリ、後ろに下がっときな」
グランが自分の上着を脱ぎすてながら、呪文を唱える。
「これは驚いたな。まさか第二覚醒を使えるとはな....」
シルヴにストレアが
「第二覚醒って確か、プロの魔獣討伐士でも発現できる人は3割程度しかいないっていうやつ?」
と聞くと、
「ああ、その通りだ。まさかこんな身近に使える奴がいたとはな」
「グラン...」
第二覚醒とは、普通の召喚獣の加護よりもさらに多くの力をもらうことができるだけだが、それによって受け取れる力は通常の5倍以上となる。しかし、それは召喚獣に真に認められたものでないと使えないので、召喚獣が強ければ強いほど、その難易度は跳ね上がっていくというものである。
場所は戻り、グラン達へ
「行くぜ!超級身体強化!」
グランの体から、赤よりもさらに濃い赤、深紅のオーラが放出されると同時に、限界を超えた肉体強化を行ったためにグランの全身の筋肉が悲鳴をあげ、それをイナリの固有能力の再生で治そうとして、全身から炎が巻き上がる。
「ほう、それがさっきの試合の最後に一瞬使ったというやつかの、召喚獣を使えぬ身でその領域まで至るとは面白い。さあ、来るがよい。我も相応の武器を使ってやろう、魔鉄扇カリュオン」
ヨハネは妖艶なほほえみをしながら、彼女の固有武装である二つの鉄扇を両手に現れさせる。そしてそれに対しグランも炎刀カグツチをその手に持ち、それと同時に先頭の邪魔をしないようなのか白銀狼もイナリのように後ろへと下がる。
「さて、これは負担がでかすぎて2分ほどしか持たないからな、一気にいかせてもらう.....ぜ!!」
一瞬のための後にグランの姿が消える。そして、ヨハンの目の前に一瞬で現れ、彼女へと音速をわずかに超えた速度で刀ヨハンに向けて振り下ろすがその一撃に対し、ヨハンは鉄扇を使い、真正面から受ける。だが、その鉄扇を上にあげるという動作もまた音速を超えている、その結果は一瞬で訪れる。地面が放射状に砕け散り、二人のいる場所から半径40mほどの地面が陥没するという結果で、
「この一撃を余裕で受けるかよ!」
「この程度なのかの?」
「なわけ!」
グランのが一瞬で背後に回り込むと同時に、刀で切りかかるがそれを振り向きながら鉄扇を振るいヨハネが受ける。そこからグランが連続で刀を振るい、ヨハネが両手の鉄扇で受ける。
「ウオらあああ!!」
「どうしたどうした?こんなものではなかろう!」
二人の時間間隔では永遠にも感じられるお互いのラッシュの打ち合いはすでにボロボロのグラウンドをさらに壊す。そして、
「ぐっ!!」
ラッシュの間に挟み込まれたヨハネの蹴りによりグランが吹き飛ばされるが、グランはその吹き飛ばされた勢いを利用して立ち上がる。しかし、
「っ!、くそ!」
グランはすでに肩で息をするほど疲れており、さらに自らの移動により、発生したソニックブームでボロボロ、それに対しヨハネは未だ、疲れどころかダメージを受けた様子すらない。そして、ヨハネが口を開く、
「我もなめられたものじゃのう、よもや主、このまま手の内を隠したまま終わるつもりかの?」
「!?..なんだばれてたのか」
「ふん、主が風の精霊と知り合いなの同様我も水の精霊と懇意にしてるのでな。貴様が真夜中に湖の近くでとんでもない技を使ったせいでそこの環境が崩れたと精霊が文句を言っておったわ。ほれ、その技、使ってみるのじゃ」
「.....」