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誰に知られることもない物語  作者: 一条 夜月
3/6

第1章 1話-2

まだ3週目なのに盛大に遅刻。

毎週火曜日を目安にして更新します本当に申し訳ない。

その後、異世界を転生(もしかして転移というんだろうか?)した私の体調を気遣ったらしく、王とネイサンは女性に私をゆっくり休ませるように告げるとそれぞれの職場へと帰って行った。そういえば彼女の名前を聞いていない。


「あの、貴女のお名前は?」

「ああ申し訳ありません、名乗るのが遅れましたね。アリシア、と申します」


……先ほどから、名前が私が生きてきた地球のイギリス人あたりと酷似しているのは何故だろう?装飾等もそうだ。ありきたりと言ってしまえば申し分けないが、まるで”誰かが模倣した”かのようである。異世界だろうと人の感性は変わらないのか?わからない。名乗るのが当たり前という文明にしたってそうだ。私の想像力が乏しいせいで良い例えが出せないが名乗らない文明だって異世界なんだからあって良いはずなのに。


わからないことが多すぎる。

とりあえず、全部棚に上げておこう。


そういえば挨拶の途中だった。

無言で考え込み始めた私をアリシアが心配そうに見つめてくる。

そうだ、相手に名乗らせたのだから私も名乗らねばならない。


「ありがとう、アリシアさん。私の名は__」


ここではたと気づく。


私の名は、何だ?


過去の情景や両親の名、友人の名は思い出せるのに私の名前だけ不思議な事に何一つ思い出せない。あるはずの呼称が存在しない。一気に私の心は恐怖に支配された。名前とは存在だ。大げさかもしれないが名前がなければ今までの”私”の存在がなくなるのだ。

口を噤んで立ち止まった私を気遣うようにアリシアが「勇者様?」と声をかける。


「すみません……その、召喚された関連かわかりませんが私の名をどうにも思い出せなくて」


隠すことでもないので素直に自身の状況を相談してみる。一瞬ぽかんとした彼女はすぐに眉根を寄せて「おかしいですね……」と呟いた。


「そんな事例、文献に載っていませんでした」

「私以外にもこの世界に呼ばれた人が?」

「ええ、何十年も昔のことですが。……そうですね、心配なさらないでください勇者様。メニュー画面を開けば名前も書かれているはずですから」


メニュー画面。つくづくゲームっぽい機能である。開き方を教えて貰うとどうやら念じると目の前に現れるらしい。ユニークスキル持ちでもない限り他者のものが見えたりしないとの説明を聞くと少し、安堵した。


開け、と念じると本当に目の前に薄い青がベースのパネルが現れる。メニュー画面との名の通り、まるでゲームの如く4つの項目があった。それぞれステータス、所持装備一覧、アイテム一覧、ルール検索とある。……ルール検索?気にはなるけどまずはそう、ステータス確認をせねばならない。タップして開く事もできるが念じて開くやり方に慣れておいた方が後々楽ならしい。ステータス、と念じるとずらずらと文字列がパネル上に流れる。


『ステータス

名前:勇者

性別:女

年齢:17

身長:160cm


役職を選んで下さい

(転移ボーナスによりどの役職を選んでもLv MAXの4分の1のLvを付与)

メイン役職 未設定

サブ1役職 未設定

サブ2役職 未設定


残り割振りポイント 1000

(転移ボーナスによりさらに+1000)

体力 3

攻撃力 3(+1000)

物理防御力 3

魔法防御力 3

回復力 3

魔力 3

敏捷性 3

運 3


スキル一覧

役職が決まってません

(転移ボーナスによりランクV以外の全てのスキルLvはMAXとなります)


ユニークスキル

【透視】

他者のステータスを覗き見ることが出来る

但し【認識阻害】スキル保持者のものは見えない

なお、魔力消費はないが軽い頭痛を伴う


【認識阻害】

自身の認識を操作出来る

位置をほんの少しズラす・自身の正体を曖昧にする・【透視】スキル保持者によるステータスの覗き見を阻止することが出来る

なお、魔力消費はないが体力が一回につき-0.5

【透視】スキルに対しては自動発動される


(他2つは未開放)


称号【勇者】

魔王を倒した者・魔王に認められた者・転生者に与えられる

全ステータスと全スキル効果を3倍

再詠唱時間を半分に

更に1回の戦闘時に自身を含むパーティーメンバーへの即死攻撃を3回レジスト


武器

【勇者の剣-エクスカリバー-】

転移ボーナス

攻撃力を+1000

負傷した際毎分体力を100回復

即死攻撃を無効化


【もう一つ装備出来ます】


装備品

頭【選択されていません】


上【異世界の服】

ただの服

着用者に安心感を与える


下【異世界の服】

同上


靴【異世界の靴】

同上』


そういえば左半身が妙に重いと思っていたらエクスカリバーが装備されていたのか。なるほど。確かに腰元を確認してみるとなにか剣っぽいものが鞘に納められていた。

まぁ……色々言いたいことはある。

しかしまず注目するべき点は名前だ。


名前が『勇者』?そんな馬鹿な。私の名はちゃんとあったはずだ。思い出せはしないけれど。どういう事だ?まさか、まさか__。


「どうかされましたか、勇者様……?」

「ああ、いや、その」


『勇者』に、役者に名前など要らないと?

だから、余計なモノとして消去された……?


ここにきてようやく重く重く絶望が私にのしかかる。

私にはもはや自身という存在などいらないのだ。



どうやら私はこの世界で『勇者』にならねばならないらしい。

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